2016年1月10日日曜日

大学受験の50年史

 18歳人口の減少により,受験競争は緩和しているといわれますが,それをデータで可視化してみましょう。

 文科省の『学校基本調査』には,その年の大学入学者数と大学入学志願者数が掲載されています。浪人混みの数値です。ここでいう大学とは,4年制大学であり,短大は含みません。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm

 私は1995年春の受験生ですが,この年の大学入学者は56万8576人,大学入学志願者は87万7313人です。前者は,競争を勝ち抜いて大学に入れた合格者です。残念ながら不合格になった人は,後者から前者を引いて30万8737人と見積もられます。入学志願者に占める比率は35.2%です。これは不合格率に相当します。

 へえ,志願者の3人に1人が辛苦を舐めていたのだなあ。私の世代(76年生まれ)はポスト団塊ジュニア世代で競争相手が多く,苦労した覚えはあります。

 しかし,私よりもちょっと上の団塊世代は,もっと大変だったことでしょう。逆に,最近の世代は不合格率はかなり低下しているとみられます。時代変化をたどってみましょう。

 私は『学校基本調査』のバックナンバーに当たって,1965年から2015年までの50年間の数値を採取しました。上記リンク先をみれば分かりますが,現在では本資料のバックナンバーが軒並みネット公開されています。図書館に行って,あの分厚い冊子をくくる必要はないわけです。便利になったものです。

 下の表は,合格者,不合格者,不合格率の推移をまとめたものです。合格者とは大学入学者,不合格者は入学志願者から入学者を差し引いた数を意味します。繰り返しますが,浪人混みの数値です。


 不合格率が競争の激しさの尺度になりますが,時期によってずいぶん違います。赤字は不合格率4割超ですが,60年代末と80年代末~90年代初頭が激戦の時代だったようです。

 言わずもがな,団塊世代と団塊ジュニア世代が受験期(18歳)に達した頃です。黄色マークをつけた67年は48年生まれ,90年は71年生まれ世代が現役で受験した年。90年では,志願者の44.5%が不合格になっていたとみられます。スゴイですねえ。

 この世代が激しい競争にさらされたことは,先日のニューズウィークの世代論の記事でも書きました。それが数値で示されています。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/01/post-4324.php

 さて,大学入試の不合格率は90年代以降は低下の一途をたどり,2008年には1割を切り,2015年春は6.7%にまで下がっています。逆にいうと合格率93.3%,大学全入時代の到来,さもありなんですね。

 表の数値では変化を捉えにくいので,グラフにしておきましょう。大学受験の50年史のグラフをご覧ください。


 競争のピークだったのは,67年と90年。団塊とそのジュニアの世代が受験にトライした年です。私が受験した年(95年)も35%超ですから,結構大変だったのだな。自分の世代の位置がわかりました。

 わが国は受験競争の激しい社会ですが,子ども期に経験した競争のレベルは,世代によって大きく違います。こういう違いによって,人間形成にどういう差異が出てくるかは,興味ある課題です。非行の世代統計に注目すると,競争が激しかった団塊と団塊ジュニア世代は,非行を多くやらかした世代でもあります。前者は非行第1ピーク,後者は第2ピークの主な担い手でした。競争に敗れたことによる,地位剥奪感なども大きいでしょう。

 今後も緑色の不合格率は低下を続け,0%に近い水準にまで落ちるのか。2018年から18歳人口が急減する「2018年問題」に大学関係者は慄いていますが,18歳人口ベースの大学進学率50%が維持されたままなら,2025年ころには,少なからぬ大学が倒産するとみられます。現在のパイをキープするには,大学進学率が55%,60%にならないといけませんが,これ以上伸びるのかどうか・・・。

 大学側が自らの維持存続のために,大学進学率の上昇を煽るようなことはすべきではないでしょう。18歳時に大学への進学が社会的に強制されるような社会は,健全とはいえますまい。顧客にすべきは,青少年ではなく大人です。まもなく人口が「子ども1:大人9」の社会になりますが,少なくなった子どもを奪い合うというのは,いかにも見苦しい。青年期の教育機関から,大人の学びのセンターとしての存在に自己を変革できるか。

 社会の人口動態は大学に対し,未来形のすがたに変身することを強く求めています。

3 件のコメント:

  1. ひのえうまの影響はあまり見られないのですか。

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    1. 私は丙午生まれ、1985年の大学受験者です。1985年の不合格者数、不合格者率は前後の年と比べて凹んでいるのがグラフから見て取れますが、18歳人口の凹み具合と比べると少し緩い感じがするのは、当時は浪人が多かったため、2年幅の移動平均を掛けるような効果が出ているのかなと思います。

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  2. 興味深く拝見しました。数字には表れにくいことかもしれませんが、時々の経済状況の影響もあるのでは、と感じています。私は一番不合格率の高い90年に大学進学しましたが、高校時代がバブルで、公立進学校でしたがクラスメートの多くは、現役では合格の可能性は薄くとも行きたいところを受ける(浪人は覚悟の上、というかそちらが普通)、早稲田の政経・法・商を受けて全滅する、というのが一般的でした。7割くらいは浪人していたと思います。今では母校の生徒も堅実というか、現役・国公立志向が高まり、浪人するのは3-4割と聞いております。(Bukiyou)

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