2016年1月17日日曜日

働く女性の家庭満足度の国際比較

 家庭は憩い・団欒の場ですが,最近はそうではなく,緊張や葛藤の場になりつつあります。虐待やDVといった,よくいわれる家族病理現象を想起すれば分かりやすいでしょう。

 これは極端ですが,働く女性にすれば,家庭を癒しの場とみなせない人も少なくないのでは。仕事で疲れて帰っても,家事をしないといけない,夫や子どもの世話をしないといけない・・・。家庭はゆっくりできる場ではなく,まだ職場のほうがマシという人もおられるでしょう。

 2012年に国際社会調査プログラム(ISSP)が実施した「家族と性役割の変化に関する調査」では,家庭生活の満足度を尋ねています。①「完全に満足」,②「とても満足」,③「まあ満足」,④「どちらでもない」,⑤「やや不満」,⑥「とても不満」,⑦「完全に不満」,の7段階で答えてもらう形式です。
http://www.issp.org/index.php

 こういう細かい訊き方をしている場合は,一部の選択比率を拾うのではなく,分布全体を考慮した尺度を出すのが望ましいと考えます。そこで①に7点,②に6点,③に5点,④に4点,⑤に3点,⑥に2点,⑦に1点を与えた場合の平均点を出してみます。

 私は,25~54歳の有配偶・有業女性の回答分布を国別に出し,上記の平均点を出してみました。働く女性の家庭生活満足度スコアです。下図は,37か国を高い順に並べたランキングです。


 最下位はインド,次いで低いのは韓国,日本は平均5.04点で3番目に低くなっています。いずれも女性が虐げられる度合いが高い社会のように感じますが,どうでしょうか。

 1位と2位は南米の2国,大国のアメリカは4位となっています。

 予想通りといいますか,日本の働く女性の家庭生活満足度が低いことが分かったのですが,興味が持たれるのは,夫の家事分担の度合いに応じて,これがどう違うかです。冒頭に記したように,働く女性の家庭生活不満の源泉は,仕事で疲れているというのに,家事や育児等の負担を上乗せされることでしょう。だとすれば,夫が家事分担をしてくれる女性のほうが,そうでない者よりも家庭生活満足度は高くなるとみられます。

 この点を吟味してみましょう。同じ調査では,パートナーとの家事分担状況についても尋ねています。自分のほうがやっているという女性は「夫家事分担低群」,同じくらいないしは夫のほうがやっている女性は「夫家事分担高群」としましょう。日本の25~54歳の有配偶・有業女性でいうと,これに該当するのは順に100人,44人です。

 この2群について,家庭満足度の設問の回答分布をグラフにすると,下図のようになります。


 やはり,夫が家事をする女性のほうが,家庭生活の満足度は高いようですね。ただサンプルが少ないため,分布の差は統計的に有意ではありません。あくまで傾向とお知りおきください。

 ところで今朝,ある方のツイートに教えられたのですが,夫が家事をすることを「してもらう(申し訳ない)」と捉える女性もいるようですね。だから,夫の家事分担度が高くても,後ろめたさのようなものを感じ,家庭生活満足度は高まらないと。こういう事情もミックスされて,上図のクロス結果に有意差が出ないのかもしれません。
https://twitter.com/fufumim/status/688555589069242369


 三世代同居などしていたら,夫に家事をさせる妻はいびられるなんてこともあるでしょう。夫の家事分担をただ促せばよいという話ではなく,「本来,家事は女性がすべし」という社会的呪縛を解消しなければならない。でないと,働く女性を追いつめることにもなる。

 上記のツイートから,こういう見方があることを教えていただきました。ツイッターはいろいろな意見を拝受できるので,ありがたく思っております。