2017年2月19日日曜日

知られざる事実

 スマホの所有率が低く,ネットの使用時間は短い。これが日本の青少年です。グラフを2枚,掲げておきます。

1)一つ目

2)二つ目

 日本の青少年は,世界最高のスマホジャンキーとか,ネット中毒とか言われますが,データでみるとそうではないようです。

 ただ,使い方に問題が。ネットでゲームをやる頻度は世界最高ですが,自分の創作物を発信する頻度は・・・。ネットの用途に関する国際比較データは,22日公開のニューズウィーク記事でご覧に入れましょう。

 ネットは,誰でも情報を発信・共有できる,文明の偉大な発明品です。今では,それが「掌」サイズのスマホでできちゃう。上手く使うならば,学校の教授活動の能率も飛躍的に高まります。

 マイナス面ばかりを咎め,スマホの利用を闇雲に制限するのではなく,プラスの面を認め,適切な用途で利用するよう,子どもを仕向けていきたいものです。

2017年2月16日木曜日

今日のできごと

 今日は,朝から出かけてきました。

 まず10時より東京地裁で,先日起こした裁判の初回口頭弁論に出てきました。まあ弁論といっても,裁判長より「訴状の通りでいいですね」と言われ,「はい,その通り陳述します」と答えただけです。

 初回の弁論には被告は出てこないケースが多いのですが,2名の弁護士さんが出てこられました。終わった後,法定の外で「ご挨拶を」と話しかけられ,名刺をいただきました。お二人とも若い弁護士さんです。私のような素人は,いい練習台になるかもしれませんね。謹んでお相手いたしましょう。第2回口頭弁論は,3月の下旬です。

 裁判の口頭弁論というと,口角泡を飛ばして激しく言い合うことをイメージされるかもしれませんが,実際は「お手紙合戦」です。私の訴状に対し,被告が答弁書で反論をしてくる。それに対し,私が第1準備書面で反論する。それに対し被告も,同じ第1準備書面で応戦する。後は第2,第3準備書面・・・というように,文書でやり合います。

 双方が出頭する口頭弁論では,前もって出した書面の通り陳述する,ということを言うだけです。まあ大した事件ではありませんので,第2,第3準備書面あたりで双方の主張は尽き,証拠調べの後,判決という流れになるでしょう。

 口頭弁論が終わった後,京急で久里浜まで行き,不動産屋で新居の契約をしました。来月の初頭に引っ越す予定です。

 引っ越し先は,横須賀市の南西の海岸地域です。近くに「ソレイユの丘」や「荒崎公園」といった市営公園があり,とてもいい所。海好きの私には,たまりません。引っ越し後,自転車で海沿いを走り回る日が続くと思うと,ワクワクします。健康にもいいよなあ。
https://www.seibu-la.co.jp/soleil/
https://www.cocoyoko.net/spot/arasaki-park.html

 契約を終えた後は,京急の終点の三崎口まで下り,西海岸をバスで逗子まで上りました。そして,締めはココ。江ノ電の鎌倉高校前駅を降りてすぐの海岸です。


 江の島の海の撮影スポットとしては,ここがベストじゃないかなあ。新居からここまでくるのは,結構時間がかかりますが,定期的に来たいと思います。海をみると心が広々としますよ,ホント。

 3月中旬締め切りの,ちょっと大きな仕事が2つあります。これは,引っ越し前に片付けちゃいましょう。

2017年2月12日日曜日

悲劇の確率

 まだまだ先のことや,起きてもいないことを心配して,「今」を台無しにしている人がいますが,勿体ないと思います。

 統計でみると,悲劇が起きる確率ってどれほどなんでしょうかねえ。たとえば,死ぬこと(死亡)はどうでしょう。2015年の厚労省『人口動態統計』によると,私の年齢層(40代前半)の死亡者は9770人と計上されています。2015年の1年間の死亡者数です。

 同年の10月時点の40代前半人口は,973万2218人(『国勢調査』)。よって,40代前半の人が不幸にして命を落とす確率は,996人に1人ということになります。1日あたりの死者数は,27人です(9770/365 ≒ 27)。

 同年中の40代前半の自殺者は1984人ですので,確率は4905人に1人で,1日あたり5人。40代の刑法犯被害者は13万8620人で(『犯罪統計書』),133人に1人,1日380人です。犯罪被害は結構多いですが,多くは盗みの被害です。

 これは私の年齢層のデータですが,他の年齢層の一覧を示しましょう。


 年老いてからならともかく,若い頃からいろいろ杞憂をめぐらし,「**保険だ」などと騒いでばかりというのはいただけないですね。

 しかし逆の見方をすれば,私の年齢層でも年間で996人に1人,1日27人が命を落としている。私は常道から外れた人間と思ってますが,そのような不幸は免れている。

 「生きているだけで丸儲け」
 「命に別状なければ問題なし」。

 「生」に対するありがたみを忘れないようにしたい。もっとも,上記のフレーズが,政府の怠慢を正当化することに使われてはいけません。

2017年2月8日水曜日

都内23区の生活保護世帯率

 小田原市の「生活保護なめんな」ジャンパーが話題になっていますが,生活保護を受給する世帯は増えてきています。東京の台東区では,区の年間予算の4分の1を,生活保護費が占めるとのこと。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170206-00050895-gendaibiz-bus_all

 現在では,生活保護世帯の割合はどれくらいなんでしょう。2015年年度の厚労省『被保護者調査』によると,同年7月時点の被保護世帯は160万2,551世帯。同年10月の一般世帯は,5,333万1797世帯(『国勢調査』)。よって生活保護世帯の率は,前者を後者で除してちょうど3.0%となります(33世帯に1世帯)。

 全国の数値はこうですが,値は地域によって違っています。都道府県別の生活保護世帯率は前に何度か出したことがありますが,それよりも下った市区町村レベルの地域差は,まだ明らかにしていませんでした。

 今回は,東京都内23区の生活保護世帯率を計算してみようと思います。大都市という基底的特性を同じくしながらも,値は区によって違うと思われます。この作業は,大都市内部における貧困の地域分布を明らかにすることと同義です。

 東京都の『福祉・衛生統計年報』によると,2015年度の足立区の生活保護世帯数は1万8,864世帯となっています。年度内の月平均です。2015年の『国勢調査』から分かる,同年10月時点の一般世帯数は31万434世帯。よって,この区の生活保護世帯率は6.08%と算出されます。

 全国値(3.0%)の倍以上ですね。同じやり方で23区の生活保護世帯率を計算し,一覧表にしました。過去からの変化もみるため,1990年の数値も添えています。


 どの区も,25年前に比して増えていますね。90年代以降における,社会状況の悪化の影響がはっきりと出ています。

 2015年のデータをみると,最低の1.18%から最高の7.45%までのレインヂがあります。台東区では,13世帯に1世帯が生活保護世帯であると。区の予算の4分の1が,生活保護費で占められるというのも頷けます。

 上表のデータを地図にしましょう。3%未満,3%台,4%台,5%以上,という4つの階級幅を設け,23区を塗り分けたマップにすると,下図のようになります。


 マップにすると,インパクトがありますねえ。全体的に色が濃くなっています。「失われた25年」の可視化に他なりません。

 濃いゾーンが地理的に固まっていることにも注目。以前に比して,貧困が特定のエリアに凝縮(集中)する傾向が強まっているともとれます。2015年の生活保護世帯率が5%を超えるのは,台東区,墨田区,荒川区,足立区,葛飾区,です。

 これらの区では,高齢者が多いからではないか,というギモンもあるでしょう。生活保護の受給率が高いのは,高齢世帯ですからね。しかし,そうとばかりはいえないようです。

 2015年の厚労省『被保護者調査』から,世帯主の年齢層別の生活保護世帯率を出すと,19歳以下が0.61%,20~24歳が0.55%,25~29歳が0.83%,・・・80歳以上が4.42%,です。

 この比率を,一般世帯の世帯主の年齢構成で重みづけして,23区の生活保護世帯率の期待値を出してみましょう。足立区でいうと,一般世帯の世帯主の年齢構成は,19歳以下が0.35%,20~24歳が2.81%,25~29歳が5.35%,・・・80歳以上が8.87%,となっています(『国勢調査』,2015年)。

 よって,年齢構成を考慮した,足立区の生活保護世帯率の期待値は,以下のようにして算出されます。

 {(0.61×0.35)+(0.55×2.81)+・・・(4.42×8.87)}/100.00 = 2.99%

 実際の値(6.08%)は,これを大きく上回っているではありませんか。足立区の生活保護世帯率は,住民の年齢構成から期待される水準よりも,だいぶ高い。すなわち,地域独自の要因が効いている,ということです。おそらくは,若年世帯の生活保護世帯率も他地域に比して高いことでしょう。

 他の区についても,生活保護世帯率の実測値を,年齢構成から出される期待値と照合してみましょう。


 都内23区は,住民の年齢構成はさして違わないので,期待値はどの区もほぼ同じですね。にもかかわらず,生活保護世帯率の実測値は,大きく違っている。

 貧困の分布には,地域的な偏りがあるようです。ご覧のように,実測値が期待値を2ポイント以上上回っているのは,ほとんどが城東の区です(アミかけ)。

 大都市の東京特別区では,どの区でも,この四半世紀にかけて生活保護世帯率が上がっていること,貧困の集積化が進んでいることを知りました。

 しかし,この事実をネガティブな面だけで捉えるのは誤りでしょう。生活保護世帯率が上昇しているのは,貧困状態の人が増えているためですが,貧困を公的に救済しようという気運が高まっていることの表れでもあります。

 ある方が「貧困の進行だけでなく,貧困の発見という面もあるのではないか」とおっしゃっていましたが,実に言い得て妙だと思います。
https://twitter.com/kurokawashigeru/status/829140589828378624

 わが国の生活保護の捕捉率が低いのはよく知られていますが,「貧困の発見」をもっと進める余地はまだまだあるでしょう。「生活保護なめんな」ジャンパーを着て,弱者を威嚇している場合ではありません。

 私は,親戚づきあいが「ゼロ」の人間ですので,堂々と申請に行けるかな。

「援助してくれる親戚はいませんか?」
「いません」
「こちらで調べて連絡しますが,いいですか?」
「どうぞ,ご自由に」・・・。

 付き合いの多い人は,2番目の問いに青ざめるのでしょうが,私はさにあらず。一抹の不安もありませぬ。

 しかるに,貧困が特定エリアに集積する現象は,看過し得ないように思います。子ども世代の教育格差に転移する恐れもあるからです。資源の傾斜配分などが考えられる時期もくるかもしれません。

 今月から来月にかけて,1)著書執筆,2)裁判,3)引っ越しと,いろいろ立て込んでまして,ブログの更新頻度が落ちると思われますが,ご寛恕いただけますと幸いです。

2017年2月3日金曜日

ぶっ飛んでいる日本の教員

 中学校教員の週間平均勤務時間,長時間勤務率のグラフが,ツイッターで関心を集めているようですので,ブログにも載せておきます。
https://twitter.com/tmaita77/status/826773909118652416


 日本の教員の現状は,異常としか言いようがありません。

2017年2月2日木曜日

教員と全労働者の勤務時間差の国際比較

 日本の教員の勤務時間が国際的にみて異常に長いことは,何度も示されてきました。このブログでも,その様を可視化したグラフを繰り返し提示しています。

 しかるに,「それはどの業種も同じだよ」という声もよく聞かれます。日本人の働き過ぎは,どの業種も同じ。教員に限ったことじゃない。平たく言えば,こういうことです。

 なるほど。確かにそういう気がしないではないですが,データでみるとどうなのでしょう。教員の勤務時間は全労働者に比してどうなのか。差の程度は,他国に比して大きいのか,それとも小さいのか。2つの国際調査のローデータから,この問いに答えるデータを作ってみました。今回は,それをご覧に入れようと思います。

 私は,ISSPが2009年に実施した「社会的不平等に関する意識調査」のデータをもとに,男性のフルタイム労働者について,①週間の平均勤務時間と,②週60時間以上勤務している者の比率を計算しました。また,OECDの「TALIS 2013」のデータから,フルタイム勤務の男性中学校教員について,同じ2つの指標を出してみました。
http://www.issp.org/page.php?pageId=4
http://www.oecd.org/edu/school/talis.htm

 性別と勤務形態を揃えた比較です。本当は年齢も統制したいところですが,それは叶いませんでした。TALIS調査は十分なサンプルがあるのですが,ISSP調査はそうではないからです。

 日本の数値を示すと,週間の平均勤務時間は,男性の全労働者が52.1時間で,中学校の男性教員は55.4時間となっています。教員のほうが長いではありませんか。週60時間以上の長時間勤務者の割合は,全労働者が28.5%,教員が50.6%と,差がもっと大きくなっています。

 他の職業と比しても,教員のブラック度は際立っていますねえ。なにせ,週60時間以上の過労死レベルの勤務者が,全体の半分もいるのですから。

 ちなみに「全労働者 < 教員」という社会は,国際的にみたら珍しい部類です。下表は,教員と全労働者の勤務時間の差を,国ごとにまとめたものです。2つの指標の双方が分かる,23か国を観察対象にしています。


 どうでしょう。日本の勤務時間の長さが際立っていることはさておき,教員と全労働者の差という点でみても,わが国が特異であることが知られます。

 右端は,教員と全労働者の差ですが,多くの国でマイナス,つまり教員のほうが勤務時間が短い,ということです。日本の長時間勤務率は,50.6%という絶対水準もさることながら,国内の全労働者と比しても異常というほかありません。

 上表の数値を,グラフにしてみましょう。教員の勤務時間(週平均×長時間勤務率)の散布図は,昨日ツイッターで発信しました。日本の「ぶっ飛び」ぶりが明らかで,見てくださる方が多いようです。
https://twitter.com/tmaita77/status/826773909118652416

 同じグラフというのは芸がないので,教員と全労働者の「」の程度が視覚的に分かるものにしてみましょう。横軸に週平均の勤務時間,縦軸に長時間勤務者率をとった座標上に,主要先進国の全労働者と教員のドットを配置し,線でつないでみました。

 ●は中学校教員,〇は全労働者のドットです。


 グラフの見方は,お分かりですね。2つのドットをつなぐ線分が長いほど,教員と全労働者の差が大きいことを示唆します。

 線分が最も長いのは韓国ですが,差の向きが日本とは違っていて,教員の労働時間のほうが格段に短くなっています。この儒教国では,教員の社会的地位が高いのかしら。

 右肩上がり(教員 > 全労働者)の方向での差は,日本で明らかに大きくなっています。主要国だけでなく,最初の表の全ての国でみても同じです。

 日本の教員の勤務時間は長く,国内の全労働者と比してもそうである。国際比較,国内比較の双方において,教員の悲惨さが浮き彫りになるわけです。

 日本の教員の皆さん。「生徒のためなら・・・」と,こういう異常な状態を受け入れるべからず。先生ご自身のみならず,未来の労働者である生徒たちのためにもです。最高レベルのブラック労働のモデルを,生徒に見せてはいけません。ブラック労働を厭わぬ精神を植え付けてしまうことになります。

 学校において,こういうよからぬ「隠れたカリキュラム」がないか,研究者は現場に足を踏み入れて明らかにする必要もあるでしょう。