2016年9月6日火曜日

全国1271市区町村の「家賃/年収」比

 前々回の記事では,47都道府県別,首都圏の市区町村別に,借家世帯の「家賃/年収」比を出してみました。生活の基礎経費と収入を照合して出した,生活の余裕度を測る指標です。
http://tmaita77.blogspot.jp/2016/09/blog-post.html

 県別にみると,最高の22.4%(東京)から最低の13.8%(島根)まで分布しています(25~34歳の借家世帯)。首都圏の市区町村別では,27.0%(東京・中野区)から12.0%(埼玉・吉身町)までの分布幅です(全借家世帯)。

 首都圏とは埼玉・千葉・東京・神奈川の1都3県ですが,全国の市区町村に射程を広げると,「家賃/年収」比はもっと幅広く分布しています。地方県の郡部では,この値が格段に低い地域もあるでしょう。こういう例の提示は,地方創生の促進の上でも意義あることと存じます。

 私は,総務省『住宅土地統計』(2013年)のデータをもとに,全国1271市区町村の借家世帯の「家賃/年収」比を計算してみました。同資料に載っている,各地域の借家世帯の平均家賃月額を12倍した年額を,同じく借家世帯の平均年収で除した値です。借家世帯の年収のうち,家賃の比重は何%か?
http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/index.htm

 できれば若年世帯というように,世帯主の年齢を統制できたほうがいいのですが,市区町村レベルの統計では,家賃額・年収とも,全借家世帯のものしか知ることができません。今回お見せするのは全借家世帯の「家賃/年収」比であることに留意ください。

 1271市区町村の「家賃/年収比」は,幅広く分布しています。全市区町村の一覧を掲げることはできませんので,2%間隔のヒストグラムを見ていただきましょう。


 きれいなノーマル分布です。最頻階級(mode)は,14%以上16%未満の階級なり。1271市区町村の「家賃/年収」比の平均値は15.7%となります。アベレージは,およそ7分の1というところです。私も,そんな感じかな。

 さて分布をみると,20%を超える地域もあれば,10%にも満たない地域もそこそこあります。この両端を顔ぶれをご覧に入れましょう。まずは,「家賃/年収」比が高い市区です。下表は,25%(4分の1)を超える市区です。


 トップは,大阪市の西成区で28.7%です。家賃はそんなに高くないですが年収が極端に少ないので,こういう比重になっています。生活保護世帯が多いためでしょう。

 2位は福井の永平寺町で,3位以下は東京特別区,京都市,大阪市内の区で占められています。東京の港区や渋谷区は,家賃がメチャ高であるためです。他の区は,年収が少ないことがファクターになっています。京都市は学生の単身世帯が多いこと,大阪市は生活保護受給世帯が多いことも関連していると思われます。

 次に,借家世帯の「家賃/年収」比が低い地域の一覧です。こっちのほうに関心をお持ちの方が多いと思いますが,家賃年額が年収の10%(1割)に満たない自治体は以下です。


 一番下をみると,2011年の震災の被災地が顔をのぞかせています。仮設住宅などが公的に供給されているためでしょう。

 鳥取の八頭町(3.3%)や岐阜の大野町(5.1%)などはスゴイ。家賃メチャ安なのに,借家世帯の年収は高し。地域の借家のほとんどが公務員住宅とか,特殊事情でもあるのでしょうか。わが郷里・鹿児島のさつま町や肝付町なんかも,家賃比重が低いのだなあ。

 生活の基礎経費の比重が低い地域は,予想通り地方の郡部に多いですが,市部も多く含まれています。移住者の大半は賃貸住まいをチョイスすると思いますが,こういうデータも,わが町に人を吸い寄せるエビデンスになるのではないでしょうか。

 前々回の記事でも言いましたが,白々しいPRよりも,こういう数値のほうが,人を吸い寄せる磁石として強力なのは確かだと思います。