2016年10月23日日曜日

家賃が年収の半分以上の世帯割合

 借家世帯の悩みの種の一つは家賃ですが,家賃が年収に占める比重を計算してみたことがありますか。私の場合,年によって変わりますが,だいたい2割くらいです。収入は少ないですが,駅から離れた安い賃貸に住んでいますので。

 「家賃/年収」の比重は,大よそ3分の1くらいが普通とされています。しかしこれは,世帯によって大きく違うでしょう。最近では,年収の半分以上を家賃で持っていかれる,という世帯も少なくないのではないでしょうか。収入が減る一方で,家賃はほぼ変わってませんからね。

 2013年の総務省『住宅土地統計』では,借家世帯の「世帯年収×家賃」のクロス集計がされています。ヨコは世帯年収,タテは家賃月額の階級です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001063455


 借家世帯にお住まいの皆さん,ご自身はどこのセルに該当しますか。<  >内の数値は階級値ですが,これを使うことで,各セルに該当する世帯の「家賃/年収」比を割り出せます。

 たとえば,赤字の「年収300万以上500万未満&家賃6万以上8万未満」の世帯はどうでしょう。この群の場合,それぞれ中間をとって年収400万,家賃月額7万と仮定すると,家賃が年収に占める割合は,(7万×12か月)/400万=21.0%と算出されます。

 しかるに,アミをかけたセルの世帯は,同じやり方で出した「家賃/年収」割合が50%を超えます。合計すると193万2500世帯で,上表の全借家世帯(1665万7500世帯)に占める比率は11.6%となります。

 家賃だけで年収の半分以上を持っていかれる。かなり無理をしている世帯ですが,こういう世帯が借家世帯の中で少なくないことが知られます。

 これは借家世帯全体のデータですが,若年層に限れば当該の世帯の比重はもっと高いでしょう。また,地域差もあるでしょう。全国,東京,鹿児島について,上記の指標の年齢曲線を描くと下図のようになります。


 借家世帯の中で,家賃が年収の半分以上の世帯が何%かです。東京の若年層では48.2%と,半分近くにもなります。

 学生の単身世帯が多いためでしょうが,学生の生活苦を表しているともいえましょう。分母の年収には,仕送りや奨学金も含まれます。これをも含めた収入の半分以上を,家賃だけで持っていかれる,ということです。

 東京では年齢差も大きく,若年層と高齢層で,無理をしている世帯が多いことが分かります。少ない収入で,バカ高の家賃を負担するためです。私の郷里の鹿児島ではこうした変異はなく,曲線はほぼフラットになっています。どの年齢層も5%前後です。

 47都道府県の年齢層別の数値一覧もご覧に入れましょう。黄色は最高値,青色は最低値です。10%以上の数値は赤字(ゴチは20%超)にしています。


 25歳未満の若年層をみると,東京では半分近くの世帯が重い家賃負担(年収の半分超)に苦しんでいますが,秋田ではこういう世帯は皆無です。

 赤字の分布をみると,やはり都市部ではキツイ。収入は多いものの,それを上回る家賃負担がのしかかる。地方ではクルマの維持費などが加わるでしょうが,それを加味しても,生活の基礎経費は都市部のほうが重いのではないでしょうか。

 私のような文筆業(フリーランス)に限ったら,地域差はもっと大きいでしょうね。どこに住んでも収入は一緒で,家賃は地方で格段に安くなるのですから。ヒマをみて,目星をつけている神奈川県三浦半島の賃貸をウォッチしているのですが,安くて広い物件があるわあるわ・・・。
https://twitter.com/tmaita77/status/789799635778842624

 家賃だけで年収の半分以上を持っていかれる。家賃を払うために働いているようなものですが,そういう世帯が量的に少なくないこと,都市部の若年層・高齢層では悲惨な状況になっていることを知りました。

 「住」は生活の基盤です。この部分に関する公的な補助が日本では脆弱と聞きますが,若者の自立支援を促し,未婚化・少子化に歯止めをかける上でも,必要な施策であるのは間違いありません。

 埼玉県戸田市が,新任保育士に30万円を支給する制度を始めるそうですが,家賃補助や公的住宅の斡旋のような施策のほうがいいのではないか,という気がします。生活の基盤が保障されることの安心は大きいでしょう。

 「住」の支援を充実させ,若者を実家から引っ張りだし,新居を構えさせる。そうすれば,家電などの消費も増え,景気の刺激剤にもなる。山田昌弘教授の『パラサイト・シングルの時代』ちくま新書(1999年)に,こんなことが書かれています。

 「3世代同居」の推奨などは,それに逆行するもので,社会の活性化を阻むことにもなろうかと思います。