2016年5月18日水曜日

家族型福祉の肯定率の年齢差

 日本の保育と介護は危機的状況にあり,施設と人員が共に不足しています。「そもそも,幼児や高齢者の面倒は家族が見るべし」という考えが根強いことが,問題の解決を遅らせていることは間違いないでしょう。

 核家族化や共働き化など,社会は変わっているにもかかわらず,意識は旧態依然のまま。われわれは今,こうした変動期(過渡期)の危機の只中にいます。

 ここで改めて,家族型福祉の意識の国際布置図を描いてみましょう。下図は,横軸に「就学前の子の世話は家族がすべき」,縦軸に「高齢者の世話は家族がすべき」と考える国民(18歳以上)の比率をとった座標上に,43の国を配置したグラフです。

 ISSPが2012年に実施した「家族と性役割の変化に関する意識調査」のデータをもとに,作成しました。ドイツは,調査対象が東西に分かれています。
http://www.issp.org/page.php?pageId=4


 右上にあるのは,双方の肯定率が高い,家族依存型福祉を認める国々です。フィリピンや,中国,そして東欧など,家族を重んじる社会が位置しています。

 対極の左下にあるのは,北欧の国々です。幼子や高齢者の世話は社会(国)がすべき,と考える国民が大半です。これらの国が,公的な福祉の先進国といわれる所以でもあります。

 日本や欧米主要国は,この両極の間に分布していますが,私が意外に思ったのは,韓国の肯定率が低いことです。横軸,縦軸とも,平均水準を下回っています。儒教社会の伝統が急速に崩れているのでしょう。

 「老親の面倒は子が見るべき」という意識が急速に廃れる一方で,公的な社会保障制度は未整備。近年における,韓国の高齢者の自殺率異常高は,こういう事情によってもたらされていると考えます。
https://twitter.com/tmaita77/status/720930555437514752

 さて日本はというと,フィリピンや中国ほどではないにせよ,家族型福祉の意識が強い社会です。まあ,予想通りの位置ですが,横軸の肯定率を年齢層別に出すと「はて?」という傾向が出てきます。

 「就学前の子の世話は家族がすべき」と考える者の割合を年齢別に出し,折れ線グラフにすると下図のようになります。主要7か国の年齢カーブです。


 どの年齢層でも日本が最も高いのですが,日本のカーブはきれいな右下がりになっています。攪乱は全くありません。若者ほど,幼児の世話は家族がすべきと考えている。こんな傾向です。

 この事実について,ツイッターで意見を少し募ったところ,「子育ての経験がないからでは」「家族だけで子育てすることの無理ゲーさを分かっていないから」という声がありました。確かに,そうでしょうね。

 しかし,日本だけがきれいな右下がりになるとは・・・。国の不甲斐なさに愛想をつかし,「自分でやるしかない」と塞ぎ込んでいるのかも。

 冒頭で述べたように,今の日本は,社会構造の変化に人々の意識が追い付いていないという,変動期の危機の只中にあります。やがては後者が前者にキャッチアップすることで,事態はよくなるだろうという楽観が持たれるのですが,上図をみると,「果たして,大丈夫か」という懸念も持たれます。

 現在,次期学習指導要領の改訂に向けた議論がなされていますが,社会にもっと寄りかかっていいんだ,ということを教えるべきかと思います。そのことが,「仕事と子育ては両立可能」という展望を若者に持たせ,未婚化・少子化を解消する条件にもなるでしょう。

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