2016年2月14日日曜日

大卒就業者の年収の性差(国際比較)

 多くの人は働いて収入を得ているわけですが,その多寡に男女差があることは,よく知られています。学歴という,収入を大きく左右する条件を揃えてもそうでしょう。

 私は前から,大卒男女の年収の性差が国によってどう違うかを明らかにしたい,と思っていました。このことは,女性のハイタレントがどう扱われているか,という問題に通じます。ISSPが2012年に実施した『家族と性役割に関する意識調査』のローデータを使って,それをやってみました。その結果をレポートします。

 本調査では,就業している者に対し,年収の額を尋ねています。私は,25~59歳の大卒男女就業者のサンプルを取り出し,年収の分布を明らかにしました。ここでいう大卒には,大学院卒も含みます。

 本当は正社員に限定し,年齢をもっと狭く限るのが望ましいのですが,如何せんサンプルが少ないので,こうしたラフな措置をとっています。正規・非正規の内訳が男女で異なることの影響が出ますが,正社員として働くチャンスのジェンダー差も見るということで,就業者全体の比較でもよいでしょう。

 下表は,日本の年収分布です。


 原資料の年収階級は,上記のような階級値の形になっています。年収350万円とは,年収300万円台のことです。

 右欄の相対度数をみると,やはり男性のほうが高収入の階級に多く分布しています。ボリュームゾーンは,年収500万円台。女性は,非正規雇用(パート等)も多いので,低収入層も多くなっています。

 この分布から平均値を出すと,男性は585.6万円,女性は318.3万円となります。その差は1.84倍。同じ大卒でも,男女で違いますねえ。女性は非正規が多いからですが,ハイタレント女性の正社員就業が難しい,という問題の表われともとれます。

 ここでの関心は,このジェンダー倍率が国によってどう違うかです。私は,上記のような年収分布表(各国通過)を国ごとに作り,男女の平均年収を出し,「男性/女性」の倍率を計算しました。アメリカは男性が7.1万ドル,女性が5.0万ドルですので,ジェンダー倍率は1.42倍となります。日本より低いですね。

 下の図は,この倍率が高い順に20か国を並べたランキングです。年収が判明する有効サンプル数が,男女いずれかで50人を割る国は,分析対象から外しています。


 日本は,20か国の中でトップです。高学歴就業者の年収の性差が最も大きい社会ということになります。その次は,お隣の韓国。最下位はフィンランドで,大卒者同士を比べると,年収の性差はほとんどありません。

 先ほど述べたように,非正規も含む就業者全体のデータです。よって,ハイタレント女性の正社員就業チャンスが少ないという問題があるでしょう。言わずもがな,同じ大卒正社員で同じような仕事をしても,年収は男女で違っています。

 ラフな国際統計ですが,日本ではこういう問題が他国に比して強いのではないかと推察されます。日本は高学歴女性の就業率が低いのですが,こういう現実を目の当たりにして,就業意欲が削がれている,ということもあり得るのでは。

 上記のジェンダー倍率は,大卒女性の就業率と少しばかり相関しています。横軸に上図の年収ジェンダー倍率,縦軸に高学歴女性の就業率をとった座標上に,20か国を配置すると,下図のようになります。


 傾向としては,大卒就業者の年収の性差が大きい国ほど,大卒女性の就業率が低くなっています。相関係数は,-0.32806です。ケース数が少ないので,統計的に有意ではありませんが,注視すべき傾向ではあります。

 わが国では,女性のハイタレントが活用されていない(されにくい),また彼女らが不利益を被っている。この問題が他国に比して色濃いのは,今回のラフな国際比較からもいえそうです。

0 件のコメント:

コメントを投稿