2018年2月5日月曜日

自殺者と変死体

 警察庁統計によると,わが国の年間自殺者数は,98年に3万人を突破し,2003年に3万4427人とピークになった後は減少に転じ,2012年に3万人を割り,2016年では2万1897人にまで減っています。
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/jisatsu.html

 「景気回復の影響」「自殺対策が功を成した」とか白書に書いてますが,実はこれには,統計上のトリックがあると,その道のプロが明かしています。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/lifex/198569/1

 自殺者の減少と呼応するかのように,変死体の数が増えているのだそうです。上記の記事でもデータが紹介されていますが,2006年と2015年の数値をグラフにすると,以下のようになります。


 変死体と自殺者の合算は,この10年間でほとんど変わっていません。自殺者は減っていますが,それと同じくらい変死体の数が増えていますので。

 しかし,自殺者の減少分と変死体の増加分がほぼ同じ(8000人ほど)というのは,ものすごく示唆的ですね。以前は自殺として処理されていたものが,最近では変死体としてカウントされているだけではないかと。

 最近では,遺書や目撃証言といった具体的な証拠がない限り,自殺とは認めず,変死体として処理するようになったと(上記記事)。統計上の自殺者数というのは,現場のさじ加減で動くものです。統計には表れない「暗数」に思いを巡らせないといけません。

 私は前に,自損行為で搬送された人員数と自殺者数の時系列推移を照合したことがありますが,今世紀以降,乖離が大きくなっていることを知りました。自損行為の搬送人員でみると,男性よりも女性,高齢者より若者で多くなっています。統計に表れた自殺者の傾向とは逆です。
http://tmaita77.blogspot.jp/2016/09/blog-post_8.html

 こういうサブの指標も加味すると,女性や若者の「生きづらさ」も見えてきます。

 私は,社会の危機度を測る指標として自殺者数(率)に注目してきました。最近は,それが下がっているとのことで,いささか安堵していたのですが,上記のような統計上のトリックがあることを知った今,まだまだ予断を許さぬ状況が続いているのだなと感じます。