2017年7月15日土曜日

子どもの読書実施率の変化

 2016年の『社会生活基本調査』のデータが公表されました。本調査は,生活行動の調査と生活時間の調査の2本立てからなり,昨日公表されたのは前者のデータです。
http://www.stat.go.jp/data/shakai/2016/kekka.htm

 生活行動調査は,過去1年間に**をやった人が何%か,というものです。生活時間調査では,**の1日あたりの平均時間は何分か,という数値が示されます。後者の結果公表は,9月とのことです。

 今回は,生活行動調査のデータ分析の第一報といきましょう。テーマは,タイトルにあるように,子どもの読書実施率の変化です。学校に在学している児童・生徒・学生のうち,過去1年間に,趣味としての読書をした者は何%か。各地で子どもの読書活動推進に向けた取組がされていますが,その成果を数値で垣間見てみましょう。

 ここでみるのは,趣味としての読書ですので,自発的な意志によるものに限られます。よって,学校の朝の10分間読書のような,強制的な意味合いのものは含まれないと思われます。

 小・中・高校生とその他の在学生(≒大学生)の,趣味としての読書実施率(過去1年間)を,2006年調査と2016年調査で比べてみます。結果をシンプルなグラフでお見せしましょう。


 どの段階の読書実施率も,この10年間で下がっています。上の学校ほど減少幅が大きく,高校生はマイナス5.6ポイント,大学生はマイナス9.7ポイントです。10年前は,小中高と大学の間に落差があり,「さすがは大学生」という感じだったのですが,今では大学生と小学生が接近してしまっています。

 まあ,ネットのニュースやブログなどで知識を得る者が増えたこともあるでしょうが,それらは薄っぺらであるのがしばしば。私は4月に,プレジデント社とケンカ別れしましたが,この会社の紙の雑誌(書籍)とネットニュースの温度差があり過ぎることを,肌身で感じました。
http://tmaita77.blogspot.jp/2017/04/blog-post.html

 深み(厚み)のある本を読まない。お手軽なネットニュースのリード文だけみて,意見を形成してしまう。これでは,物事を深く考える習慣はつきますまい。かくいう私も,今は1日の大半をパソコンの画面に向かって過ごしており,学生時代に比して読書時間はうんと減りました。夜の8時以降は,ツイッターは止めにして本を読もうと考えているのですが,なかなかできない…。ヤバいなと思っています。

 これは全国の数値ですが,様相は地域によって違います。都道府県別にみると,全国的傾向とは裏腹に,子どもの読書実施率が上がった県もありますし,全国データよりも減少幅が大きい(残念な)県もあります。

 私は,小・中・高校生の読書実施率が,2011年と2016年でどう変わったかを,都道府県別に調べました。先ほどと同じく2006年と2016年の比較をしたいのですが,2006年の県別データを揃えるのはちょっと厄介なようですので,ここ5年間の変化を見る,ということでお許しください。

 下表は,結果の一覧です。黄色マークは47都道府県の最高値,青色は最低値です。赤字は,上位5位を意味します。


 子どもの読書実施率には,かなりの地域差があります。2016年のデータをみると,小学生は34.7%~54.7%,中学生は33.5%~59.6%,高校生は29.1%~56.7%,のレインヂです。

 小学生(10歳以上)をみると,秋田と福井は低いのですね。2016年調査に載っている,過去1年間の読書実施率は,秋田が35.4%,福井が34.7%で,ワースト2になっています。子どもの学力上位県ですが,これは意外。秋田では,「自宅学習ノート」という宿題に時間を取られているのではないか,という意見がありましたが,そうなのでしょうか。
https://twitter.com/jmx_shima/status/885977423795204096

 私が住んでいる神奈川は,読書県なのですね。赤字が多くついています。小・中・高とも,この5年間で減っているのが気になりますが。

 全国統計では,この5年間でどの段階の読書実施率も減っていますが,それとは逆の県もあります。小学校でいうと,13の県で率が上がっています。それが最も顕著なのは岡山で,44.2%から53.5%への増です。

 この県の取組をちょいと拝見すると,本を読むたびにシールを貼れる「読書手帳」を小中学生に配布するなど,ユニークな実践をしています。「読書手帳は,素敵な本との出会いを記録していくもの」。年少の児童は収集癖があるのですが,そういう心理を突いているなと思います。
http://www.pref.okayama.jp/site/16/462779.html

 上記の表は,各県の読書活動推進政策の成果を見て取る,参考資料としてご覧ください。最後に,県別の小学生の読書実施率をグラフで「見える化」しておきましょう。横軸に2011年,縦軸に2016年の実施率をとった座標上に,47都道府県を配置してみました。


 細い斜線は均等線で,この線より上にある県は,この5年間で小学生(10歳以上)の読書実施率が上がった県です。先ほどみた岡山は,このラインとの垂直距離が最も大きくなっています。

 しかるに,数としてはこの線よりも下,つまりこの5年間で読書実施率が下がった県が多くなっています。太い斜線(Y=X-10)より下の黄色ゾーンにあるのは,10ポイント以上下がってしまった県です。静岡は最も下落が大きく,61.6%から38.2%と,23.4ポイントの減なり。

 上記の図にすると,自県の現在の相対位置と,過去5年間の変化位置が分かりやすいかと存じます。

 ちなみに,各県の読書実施率は,県民所得や住民の階層構成といった,社会経済指標とは無相関です。これは,各県の政策によって,子どもの読書実施率を高めることができるという,希望的事実です。

 間もなく夏休みですが,子どもが本を取るように仕向けたいもの。宿題をちょっと少な目にしたっていいでしょう。8月3日に刊行される,拙著『データで見る・教育の論点』(晶文社)は,中高生にも読んでもらえたらなと思います。難しい理屈や数式を並べ立てた本ではありません。四則演算しか使ってませんので,中学校レベルの数学力で十分理解できる内容です。社会現象を数で可視化する。数学(算数)と社会の総合学習の手引きとしても使えます。どうぞ,お手に取ってください。

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