2016年9月28日水曜日

ホープレスな若者

 増田利明著『ホープレス労働 働く人のホンネ』(労働開発研究会)という本が話題になっています。今年の6月に出た書籍です。
https://www.roudou-kk.co.jp/books/book-list/4031/

 「ホープレス(希望なし)」とはよく言ったもので,確かに日本の労働者の現況を言い当てているように思います。若者にあっては,とりわけ当てはまるでしょう。

 内閣府の『我が国と諸外国の若者の意識に関する調査』(2013年)では,「自分の将来について,明るい希望を持っているか」と尋ねています(Q7)。この回答のデータをみることで,若者の希望の国際比較ができます。
http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/thinking/h25/pdf_index.html

 オーソドックスな主題ですので,既に本ブログでもやっていたかと思いきや,そうではないようなので,ここでデータを提示することにします。

 若者といっても,一枚岩の存在ではありません。関心がもたれるのは,正社員にありつけた者と,そうでない者の違いです。雇用の非正規化が進んでいる現在では,なおさらのこと。上記調査のローデータ(個票データ)を独自に分析し,この点を国ごとに明らかにしてみました。

 私は,20代の対象者(学生は除く)を取り出し,希望があると答えた者の割合を,正社員の群とその他の群について計算してみました。男女で傾向が異なると思われるので,性別で仕分けています。

 下表は,結果の一覧です。正社員とその他の群の希望率が,国別・性別に示されています。カッコ内の数値は,%値の母数です。日本の男性の場合,正社員が141人,その他が89人であることを意味します。ドイツの男性のその他は,サンプルサイズが小さいことに留意ください。


 男女とも,日本の希望率は他国に比して段違いに低くなっています。正社員でいうと,他国では8~9割なのに対し,日本の男性は55.3%,女性は60.2%です。

 正社員とその他の落差が大きいのも特徴。男性では,正社員が55.3%,その他が30.3%で,実に25ポイントも開いています。これがホンマの希望格差。正社員とそれ以外では,収入や各種の保障に差がつけられており,「正社員にあらずんば,人にあらず」みたいな社会ですからね。女性にはみられない,男性固有の傾向であるのも注目されます。

 日本の男性サンプル(計230人)に占める,その他の89人の比率は38.7%で,決して少数派ではありません。母集団全体でみても,最近ではこんなものじゃないでしょうか。

 毎度のパターンですが,上表の数値をグラフで視覚化しましょう。ポピュラーな棒グラフでもいいですが,それでは芸がないので,ちょっと凝ったグラフにします。横軸に正社員,縦軸にその他(正社員以外)の希望率をとった座標上に,7か国の男女のドットを置いてみました。


 日本のドットの外れっぷりが明瞭なこと。どの国でも「正社員>その他」なので,斜線の均等線より下にありますが,日本の男性(Jm)は,このラインからの乖離が大きくなっています。正社員とその他の格差が大きい,ということです。

 日本の男性非正規雇用の希望喪失(剥奪)は,深刻といえましょう。昔と違って,このグループは今では決してマイノリティではありません。放置していたら,社会を覆しかねない危険因子に転化する恐れもある。

 私は今40歳ですが,現在地位は,自営(文筆業)と非常勤講師(非正規雇用)を足した状態です。自由な時間が多いので,今の状況を気に入っています。昨日の講義で,「僕は週1日しか出勤しない」と言ったら,学生さんから「えー」と驚かれました。

 しかるに,言わずもがな収入は少なし。各種の保障もなし。毎月の国保&年金は実に重い。40になりましたので介護保険料も加わり,さらにキツくなりました。

 正社員でなくとも,人間らしい暮らしができるようにしていただきたい。労働力不足の問題を解決するため,働き方の多様化を進めるそうですが,そのための重要な条件となるでしょう。

 強調すべきファインディングスは,以下の2点。
①:日本の若者は,他の先進国に比して,希望がないこと。
②:正社員とその他の希望格差が大きいこと(男性)。

 ちなみに前に検討したことがありますが,若者にあっては,希望の量と自殺率は密接に関連しています。20代男性の時系列統計でみると,展望不良率と自殺率は+0.871という相関関係にあります。
http://tmaita77.blogspot.jp/2015/04/blog-post.html

 それより上の年齢層にはみられない,若者固有の傾向です。前途ある若者にとって,希望は重要。ありふれた文言ですが,それを支持するデータは多いのです。

0 件のコメント:

コメントを投稿