2016年9月19日月曜日

読売新聞『大学の実力 2017』分析②

 分析第二弾です。予告通り,入学者の一般入試経由率が学部の入試偏差値によってどう変異するかを明らかにしてみようと思います。

 18歳人口の減少により,私大の4割が定員割れしている状況ですが,下位ランクの大学の中にはもう,なりふり構わず学生獲得に走っている大学もあるでしょう。志願者が入学に合意すれば合格という「アグリーメント入試」をやっている大学もあるといいます。

 首都圏私大の文系学部を例に,現実を可視化してみましょう。

 この作業は前に,埼玉県内の私立大学を分析対象としてやったことがありますが,ここでは首都圏(1都3県)に射程を広げます。また,人文・社会系の学部というように,対象を限定します。こうすことで,専攻の影響を除くことができるでしょう。

 このほど刊行された読売新聞『大学の実力2017』には,今年春の入学者総数と一般入試経由の入学者数が,各大学の学部別に掲載されています。首都圏私大の人文・社会系学部でみると,両方のデータが分かるのは281学部です。

 この281学部の入学者総数は12万3996人で,そのうち一般入試を経た入った者は6万3381人となっています。一般入試経由率は,後者を前者で除して51.1%,ちょうど半分です。逆にいうと,残りの半分は一般入試を経ていないことになります。

 今では,首都圏の私大文系学部の半分が,一般入試以外のAO入試とかで入っていると。地方では,おそらくもっと多いでしょうね。

 これは全体の値ですが,入試偏差値別にみるとどうなるか。分析対象の281学部を偏差値に依拠して5つの群に仕分けし,今年春の入学者の一般入試経由率を出してみました。


 入学者総数は,A群で最も多いですね。マンモス私大が多いためでしょう。入学者の一般入試経由率は,予想通り,偏差値群によって違っています。下に行くほど低くなる,リニアな傾向です。

 偏差値60以上のA群では61.6%ですが,45未満のE群ではわずか27.8%なり。7割以上が,学力を問う一般入試を経ないで入ってきていると。

 上表のデータをグラフにしましょう。横幅の大小で群ごとの入学者数を表現した,モザイク図にします。


 先ほど述べたように,A群にはマンモス私大が多いので,入学者数ではこの群が最も多くなっています(横幅)。

 色付きは一般入試の経て入った者の領分ですが,A群でも,残りの4割は一般入試以外なんですね。まあ,付属学校からの推薦組とかでしょう。有力私大は,こうしたエスカレーター組が多し。

 これが,ユニバーサル化した大学の入試の「今」です。今後,ますます白色の領分は大きくなることでしょう。それに伴い,リメディアル教育などが重要になってくる。初年次教育学会なる学会もあるようで,大学に入って間もない新入生のカリキュラムについて,活発な議論がされている模様です。

 私は,上図でいうE群の大学で6年間教えた経験がありますが,それを踏まえて,思うところはあります。それは,冒頭のリンク先記事で申しています。偏見丸出しの考えに聞こえるでしょうが,興味ある方はお読みくださいませ。