2016年5月26日木曜日

大学入学の地元志向(性別)

 5月1日の記事では,大学入学の地元志向が,90年代から現在までにかけてどう変わったかをみました。分かったのは,自県内大学入学率が増えていること,しかし様相には都道府県差があることです。私の郷里の鹿児島では,全国的傾向に反して,自県内入学率は減っています。

 今回は,男子と女子で分けたデータをみてみようと思います。自県内入学率は,大学入学の地元志向の指標ですが,当然,男女で異なるでしょう。常識的に考えて,男子より女子のほうが高いと思われます。

 高校の頃,「男子は東京まで高跳びしていいが,女子は地元,出るにしても九州圏内」とかいう話をよく耳にしました。九大に受かる力があるのに,女子だから地元の鹿大にしろと,親に言われていた女子生徒もいました。90年代半ばの話です。

 男女の大学入学の地元志向が,過去に比してどう変わったか。都道府県別にみるとどうか。こんな疑問を解いてみたいと思います。

 まずは全国統計にて,大学入学者の地元入学率がどう変化したかを,性別にみてみましょう。先の記事と同じく,1990年と2015年の比較をします。4年制大学の入学者(浪人生含む)は,1990年では48.7万人でしたが,2015年では60.2万人にまで膨れ上がっています(文科省『学校基本調査』)。進学率が高まっているためです。

 両年の大学入学者を,「男子か女子か」,「出身高校と同じ県内の大学か,それ以外か」で区分けした図をお見せします。


 入学者の量を,四角形の面積で表現したグラフです。女子の進学率上昇もあり,女子の割合が30.1%から45.1%にアップしています(横幅)。

 ここでの関心事である自県内大学入学者の比率(色付き)は,この15年間で男女とも伸びています。予想通り,「男子<女子」ですが,男子のほうが伸び幅が大きいので(33.4%→41.5%),最近では性差が縮まっています。

 地元志向が男子より女子で高いのは予想通りですが,過去と比した伸び幅は男子のほうが高し。バブルの頃と違い,家計もひっ迫していますので,男子といえど都会に出すのが困難になった,ということかと思います。

 これは全国の傾向ですが,地元入学率の男女差や過去と比した変化は,県によって違っています。地域差を見てみましょう。

 下表は,男子と女子について,1990年と2015年の自県内入学率を都道府県別に計算したものです。47都道府県中の最高値には黄色,最低値には青色マークをつけています。赤字は,上位5位です。


 どうでしょう。全国的傾向と同じく,この15年間にかけて自県内入学率が増加した県が多いですが,その逆の県もあります。増分がマイナスの県です。

 私の郷里の鹿児島はこのタイプで,男女とも地元入学率が減じています。沖縄などは,地元志向の減少がもっと顕著です。

 数の上では,男女とも地元入学率が伸びている県が多いですが,伸び幅に性差がある県も多し。たとえば長崎は,男子は6.7ポイント増であるのに対し,女子は20.2ポイントも増えています。地元に,女子大でもできたのでしょうか。

 逆に青森は,男子の地元志向の高まりが,女子よりも際立って顕著です。経済的苦境により,都会の大学に出すのが難しくなった,というような事情を感じさせます。福島のように,男子は増加,女子は低下という,反対方向のベクトルの県もあり。

 総じてみるに,女子より男子の地元志向の高まりが強く,その結果,地元残留率のジェンダー差が縮まってきています。女子が外に出るようになったことではなく,男子が残るようになってことによります。男女双方の「地元」化です。

 男女の地元入学率の変化を視覚化しておきましょう。横軸に男子,縦軸に女子の地元入学率の増加ポイント(上表の増分)をとった座標上に,47都道府県を配置してみました。


 右上にあるのは,男女とも自県内入学率の高まりが顕著な,ローカル化の強い県です。ただ石川などは,北陸新幹線の開通により,今後はどうなりますかね。

 左下は,男女とも県外に出ていくようになっている県で,郷里の鹿児島や沖縄が該当します。

 今回のデータをみて,政策担当者は「いい傾向だ」と,喜びの声を上げるでしょう。地方創生が叫ばれている昨今ですものね。ですが,私はそうではありません。大学が,地元の学生だらけになっていいのかと。

 大学の起源は,中世のヨーロッパに見いだされるのですが,教わりたい教師をしたって,学生が地域移動する形式が主流でした。ある教師のもとに集う学生の出身国(地域)は様々。多様な人間を包括する,文字通りの「University」だったわけです。毛色が違う人間と接することは,青年らの人間形成にも寄与したことでしょう。

 正直にいうと,私は,大学進学時の地域移動(県外流出)を悪いことだとは思っておらず,むしろ促進すべきだと思っています。青年期には,他流試合をすべきかと。地方都市では,中学時の「スクールカースト」が烙印のごとくついて回りますが,それから解放される上でも結構なことです。

 ただ,都会で学んだあとは,なるべく帰ってきてほしい。最近,大卒後は地元に帰ってくることを条件に無利子の奨学金を貸与するとか,地元に帰ってきた学生には報奨金を出すとかいう政策をよく聞きます。カネで若者の人生を管理・統制する向きがないではないですが,当面は,こういう強硬策も仕方ありますまい。

 こういう考えから,私が強く関心を持つのは,大学進学時の地域移動ではなく,就職時のそれです。何度もいいますが,『学校基本調査』の大卒者の進路統計にて,就職先の都道府県別の集計をしていただきたいです。それを4年前の地域移動と照合すれば,Uターン率の近似値を出すことができます。

 申すまでもないですが,実態が明らかでないと,対策の立てようがありません。大学進学率が50%に達した現在,重点的に解明すべきは,大学卒業時の地域移動の様相です。このステージにおける,公的統計の整備を強く望みます。

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