2018年1月27日土曜日

0~9歳の転入超過率

 昨日の産経新聞に,子育て世代が住みたい田舎1位に,茨城県の常陸太田市がノミネートされたという記事が出ています。「家賃・おむつ・保育補助……支援に自信」というフレーズも添えられています。
http://www.sankei.com/life/news/180126/lif1801260028-n1.html

 ほう,至れり尽くせりですね。しからば,子育てファミリーをさぞ呼び込んでいるのだろうと推測されますが,当市の人口移動統計でそれが観察されるでしょうか。私は意地が悪いので,素晴らしい実践が報告されると,マクロ統計で裏を取ってみたくなります。

 各地域の人口の流出入が分かる官庁統計といえば,総務省『住民基本台帳人口移動報告』です。1年間の転入者数と転出者数を,年齢階層別に知ることができます。前者から後者を引いた数が転入超過数で,どれだけ人口を呼び寄せているかの指標になります。
http://www.stat.go.jp/data/idou/

 最新の2016年のデータをもとに,常陸太田市の人口流出入の年齢グラフを作ると,以下のようになります。外国人は含まない,日本人移動者のデータです。


 20代前半の転出者が多くなっています。就職を機に若者がどっと出ていくという,地方都市の典型タイプです。転入者もいますが,転出者のほうがずっと多く,転入超過数は大きなマイナス値となっています。

 20代後半から30代の子育て世代はというと,こちらも転入超過数はマイナスです。2016年のデータで見る限り,子育て年代を吸い寄せているようには見えませんが,もっと最近では違うのでしょうか。

 しかし,10歳未満の子ども人口はプラスです。これを加味すると,親世代の転出者は子がいない世帯や単身者が多く,転入者はその逆なのかもしれませんね。こう考えると,常陸太田市の実践の成果が,統計に表れているといえそうです。
https://twitter.com/tmaita77/status/956815492009811968

 人口移動の統計から「子育てに選ばれる地域」を検出するには,子持ちと子なしが混在している親世代よりも,子ども世代に注目するのがよいかもしれません。
 
 私は,0~9歳人口の転入超過率を,関東7都県の市区町村別に計算してみました。2016年間の転入超過数を,同年1月1日時点の人口で割った値です。

 私が前に住んでいた東京都多摩市でいうと,2016年間の0~9歳の転入超過数は59人で,同年1月1日の当該年齢人口は1万1681人です。よって,転入超過率は0.51%となります。社会増によって,子ども人口が0.51%増えたことを含意します。

 親年代の転入超過率はマイナスなのですが,子ども人口はプラスになっています。公園の緑地面積が首都圏1位で,自然環境がとても豊かな地域ですが,子育てに選ばれているのかなあ。

 都内の53市区町村の値を地図にすると,下図のようになります。


 西高東低ではないですか。23区はほとんどが白色,転入超過率がマイナス,つまり子ども人口が出て行っています。

 子育てファミリーは,通勤の便よりも自然環境を重視すると解釈したいところですが,子どもができたら広い住居が必要なので,家賃の安い郊外に流れる,というのが主な理由でしょうね。

 親年代(20代後半~30代)のデータでは,上記と逆の模様になるのですが,都心に入ってくるのは,子なし世帯や単身世帯が多いと推測されます。親世代の人口の動きから,「タワマンが林立する都市沿岸部が,子育てに選ばれる」とか言われますが,そうとばかりは言えますまい。

 住居費という外圧ゆえとはいえ,子がいるファミリーは郊外に移る傾向があるようです。社会科の教科書に載っている「ドーナツ化現象」,健在と思われます。

 都心に通うリーマン世帯が居を構える校外は,東京西部のほか,埼玉,千葉,神奈川があり,交通網が発達した今では,北関東も視野に入れるべきでしょう。

 先に述べたように,関東7都県の市区町村別に,0~9歳人口の転入超過率を計算しました。数が346にもなりますので,ここでは上位50位までのランク表を見ていただきましょう。


 子ども人口の動きから割り出した,「子育てに選ばれる地域」の一覧表です。首位は,千葉県の印西市となっています。当市では,社会増で子ども人口が7%近くも増えています。スゴイ。

 2位の奥多摩町と3位の東秩父村は,分母が小さいことに注意する必要があるかもしれません。

 「母になるなら流山」と大々的にPRしている流山市は5位。私が住んでいる横須賀市の隣の逗子市が10位にランクイン。冒頭で触れた,茨城県の常陸太田市は1.48%で60位です。

 先に書いたことを繰り返しますが,人口移動統計で「子育てに選ばれる地域」の目星をつけるには,子なしと子ありが混在した親年代よりも,子ども人口の動きに注意すべきかもしれません。

 算出した,関東7都県の346市区町村の転入超過率をマップにしたらどうなるか。ちょっと手間がかかる作業なので,回を改めようと思います。
*作ってみました。
https://twitter.com/tmaita77/status/957490466563305472

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