2017年12月15日金曜日

職業別の生涯未婚率(2015年)

 2015年の『国勢調査』の抽出詳細結果(産業・職業)が公表されました。これをもとに,細かい職業中分類別の生涯未婚率を計算することができます。

 職業別の生涯未婚率は,2012年の『就業構造基本調査』をもとに出したことがあります。下記リンク先の記事ですが,本ブログで最も読まれています。結婚しづらい職業は? こういう関心があるのでしょうか。
http://tmaita77.blogspot.jp/2014/02/blog-post_9.html

 3年を経た2015年の『国勢調査』のデータでは,どういう結果になるでしょう。それをご覧に入れようと思います。

 生涯未婚率とは,字のごとく生涯未婚にとどまる人の割合のことで,統計上は,50歳時点の未婚率とされます。この年齢以降は,結婚する人はほぼ皆無であろう,という仮定を置くわけです。

 5歳刻みの官庁統計から生涯未婚率を出す場合,40代後半と50代前半の未婚率を平均する,という便法がとられます。全職業の男性就業者でいうと,40代後半の未婚率は21.6%,50代前半は16.6%ですから,両者を均して生涯未婚率は19.1%となります。女性は14.1%となります。男性のほうが高いのですね。

 これは全就業者の生涯未婚率ですが,職業別にみると,値にはバラツキがあります。男女差の傾向も違っています。

 下記サイトの表7のデータをもとに,57の職業に従事する男女の生涯未婚率を計算してみました。配偶関係不詳者を分母から除いて出した,40代後半と50代前半の未婚率の平均値です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001097278&cycleCode=0&requestSender=search

 40代後半~50代前半の就業者が1000人に満たない職業は計算を見合わせ,「**」としています。


 25%(4人に1人)を超える数値には,黄色マークをしました。男性のマックスは包装従事者で63.2%で,女性は著述家・記者・編集者で35.4%となっています。男性は労務職,女性は専門職で生涯未婚率が高い傾向にあります。

 うーん,私が関わった女性編集者さんには,未婚の方が結構いるような…。

 右端の数値は,女性の生涯未婚率が男性の何倍かを表す倍率です。赤字は1.5倍超ですが,管理職や専門職で「男性<女性」の度合いが高くなっています。研究者もジェンダー差が大きく,男性は13.3%であるのに対し,女性は26.3%です(2倍)。

 上表のデータをグラフにすると,生涯未婚率のジェンダー差の構造が分かりやすくなります。横軸に男性,縦軸に女性の生涯未婚率をとった座標上に,双方が分かる52の職業のドットを置いてみましょう。


 斜線は均等線で,このラインより上にある職業は,生涯未婚率が「男性<女性」であることになります。

 赤枠の内部にあるのは,女性の生涯未婚率の絶対値が高く,かつ性差が大きい職業です。著述家,編集者,アーティスト,研究者…。高度な専門性を要し,多大なコミットメントを求められる職業ですが,家庭との両立が難しい現実もあるでしょう。

 ちなみに,2012年の『就業構造基本調査』では「医師」という職業カテゴリーがありましたが,この職業の生涯未婚率の性差は非常に大きなものでした(冒頭のリンク先記事参照)。2015年の『国勢調査』では,医師の生涯未婚率のジェンダー差が見れないのが残念です。

 その代わりといっては何ですが,教員に注目してみましょう。教員も高度専門職で,生涯未婚率は男性より女性のほうがかなり高くなっています(男性10.5%,女性17.0%)。教員の激務はよく指摘されますが,女性にあっては,親のサポートが得られるなどの条件がない限り,家庭との両立は甚だ困難である面もあるでしょう。

 ところで,教員の生涯未婚率は県によって大きく違っています。2015年の『国勢調査』では,職業別の生涯未婚率を都道府県別に計算することができます。下表は,教員男女の生涯未婚率を高い順に並べたランキング表です。


 女性教員の生涯未婚率のトップは,わが郷里の鹿児島ではないですか。3割を超えています。中学の時,「小学校の先生になりたい」と言った女子生徒に,担任が「ヨメの貰い手がなくなるぞ」と言い放ったのを思い出します。

 その一方で,当県の男性教員の生涯未婚率は7.2%。差が大きいですねえ。同じ九州の長崎は性差がもっと激しく,男性は最下位なのに,女性は3位です。女性教員の生涯未婚率は,男性の5倍以上です。

 「女性教員の生涯未婚率/男性教員の生涯未婚率」の倍率を地図にすると,地域性が浮かび上がります。2倍未満,2倍以上3倍未満,3倍以上の3段階で,47都道府県を塗り分けると,以下のようになります。


 むうう。九州県の多くが濃い色で染まっています。トップの長崎は5.3倍,郷里の鹿児島は4.3倍…。

 男性教員は結婚しやすいが,女性はその逆。九州では,家庭生活において女性にかかる負荷が大きく,教員という激務の職業と「妻」の二足の草鞋を履くのが困難ということか。女性教員の側も,そんな生活は願い下げと思っているのかも。

 最近の世論調査をみると,性別役割分業意識は九州はさほど強くなく,「九州は男尊女卑」ってのは昔のことで,今は変わった。こんなふうに言われますが,上記のような統計をみると,「まだまだ」っていう感じかなあ。

 口先の意見ではなく,実際にどういう行動をとっているか。本ブログで繰り返しデータを示したように,男性の未婚率は所得とマイナスの相関,女性はプラスの相関関係にあります。職業別の散布図のグラフ(2番目)からも,それはうかがえるでしょう。

 人間の行動は,とても正直です。世論調査の時系列データでもって,「性役割意識はかなり薄くなった」といわれますが,男女の結婚行動を子細に観察すると,上記の通りです。

 人がどういう動いているかという事実(fact)に注目することの重要性を,強調しないわけにはいきません。

2017年12月9日土曜日

教員給与の段階比較

 「新しい経済政策パッケージ」なるものが閣議決定されました。
http://www5.cao.go.jp/keizai1/package/package.html

 目玉は,幼児教育と高等教育の無償化です。前者についていうと,3~5歳の幼稚園・認可保育所の費用は一律無償,3歳未満は非課税世帯に限って無償にするそうです。ここにかなりの財源が投入されるのですが,懸案の保育士の給料はというと,月額3000円上がるだけ…。

 うーん。待機児童問題の原因は保育所不足,保育所不足の原因は保育士不足,保育士不足の原因は生活が成り立たぬほどの超薄給であること。すっかり知れ渡っていることですが,この部分を蔑ろにしていいものか。保育所を無償にしても,入れなければどうしようもないですからね。

 データを出すのも嫌になりますが,2016年の厚労省『賃金構造基本統計』によると,保育士の所定内平均月収は21.6万円で,46.7%,半分近くが月収20万円未満となっています。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html

 この手のデータは至る所で提示されますので,「そんなもんだろう」という感覚が定着してしまっていますが,他の段階の教員給与と比較することで,その異常性を改めて浮き彫りにしてみましょう。

 幼稚園から大学までの各段階の教員給与は,文科省『学校教員統計』から知ることができます。最新の2016年度の統計から,平均月収と月収20万未満の者の割合を拾ってみます。ここでいう月収とは,諸手当は含まない本俸額です。高校以下のデータは,下記サイトの表15から拾うことができます。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001094519&cycode=0

 下表は,採取したデータの一覧表です。


 想像通りですが,上の段階ほど給与は高くなります。しかし,就学前と初等・中等教育の段差が大きいですねえ。平均月収は10万円以上,月収20万未満の薄給率に至っては全然違います。

 教員の年齢構成や学歴構成などの違いにもよるでしょうが,この落差はひどい。人格の礎が築かれる時期の教育(保育)には,高い専門性が求められるはず。にもかかわらず,ここまでの給与差があるのはどういうことか。

 上表のデータを二次元グラフにすると,就学前教育段階の外れっぷりがよく分かります。


 最も悲惨なのは,創設されて間もない認定こども園(幼保連携型)。そして,幼稚園と保育所が近い位置にあります。

 保育士の薄給問題に隠れて,あまり取り沙汰されることはないのですが,幼稚園教員の待遇の悪さも際立っています。幼稚園は,3歳から5歳の幼児の教育を行う「学校」ですが,そこで働く教員の大変さもよく言われます。小学校にもまして,モンスター・ペアレンツの出現度が高いとか…。

 それにもかかわらず,上図から分かるように,待遇は劣悪。そのせいかは分かりませんが,幼稚園教員の病気離職率は,小学校以降の段階に比して,各段に高くなっています。以下の表は,6つの段階の病気離職率です。2015年度間の病気離職者数を,同年5月時点の本務教員数で除して算出しました。前者の出所は『学校教員統計』(2016年度),後者は『学校基本調査』(2015年度)に出ています。


 あまり強調されることはないのですが,教員の問題が最も深刻なのは,就学前段階かもしれません。

 ここでご覧に入れたデータから,初等以降の段階に比して,想像以上の薄給であることが分かってしまいました。富裕層を優遇することにもなりかねない一律無償化よりも,保育士や幼稚園教員の待遇を改善し,待機児童問題の解消や「質」の担保に重点を置くべきかと思います。

 日本の高等教育費の対GDP比が低いのはよく知られていますが,就学前教育費の対GDP比も低し。2014年の国際統計によると日本は0.24%で,OECD加盟国では下から4番目です(OECD平均は0.84%)。
http://www.oecd.org/edu/education-at-a-glance-19991487.htm

 消費税アップで得られる財源を教育振興に充てるのは結構ですが,優先順位を誤らないようにしていただきたいと思います。

2017年12月5日火曜日

女子の理系タレントの活用度

 日本は,リケジョが少ない国であることは,もうすっかり知れ渡っています。自然科学・数学専攻の高等教育機関入学者に占める女子比は,2015年でみるとわずか25%,4人に1人です。
http://www.oecd.org/edu/education-at-a-glance-19991487.htm

 国際的にみて,日本は女子の理系学力が高いのに,これはどうしたことか。異国の人からすれば甚だ疑問のようで,OECDのスキル局長は,理系の成績が優秀な「女子生徒が理系を志望しないことが問題」と指摘しています。
http://benesse.jp/kyouiku/201710/20171018-1.html

 そうですねえ。たとえば,理科の成績が優秀な高校生を取り出し,男女の内訳を観察してみると,そんなに大きな偏りはありません。OECD「PISA 2015」において,科学的リテラシーの成績が優秀な15歳生徒(習熟度レベル5・6)の性別内訳は,男子が59%,女子が41%です。
https://nces.ed.gov/surveys/international/ide/

 にもかかわらず,理系専攻の大学入学者の女子比は,冒頭で記したように25%でしかないと。女子の理系タレントがフル活用された場合の期待値(41%)より,だいぶ低くなっています。

 しかし,他国はさにあらず。日本と北欧のノルウェーを対比してみると,下図のようになります。


 理科が得意な生徒の性別構成は,日本もノルウェーも同じです。しかしながら,理系の大学入学者のそれは大きく違っている。日本は「3:1」ですが,ノルウェーはちょうど半々です。ノルウェーでは,期待値を上回ってすらいます。

 なるほど。OECDの局長が言うように,日本では,理系の成績が優秀な女子生徒が「理系を志望しない」というのは,確かなようです。上記は日諾比較ですが,比較の対象を増やすと,日本の特異性が分かってしまいます。

 以下に掲げるのは,横軸に理科が得意な15歳生徒の女子比,縦軸に理系専攻の高等教育機関入学者の女子比をとった座標上に,OECD加盟の26か国を配置したグラフです。米仏は,縦軸のデータが得られないので,分析対象に含めていません。


 ご覧のように,日本は諸国の群れから外れた位置にあります。縦軸の値が極端に低いからです。理科が得意な高校生の女子比は中ほどですが,理系の大学入学者のそれは,他国と大きく水を開けられています。

 図の斜線の数値は,縦軸の値が横軸の何倍かという倍率です。この値が高いほど,女子の理系タレントが活用されていることになります。

 1.0は,女子高生の理系タレントがフル活用された場合の期待値ですが,これを大幅に下回っているのは日本だけです。横軸が41%,縦軸が25%ですので。

 他の国はいずれもこのラインよりも上にあり,ポルトガルなどの4国は1.5倍以上です。ポルトガルは,理科が得意な生徒の女子比は35%ですが,自然科学専攻の大学入学者の女子比は59%にもなります。わが国と全然違いますね。

 女子の理系タレントの活用度を可視化すべく,この倍率が高い順に26か国を並べてみましょう。


 何も言いますまい。日本の活用度は最下位,裏返すと浪費度がダントツでトップです。

 昨日のニューズウィーク日本版に「イスラム圏にリケジョが多い理由」という記事が載っています。答えはズバリ,試験の成績によって専攻が(機械的に)振り分けられるからだそうです。
https://twitter.com/noguchi_y/status/937658966976466944

 極端な話,日本もこうすれば,リケジョが増えることは間違いありません。しかしこれは当人の意向を無視することで,現実の選択肢としてはあり得ないでしょう。

 やはり内発的なアスピレーションそのものを高めないといけないのですが,理系教科ができる女子を特別視しなこと。まずは,これに尽きます。

 それと,進路選択を控えた中高生の女子生徒に,リケジョの役割モデルを見せること。そのための一番の戦略は,中高の理系教員の女性比率を高めることです。日本は,この部分でも弱い。
http://tmaita77.blogspot.jp/2014/06/blog-post_28.html

 理科・数学教員の女性比率と,女子中学生の理系職志望率の間に相関関係がみられるか。『全国学力・学習状況調査』のデータに設問をちょっと潜ませ,学校単位・市区町村単位のデータで分析してみるのもいいと思いますが,どうでしょうか。