2015年2月13日金曜日

同性愛への寛容度の国際比較

 東京の渋谷区が,同性愛カップルに対し「結婚に相当する関係」と認める証明書を発行する方針を打ち出しています。全国初の試みだそうです。
http://www.asahi.com/articles/ASH2D63DQH2DUTIL03Z.html

 わが国では,憲法にて「婚姻は,両性の同意のみに基づいて成立」(第24条1項)と定められていますので,同性の結婚はできないことになっています。そこで,「結婚に相当する関係」と認める証明書を発行し,性的少数者の権利を保護しようということなのでしょう。

 しかるに世界を見渡せば,同性婚が認められている社会もあります。イギリス,フランス,オランダ,スペイン,スウェーデンなど・・・。
http://matome.naver.jp/odai/2136724610721983601

 これは制度の話ですが,国民の意識という点ではどうでしょうか。『世界価値観調査』(2010-14)にて,同性愛(homosexuality)への寛容度を尋ねた設問があります。国別の回答結果を整理し,日本の位置を明らかにしてみましょう。今後のわが国の行く末を占う,手立てになるかもしれません。

 上記の設問は,同性愛への寛容度を10段階で問う形式です。16歳以上の回答者全体の平均点を出すと,スウェーデンが8.47点,ドイツが6.09点,アメリカが5.40点,日本が5.14点,韓国が3.52点となっています。

 日本はニュートラルな5点近辺ですが,細かいデータを出してみると,ある特異性が浮かび上がります。それは,世代差が大きいことです。20代の若者と60歳以上の高齢者について,同性愛への寛容度得点の分布を図示すると,下図のようになります。左は日本,右はスウェーデンの分布曲線です。


 瑞国では,若者も高齢者もマックスの10点が極端に多くなっていますが,日本は両者が対照的な型になっています。若者では10点が最多ですが,高齢者では一番寛容度が低い1点が最も多いのです。

 まあ,どの社会でも若者は先進的な意識を持っているものですが,こうまで世代差が大きいとはちょっと驚きです。こういう社会って他にあるのでしょうか。53の社会について,若者と高齢者の寛容度の平均点を計算し,グラフにしてみました。横軸に高齢者,縦軸に若者の平均点をとったマトリクス上に,各々の社会を散りばめた布置図です。


 フィリピンやジンバブエのような例外もありますが,ほとんどの社会において,高齢者よりも若者の寛容度が高くなっています(実斜線よりも上)。点斜線よりも上は,その差が2.0ポイントを超える社会であり,日本を含む6か国が該当します。

 日本はこのゾーンの中でも最も高い位置にあり,同性愛への寛容度の世代差が最も大きい社会であることが知られます。20代の平均点が7.25,高齢者が3.44であり,その差が3.81ポイントもある社会ですから。

 日本の若者の寛容度は,オランダ,スウェーデン,オーストラリア,スペインに次いで5位です。若者だけでみると,同性婚が法的に認められている社会と遜色ないではありませんか。この部分だけを切り取ると,同性愛者への差別は将来なくなるのではないかという希望的観測すら持てます。

 わが国は短期間で激しい社会変動を経験したのですが,それだけに,同性愛への寛容度に限らず,もろもろの意識・考え方の世代差が大きい社会であるのかもしれません。このことが,幾多の社会問題を解決を滞らせている面もあろうかと思います。国会議員をはじめ,国を動かす指導層の多くは高齢者ですし。

 若者の政治参画の重要性に思いをはせないわけにはきません。その代表的な手段は選挙での投票ですが,彼らの棄権率は高く,投票所に足を運ぶ人間の年齢構成は,人口にも増して完全な逆ピラミッド型になってしまっています。
http://tmaita77.blogspot.jp/2014/12/blog-post_14.html

 指導者層の女性比に関心が集まっていますが,若者比のような指標にも関心がもたれるべきではないかと思います。この値の高低が,社会変革の可能性のバロメーターであるといっても言い過ぎではないでしょう。今回の世代差のデータをみて,こうした思いを強くした次第です。