2018年1月22日月曜日

ロスジェネの見当づけ

 「われわれはロスジェネだ,ツイてない世代だ」。こういうことを言う人がいますが,私からすれば「あなたは違うでしょ」と言いたくなることが結構あります。

 具体的に,どの世代が該当するのか。印象論やフィーリングではなく,データをもとに見当をつけてみましょう。

 ロスジェネ,ツイてない世代とは,学校卒業時が就職氷河期と重なった世代です。大学進学率が高まっている時代では,学校から社会への移行は大卒時(22歳時)がメインですので,このステージの就職率に注目しましょう。

 大学卒業者の就職率は,文科省『学校基本調査』から知ることができます。この資料に載っている計算済みの就職率は卒業生ベースのものですが,就職の意思のない大学院等進学者は分母から除いたほうがいいでしょう。また,医学部卒業生はキャリアが臨床研修医から始まることが多いので,この部分は分子に加えるべきでしょう。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001011528

 私は以下の計算式をもとに,各年の4年制大学卒業者の就職率を男女別に計算しました。

 ・就職率=(就職者数+臨床研修医数)/(卒業生数-進学者数)

 昨日,1990~2017年卒業者の就職率推移をツイッターで発信したところ,多くの人に関心を持っていただけました。ここでは,もうちょっと時期を遡って,1980年の卒業生からの推移を跡付けてみましょう。


 80年代前半では,性差が大きかったようです。85年に男女雇用機会均等法が制定されたこともあってか,男女差は縮まり,90年代初頭には男女とも85%を超えました。

 しかしバブル崩壊後,不況が深刻化し,就職率は急落。世紀の変わり目にボトムになります。私は99年に大学を出ましたが,,まさに「どん底」でした。08年のリーマンショックの頃が大変だったといわれますが,それよりも谷がもっと深かった。

 最近は空前の人手不足もあり,大卒者の就職率はバブル期に匹敵する水準に戻っています。女子は過去最高です。今世紀初頭のボトムを境に男女差が逆転していますが,99年に男女共同参画社会基本法が制定され,その理念に向けた計画が実施されていることと関連があるのでしょうか。

 上記のグラフから,真正の「ロスジェネ」は世紀の変わり目に大学を出た世代ということになりそうですが,正確な整理をしてみましょう。私は76年生まれですが,ストレートの場合,この世代が大学を出るのは99年春です。この年の大卒者の就職率は,男女込みでみると68.3%と,7割に達していませんでした。

 各世代の大学卒業年の就職率を,時系列の表で整理すると以下のようになります。


 藍色で塗りつぶしたのは,大卒時の就職率が70%に満たない世代です。世紀末から今世紀初頭に大学を出た,76~81年生まれ世代が該当します。私の世代も入ってしまっていますが,大卒時の就職率からうかがえる「ロスジェネ」といえそうです。

 ピンク色をつけたのは,逆にツイていた世代で,大卒時の就職率が85%を超えていました。91年卒業生では89.2%,9割近くだったのですね。名作『就職戦線異状なし』が上映された年ではないですか。バブル世代と,最近の世代が該当します。

 今後も人手不足により,売り手市場は続くでしょう。今年春に大学を出るのは95年生まれ世代ですが,02年施行のゆとり学習指導要領で育ち,シューカツも「ゆとり」ですか。いいなあ。

 それはさておき,2016年10月時点の人口ピラミッドに,上表と同じ色をつけてみましょう。下図をご覧ください。


 真正のロスジェネと見積もった,76~81年生まれ世代は,2016年10月時点では35~40歳です。人口量の合計は993万人と,1000万人近くになります。東京都の人口より少し少ないくらいです。結構な数ですね。

 生まれてくる家庭や地域はもちろん,時代も選べません。学校から社会への移行期が氷河期と重なったことで,不遇を強いられている世代。新卒至上主義が支配的なわが国では,「やり直し」も叶わず,非正規雇用に滞留している人が多い世代。正規就職・結婚・出産といったイベントを首尾よくこなせた人と,そうでない人の格差が大きい世代…。

 この世代は現在子育て中であり,あと少しすると,子どもが高校や大学に上がる時期になります。これまでのように,教育費負担を家計に押し付けるやり方は通用しなくなるでしょう。親世代の年収が順調に上がるという年功賃金制も崩れていますので。

 あと25~30年すれば,この世代も高齢期に入りますが,年金など納めておらず,社会保障を得られない人も続出するでしょう。現在の韓国のように,高齢者の自殺率がメチャ高の社会になっているかもしれません。
https://twitter.com/tmaita77/status/938686544650440704

 しかしピンチはチャンス。教育費の私負担型から公負担型の社会への変革,65歳の定年制社会から生涯現役社会への変革,といった社会変動を,この世代がけん引してくれる可能性もあります。

 これまでの社会の維持の仕方が通用しない,最初の世代なんですから。その意味で,「黒船」世代という別名を与えてもいいんじゃないかと思ったりします。開国の街・久里浜の「黒船商店街」を歩いていて,このネームを思いつきました。

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