2017年5月27日土曜日

年少児童の生活格差

 学齢期では子どもはみんな学校に通いますが,その前の乳幼児期はそうではありません。幼稚園に通う子,保育所に通う子,そのいずれでもなく家庭で保育される子もいます。

 身体も発育はもちろん,自我も未熟で自分で行動範囲を広げることもままならないので,生活の大半を家庭で過ごすことになり,それだけに,生活の有様は親の意向や考え方の影響をもろに受けることになります。家庭環境による生活習慣の格差も,学齢期以降の段階に比してひときわ大きいことでしょう。

 兵庫県の学校歯科検診で,虫歯が10本以上あるなど「口腔崩壊」状態にある児童生徒が346人もいた,という記事が話題になっています。貧困や家庭環境とリンクしている可能性もあるとのこと。
http://www.sankeibiz.jp/econome/news/170525/ecb1705251541001-n1.htm

 貧困と虫歯の関連は,東京都内23区の地域統計を使って明らかにしたことがありますが,年少の児童ほど,両者の結びつきは強くなっています。地域の平均世帯年収との相関係数は,学校に上がって間もない1年生の虫歯率がマックスです。就学前の生活格差の影響が残存しているためでしょう。

 就学前の乳幼児期の生活格差を明らかにしたい。こういう問題に接近する場合,学校に上がって間もない小学校1年生の調査データに着目するのも一つの手です。

 東京都は毎年6月に,独自の体力・運動能力・生活習慣調査を実施しており,結果は地域別・学年別に公表されています。最新の2016年度調査のデータにて,小学校1年生の生活習慣の地域差をみてみましょう。入学して2か月しか経っていない時点の調査データですので,就学前の生活習慣の地域格差がかなり反映されていると思われます。
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/pickup/28sporttest.htm

 テレビなしいは携帯(スマホ)等を1日2時間以上視聴する児童の割合を都内23区別に整理すると,下表のようになります。男子と女子で分けて%値が出ていますので,男子の数値を採取しました。


 学校に入って間もない小学校1年生男子のデータですが,区によってずいぶん違いますね。黄色マークは最高値,青色マークは最低値ですが,テレビの長時間視聴率は14.0%~35.9%,携帯等のそれは3.2~8.7%のレインヂがあります。

 乳幼児期にこういうメディアに頻繁に触れさせることには賛否両論がありますが,諸外国では,6歳以下の時期にスマホを使い始めたという子どもが,日本に比して格段に多くなっています。また,早い時期にコンピュータを使い始めた子どもほど学力が高い,というデータもあり。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=9179

 使い方を誤りさえしなければ,幼子の知育を促進するツールにもなるでしょうが,そうでない場合は困る。惰性にかまけて,四六時中スマホを握らせっ放しというのはよろしくありません。

 ちなみに上表の長時間メディア視聴率の地域差は,偶然の差ではなく,傾向性のようなものを持っています。それを見て取るのは,地図にするのが一番。テレビの長時間視聴率を地図に落とすと,以下のようになります。


 色が濃い区が固まっています。北部から北東部です。対して,中心エリアは色が薄くなっています。明らかに地域性があることがうかがえます。

 土地勘のある人はピンとくるでしょう。住民の階層構成との関連です。先ほどの表には,その指標として各区の平均世帯年収と住民の高学歴人口率も載せました。前者は2013年の『住宅土地統計』,後者は2010年の『国勢調査』から計算したものです。

 小学校1年生男子の長時間テレビ視聴率を,住民の大卒・大学院卒人口率と関連付けてみると,下図のようになります。


 2つの指標の間には,非常に強い負の相関関係が見受けられます。相関係数は-0.9214にもなります。スゴイですねえ。

 右下の区では,塾通いをしている幼児が多いことも考えられますが,分別を持っている親御さんが多いのかもしれません。平均世帯年収との相関係数は-0.873であり,年収よりも学歴要因と強く相関しています。

 携帯等の長時間視聴率も同じで,年収との相関係数は-0.699,高学歴率とは-0.846で,こちらも経済要因より学歴(文化)要因との相関が強くなっています。親の意識や考え方の影響が大きい,ということでしょう。

 これは就学し始めて間もない小学校1年生のデータで,学年を上がるにつれ,こうした地域の社会経済要因との関連は薄くなってきます。学校で保健指導などを受けることで,当人だけでなく保護者の意識の啓発もなされるでしょう。

 ですが,幼少期の生活格差の影響をとどめている1年生の断面でみると,こうも明瞭な「生活格差」が出てくることに驚きます。学校に通い始めると幾分か縮まるとはいえ,これは惨い。「三つ子の魂百まで」という格言はあまり信じませんが,人格の礎が築かれる幼少期の生活の歪みは,長く尾を引く可能性もある。

 冒頭で述べたように,乳幼児の生活の様は,学齢期にもまして,家庭環境の影響を強く被ります。健診や保護者に対する保健指導などを,もっと密に行うことも求められるでしょう。野放しにするのはよくありません。

2017年5月24日水曜日

学歴別の喫煙率

 5月10日の朝日新聞Web版に「喫煙率,学歴によって差 若者でくっきり」という記事が出ています。
http://www.asahi.com/articles/ASK596HZYK59UBQU00L.html

 結果は,低学歴層ほど喫煙率が高いというもの。情報や環境の面で格差があるのでは,という識者のコメントが紹介されています。なるほど,喫煙の害に関する知識の差かもしれません。

 2010年の『国民生活基礎調査』のデータのようですが,もっと新しい2013年調査から同じデータを作ることができます。報告書には載っていない内部保管統計が,ネット上では公開されています。下記リンク先の表24です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001119778

 中卒,高卒,大卒の3つの群について,毎日喫煙する者が何%かを年齢層別に計算し,グラフにしてみましょう。%の算出に際しては,喫煙状況が不詳の者は分母から除外したことを申し添えます。

 以下に掲げるのは,3つ群の毎日喫煙率の年齢曲線です。


 違うものですねえ。若年層では「中卒>高卒>大卒」という傾向がくっきりと出ています。30代後半では,中卒が58.5%,高卒が37.0%,大卒が19.0%と,差が凄まじい。

 しかし,こうした差も年齢を上がるにつれて縮まり,60代後半になるとほぼ同じくらいに収束します。昨日,同じグラフをツイッターで発信したところ,この収束現象に興味を持たれた方が多いようです。

 なぜ,高齢層になると学歴差が収束するか? 出された説は,大よそ以下の2つです。

 ①:年齢を上がるにつれ,健康を意識するようになる。
 ②:喫煙者(とくに低学歴層)は死亡率が高い。

 どちらも「なるほど」という感じですが,②はぞっとさせられますね。死亡率の学歴差はあるかもしれない。喫煙率の高い中卒者は,大卒者よりも死亡率が高い。これは想像に難くありません。

 学歴別の死亡率をはじき出せる統計資料はありませんが,同一世代(コーホート)の学歴別人口が加齢に伴いどう変わるかを追跡することで,この点の参考資料を得ることはできます。

 下の表は,量的に多い団塊世代について,30代前半から60代前半までの人口変化を学歴別に跡付けたものです。基幹統計の『国勢調査』では,西暦が「0」の年の大調査で学歴も調べています。1980年,1990年,2000年,2010年の4時点をつなぎ合わせてみました。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL02100104.do?tocd=00200521


 同一世代の人口変化ですが,不幸にして命を落とす者がいるため,どのグループも加齢に伴い減っていきます。大卒・院卒の群では30代前半から40代前半にかけて微増しますが,これは大学院の修了者が新たに加わるためでしょう。

 しかるに,減少の程度は学歴によって違います。下段の指数にて30代前半と60代前半を照合すると,大卒では1割ちょっとしか減ってませんが,中卒では3割も減じています。267万人から189万人に減です。

 中卒の喫煙者が命を落とすため,喫煙率の学歴差が60代あたりで収束する。こういうことかもしれませんね。まあこれはマイナー要因で,メジャー要因は上記の①でいわれているように,加齢に伴い健康を意識する人が増えるからでしょうけど。

 ともあれ,社会的に不利益を被りやすい層に,健康指導(支援)の重点を置く必要があるのは確かでしょう。とくに重要なのは,喫煙の害などの知識の啓発,健康診断の情報提供だと思います。各種の縁から断絶され,孤立状態の人が多いわけですから。

 まあ私も,どの組織にも属さず,かつ独り身の風来坊ですけど,毎年役所から無料健康診断のお知らせが来ることに安心感を覚えています。これがなかったら,結構ヤバいかもしれない。

 就業状態,家族状態,所得などの情報から要注意層を割り出し,重点的に健康診断等のインフォメーションを送ることがされてもよいでしょう。役所はこういう情報を持っているわけですから,その気になれば簡単にできるはずです。

 各人の自発意志に委ね,結果も自己責任というのはあまりにも冷たい。行政に求められるのは,要注意の対象者に積極的に寄り添っていく「アウトリーチ」の構えです。

2017年5月22日月曜日

あなたの世帯の貯蓄額はどの辺りか?

 先行き不透明な時代にあるためか,せっせと貯蓄に励む世帯が増えていると聞きます。

 20歳そこそこの学生に「俺らの頃は,年金もらえるんでしょうか?」と真顔で訊かれ,「今からそんなこと考えるな」とたしなめたことがありますが,社会人になった彼も,お給料の一部は貯金しているのでしょう。

 私はというと,収入は少ないですが,貯蓄は結構あるほうかなと思います。意識して貯め込んでいるわけではないですが,濫費をしないので自ずと貯まる。洋服なんてここ5年くらい買ってませんし,レジャーにしても週に1回(平日),電車に乗って近場に繰り出すくらいです。人付き合いをしないので,交際費もゼロ。

 これは私の主観ですが,同年代の貯蓄額分布の中で自分はどの辺りかを知りたくなりました。2013年の『国民生活基礎調査』のデータをもとに,世帯主が40代の世帯の貯蓄額分布をとると以下のようになります。
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-21.html


 貯蓄額が分かる1393世帯の分布ですが,貯蓄ゼロの世帯が最も多くなっています。多くが単身世帯でしょう。その次は,500~700万円の階級となっています。

 なるほど,自分の位置が分かりました。他の年代はどうかも知りたいですが,上記のような細かい階級の分布を逐一とるのは煩雑です。そこで,簡易な四分位値を求めることにしましょう。

 全体を4つに等分する値で,Q1(25%値=75位),Q2(50%値=50位),Q4(75%値=25位)の3つです。Q2は,いわゆる中央値に相当します。

 右端の累積相対度数をみると,Q1は50~100万円,Q2は300~400万円,Q3は700~1000万円の階級に含まれることが分かります。按分比例の考えを使って,それぞれに該当する値を見積もってみましょう。

 Q1 (25.0-22.8)/(27.8-22.8)=0.438
    50.0万円+(50.0万円×0.438)=71.9万円
 Q2 (50.0-45.5)/(53.1-45.5)=0.590
    300.0万円+(100.0万円×0.590)=359.0万円
 Q3 (75.0-70.1)/(78.0-70.1)=0.622
    700.0万円+(300.0万円×0.622)=886.5万円

 世帯主が40代の世帯を貯蓄額が高いほうから並べたとき,Q3(25位)は886.5万円,Q2(50位=真ん中)は359.0万円,Q1(75位)は71.9万円,となるようです。

 貯蓄が886.5万円以上ある世帯は上位25%に入っていて,71.9万円に満たない世帯は下位25%未満であると。

 この四分位値は,個々の世帯の貯蓄額がどの辺りかを判別する目安になります。世帯主の年齢層別に,Q1~Q3の値を出してみました。また,男女の単身世帯だけを取り出した場合,どういう値になるかも計算してみました。下表は,その一覧です。


 どうでしょう。私は40代の男性単身世帯(赤色)ですが,Q1が19.6万円,Q2が277.3万円,Q3が971.9万円となっています。Q2とQ3の落差が大きいですねえ。一部の世帯がガッツリ貯め込んでいるってことです。私は,この2点の間です。

 世帯主が60代の総世帯でみると,Q2が667.2万円,Q3が2067.4万円です。退職して間もない年代で,退職金がガッポリ口座に入っているためでしょうが,くれぐれも振り込め詐欺などにはご注意を。

 上記の表は,あなたの世帯の貯蓄額が全体のどの辺りかを判別するのに使えます。その気になれば5分位値,10分位値なども出せますが,今回はラフな四分位値ということで…。

 個人の年収についても,こういう診断表を作るといいかもしれませんね。按分比をとる階級が層によって違うので計算に手間がかかるのですが,調査統計法の作業課題として,学生さんに分担させるのもいいのでは。これぞ,アクティブ・ラーニング! 高校でも,比を教える単元の題材としてもってこいでしょう。

2017年5月19日金曜日

パチンコ実施率の変化

 多くの人が何らかの趣味や娯楽を持っていますが,どういうものが好んでされるかは,時代と共に変わっているでしょう。

 総務省『社会生活基本調査』で,いろいろな趣味・娯楽の実施率の変化をとってみたのですが,過去20年間の変化が最もドラスティックなのはパチンコです。

 1991年と2011年の年齢層別の実施率がどう変わったかをグラフにすると,以下のようになります。調査実施時期から遡って1年間の間にパチンコをしたという人の割合です。


 20~40代の低下がスゴイですね。20代前半では,37.8%から12.9%と,3分の1近くに減っています。若者の「パチンコ離れ」とはよく言ったものです。

 その要因については,1)スマホゲームなどの普及,2)自由に使えるお金の減少,3)自由時間の減少,といったことがいわれています。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kodamakatsuya/20160512-00057599/

 なるほど。若者の給料は減ってますからねえ。前回みたところによると,20代前半の正社員の年収中央値は250万円弱です。沖縄に至っては185万円。正社員でこれです。非正規も含めたら,もっと少なくなります。

 おカネだけでなく,自由に使える時間(ゆとり)も減っているでしょう。昨今の人手不足もあって,ピチピチの若年労働者は馬車馬のようにこき使われていますから。

 20代前半には学生も多く含まれますが,彼らとて,昨今の締め付けにより大学等の出席管理も厳しくなっています。私の頃は,大学をサボって1日中パチンコに入り浸る猛者もいましたが,最近はそういう学生も減っているでしょうねえ。学生に「君たちはパチンコとかしないの?」と訊いたことがありますが,「そんなのするヒマないっすよ」と返されたのを覚えています。ああ,学費稼ぎの長時間バイトも増えているんでしたね。
http://tmaita77.blogspot.jp/2017/05/blog-post_7.html

 60歳以上の高齢層は,これら3つのファクターと無縁なためか,パチンコの実施率はこの20年間でさほど変わっていません。65歳以上では,若干増えてもいます。しかるに実施率が高いのは若者ですので,この層が離れていくのは,業界にとってかなり痛手でしょう。

 なお,パチンコの実施率には地域差もあります。25~34歳のパチンコ実施率を都道府県別に計算し,4つの階級で塗り分けたマップにしてみました。以下に掲げるのは,1991年と2011年のマップです。


 全国的に地図の模様が薄くなっています。1991年ではほとんどの県が3割以上でしたが,2011年では2割未満の県が大半です。全国的に,若者の「パチンコ離れ」が進行していることが知られます。

 まあ,若者の「**離れ」というのは,ほとんどが「おカネの若者離れ」に起因しているのも否めません。声高には言えませんが,カネがなければ趣味や娯楽もそうできません。

 ある方がツイッターで,「高齢者にカネをばらまくより,消費意欲旺盛な若者にお金を渡したほうが,景気がよくなっていいんじゃないか」という趣旨のことを言われてましたが,そんな気もします。前回みたところによると,20代前半の若者の年収中央値はたった250万円ほど。これでは生活に精一杯で,遊びにカネを回すのは難しい。

 2016年に実施された『社会生活基本調査』のデータが間もなく公開されると思いますが,実施率の年齢カーブはもっと下に下がり,地図もさらに薄くなっていることでしょう。社会の変化といえばそれまでですが,経済的逼迫,時間的ゆとりの減少によって,若者のせっかくの消費性向が抑えつけられている。パチンコ実施率の変化から,こういうことも見て取る必要があるでしょう。
 
 2011年の若者のパチンコ実施率の県別一覧表は,昨日ツイッターで発信しました。リンクを貼っておきます。興味ある方はどうぞ。傾向としては,他の娯楽が多い都市部では低いようです。沖縄が低いのはなぜなのか…。
https://twitter.com/tmaita77/status/865171236774592512

2017年5月14日日曜日

20代前半の正社員の年収中央値

 沖縄が本土に復帰したのは1972年。今年で復帰45年になるわけですが,様々な面で本土との格差が大きいのはよく知られています。

 復帰45年という節目を迎えるにあたって,沖縄タイムスが行った調査によると,本土との格差を感じている県民が多し。どういう面の格差を問題視するかは世代差があり,年輩層は基地問題ですが,若年層は「所得」の格差を一番の問題と挙げているそうです。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170513-00097113-okinawat-oki

 沖縄の所得水準が低いのはよく知られていますが,若年層に限るとそれはいっそう際立つでしょう。正社員でも平均年収が200万いかないと聞きますが,本当でしょうか。

 昨日,2012年の『就業構造基本調査』から,20代前半の正規職員の平均年収を都道府県別に計算してみました。その結果によると沖縄は190.5万円で,確かに200万円を下っています。全国的な感覚でいうと,いわゆる「ワーキング・プア」に入るレベルです。

 全国値は255.5万円,マックスの東京は280.6万円。なるほど,本土との開きは凄まじいものがあります。沖縄の若者が,本土との所得格差を問題視するのは当然といえましょう。

 このデータは,昨日ツイッターで発信しましたが,見てくださる方が多いようです。しかるに,平均値ではなく中央値で見たほうがいいのではないか,というご意見を多くいただいています。

 平均値と中央値。どちらもデータの傾向を端的に表す代表値ですが,平均値は一部の極端な値に引きずられる難点があります。年収の平均値(average)は,一部のスタープレイヤーによって釣り上げられている可能性が大です。

 そこで,データを高い順に並べたとき,ちょうど真ん中の中央値(median)で見たほうがよい,というご指摘ですが,ごもっともです。ではご要望にお応えし,20代前半正社員の年収の中央値を都道府県別に出してみましょう。

 『就業構造基本調査』には,年収の度数分布表が掲載されています。全国の20代前半正規職員のそれは以下のようになっています。年収が判明する218万6500人の分布です。本調査でいう年収とは,税金等が引かれる前の税込年収であり,手取り年収ではありません。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm


 200万円台前半が3割と,最も多くなっています。大学を卒業したばかりの年齢層ですから,こんなものでしょうか。

 この分布から,年収の平均値ではなく中央値を求めたいのですが,ちょうど真ん中に来る年収額はいくらでしょうか。右端の累積相対度数から,200~249万のどこかということは分かります。

 按分比例を考えを使って,ちょうど真ん中(累積相対度数=50%ジャスト)の値を見積もってみましょう。以下の2ステップです。
https://twitter.com/yjtmr/status/863739727102394369

 ① (50.0-22.6)/(53.3-22.6) = 0.892
 ② 200.0万円+(50.0万円×0.892) = 244.6万円

 全国の20代前半の正社員219万人を,年収が高い順に並べた場合,ちょうど真ん中に来る人の年収は244.6万円と推測されます。平均値(255.5万円)よりも低いですね。上述のように,平均値は一部のスターによって釣り上げられているためです。

 同じやり方にて,47都道府県別の年収中央値を出してみました。高い順に並べたランキング表を掲げます。


 どの県も,昨日ツイッターで発信した平均値より低くなっています。問題の沖縄はというと185.9万円,月収にすると15.5万円です。これは税込み額ですので,各種の保険を引かれた手取り年収はもっと少ないことになります。これはキツイ。物価の安さを勘案してもです。

 しかし沖縄だけでなく,全国的に低いですねえ。正社員でこれです。就職しても親元に居座り続けるパラサイト・シングルが増えているといいますが,致し方ないような気がします。若者の自立困難の原因を,「甘え」というような彼らのメンタリティに帰すのは間違いでしょう。実家を出て,一人暮らしするのも容易ではない。

 しからば,どういうことになるか。分かり切っているのは,未婚化の進行です。それと,新世帯を構えるのに必要な家電品の消費も冷え込むことから,景気も悪くなります。ある人がツイッターで言っていましたが,消費意欲旺盛な若者の給与を上げたら,さぞ景気は上向きになるのではないでしょうか。タンスにしまい込むだけの老人にお金を渡すより,ずっとプラスになるような気も…。

 若者を冷遇するのは,社会にとってもマイナスです。給与のテコ入れは難しいでしょうが,さしあたり,若者を対象とした,公営借家の供給増や家賃補助等の住宅支援を強化すべきでしょう。支出の大きな部分を占める住居費にテコ入れする。これだけでも,事態はかなり変わろうというものです。

 私はこれまで,若者の貧困の可視化として平均年収ばかりを出してきましたが,中央値もいいですね。ツイッターで意見を下さった方に,感謝申します。

2017年5月12日金曜日

結婚の損失の国際比較

 未婚化の原因には諸説がありますが,最近,次のようなことがよく言われるようになっています。「結婚すると稼げなくなるので,女性は結婚を躊躇う」と。

 女性の大学進学率が上がり,身に付けた知識や技術を活かしてガシガシ稼ぎたい,大学までの学費の元を取りたい…。こういう女性が増えていることを思うと,さもありなんです。

 結婚となると,自分が稼げなくなる分,相手の男性は稼げる人でないと困る。よって女性は男性に高い年収を求めざるを得ないのですが,このご時世,若い男性でそういう人は滅多にいない。ゆえに,条件のミスマッチから未婚化が進行する。声高には言われませんが,こういう事態になっているとも思われます。

 はて,これは他国でも同じなのでしょうか。最新のISSP国際調査(2014年)の個票データを使って,生産年齢の有業女性(in paid work)の収入を未婚者と有配偶者に分けて計算し,その差がどう違うかを国ごとに比べてみました。
http://www.issp.org/data-download/by-year/

 以下に掲げるのは,日本のデータです。日本は,年収を調査しています。


 ありがたいことに,各階級の階級値の統計表を得ることができます。150万円は100万円台,250万円は200万台…です。

 分布をみるとやはり未婚者のほうが稼いでいます。有業者といっても,夫がいる有配偶女性の場合,多くがパート・アルバイトといった非正規でしょう。

 上記の分布から平均値(average)を計算すると,未婚者が284.3万円,有配偶者が210.2万円です。どちらも絶対額が少ないことはさておき,未婚者のほうが高くなっています。その差は1.35倍なり。

 これは日本の未婚者と有配偶者の比較ですが,他国はどうなんでしょう。私は,主要7か国について上記の同じ統計表を作成し,それをもとに両群の平均収入を算出しました。日本とアメリカは平均年収,その他は平均月収です。


 どの国も,自由度の高い未婚女性のほうが稼いでいるかと思いきや,そうではありません。それに該当するのは日本とドイツだけで,残りの5か国は有配偶者のほうが稼いでいます。

 海外では,あまり稼ぎ過ぎると損をする「**円の壁」のようなものがないのでしょうか。従業地位の違い? 他国では,未婚女性より既婚女性のフルタイム(正社員)率が高い? それは考えにくいような…。

 ただ,結婚して子どもがいる女性でもバリバリ働ける条件が日本より整っているというのは,よく言われますよね。スウェーデンでは,保育所入所を希望する親に枠を用意するのは自治体の義務です。

 ①年齢をもっと狭く限定すべし,②子の有無を考慮すべし,③従業地位をフルタイムに統制すべし…。いろいろ難点のあるラフなデータですが,ISSP調査はサンプルが少ないので,細かい条件の統制は叶いません。

 日本の状況が普遍的でない可能性がある。一つの試算結果として,ここに載せておくことにしましょう。

2017年5月9日火曜日

貧困と高校生のバイト率の相関

 『国勢調査』の労働力状態の統計を使って,生徒・学生のアルバイト率を出せることを知りました。計算式は以下です。

 バイト率=通学のかたわら仕事/(通学のかたわら仕事+通学)

 何からの学校に通学している生徒・学生のうち,通学のかたわらで仕事(バイト)をしている者が何%かです。前回みたところによると,15~24歳の生徒・学生のバイト率は,データがとれる1980年以降の推移でみて,過去最高です。学生の生活困窮化の表れと思われます。

 今回は,地域別のデータをみてみようと思います。都道府県別は,都市県で高く地方県で低い構造は分かり切っていますので,飛ばしましょう。ここでは,東京都内23区の15~17歳の生徒のバイト率を計算してみます。高校生のバイト率です。

 仮説は,所得水準の低い区ほど高校生のバイト率が高い,というものです。

 2008年のリーマンショック以降,学費稼ぎのバイトに明け暮れる高校生の存在がメディアでクローズアップされ,2010年に公立高校の授業料が無償になりました。現在では,一定の所得以下の家庭の生徒に対し,就学支援金が支給される制度になっています。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/index.htm

 全日制高校の場合は月額9900円で,私立校にあっては,家庭の所得水準に応じて最大2.5倍まで増額されます。よく考えられた制度ですが,貧困とバイトの結びつきを解消するに至っているのかどうか。

 15~17歳の生徒(以下,高校生)のバイト率を,都内の23区別に出してみましょう。下記サイトの表1から。計算に使う数値を採取しました。ピンクの「DB」というボタンを押して,必要な変数だけを使ったクロス表を自分で作れます。便利なものです。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001085798&cycleCode=0&requestSender=search

 念のため申し添えますが,これは居住地に基づく統計であって,学校の所在地に基づくものではありません。


 同じ大都市のデータですが,高校生のバイト率は,最低の0.9%(千代田区)から最高の5.5%(足立区)までの幅があります。

 赤字は4%超の区ですが,墨田区,江東区,大田区,足立区,葛飾区,江戸川区が該当。23区の地図が頭に入っている人ならピンとくるでしょうが,明らかに地域性があります。

 上記の各区のバイト率を地図に落としてみましょう,4つの階級を設けて,23区を塗り分けてみました。


 東が軒並み濃い色に染まっており,中心部や西部は真っ白。都内23区を上から俯瞰してみると,高校生のバイト率には,ある傾向をもった地域差がありそうです。

 その傾向は,所得水準との相関です。2013年の『住宅土地統計』のデータを使って,23区の平均世帯年収を出したことがありますが(下記リンク先),この経済力指標との相関図を描くと下図のようになります。
http://tmaita77.blogspot.jp/2015/03/214.html


 明瞭なマイナスの相関です。相関係数は-0.74にもなります。平均年収が低い区ほど,高校生のバイト率が高い傾向にあります。

 当然といえばそうですが,家庭の貧困とバイトの結びつきのマクロ的な表れといえましょう。高校就学支援機制度がしかれている現在でも,こういう現実がある。都内23区という局所の地域単位のデータですが,この点は知っておくべきでしょう。

 今度の『国勢調査』は2020年に実施されますが,そのころには,上記のような明瞭な相関関係はなくなっているかどうか。それでもって,高校就学支援機制度の効果も測られるでしょう。

 私は前に,都内の地域別に中卒者の高校非進学率を出したことがあります。2010年施行の高校無償化政策の効果があったのか,2009年と2012年を比較すると,多くの地域で高校非進学率は減じ,各地域の所得とのマイナスの相関も消えていました。
http://tmaita77.blogspot.jp/2013/08/blog-post_11.html

 ここで明らかになってしまったような,所得とバイト率の負の相関は果たしてどうなるか。別にバイトが悪いとはいいませんが,家庭の事情によって,高校生のうちから過重なバイトに絡めとられ,学校での勉強もままならない生徒がいるとしたら,法律が定める「教育の機会均等」原則に抵触します。

 そのような生徒が,社会階層構造内でどう分布しているか。個人単位のデータで明らかにするのも重要な課題でしょう。

2017年5月7日日曜日

生徒・学生のバイト率の時系列変化

 学生の生活困窮化がいわれていますが,全国大学生協や東京私大教連の調査データから,下宿学生の仕送り額や1日あたりの生活費の減少を知ることができます。
http://www.univcoop.or.jp/press/life/report.html
http://tfpu.or.jp/kakeihutan-chousa/

 東京私大教連の最新データによると,首都圏の私大下宿学生の1日あたりの生活費は850円だそうです。*計算式=(仕送り月額-家賃月額)/30日

 私は,大学院以降はずっと授業料免除をもらっていましたが,申請書類に「月の食費2万5000円」と書いたら,担当職員に「これじゃ通らんぞ。食費が高すぎだ」と言われたことがあります。

 1日あたりにすると833円ですが,上記の850円という数値と照らしわせると,1日の生活費が消えちゃう計算になりますね。なるほど,この職員の発言はまんざら的外れではなかったわけです。

 当然,これでは生活が成り立たないのでバイトする学生も増えていることでしょう。学業に支障のない範囲ならいいですが,近年の人手不足もあって,度の過ぎたブラックバイトに絡めとられてしまう学生も多し。

 さて,学生のバイト率はデータでみて,過去からどう推移しているのでしょう。上記のメジャーな調査では,この点は明らかにされていません。私の頃も,90年代後半の不況期で,バイトしている学生が多かったですが,今はそれ以上なのかしら。

 学生のバイト率の時系列推移を知れる,信頼のおけるデータがないかと前から思っていたのですが,基幹統計の『国勢調査』から,それを捻り出せることを知りました。「灯台下暗し」ですね。

 この調査は,国民の労働力状態を調べています。先日,この部分を集計した,2015年の第2次集計結果が公表されました。大学入学年齢の19歳人口は約119万5千人ですが,労働力状態の内訳は以下のようになっています。


 労働力人口の就業者の中に①「通学のかたわら仕事」,非労働力人口の中に②「通学」というカテゴリーがあります。この2つを足しわせた数(①+②)が学生ということになりますが,この中で①が何%かをとれば,学生のバイト率ということになるでしょう。

 上表から,2015年の19歳の学生のバイト率を出すと,189,690/(189,690+586,501)= 24.4% となります。大学等の高等教育機関の1年生ですが,4人に1人がバイトしているようです。

 1980(昭和55)年では,同じやり方で出した19歳学生のバイト率は9.7%でした。この35年間で,19歳学生のバイト率が2.5倍ほどに増えています。

 これは19歳ですが,他の年齢はどうでしょう。この2時点の間のデータも気になります。私が大学に入った年(1995年)はどうだったのかな。15~24歳の各年齢のバイト率の推移を,5年間隔でたどると下表のようになります。

 15~18歳は高校生も含みますので,「生徒・学生」ということにしましょう。


 表をざっと見て,どの年齢でも学生のバイト率が増えていることが知られます。黄色マークは観察期間中の最高値ですが,18~21歳の大学生の年齢帯は,直近の2015年がマックスとなっています。

 「俺らの頃の方がバイトしてたよ」という年長者の声を聞きますが,バイト実施率のデータを見るとそうではないようです。飛躍な言い回しですが,学生の生活苦は「空前」のものといえるかもしれません。

 赤字は25%(4分の1)を超える数値ですが,2005年以降,20代前半の大半がこの色で染まっています。大学生の生活苦の進行の表れではないでしょうか。遊びのカネ目当てのバイトだろう,という意見もあるでしょうが,学生のバイト目的が学費・生活費稼ぎにシフトしていることは,前に明らかにした通りです。
http://tmaita77.blogspot.jp/2015/05/blog-post.html

 先述のように,最近はサービス業界の人手不足も相まって,学生が無茶なブラックバイトに絡めとられてしまう条件が出てきています。学生の側も,「親には頼れない,おカネが稼げるなら」と,それを受け入れてしまう。いつしか,勉学とバイトの主従関係が反転し,形式的就学が蔓延ってしまう。大学進学率50%超のユニバーサル段階に達した,日本の高等教育には,こういう病理が潜んでいることを見抜かないといけません。

 これを治療する術は,学生への経済的支援の強化と,ブラックバイトの取り締まりの2つから成ります。前者は,給付型奨学金が創設され一歩前進といったところですが,まだまだ不十分。奨学金を貸し付けるだけではなく,学費減免の枠も増やすべきでしょう。

 後者については,最近の大学では,新入生へのガイダンスにおいて,「ブラックバイトに注意」という啓発をしているようですが,これをもっともっと徹底すべきです。身を守るための労働法規の授業を必修にしてもよいでしょう。

 学生さんの側も,自分で積極的に情報を集めて,「知的武装」を図ることが大切。ちょっと勉強すれば,「辞めたら損害賠償だ!」なんていう脅しにも屈しなくなります。いろいろ本も出ていますが,さっきのぞいた大学生協のHPでも,いい資料が載せてあります。
http://www.univcoop.or.jp/fresh/life/parttime/index.html

 5月になりましたが,「5月病」を患うことなく,有意義な学生生活を送って下さいますよう。

2017年5月6日土曜日

エアポケット?

 4月1日の記事でお知らせしたように,編集者のズボラさに愛想を尽かし,プレジデント・オンラインの連載は休止しています。中止になる可能性も大です。
http://tmaita77.blogspot.jp/2017/04/blog-post.html

 おかげで心の平穏が得られています。言い回しがよくないですが,ブラックバイトを辞めることができた学生の気分です。

 この会社には,だいぶ前から嫌な思いをさせられているのですが,昨年の11月に,ここの編集長を新百合ヶ丘に呼び出して文句を言いました。私が約束にうるさい人間であることを聞かされたのか,20分以上前から指定の場所で待っていました。

 担当編集者のだらしなさを糾弾すると,こんなことを言いました。「いやあ,中だるみはあるんですよ。いわゆるエアポケットです」。

 エアポケット? 何ですか,それ。業界用語ですか。コトバンクで調べると,「飛行中の航空機が急激に下降する空域」とあります。なるほどねえ。件の編集者は,このエアポケットに入ったから,いろいろポチミスをやらかしたと。

 しかしねえ,編集長さん。お言葉ですが,お宅の編集者は年中低空飛行で,「下降」する余地なんてないと私は思いますけど。言い換えると,年中「下降」しっぱなしです。

 部署の長として,反省の言葉の一つでも出てくるかと思いきや,こんなエクスキューズをされたことに,残念な思いがします。やはり,件の編集者個人の問題ではなく,組織全体の問題かもしれませんねえ。

 上記の告発記事は,おそらくそちらの会社で話題になっていることでしょう。当該の編集者を,ちゃんと叱ってくださいましたか? タイトルの無断改竄という非行も含めてね。

 そちらは紙雑誌の編集体制は超一級なんですから,ネットもそれに近づけてほしいなと思います。いい加減,エアポケットから抜け出してください。

2017年5月5日金曜日

子ども数の変化から読み取るべきこと

 今日(5/5)は,子どもの日です。これにちなんで,総務省が昨日公表したデータによると,2017年4月1日時点の15歳未満の子ども人口は1571万人で,過去最低を記録したとのこと。
http://www.stat.go.jp/data/jinsui/topics/topi1010.htm

 戦後初期の1950年では2943万人でしたか,およそ半減していることになります。これから先も少子化は進み,2065年には898万人にまで減ると見込まれています(将来推計人口)。さらに半減です。

 しかるに,子どもの数だけを見るのでは不十分です。共に社会を構成する大人人口との関連において観察する必要があります。私は,1950年(過去),2017年(現在),2065年(未来)の3時点について,以下の簡単な統計を揃えてみました。


 上述のように,15歳未満の子ども人口は過去,現在,未来にかけてガクン,ガクンと減っていきます。総人口に占める割合(2段目)も,35.4%,12.4%,10.2%と少なくなります。

 昔は3人に1人が子どもでしたが,やがては子どもが1割,「子ども1:大人9」の社会になります。

 最下段は子どもに1人に対し大人が何人かですが,1950年では1.8人だったのが,2017年現在では7.1人で,近未来では8.8人に達します。

 うーん,今では子ども1人に大人7人の眼差しが注がれているのですね。子どもの健全な発達に寄与する,好意的な眼差しならいいのですが,そればかりではありません。ヒマを持て余し,「子どもがおかしい」と説教を垂れ,「**教育を!」などと,お節介な声を上げてばかりの道徳起業家もいます。

 昔は「子ども1:大人2」の社会でしたから,こういう上からの圧力は小さいものでした。しかし今ではそれがぐんと跳ね上がり,今後ますます大きくなります。子どもが被る圧力が大きくなってくる。

 先ほどの表のデータを視覚化すると,事態の変化が分かりやすくなります。3つの年の子ども・大人人口と正方形の面積で表し,圧力の強さ(大人/子ども)を矢印大きさで表現してみました。


 は1950年,は2017年現在,は2065年です。子ども人口の図形はどんどん萎んでいき,上の世代(大人)の重み,圧力が増してきます。

 最近の統計によると,子どもの自殺動機の首位は学業不振です。少子化で受験競争が緩和されているのに意外と思われるかもしれませんが,上の図をみると何となく解せます。少なくなった子どもに対する,親や周囲からの期待圧力が強まっているのではないでしょうか。その結果,学業不振が子どもの将来展望閉塞をもたらす度合いが高まっていると。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=3658

 ちなみに,学業不振と非行の関連も,以前に比して強まっています。
http://tmaita77.blogspot.jp/2015/03/blog-post_19.html

 子どもは保護されるべき存在で,保護者の大人が増えることは結構なことではないか,という意見もあるでしょう。まさにその通りで,未来社会は,今にも増して子どもが手厚く保護される社会になるかと思います。しかし反面,彼らにとって「生きづらい」社会になる可能性もある。

 社会の変化が速く,価値観や考え方の世代差が大きくなり,大人が子どもに文句を言う頻度が増えてくる。子ども1人に対し,大人9人の口から!(2065年)。真面目な子どもほどそれに翻弄され,自我を傷つけてしまう。これは,大人が子どもを圧し潰していることに他なりません。

 ルソーが,子どもの発達に先んじた余計な教育を施すべきではない,放っておくのがよいという「消極教育論」を唱えたことは有名ですが,この思想は含みを持っているように思えます。(無茶な)早期受験が進行している状況を見ると,なおのことです。

 「子どもは,放っておけば育つ」。こういう構えも持ちたいもの。勉強すべきなのは子どもだけではありません。われわれ大人もそうです。社会の変化が速く,子ども期に学校で学んだ内容など,半ば陳腐化してしまっています。

 大人だって学ばないといけません。いみじくも今は生涯学習の時代。「子どもが」「子どもが」という前に,自分のことをしましょう。そういう無言の背中が,子どもにとっての範となるのです。

 堀江貴文さんが「親と教師が才能の芽を摘む」「やりたいことを邪魔しないで放っておくのが重要」と述べていますが,私もその意見に賛成です。社会が変わっていて,上の世代の価値観なんて通用しないのですから。むしろ邪魔にしかなりません。
http://news.livedoor.com/article/detail/12856473/

 本ブログで何回も書いていますが,子ども人口の統計を見るたびに,私はこういうことを思います。教育学を学ぶ人間としては,邪道なのかもしれませんけれど。

2017年5月3日水曜日

年収と離婚の相関

 妻が離婚を考える夫の職業,という主題を扱った記事を見かけました。
https://news.careerconnection.jp/?p=34935

 「夫の仕事が原因で離婚したい」という妻の割合を,夫の職業別にみると,①娯楽業(18.2%),②運輸・不動産(15.4%),③飲食・宿泊(14.8%),④医療・福祉(12.1%),という順だそうです。

 運輸は2位ですか。ネット通販社会において重要性を増している職業ですが,現段階では需要と供給の均衡が崩れていて,超激務の仕事になってしまっています。3位と飲食と4位の医療も同じです。

 社会的に重要な役割(職業)にもかかわらず,家庭生活との両立がままならない。社会的に意義のある役割を引き受けているのに,家庭崩壊という罰ゲームを課される。何とも皮肉なことです。

 それと,大っぴらには言えませんが,薄給という事情もあるでしょう。上記の記事によると,夫の年収に不満を持っている妻の割合は,当然ながら夫の年収が低い群ほど高くなっています。

 このブログでは,年収と未婚の相関は繰り返し明らかにしましたが,年収と離婚の相関はまだでした。総務省『就業構造基本調査』の配偶関係カテゴリーは,「未婚」と「その他」という粗い2区分なので,個人単位のデータにて,年収と離婚の関連を明らかにすることはできません。

 しかるに,有業者の産業や職業というユニットデータを使って,両者の相関をみることはできます。産業(職業)ごとの離別者率と平均年収を出し,散布図に落として傾向を見るというやり方です。

 基幹統計の『国勢調査』から,男性有業者の離別・死別者率を産業・職業別に出せます。配偶者との離別・死別を経験し,現在独身でいる者が何%かです。35~44歳の働き盛りのアラフォー年代に絞りましょう。この年代だと死別はほとんどいないので,妻と離婚した者の割合と解釈しても差し支えありません。先日公表された,最新の2015年調査のデータを使います。

 平均年収のほうは,2012年の『就業構造基本調査』から得ることができます。35~44歳の男性有業者の年収分布をもとに,平均年収を産業別・職業別に計算しました。

 下表は結果の一覧です。離・死別者率の計算に際しては,配偶関係不詳の者は分母から除外したことを申し添えます。


 同じアラフォー男性でも,配偶者との離別を経験した人の割合は,産業や職業によって違っています。黄色は最高値,青色は最低値ですが,産業別では2.1%~7.5%,職業別では2.3%~7.3%のレインヂが観察されます。

 赤色は5%を超える産業(職業)ですが,産業カテゴリーの運輸・郵便業は5.9%で,職業別の輸送・機械運転業は7.3%で,こちらはマックスです。宅配やバス運転手などですが,この職業の離婚率が最も高いことがうかがわれる…。

 ちなみに年収も低いですね。輸送・機械運転業の年収は396.4万円で,全職業の479.6万円をかなり下回っています。

 上表のざっと眺めても,年収と離婚率の間にはマイナスの相関関係がありそうな気がする。では,各産業・職業の年収と離・死別率を散布図に落として,ビジュアルにしてみましょう。


 産業別でみても職業別でみても,年収と離別・死別者率の間にはマイナスの相関関係が見受けられます。

 「カネの切れ目が縁の切れ目」とか「離婚率の高い職業は**」とかいう週刊誌的な言い回しはさておき,労働の条件如何が家族解体の原因になる。それが子どもの発達にも影響することになる。上記は年収との相関ですが,労働時間との相関もあるのでは。

 教育学を学ぶ学徒の端くれとして,目下進行中の「働き方改革」と合わせて,こういうことを言いたいと思います。

2017年5月1日月曜日

1ルームの賃料相場(首都圏214市区町村)

 新年度が始まって1か月経過しましたが,この春に大学に入った学生さん,新生活には慣れましたか。親元を離れてアパート住まいをしている人も多いでしょうが。ホームシックになったりはしてないでしょうか。

 学生さんですので,1ルームの賃貸を借りている人が多いでしょう。6畳の1部屋に,キッチン・ユニットバス(計4畳ほど)がついているアレです。

 私も学生の頃は,このタイプの部屋に住んでました。大学院博士課程の頃は,小平市で月の家賃は4万円でした。武蔵野線の新小平駅近くで,利便性はよかったですが,小平市の相場からするとどうだったのかなあ。

 総務省の『住宅土地統計』(2013年)から,借家世帯の家賃月額と畳数の分布を知ることができます。両者の平均値を計算し,前者を後者で除せば1畳あたりの家賃月額になり,それを10倍すれば10畳分,つまり1ルーム(6畳部屋+4畳キッチン・ユニットバス)の家賃月額が出てきます。

 私はこのやり方で,首都圏(1都3県)の214市区町村について,1ルームの家賃相場を試算してみました。その結果をご覧に入れましょう。

 上記の資料では,以下のような階級が設けられ,それぞれに該当する借家世帯数が計上されています。


 度数分布から平均値を出すときは,階級値を使うのですよね。階級値とは中間の値のことです。家賃2万以上4万未満の階級の世帯は,中間の3万円と一律に見なします。

 このような仮定を置くことで,平均家賃と平均畳数を出すことができます。各階級の世帯数に階級値を乗じ,それらをトータルし,総世帯数で除せばいいわけです。

 この方式によると,小平市の借家世帯の平均家賃月額は6.34万円,平均畳数は17.77畳なり。1畳あたりの家賃は0.36万円,よって1ルーム(10畳)の家賃は10倍して3.6万円となります。

 私が住んでいたアパートは4.0万円でしたから,普通の相場よりは高かったのだな。ちなみに,今住んでいる横須賀市の値は2.9万円です。まあ,この辺りには1ルームのアパートなんてないですが,神奈川県立保健福祉大学の学生さんが借りる1ルームは,これよりもちょっと高いくらいなんでしょうか。

 同じやり方で,1都3県の214市区町村の数値を出し,マップにすると以下のようになります。1ルームの家賃相場地図です。


 当然すぎる模様ができています。都内23区はほとんどが5万円以上,マックスの港区は6.9万円にもなります。狭い1ルームでも約7万円です。足立区だけは3万円台になってますが…。

 しかし,千葉は全体的に安いようですね。ほとんど真っ白,4万円未満です。神奈川の三浦半島もそう。

 参考までに,地図に落とす前の値の一覧表も載せておきましょう。紙の本ならこんな表は載せられませんが,ブログならスペースは無尽蔵。便利なもんです。


 赤字は5万円超ですが,ほとんどが都内23区です。ご自分の地域に印をつけ,相場と比較してみるのも面白い。首都圏の大学にお子さんを送り出す親御さんの参考になればと思います。

 まあ,築年数や駅からの距離といった他の諸条件を捨象し,平均家賃と畳数から割り出した,乱暴な試算値ですので,あくまで参考まで…。

 ではでは,よいGWを。私は明日,バスと電車に乗って,近場の名所に出かける予定です。晴れますように。