2016年12月31日土曜日

2016年の総括

 今年も残るところ,あとわずかになりました。大したことは書けませんが,2016年の総括をしておこうと思います。

 1976年生まれの私は,今年の7月12日で40歳になりました。人生80年とすると折り返し地点に差し掛かったのですが,身体にガタがきていることを感じさせられた年でした。

 6月,部屋掃除でちょっと重い物を持ち上げたとき,「ピキーン!」とぎっくり腰になりました。初めてのことです。

 私は,あまり物を捨てられない質ですが,部屋に物が多すぎることは健康を害することになると悟り,7月に室内改造を行いました。不要な物は極力捨て,開いたスペースに本棚を増設し,書籍の収容力アップを図りました。また仕事の効率化のため,大型のL字デスクを購入しました。


 今のデスクは,こんな感じです。右側に,いろいろ物が置けていい。またカレンダーを前方に貼り,予定を常に展望できるようにしています。ヒマ人の私は,手帳などは不要。カレンダーに,たまにある予定や原稿締め切りを書き込むだけで十分。

 しかるに,この大作業の疲れが出たのか,翌月の8月上旬に,帯状疱疹を発しました。身体の免疫が弱ったことで,子ども時代に経験した水疱瘡のウィルスが再発したとのこと。

 さらに同月の中旬には,2年前に抜髄した左奥歯が痛くなり,のたうち回るほどの苦しみを味わいました。先日,根の再治療が終わりましたが,右奥歯もヤバいということで,現在も通院を続けています。週1の通院は,生活に規則性ができていいっす。

 後はそうですねえ。特記すべきことといったら,紙媒体の本で,初のパクリ被害に遭ったことでしょうか。出版社と筆者から誠意ある謝罪がありましたので,事を荒立てませんでしたが,気をつけてほしいなと思います。
http://tmaita77.blogspot.jp/2016/07/blog-post_28.html

 本ブログの総括もしておきましょう。このブログは2010年12月末に開設しましたので,運営歴6年ということになります。記事数は,トータルで1240本です。今年は,本記事を合わせて181本の記事を書きました。だいたい,1日おきに更新というペースです。

 閲覧数(PV数)が上位10の記事を掲げましょう。「データえっせい」の人気記事のベスト10です。


 職業別の未婚率や県別の大学進学率の記事がウケています。今年書いた記事で殿堂入りしたのは,5月29日の「2050年の人口ピラミッド」だけか・・・。黄色マークの数で,その年のガンバリ度が可視化されるのですが,来年は,殿堂入りする記事がもっと増えるよう,がんばります。

 来年は,どういう年になるか。普通なら,ここで来年の抱負みたいなことを書くべきなのでしょうが,私は,そういうことは好みません。「あなたの目標は何ですか?」。シューカツ面接定番の質問ですが,私はこういう問いは大嫌いです。

 これまで通り,適当に食い扶持を稼ぎながら,好きなことをやっていくだけ。その積み重ねで,自分の立ち位置がちょっとずつ上がっていけばいいなと思っています。

 食い扶持を稼ぐ業は文筆ですが,教員採用試験の書籍執筆(毎年改訂)に加え,新聞やWeb誌で連載を4本持たせていただいています。自分の勉強になり,かつおカネももらえて,本当にありがたいです。この境遇への感謝の気持ちは忘れないでいたい。

 あと一点。海が見える街に住みたく,神奈川県の三浦半島への移住を,ちょっとばかり真剣に考えています。今年にそれが実現する可能性は,ゼロではないです。

 しかし,今住んでいる地域もいい。下の写真は,今日の夕方に撮った,ゆうひの丘からの眺望です。


 では皆さま,よいお年をお迎えください。来年も,本ブログをよろしくお願い申し上げます。

2016年12月31日
   舞田敏彦

2016年12月30日金曜日

2016年12月の教員不祥事報道

 毎月恒例の教員不祥事報道ですが,明日は今年の総括をしますので,今日やっちゃいます。今月,私がネット上で把握した教員不祥事報道は43件です。

 今月も紙上を賑わせてくれましたが,部活の引率で生徒を乗せた車を高校講師が飲酒運転し,ガードレール下に転落した事故には肝を冷やされます。死傷者は出なかったそうですが,一歩間違えば大惨事です。

 女性に面会を強要した教頭や,新人教員に対する校長のパワハラなど,管理職の不祥事も目につきます。

 今日は,多摩センターの映画館で,大ヒット映画「君の名は」を遅まきながら観てきました。田舎の女子高生と大都会の男子高生が入れ替わる,というのはいい。
http://www.toho.co.jp/movie/lineup/kiminonaha.html

 若き青少年を描いた作品というのは,いいですねえ。私も,四半世紀前はあんなだったんだなあ。今年で40になり,体力の衰えもちょっと感じてきたところですが,スピリットの若さだけを失わないようにしたい。

 明日は大晦日。無事に年を越せますよう。

<2016年12月の教員不祥事報道>
私立中教諭 体罰で生徒が骨折(12/1,NHK,千葉,中,男,50代)
背後から近づき女児の胸触る、45歳中学教諭を逮捕(12/2,産経,徳島,中,男,45)
山形の小学校講師を逮捕 16歳少女にわいせつ行為
  (12/2,日刊スポーツ,山形,小,男,25)
生徒の成績記した紙片紛失、ズボンのポケットに入れ帰宅中の男性教諭
 (12/4,産経,京都,中,男,30代)
「興奮して」生徒に体罰 大阪の20代支援学校講師(12/5,産経,大阪,特,男,20代)
生徒の進路希望先、テスト模範解答の裏に 滋賀の県立高(12/6,朝日,滋賀,高,女,52)
着服、セクハラ…男性教諭2人を懲戒処分
 (12/7,河北新報,山形,着服:高男40代,セクハラ:高男50代)
生徒蹴った容疑、部活顧問教諭を書類送検(12/8,朝日,福岡,高,男,30代)
<高松の小学校>児童のノート「悪い例」 掲示の教諭注意(12/8,毎日,香川,小,男)
はねられ男性死亡高校教諭逮捕(12/8,NHK,千葉,高,男,30)
下半身露出疑い 小学校講師を逮捕(12/8,河北新報,宮城,小,男,25)
飲酒運転で逮捕された教諭を停職処分(12/8,神奈川新聞,神奈川,小,男,57)
生徒平手打ち、レスリング部顧問が体罰(12/9,朝日,福岡,高,男,20代)
中学教師が生徒に「つぶしてやる」 仙台市教委が処分検討 
 (12/9,NHK,宮城,中,男,50代)
部活で足蹴り、髪引っ張る…バレー部元顧問男性教諭(12/9,産経,大阪,中,女,32)
<福岡大付属高>セクハラの教諭を解雇(12/10,毎日,福岡,高,男,44)
酒気帯び運転で公立高教諭の男逮捕 忘年会で飲酒(12/10,産経,熊本,高,男,57)
小学校教員が酒気帯び運転で逮捕(12/13,BSN,新潟,小,女,28)
「食べるのが遅い」と教諭が児童引きずり投げる(12/13,読売,千葉,小,男,40代)
車に写真置き「会いにこないと近所に配ります」と脅す 小学校教頭、強要未遂容疑
 (12/24,産経,滋賀,小,男,50)
教え子の女子生徒にキス…京都府内の中学教諭が停職処分
 (12/15,サンスポ,京都,中,男,30代)
<期末テスト>成績表、教室に置き忘れ 見た生徒が漏らす
 (12/16,毎日,大分,中,男,40代)
教え子にわいせつ行為、中学教諭を処分(12/16,京都新聞,京都,中,男,30代)
小5女児に性行為用の潤滑ジェルかける 高校非常勤講師を逮捕
 (12/16,産経,東京,高,男,44)
懲戒免職:卒業アルバム代など着服 県教委、県立高教諭を処分
 (12/17,毎日,山形,高,男,40代)
ストーブで女子生徒殴る 姫路の中学臨時講師(12/18,神戸新聞,兵庫,中,男,30)
相撲部顧問の教諭、部員に体罰…日大東北高(12/19,読売,福島,高,男,20代)
死亡事故の女性教諭 停職1カ月の処分(12/21,NNN,山梨,小,女,50代)
無免許運転で逮捕の男性講師 懲戒免職(12/21,TV金沢,石川,小,男)
理科実験で気分不良、中学教諭2人を書類送検
 (12/22,読売,大阪,中,男性教諭(29)と女性教諭(23))
女子生徒に時計贈り「好きや」男性教諭を懲戒処分
  (12/22,日刊スポーツ,大阪,高,男,40)
中学校長、パワハラで停職へ 新人教員2時間立たせ説教(12/22,朝日,愛知,中,男)
女子生徒にわいせつ行為 中学教諭を懲戒免職(12/22,産経,千葉,中,男,60)
中学教諭、生徒を蹴って馬乗りに 10日間のけが(12/23,朝日,大阪,中,男,36)
「デブ」と生徒に連呼、拳で顔殴る 横須賀の中学教諭
 (12/23,朝日,神奈川,中,男,20代)
教諭を公然わいせつ容疑で逮捕(12/25,NHK,長野,小,男,40)
盛岡市:高校生乗せたバス転落 酒気帯び容疑で講師逮捕
  (12/25,毎日,岩手,高,男,24)
ストレッチで無理に押し生徒けが 処分明けの男性教諭(12/26,朝日,大阪,中,男,39)
平手打ちで生徒の鼓膜破る 中学教諭を懲戒処分 (12/27,神戸新聞,兵庫,中,男,36)
岐阜県 小学校男性講師が懲戒免職(12/27,CBC,岐阜,小,男,33)
男性教諭を減給 USB紛失、千葉市教委(12/28,千葉日報,千葉,中,男,27)
教員免許失効気付かず授業 (12/30,NHK,香川,高,女)
暴言繰り返し生徒が不登校に、男性教諭が停職処分(12/30,TBS,岩手,高,男,38)

2016年12月27日火曜日

後期高齢者の運転免許保有率

 高齢者による運転事故が多発している印象を受けます。幼い子どもが被害者となる,痛まし事件も起きています。

 被害に遭った人からすれば,認知能力が衰えた高齢者の免許は強制返納させるべし,と言いたいところでしょうが,免許を持っている高齢者は数でみてどれくらいいるのでしょう。

 警察庁の『運転免許統計』という資料にて,運転免許保有者の数を年齢層別に知ることができます。数種類の免許を持っている場合,上位の免許保有者に計上されますので,何らかの運転免許を持っている人間の実数(頭数)です。
https://www.npa.go.jp/toukei/menkyo/index.htm

 免許保有者の数の年齢曲線を描くと下図のようになります。最新の2015年と10年前の2005年のカーブです。いずれも年末時点の数値です。


 左側をみると,若者では免許保有者が減っています。20代でみると,この10年間で1384万人から1056万人に減っています。よく言われる,若者の「クルマ離れ」も寄与しているのでしょうか。

 しかし右側をみると,高齢層の免許保有者は増えています。75歳以上の後期高齢者でみると,237万人から478万人へと倍増です。これは高齢人口が増えたことにもよるでしょうが,当該年齢人口当たりの出現率でみても,20.4%から29.6%へと増加しています。最近では,後期高齢者の3割が何らかの運転免許を持っていると。

 この出現率は,都道府県別に出すことも可能です。2015年末の75歳以上の免許保有者数を,同年10月時点の当該年齢人口で除して,後期高齢者の免許保有率を都道府県別に計算してみました。分母は,総務省『国勢調査』の数値です。


 最高の長野の41.1%から,最低の東京の17.79%までの幅があります。長野では5人に2人ですが,東京では6人に1人というところです。

 やはり,交通網の発達した都市部では,高齢者の免許保有率は低い。まあ,他の年齢層でも同じでしょうけど。

 上位は地方県ばかりですが,これらの県の郡部とかでは,クルマがないと生活に支障が出るためと思われます。こういう地域で個人タクシーとかやったらかなり儲かるような気がしますが,こういうビジネスってあるのかしら。

 この問題へのアプローチは2つあり,一つは高齢者の足を確保すること。今言った個人タクシー,カー・シェアリング,高齢者向けの電動自転車などが挙げられるでしょう。3番目のものは,私の隣の部屋のお爺さんが使っています。健康にもいいそうです。

 あと一つは,高齢者への物資の配達サービスの充実。最近はこの手の業者が増えており,私の卒論ゼミの教え子にも,この業界で働いている子がいます。とてもやりがいのある仕事だそうです。今後は,空を使ったドローンによる宅配も出てくるのでしょうね。

 高齢者の皆さんは,これまでの運転実績を過信せず,認知能力の衰えの可能性があることをしっかり自覚して,安全運転を心がけてほしいと思います。

2016年12月24日土曜日

身長の伸び盛りの変化

 22日に,今年度の文科省『学校保健統計』の結果が公表されました。いろいろなファインディングについて報じられていますが,昨日の朝日新聞に「子どもの身長,頭打ちに 伸びる要因出尽くした?」という記事が出ています。
http://www.asahi.com/articles/ASJDN77CQJDNUTIL06S.html

 栄養状態がよくなったこともあり,子どもの平均身長は昔に比して大きく伸びているのですが,近年,それが頭打ちになっているそうです。高度経済成長期ならいざ知らず,確かに21世紀の今では,子どもの身長が伸びる要因は「出尽くした」といってよいかもしれません。

 しかるに,ここで見たいのは,身長が最も伸びる時期,すなわち「伸び盛り」が昔と比してどう変わったかです。言わずもがな,伸び盛りは時代とともに早くなってきています。これを心理学の用語で,発達加速現象といいます。

 その様を,データでみてみましょう。学齢期にかけての身長の伸びがどう違うかを,明治生まれと平成生まれの世代で比べてみました。比べたのは,1894(明治27)年生まれ世代と,1999(平成11)年生まれ世代です。文科省『学校保健統計』の長期時系列データにて,6~17歳までの身長変化を跡付けられる,最も古い世代と最も新しい世代を比較することとしました。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001014499&cycode=0


 男子のデータですが,どうでしょう。どの年齢でも,平成世代は明治世代に比して,平均身長が大きく伸びています。13歳の時点をみると,平成世代は159.5cmであり,明治世代の139.7cmよりも20cm近くも大きくなっています。スゴイ。

 平成っ子の13歳は,明治っ子の17歳です。明治期の17歳といったら,大半が働いていました。平たく言うと,今の13歳の子どもは昔でいう「オトナ」なわけです。

 しかし,心はそうではありますまい。今の13歳といったら,学校制度の上では中学校1年生のガキンチョです。一人前の社会的役割を付与されていません。成長する身体と,未熟なままの心。現代では,このギャップが殊に大きくなっているといえましょう。

 いじめ,不登校,暴力行為などの問題行動が,この年齢で激増する「中1ギャップ」現象はよく知られていますが,こういう要因によるかもしれませんね。危険な「13歳」です。

 次に,身長の伸びが最も大きいのはいつかをみると,明治世代では14~15歳,平成世代では11~12歳のようです。

 ある年齢から次の年齢にかけての身長の伸び幅を,年間発育量といいます。平成っ子の11~12歳でいうと,152.3-145.0=7.3cmなり。下図は,この値をグラフにしたものです。


 明治っ子では14~15歳が伸び盛りでしたが,平成っ子では11~12歳となっています。なるほど。よく言われるように,伸び盛りの時期が早くなってきています。発達加速現象の可視化です。

 11~12歳といったら,小学校5年生から6年生にかけてでしょうか。最近では,この時期が一番の伸び盛りであると。こういう急激な身体の成長に直面し,子どもの心の揺れも大きくなることに注意が要るでしょう。

 私は今,アニメの「あずきちゃん」に見入っています。いみじくも小学校5年生,上記の統計でいう「伸び盛り」の子どもたちの物語です。
http://www6.nhk.or.jp/anime/program/detail.html?i=azuki

 このアニメの面白さは,大人への過渡期(思春期)にさしかかりつつある子どもたちが,大人としての役割を遂行しようと試行錯誤する様が描かれていること。その最たるものは,恋愛です。

 働く子どもの姿が出てくるのもいい。ラーメン屋のケンちゃんは店のお手伝いをしますし,エリート家庭の勇之助くんも,欲しい物を買うために,ケンちゃんのラーメン屋でアルバイトをします。皆で力を合わせて,無人のペンションを切り盛りする話もいい。

 伸び盛りの子どもたちに,一人前と言わぬまでも「半人前」の役割を与えるのは,身体と心のギャップに由来する心的葛藤の解消にもいいのではないかと思います。

 今の中学校では,1週間程度の職場体験学習が実施されていますが,こういう体験の機会をもっと自然な形で提供できたらいい。自営業がめっきり減った今では,それはなかなか難しいことですが,家庭でのお手伝いがその機能を果たすことはできるでしょう。

 これから共働き世帯がますます増えてきますが,伸び盛りの子どもにも,それを後押しする力になってほしい。お手伝いは,子どもの道徳意識の涵養や良好な自己イメージの形成に寄与します。来週公開される『日経デュアル』の記事で,この点の実証データをお見せしましょう。

 伸び盛りの子どもの苦悩の源泉は,先に書いたように,成長する身体と未熟なままの心のギャップです。これを埋めるべく,彼らに「役割」を与えること。重要なのは,このことです。子どもは庇護されるべき存在ですが,彼らをもっと信用し,共に社会を支える存在として認めることも大事であると思います。

2016年12月22日木曜日

都道府県別の部活のブラック度

 スポーツ庁より,今年度の全国体力テストの結果が公表されました。正式名称は『全国体力・運動能力等調査』で,全国学力テストと同じく,毎年度実施されています。

 小学校5年生と中学校2年生の体力を計測するものですが,対象の児童・生徒や学校に対する質問紙調査も含まれています。今年度の目玉は,中学校調査において,部活に関する事項を尋ねていることです。

 運動部に属している生徒に対し,週間の平均部活時間を訊いています。また学校に対しては,部活の休養日を週にどれほど設けているかを問うています。

 公立中学校のデータをみると,男子の週間の平均部活時間は952.3分,女子は967.0分です。女子のほうが長いのですね。部活の休養日を設けていない学校の割合は,22.0%となっています。およそ2割。この点は,新聞でも大きく報じられました。

 これは全国の数値ですが,何と何と,都道府県別の数値も公表されています。これは前例のないことです。スゴイ。下に掲げるのは,都道府県別の一覧表です。


 運動部の平均活動時間は,男女とも最長は千葉,最短は岐阜となっています。男子でいうと,千葉は1099分ですが,岐阜は657分。違うものですねえ。

 部活の休養日を設けていない学校の割合は,マックスの大阪では67.5%ですが,山形と福井では皆無となっています。

 上表の3つは,部活のブラック度を測る指標として使えるでしょう。これらを合成して,各県の部活のブラック度を計測する単一尺度を作ってみましょう。

 それぞれは値の水準が違うので,単純に足したり均したりはできません。そこで,47都道府県中の最高値が1.0,最低値が0.0となるような相対スコアに換算します。計算式は,以下です。

 相対スコア=(当該県の値-全県の最低値)/(全県の最高値-最低値)

 たとえば,東京の男子の平均活動時間(788.78分)をスコアにすると,(788.78-657.17)/(1098.92-657.17)=0.298,となります。女子の活動時間のスコアは0.390,休養日の設けていない学校の比率のそれは0.946,となります(表の左欄)。

 東京の公立中学校の部活ブラック度は,これら3つのスコアの平均をとって,0.545という数値で測られる次第です。

 同じやり方で,47都道府県の部活ブラック度スコアを出し,ランキングにすると下表のようになります。運動部の平均時間と休養日不定の学校比率から試算した,部活のブラック度の尺度です。


 トップは奈良,2位は愛媛,3位は神奈川となっています。上位には,大都市の近郊県が多い印象です。中部や東北には,部活が比較的ホワイトな県が多くなっています。

 中学校の部活のブラック度を可視化した数値ですが,実はこれが,正社員の長時間労働率と有意に相関している。私は前に,プレジデント・オンラインの連載にて,正社員のブラック就業率を出したことがあります。年間300日・週60時間以上働いている者の比率です。電通で過労自殺した女性社員に匹敵するレベルで働いている,過労死予備軍です。

 横軸に上表の部活ブラック度スコア,縦軸に正社員の長時間就業率をとった座標上に,47都道府県を配置してみました。下図をご覧ください。


 攪乱が結構ありますが,2つの指標の間にはプラスの相関関係が見受けられます。相関係数は+0.3765で,47というケース数の場合,1%水準で有意と判断されます。

 「ブラック部活は,ブラック就労に続く学校」と,どなたかがツイッターでつぶやかれていましたが,地域単位のデータにて,それを匂わせる傾向が出てきました。他の要因を介した疑似相関の可能性も大ですが,あまり完璧を求めず,興味深いファクトが出てきたらどんどん公開しようというのが,私の考えです。


 部活は、規律ある集団行動の精神を生徒に体得させるなど、好ましい教育効果を持っています。日本企業の高いパフォーマンスを支える人材を供給する機能も果たしています。


 しかし,滅私奉公も厭わない人間を大量生産しているともいえます。ブラック企業は,体育会系の学生を好んで採るといいますし。

 活動を節度あるものにする必要があるのは,言うまでもありません。わが国に長らく蔓延っている,職域の病理を治療するためにもです。

2016年12月20日火曜日

創作物の発信頻度の国際比較

 現在では,インターネットにより,誰もが自分の創作物を発信し,それを見聞きした人からフィードバックを得ることができます。

 あくせく働いてモノを大量生産する時代は終わり,21世紀では,斬新な「イノベーション」が重要となるのは,疑い得ないところです。子ども期より,インターネットを使って,自身の創作物を世に問う経験を持つことは重要といえましょう。

 先日,データが公表された「PISA 2015」では,15歳の生徒に対し,ズバリこの点を尋ねています。「学校外において,デジタル機器を使って,自分の創作物(created contents for sharing)をネットにアップするか」という問いです。創作物の例として調査票では,音楽,詩,動画,コンピュータ・プログラムなどとされています。
http://www.oecd.org/pisa/data/2015database/

 選択肢は,①「全く・ほとんどしない」,②「月に1・2回」,③「週に1・2回」,④「ほとんど毎日」,⑤「毎日」,です。③~⑤を「週1回以上」にまとめて,3カテゴリーの回答分布を国別にとると,下図のようになります(無回答は除く)。


 「週1回以上」の比率が高い順に44か国を並べましたが,日本は見事に最下位です。日本の青少年は,ネットで創作物を発信する頻度が世界で最も低くなっています。青少年の8割りが,全くないしはほとんどそれをしていないと。

 彼らはよくスマホを眺めていますが,情報を受け取るばかりで,それを創造し発信する姿勢には欠けるようです。

 15世紀の印刷術の発明はグーテンベルク革命といわれますが,インターネットの出現は「ポスト・グーテンベルク革命」と形容されます(潮木守一教授)。一部の人間だけでなく,誰もが手軽に情報を発信できる。この文明の恩恵をもっと利用するよう,学校の情報教育などにおいて,子どもを仕向けたいものです。

 次期学習指導要領の目玉は「アクティブ・ラーニング」ですが,AL形式の授業でも,皆の創作物を積極的に発信し,外部のフィードバックをもとに洗練させていく活動がされてもよいでしょう。生徒のインセンティブを高めることにもなります。

 むろん,よからぬ情報を発信してしまわないよう,情報モラルの指導も並行してです。

 ツイッターで何回も書いてますが,マスコミ志望の学生さんは,大学に入ったらすぐに自分のオリジナル・メディアを持ち,在学中にかけてそれをじっくり育てるべし。その作物が,シューカツの強力な武器になります。怪しい塾などに行ってはいけません。

 ある出版社の編集者さんに聞いたのですが,採用側も,受験者のSNSやHP,ブログなどをしっかり見るそうですよ。充実したコンテンツを持っていると,面接はその話題で盛り上がり,事が有利に運ぶとのこと。

 私はいま,4つのメディアで連載を持っていますが,仕事をいただいたきっかけは,言わずもがな,このブログを編集者さんが評価してくださったことによります。

 日本の青少年よ,文明の恩恵を利用して,自分を発信すべし!

2016年12月17日土曜日

有給に対する意識の国際比較

 表記のグラフをツイッターで発信したところ,見てくださる方が多いようなので,ブログにも載せておこうと思います。
https://twitter.com/tmaita77/status/808911372797014016

 実は,ツイッターで発信したのは,2015年のデータによるものでした。ここでは,最新の2016年データをもとに,同じグラフを作ってみましょう。元データは,エクスペディア社の『世界26か国有給休暇・国際比較調査2016』にものです。
https://welove.expedia.co.jp/infographics/holiday-deprivation2016/

 調査対象は,各国の18歳以上の有業男女で,今年9月にインターネット調査をしたとあります。

 さて,日本はどういう位置になるか。横軸に「有給日数を知らない」,縦軸に「有給取得に罪悪感を感じる」という回答比率をとった座標上に,データのある12か国を散りばめると,下図のようになります。


 前年と同じく,日本はぶっ飛んだ位置にあります。日本人は,世界一の休み下手。イノベーションには休むことが不可欠といいますが,労働生産性の低さと関連しているかもしれません。

 12月7日の記事でみたところによると,日本と韓国は,子どもの学力が高いにもかかわらず,労働生産性が低い社会です。あくせく働いてモノをつくる20世紀型から,斬新なイノベーションが重要となる21世紀型へと変化している情勢に,ついていけてないといえるでしょう。

 頭を機械にして,だらだらと長時間ルーティンワークするのでは,高いクオリティのものは生まれません。

 日本人が有給取得をためらう理由の1位は,人手不足ということですが,それは不可避の趨勢とみなし,サービスの質を落とせばいいのでは。すかいらーくが24時間営業を止めるそうですが,英断であると思います。

 私も来年から仕事を減らし,腰を据えて,4冊目の単著執筆にかかろうかと思っています。ちょうど,連載を持っている一社とトラブルになっていますので,こことの関係は切り,負荷を減らそうかなと考えています。

2016年12月16日金曜日

教員の同業婚の国際比較

 最近,結婚に関するデータをいじっています。昔と違い,現在では恋愛婚が主流です。相思相愛の者が自由意志で結ばれるのですが,くっつくのは似た者同士であるのがしばしば。

 たとえば,夫婦の学歴の組み合わせをみると,同学歴婚の夫婦が多くなっています。
https://twitter.com/tmaita77/status/749464193691115520

 おそらくは,職業についても同じことがいえるでしょう。成人になると,職場が主な生活の場になりますが,職場結婚が多いですよね。とくに,教員の同業婚の多さは,よく言われるところです。こう言っては何ですが,教員の生活世界は狭いですし・・・。

 私は,教員養成の老舗の東京学芸大学を出ましたが,父母とも教員という学生が多かったような気がします。曾祖父母,祖父母,父母の全員が教員という,純粋教員一家の級友もいました。

 教員の同業婚率を出せないかと前から思っていたのですが,このほど公表された,OECD「PISA 2015」のデータを使うことで,それができることを知りました。

 最新の2015年調査では,対象の15歳生徒に対し,父母の職業を尋ねています。具体的な職業名を書いてもらい,後からそれを分類する「アフターコード」形式です。この回答を加工することで,目的の数値を試算することが可能です。

 私は,父が教員である生徒のうち,母も教員である者が何%かを計算してみました。ここでいう教員とは,以下の3カテゴリーに分類されるものをいいます。数字は,コード番号です。

 2330 Secondary education teacher
 2340 Primary school and early childhood teacher
 2341 Primary school teacher

 就学前から中等段階の学校の教員,つまり,幼稚園から高校の先生と考えてよいでしょう。日本の15歳生徒でいうと,父が教員である者は130人です。このうち,母も教員であるのは50人。比率にすると,38.5%となります。この数値をもって,教員の同業婚率とみなしましょう。日本の場合,およそ4割なり。

 PISA調査は国際調査ですので,他国の数値も出すことができます。下表は,値が高い順に並べたランキング表です。%の母数が50人に満たない国は,分析対象から外しました。以下のデータは,「PISA 2015」の生徒質問紙調査のローデータを加工して,独自に計算したものであることを申し添えます。
http://www.oecd.org/pisa/data/2015database/


 タイと韓国では,値が50%を超えています。有配偶で子どもがいる教員に限ると,およそ半分が同業婚であると推測されます。日本はおよそ4割で,比較対象の47か国の中では高いほうです。47か国の平均値は,28.9%なり。

 15歳生徒の父母の職業から出した試算値ですが,同業婚率4割というのは,他の職業に比しても高いと思われます。先述のように,教員は生活世界が狭いので,職場結婚の比重が大きくならざるを得ないのかもしれません。

 前に,教員の社会人経験者率を出したことがありますが,日本は韓国と並んで最低水準でした。異業種の人と知り合う機会が少ないのも,無理からぬこと。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/01/post-4389.php

 教育の役割は,社会が求める人材を育てることですが,それを担う教育が「社会」を知らぬというのは問題だ,という意見があります。それもあってか,近年では教員研修の中に,民間企業に教員を派遣する長期社会体験研修が組み込まれたり,採用試験でも,社会人経験者が歓迎されたりします。

 結構な取組だとは思いますが,「上から」の押し付けだけでなく,もっと教員が自発的な意志で社会に出れるようにすることができないものか。そのための条件となるのは,教員にヒマを与えることです。2012年の中教審答申で,教員を高度専門職と位置付ける方針が明示されましたが,専門職のメルクマールは自律性なり。

 医師や研究者のレベルまでとはいいませんが,これをある程度は担保しないと,教員が実質的に専門職とみなされるのは難しいでしょう。いつまでも,「準専門職」という,苦肉の言い回しが当てがわれることになります。

 教員の同業婚から話が広がってしまいましたが,今回のデータは,教員の生活世界の狭さと同時に,その職業の性格についても,日本的な特徴を表しているように思います。

2016年12月14日水曜日

結婚期の未婚男女人口の地域比較

 男性にとって,結婚チャンスが開けた地域はどこか。前に,『住民基本台帳人口』のデータを使って,25~34歳の男女人口の地域比較をしたことがあります。

 しかるに,その中には既婚者も混ざってしまっています。今回は,この部分を除いた,未婚の男女に焦点を絞ります。これから結婚しようという,若き男女です。

 私は,2015年の『国勢調査』(第1次集計)のデータに当たって,25~34歳の未婚の男女人口を地域別に調べました。全国の数値を示すと,男性が387万1295人,女性が306万4310人です。男性のほうがかなり多くなっています。前者は後者の1.263倍なり。

 はて,この倍率は,地域によってどう違うか。まずは,47都道府県の統計をみてみましょう。


 どの県も,男性のほうが多いのは同じですね。しかし,「男性/女性」の倍率には結構幅があります。トップは栃木で,結婚期の未婚人口でみると,男性は女性の1.5倍超です。女性は県外に出ていくが,男性は,マイルドヤンキー流の地元志向とやらで,居残るのでしょうか。これはキツイ。

 倍率が一番低いのは,私の郷里の鹿児島です(1.044倍)。結婚期の未婚の男女人口に,ほとんど差がありません。鹿児島は,若者の県外流出が全国で最も激しい県ですが,出ていくのは,女性より男性が多いからでしょう。私も,そのうちの一人です。

 うーん。「結婚したいなら帰ってこい。居残っている女性はたくさんいるぞ」という,高校時代の恩師の言葉が思い出されます。

 なお,上表の「男性/女性」倍率をマップにすると,地域性が見て取れます。


 競争が比較的激しいのは,北関東と東海でね。その逆は,近畿と南九州なり。

 『国勢調査』からは,県よりも下った市区町村別のデータも出すことができます。さすがは,基幹統計ですね。市区町村レベルでみると,結婚期の未婚人口が「男性<女性」の地域も結構あります。男性にとって,チャンスが開けた地域といえましょうか。

 その顔ぶれをご覧に入れましょう。以下の掲げるのは,「男性/女性」倍率が1.0未満,つまり男性より女性が多い市区町村の一覧表です。倍率が低い順に並べました。


 倍率が最も低いのは,福岡市の中央区です。この都市的エリアでは,男性は女性の7割ほどしかいません。言葉がよくないですが,ハーレム度が全国で最も高いエリアということになるでしょうか。

 表をみると,過疎地域と都市地域が混ざっています。黄色マークは,25~34歳の未婚男女人口が1万人を超える,都市的エリアです。結構あるじゃないですか。鹿児島の県庁所在地の鹿児島市も,上位にランクイン。

 都内では,世田谷区,目黒区,杉並区が該当します。

 しかし,福岡の勢いがスゴイ。なぜ福岡に若年女性が多いかですが,九州の各県からの流入が多いのだそうです。女子の場合,東京への高跳びはダメだが,福岡ならいいと。親戚などがいるケースも多いということで。

 チャンスの多寡は,地域によってかなり違うことがうかがえます。上表にランクインした,自治体の関係者のみなさん。今回のデータをご存知でしたか。自地域の「知られざる」魅力は,丹念に探せば結構あるものです。白々しいPRだけでなく,こういう統計資料の発掘も,地方創生を促す材料になるのではと思います。

2016年12月10日土曜日

世界「最凶」都市

 一番物騒な国はどこか? 前に,国別の殺人発生率のランキングを出したことがありますが,観光客の多くが訪れるのは,それぞれの国の首都でしょう。

 今回は,各国の首都の殺人発生率を出し,高い順に並べてみました。ここでいう首都とは,人口が最も多い都市のことです。日本は東京,アメリカはニューヨークです。

 殺人発生率とは,当該都市の人口10万人あたりの殺人認知件数をいいます。年次は2010年で,資料は,国連薬物犯罪事務所(UNODC)の「Crime and Criminal Justice Statistics」です。原資料に,計算済みの数値が掲げられています。
http://www.unodc.org/unodc/en/data-and-analysis/statistics/crime.html

 エクセルファイルでデータが出ているので,ありがたい。自分のエクセルにコピペして,高い順に並べるだけです。作業時間,わずか1分なり。


 予想通り,上位は中南米の国々で占められています。トップはホンジュラスかと思いましたが,2010年の首位はグアテマラとなっています。グアテマラ・シティの10万人あたりの殺人発生件数は116.6件で,東京(0.3件)の400倍近くです。

 先月,邦人大学生が殺害された,コロンビアのボゴタも上位にあります。

 私は学生の頃,ブラジルに行ったことがありますが,旅行会社から渡されたパンフに「強盗は追うな,抵抗するな,顔を見るな」と書いてありました。危険といわれるエリアには行かない,カメラなどは出さない。こういう注意事項を守って,地球の裏側の社会を旅したいものです。

 中南米のガイドとしては,旅行作家の嵐よういちさんの筆になる『ブラジル・裏の歩き方』彩図社(2014年)がいいと思います。
https://www.saiz.co.jp/saizhtml/bookisbn.php?i=4-88392-999-3

2016年12月9日金曜日

横浜に行く

 今日は,お昼に新百合ヶ丘駅前のホテルで取材を受けた後,横浜に行ってきました。

 あずきちゃんの第25話「トモちゃんの初デート」に感動したのですが,トモちゃんとまことくんのデートコースを見てみたいと思ったからです。目当ては,港が見える丘公園の展望台。

 町田から横浜線で横浜に出て,みなとみらい線のターミナルの元町・中華街駅で下車。徒歩15分ほどです。結構急な階段を昇りました。


 なるほど。アニメで出てきた場所と瓜二つ。2人が座ったベンチはありませんでしたが,ベイブリッジがよく見えるスポットです。カップルが何組かいましたが,土日の夕刻や夜間に行ったら,大変な光景に出くわすのでしょうね・・・。

 そのあと,階段を下って,山下公園の海沿いのコースを歩きました。ここは学生時代にきたことがあります。20年ぶりかな。よく知られている,定番のコースです。


 ベンチがたくさんあり,仲睦まじく座っているカップルが目につきました。

 帰りは,海の上を走るシーバスで,横浜駅東口まで行きました。山下公園から片道700円です。船上から眺める,ライトアップされた横浜港が美しかった。


 天気のいい平日に,自分の行きたいところに,日帰りでぶらりと行ける。収入は少ないですが,こういうことができる生活を,とても気に入っています。

2016年12月7日水曜日

学力と労働生産性

 OECD「PISA 2015」の結果が公表されました。15歳生徒の科学的リテラシー,読解力,数学的リテラシーを測る,3年間隔の国際学力調査です。
http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/

 例によって,日本の平均点のランクに関心が寄せられていますが,私は,それぞれの社会の特性との関連に興味を持ちます。「こういう社会だから学力が高い(低い)」ではなく,「学力の多寡が社会に与えている影響」という因果方向を考えてみましょう。

 私は,上記調査の平均点が,社会の労働生産性とどう関連しているかを調べてみました。普通に考えれば,学力が高い,つまり国民の潜在パフォーマンスが高い国ほど労働生産性が高いと思われますが,現実はどうか。

 労働生産性とは,各国のGDP(国内総生産)を就業者数で除した値です。労働者一人当たりのパフォーマンスの指標として,よく使われます。総務省『世界の統計 2016』という資料に,各国の計算済みの数値(米ドル)が掲載されています。2013年のデータです。
http://www.stat.go.jp/data/sekai/index.htm

 横軸に「PISA 2015」の科学的リテラシーの平均点,縦軸に労働生産性をとった座標上に,双方が分かる34か国を配置すると,下図のようになります。


 傾向は,うっすらとしたプラスの相関ですね。しかるに,右側の学力水準が高い国だけをとると,労働生産性には幅があります。

 日本は,15歳の科学的リテラシーは34か国でトップですが,労働生産性は平均以下です。うーん,国民の潜在タレントが十分に活かせていない社会ということになるでしょうか。お隣の韓国もです。右下の社会は,こういうタイプの社会として括れるでしょうか。

 まあ確かに,日本は優れたマンパワーを無駄にしている国です。女性の社会進出の制限,高学歴人材の失業(ワーキングプア化)といった事実を想起すれば十分でしょう。あと,通勤地獄のような条件も生産性を下げているといわれます。

 こういう歪みを是正し,もっと上方にシフトしたいものです。北欧のノルウェーはスゴイ。

 これから先,少ない労働力で社会を上手く回していくことが求められるようになります。せっかくのハイタレントを浪費している場合ではありません。まずなすべきは,人口の半分を占める女性の社会進出を促すことであるのは,間違いありますまい。

2016年12月5日月曜日

良心的な歯医者さん

 今年で40歳になり,体にいろいろガタがきました。

 7月に初のギックリ腰になり,8月中は帯状疱疹に苦しめられました。また同月中旬に,2年前に抜髄した左奥歯が痛くなり,地獄の苦しみを味わいました。

 ちょうどお盆で,馴染みの小平の歯医者さんは休み。そこで,地元の駅チカの歯医者さんに駆け込んだのですが,盆休みにもかかわらず,その翌日の昼に診ていただけました。

 その後,左奥歯の根の再治療をしていただきました。素人ながら「保険診療では赤字になるんじゃないか」と心配になるほど,良心的な治療をしてくださったと思います。

 永山センター歯科という歯医者さんです。京王・小田急永山駅とつながった,グリナード永山という建物の5階にあります。通院には,とても便利です。
http://www.n-shika.jp/index.html

 複数の先生がいる歯科医院ですが,担当医は決まっています。私は,A先生にお世話になりました。礼儀正しい,紳士的な先生です。年は,私よりちょっと上くらいかしら。

 医院名の通り,地域のセンターのような歯医者さんで,いつも多数の患者でごった返しています。それだけ,慕われているのでしょうね。

 私はこの歯科医院の回し者ではありませんが,この辺りにお住まいの方に,こういう歯医者さんがあるよ,ということをお伝えしたく思いました。

2016年12月4日日曜日

お手伝いの効用

 師走ですが,いかがお過ごしでしょうか。年末になると,大掃除やら正月の準備やらで慌ただしくなりますが,お子さんがいる家庭では,相応の役割を担わせたいものです。いわゆる,お手伝いです。

 お手伝いの効用については,いろいろ言われています。家事スキルのアップはもちろん,家族と協働して事を成し遂げることで協調性が育まれる,他者への共感(思いやり)を持つことができるようになるなど。

 人間は社会的動物で,他者との協働なしには生きられません。人格形成の途上にある子どもにとって,家族という小社会を協働して支える経験を持たせることは,とても重要だと思います。

 データにて,お手伝いの効用の一端を垣間見てみましょう。国立青少年教育振興機構の『青少年の体験活動等に関する実態調査』(2014年度)では,小・中・高校生に対し,家でどれくらい手伝いをするか尋ねています。9つの行動を提示し,それぞれの頻度を答えてもらう形式です。
http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/107/


 これらの実施頻度を合成して,お手伝いの実施度を測る尺度を作成しましょう。「1」という回答には4点,「2」には3点,「3」には2点,「4」には1点のスコアを与えます。

 この場合,対象者のお手伝い実施度は,9点から36点までのスコアで計測されます。全部「1」を選んだバリバリのお手伝いっ子は36点で,どれも全くしてない子は9点となる次第です。いずれかの項目に無回答がある者は,スコアの算定ができませんので,分析対象から外します。

 本調査の対象は,小4~6の児童,中2と高2の生徒ですが,発達段階の影響を除くため,小4の児童に対象を限定します。年齢でいうと,おおむね10歳です。さらに,家庭環境の影響が入るのを防ぐため,年収400万以上600万未満の家庭の児童に絞ります。小4児童でみた場合,ボリュームゾーンの年収階層です。

 この層に分析対象を限った場合,上記のお手伝いスコアの分布は,以下のようになります。スコアを算出できた647人の分布データです。


 真ん中あたりにピークがあるノーマル分布です。これをもとに対象の児童を,お手伝い実施度「低群」,「中群」,「高群」に分けようと思いますが,どこで区切ったらいいものか。

 20点以下を「低群」,21~28点を「中群」,29点以上を「高群」とするのがベストかと思います。これだと,低群が19.8%,中群が60.4%,高群が19.8%というように,両裾がちょっと薄い,ほどいい分布になります。サンプルサイズは順に128人,391人,128人であり,分析に耐え得る数です。

 お手伝いの実施度で分けたこの3つのグループで,生活態度や意識がどう違うか。「お手伝いをする子どもほど,道徳意識が高い」というレポートを見たことがありますが,この点を吟味してみましょう。

 「困っている人がいたら助ける」という行為の実施頻度とのクロスをとると,下図のようになります。サンプルサイズが上記と異なるのは,無回答を除いているためです。


 ほう。実にクリアーな関連ですね。お手伝いをよくしている群ほど,困っている人を見かけたら助けると。

 これは,家庭の経済力が普通の小4児童のデータです。家庭環境や発達段階の影響は,極力除かれています。お手伝いによる,他者への共感性の涵養というような,因果経路があることを想定してもよいのではないでしょうか。

 先日のプレジデント・オンラインの家事で,都道府県別の道徳意識の定量化したのですが,トップは秋田でした。秋田は,通塾率が全国最低なのですが,その分,家庭でのお手伝い実施度が高い。地域データでも,お手伝いの効用を支持する結果が出ています。
http://president.jp/articles/-/20705

 想像がつくでしょうが,他の面の道徳意識や自己イメージとも,強く関連しています。多面的な分析は,次回の『日経デュアル』記事でやることにいたしましょう。読者層は,子育て中の親御さんですしね。お楽しみに。

2016年12月2日金曜日

房総半島を一周

 今日は天気が良かったので,遠足に行ってきました。千葉の房総半島を,内房線と外房線で一周してきました。前から辿ってみたいと思っていたルートです。

 小田急で新宿まで出て,中央線で東京へ。そこから総武線快速(G車)で千葉に行き,内房線の鈍行で館山まで下りました。館山着が午後1時ころ。


 ここで下車して海辺を散策しようと思いましたが,安房鴨川行きの電車がすぐの発車だったので乗り込みました。右手に広がる海の景色に見とれて列車に揺られること45分で,内房線のターミナルの安房鴨川(あわかもがわ)に到着。


 駅の外に出て直進すること400メートルで,海辺の公園に出ます。房総の海を1時間ほど,ぼんやりと眺めていました。もう師走ですが,サーフィンをやっている人もいましたね。


 3時ころに駅に戻り,東京行きの特急わかしおの発車まであと30分ほど。駅前の見えにくい所にレンタルサイクルの店があり,「ああ,借りればよかった」と後悔。駅の待合室でお喋りしている地元の高校生をウォッチングして時間をつぶしました。

 特急わかしおで東京まで戻り,中央線と小田急線で帰ってきました。

 いやあ,千葉は広い。朝早くに出て,帰りは夜の8時近くになりました。郷里の鹿児島から羽田への飛行機から,千葉の房総半島をよく見下ろしたものですけど,実際に回ってみると,その広さに驚かされます。

 千葉は一度回ってみたいと思っていたので,いい経験になりました。年内に,あと一回遠足に行きたい。ズバリ横浜。「あずきちゃん」のトモちゃん&まことくんのデートのコース,港の見える丘公園でしたっけ。行ってみたいなと思います。土日の夕刻に行ったら,大変な光景に出くわしますので,平日にね。

2016年12月1日木曜日

40歳未婚オトコの何%が,20代の女性と結婚できるか

 長ったらしいタイトルになりましたが,この問題を統計で検討してみましょう。

 前々回の記事では,私と同じ40歳の未婚男性が結婚できる率を出してみました。2015年10月時点の40歳未婚男性は28万2217人(①)。同年中の40歳男性の初婚件数は7585件(②)。よって,40歳未婚オトコのうち,めでたく結婚できた者の率は,②/①=2.69%となった次第です。

 しかるに,結婚相手の女性の年齢には幅があります。自分と同じくらいか少し下の,30代後半~40代前半あたりの女性と結婚した者が多いでしょうが,20代の若い女性と結婚できた者も中にはいるでしょう。

 結婚相談所には,私と同じアラフォーの未婚男性が押し寄せていますが,「できれば20代の女性がいい」などという希望を口にする人も少なくないと聞きます。そういう「高望み」をいかにしてクールアウトさせるかが,スタッフの腕の見せ所なのですが・・・。

 先ほど書いたように,2015年中の40歳男性の初婚件数は,7585件です。これは厚労省『人口動態統計』の数値ですが,原資料では,結婚相手の女性の年齢別の集計もなされています。相手の女性の年齢内訳を整理すると,下表のようになります。


 1歳刻みの細かい統計ですが,最も多い結婚相手の年齢は37歳となっています(615人)。その次が36歳で612人。自分よりちょっと下が多いですね。

 しかし,自分より一回り以上も下の若い女性と結婚できた者もいる。1098人の40歳未婚オトコが,20代の女性と結ばれています。ベースの40歳未婚男性数(28万2217人)で除すと,出現率は0.39%,256人に1人ということになります。

 宝くじとは言わぬまでも,やはり少ないですね。

 以上は40歳の未婚男性のデータですが,当然ながら,年を重ねるにつれチャンスは減じていきます。5歳刻みのステージごとに,様相がどう変わるかをみてみましょう。①トータルの結婚率,②30代女性と結婚できた者の率,③20代女性と結婚できた者の率,の3つの%を計算してみました。


 私と同じ40歳の未婚オトコでみると,①トータルの結婚率は2.69%,②30代女性との結婚率は1.78%,③20代女性との結婚率は0.39%です。

 これが50歳に未婚オトコとなると,①が0.47%,②が0.14%,③に至っては0.03%にまで下がってしまいます。50歳の未婚男性が,20代の女性と結婚するチャンスは0.03%,3333人に1人なり。これはもう,宝くじレベルの確率ですね。

 希望を剥奪するようなデータが出てしまいましたが,これが現実。今回のデータを,各地の婚活関係者の方々に使っていただけたらと思います。

 しかし,恋愛は理屈にあらず。加齢とともに魅力を増していく男女がいるのも確かです。「男らしさは内面から出るもの」。私の小6の担任教師がこう言っていたのを思い出します。

2016年11月30日水曜日

2016年11月の教員不祥事報道

 紅葉も散ってきました。11月も今日でおしまいです。

 今月,私がネット上でキャッチした教員不祥事報道は50件ジャストです。寒くなってきたので,酒がらみの不祥事が多くなっていますが,驚くべき事案も見受けられます(赤字)。

 一番下の事案に「保育教諭」という聞きなれない職名がありますが,幼保連携型の認定子ども園には,幼稚園教諭免許と保育士資格を共に持った「保育教諭」を置くことが義務づけられています。

 明日から師走です。私はヒマですが,みなさん,忘年会など,さぞお忙しくなるでしょう。酒がらみのトラブルにはご注意を。

 ブログの背景を,師走バージョンに変えます。2016年もあと1か月,無事に年を終えることができますように。

<2016年11月の教員不祥事報道>
暴行:特別支援学校の教諭が生徒に 容疑で逮捕(11/1,毎日,兵庫,特,男,57)
女子生徒と性的行為 仙台南高元教諭の男起訴(11/1,河北新報,宮城,高,男,47)
酒気帯びの高校教諭逮捕 (11/2,和歌山放送,和歌山,高,男,52)
中学臨時講師が飲酒運転し当て逃げ(11/2,神戸新聞,兵庫,中,男,20代)
授業中、65歳の男性講師が女児の顔にバケツ投げつけ
  (11/2,テレ朝,兵庫,小,男,65)
警官突き飛ばした容疑、中学教諭の男を逮捕(11/2,サンスポ,福岡,中,男,40)
児童にわいせつ行為 帯広の小学教諭免職(11/3,北海道新聞,北海道,小,男,48)
上田市立中学の男性教諭、酒気帯び運転の疑い(11/3,信濃毎日,長野,中,男,24)
県教委が2人懲戒処分 休暇不正取得と盗撮(11/4,伊勢新聞,三重,盗撮:高男34)
<セクハラ>50歳教諭処分 同僚の手つかみ「なぜ彼氏が」
 (11/5,毎日,兵庫,中,男,50)
広島の特別支援学校教諭を酒気帯び運転容疑で逮捕(11/6,産経,広島,特,男,57)
同僚女性教諭の胸触る 京都府教委が男性教諭を停職1カ月に
 (11/9,京都新聞,京都,高,男,46)
修学旅行中に風俗嬢を自室に招きトラブルに(11/10,サンスポ,徳島,小,男,28)
横浜市立小学校の教諭 痴漢容疑で逮捕(11/11,テレビ神奈川,神奈川,小,男)
小学校教諭を酒気帯び運転の疑いで現行犯逮捕(11/12,産経,長野,小,男,49)
小学校教諭、酒気帯び運転容疑 歩道乗り上げる(11/13,朝日,北海道,小,男,55)
トイレで女子大生を押し倒し腹蹴り、顔殴る…高校教諭を暴行容疑で逮捕
 (11/14,サンスポ,東京,高,女,29)
仮面女子の文化祭ライブを勝手に企画 都立高の主幹教諭を減給処分
 (11/14,サンスポ,東京,高,男,56)
男子高生を買春容疑=高校教諭を逮捕-(11/15,時事通信,神奈川,高,男,30)
発達障害ある女子生徒、教諭に髪切られ不登校に(11/15,読売,山梨,中,女)
懲戒処分:部活で県立高教諭体罰 県教委、今年度3件目
 (11/16,毎日,岩手,高,男,30代)
校舎の機械室が「喫煙所」、教諭3人隠れタバコ(11/16,読売,大分,小)
元ろう学校臨時講師を強制わいせつ容疑で逮捕(11/16,産経,奈良,特,男,33)
「風俗店で働いている」と中傷ビラまき 風俗店通い千葉の中学教頭逮捕
 (11/16,産経,千葉,中,男,48)
公衆浴場で男性の体触る 中学教諭停職処分(11/17,河北新報,宮城,中,男,47)
ひき逃げ容疑、教諭逮捕 菊川署、自転車の男性軽傷
 (11/17,静岡新聞,静岡,中,男,53)
通勤電車でスカート内動画盗撮 小学校教頭を逮捕
  (11/18,神戸新聞,兵庫,小,男,55)
女子生徒や保護者にわいせつ行為 川口市の男性高校教諭
 (11/18,テレ玉,埼玉,高,男,54)
札幌市の中学教諭がまた逮捕(11/19,NHK,北海道,中,男,26,わいせつ)
小学校の女子トイレにカメラ 侵入容疑で教諭逮捕(11/19,朝日,山形,小,男,25)
窃盗の高校教諭を懲戒免職 県教委が処分発表(11/19,山陽新聞,岡山,高,男,29)
藤枝の中学教諭 万引容疑、逮捕 静岡中央署(11/20,静岡新聞,静岡,中,男,50)
名古屋市立小教諭が強制わいせつ容疑 保護者から告訴状
 (11/21,朝日,愛知,小,男,36)
強制わいせつ:銭湯で男子中学生被害、27歳教諭逮捕(11/22,毎日,大阪,中,男,27)
女性教諭、生徒に侮蔑的あだ名 西宮市が解決金(11/22,神戸新聞,兵庫,中,女,58)
小学校教諭、酒気帯び運転で懲戒免職(11/22,東奥日報,青森,小,男,35)
部活指導メール 主将に1年600件 神戸の高校(11/23,神戸新聞,兵庫,高,男,50代)
家に侵入し強姦か 小学校教諭を逮捕 (11/23,日テレ,長野,小,男,38)
長良高生40人の家庭調査票紛失 男性教諭(11/23,岐阜新聞,岐阜,高,男,30代)
強要未遂容疑で小学校教頭逮捕=女性脅し面会求める
 (11/24,時事通信,滋賀,小,男,50)
教諭平手打ち 小3一時難聴に(11/25,神戸新聞,兵庫,小,男,30代)
児童盗撮で49歳教諭免職=担任クラスで―福島教委(11/25,時事通信,福島,小,男,49)
懲戒処分:「勤務中に飲酒」県立高教諭減給 修学旅行の昼食時
 (11/25,毎日,山梨,高,男,49)
教え子の児童にわいせつな行為などした疑い 小学校講師逮捕
 (11/26,フジテレビ,茨城,小,男,26)
生徒と淫行の疑いで40代女性教諭を免職 沖縄県教委
 (11/26,沖縄タイムス,沖縄,高,女,40代)
小学教諭が女子児童の下半身を触る、抱きつく(11/28,サンスポ,東京,小,男,32)
愛知県尾張旭市の教諭を公然わいせつで処分(11/29,CBCテレビ,愛知,中,男,63)
学校のトイレや駅…3年間盗撮、40代教諭を免職(11/29,産経,兵庫,男,40代)
女児の体に触った疑いで教諭を逮捕 愛知県(11/30,CBCテレビ,愛知,小,男,45)
懲戒免職:同僚らの金盗み、保育教諭処分 静岡市
 (11/30,毎日,静岡,認定子ども園,男,30)

2016年11月27日日曜日

年齢別の結婚チャンス

 私は,40歳の未婚男子です。生涯結婚はしまい(できまい)と思っていましたが,前回の記事で出した配偶関係別の死亡率をみると,「これでいいのか」という気になったりします。

 それと,今見入っている「あずきちゃん」では,小学校高学年児童の積極的な恋愛が描かれているのですが,こういうのを見ると,「恋っていいなあ」と思います。このアニメはNHKで放映されていたものですが,恋の素晴らしさを子どもに伝えよう,というメッセージが込められているのかもしれません。
http://www.nhk.or.jp/anime/azuki/

 「今からでも遅くはない」。こう思いたいものですが,私のような40の未婚オトコが結婚できる確率は,どれほどなのでしょう。

 厚労省の『人口動態統計』によると,2015年中の40歳男性の初婚件数は7585件(①)です。先日公表された,2015年の『国勢調査』のデータによると,同年10月時点の40歳の未婚男性は28万2217人(②)。

 よって40歳の未婚男性のうち,めでたく結婚できた者の割合は,①/②=2.69%となります。約分すると,37人に1人です。

 予想通り狭き門ですが,晩婚化の進行により,以前よりは高まっているのでしょうね。

 他の年齢ではどうでしょう,1歳刻みの年齢ごとに分子と分母の数値を揃え,結婚率(%)を計算してみました。下表は,その一覧です。申し忘れましたが,分子・分母とも,日本人の数値であることを申し添えます。


 結婚率は,20代後半辺りで高くなっています。男性のピークは28歳の8.36%,女性は29歳の11.28%です。晩婚化の進展により,現在では,ピークは30歳近辺にあります。

 結婚率は加齢とともに低下し,私の年齢(40歳)では,男女とも2.69%なり。50歳になると,男性は0.47%,女性は0.32%まで下がります。

 統計上,生涯未婚率は50歳時点の未婚率とされるのですが,確かに,この年齢以降で結婚する人は少ないですね。妥当な仮定です。

 上表の男女の結婚率を,グラフにすると,下図のようになります。鮮やかな年齢曲線です。


「今からでも遅くはない」。無理にでも,こう思いたいものです・・・。

2016年11月25日金曜日

オトコは弱きもの

 小林製薬が「中年男性の食生活の実態調査」を実施し,データを公表しています。40~50代男性310人に対する,ネット調査の結果です。
http://blogos.com/outline/199436/

 想像がつくことですが,中年男性は食生活が乱れがちであるとのこと。ご飯を大盛にする,重ね食いをするなど。重ね食いとは,主食を複数食べることです。まあ私も,日高屋に行った時は,ラーメンとチャーハンをセットで頼むことが多いですが。

 こういう食生活を継続していると,健康にはよくないでしょう。生活習慣病のリスクも高くなります。今では,日本人の死因の6割は,がん,心臓病,脳梗塞といった生活習慣病です。

 この調査は,40~50代の男性を対象にしていますが,配偶関係によって結果はかなり異なると思われます。私のような未婚者は,結婚している有配偶者よりも,食生活の乱れは大きいのではないか。一人だと,好きなものばかり食べちゃいますからね。

 事実,男性の死亡率は配偶関係によって大きく違います。2015年中の40代前半男性の死亡者は3133人。同年10月時点の同年齢の男性人口は140万4593人。よって,2015年の40代前半男性の死亡率は,前者を後者で除して,ベース1万人あたり22.3人となります。

 しかるに同じ40代前半の男性でも,妻がいる有配偶者の場合,死亡率はわずか6.6です。未婚者の死亡率は,有配偶者の3倍以上なり。この差は,食習慣をはじめとした,生活の乱れの差に起因する部分もあるでしょう。

 ちなみに,妻と分かれた離・死別者でみると,死亡率はもっと高くなります。下図は,各年齢層の死亡率を線でつないだ,死亡率の年齢曲線です。外国人は含まない,日本人のデータであることを申し添えます。


 死亡率は加齢と共に上昇しますが,男性の場合,配偶関係による差が大きくなっています。どの年齢層でも,有配偶者より未婚者の死亡率が高く,離・死別者のそれはさらに高くなっています。女性には見られない,男性固有の傾向です。

 男性の離・死別者の場合,これまで妻に依存する部分が大きかっただけに,その支えが消失するや否や,急坂を転げ落ちるように,生活が乱れるのではないでしょうか。

 以上は,全死因のひっくるめた死亡率ですが,死因によって,様相は異なります。25~44歳の男女を取り出して,主な死因の死亡率を配偶関係別に計算してみました。

 下表は,算出された数値の一覧です。先ほどと違い,ベース人口10万人あたりの死亡者数にしています。


 どの死因の死亡率も,「有配偶 < 未婚 < 離・死別」ですが,男性ではその差が大きくなっています。

 右端は,離・死別者の死亡率が有配偶者の何倍かですが,男性は倍率が高い。自殺率は,実に10倍を超えます。

 「人は集団に属さずして,自分自身を目的にしては生きられない」。デュルケムの自己本位的自殺に関わる有名なテーゼですが,男性の場合,家族を喪失することは痛手となるようです。わが国では,離婚した場合,男性は妻と子どもの双方を失うことが大半ですし。

 上記のデータは,男性がいかに家族(女性の献身)に依存しているか,それを喪失した男性がいかに弱い存在かを示唆しているようにも思えます。デュルケムの『自殺論』でも,離婚の影響は男女で違い,男性では苦痛の源泉になるが,女性はその逆ということが述べられてます。

 私は,40歳ジャストの独身男です。結構,荒んだ生活をしていますが,こんな私でも,結婚して共に暮らす伴侶を得れば,少しは変わるのかしら。生涯,結婚はするまい(できまい)と考えてきましたが,これから10年の間に,考えが変わらないとも限らない,という気がしてきました。

2016年11月24日木曜日

有業女性の稼ぎの国際比較

 女性の社会進出が以前よりは進み,働く女性は増えています。しかしフタを開けると,増えているのは非正規雇用ばかりだったりする。私は前に,日本の女性の社会進出を「非正規依存型」と形容したことがあります。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=5728

 給与も多くはありません。男性に比べると,かなり低くなっています。この点のデータはたくさんありますが,国際比較をするとどうでしょうか。今回は,有業女性の稼ぎの国際比較をやってみようと思います。

 用いるのは,OECDの成人学力調査「PIAAC 2012」のデータです。この調査では,有業の対象者に年収を尋ねています。有業者全体の年収分布の中で,どの辺に位置するかを問う形式です。日本の場合,以下の6つの選択肢からチョイスしてもらっています。
http://www.oecd.org/skills/piaac/publicdataandanalysis/

 ①:10%未満  (192万円以下)
 ②:10%~   (193万円~)
 ③:25%~   (241万円~)
 ④:50%~   (315万円~)
 ⑤:75%~   (431万円~)
 ⑥:90%以上  (581万円以上)

 他国も同じです。それぞれのカテゴリーの年収幅を各国通貨で提示し,選択してもらう設問です。

 働き盛りの35~44歳の有業男女を取り出し,この設問の回答分布をとってみました。①~②を「下位25%未満」,③~④を「中間」,⑤~⑥を「上位25%以上」とし,3つの群の内訳をグラフにしてみましょう。下図は,主要6か国のものです。「瑞」は,スウェーデンを指します。

 データの計算は,下記サイトのリモート集計を使ったことを申し添えます。
http://nces.ed.gov/surveys/international/ide/


 男性は国際差はあまりないですが,女性はそれが大きくなっています。日本の女性でみると,下位25%未満の層が63%もおり,高収入層は11%しかいません。家計の補助的なパート就労が多いためでしょう。

 日本は,ジェンダー差が大きいですね。伝統的性役割観の残存を見て取れます。

 アメリカとスウェーデンは,女性であっても,低収入層(青色)よりも高収入層(緑色)のほうが多し。働き盛りの女性の稼ぎは,社会によって違うものです。

 上図は主要国のものですが,他の対象国のデータも散りばめた散布図をつくってみましょう。35~44歳の有業女性のうち,年収が「下位25%未満」の者の比率を横軸,「上位25%以上」の者の比率を縦軸にとった座標上に,17の国を配置すると,下図のようになります。


 左上は,低収入層が少なく高収入層が多い,つまり女性の稼ぎが相対的に多い社会です。右下は,その反対なり。

 斜線は均等線ですが,このラインより上にある4つの社会(カナダ,アイスランド,アメリカ,スウェーデン)は,低収入層よりも高収入層が多くなっています。

 日本は,東欧諸国と並んで,右下にあります。しかし,これから先は,徐々に左上に上がっていくのでしょうね。社会全体では人手不足,個々の家庭でみても,夫婦「二馬力」でないとやっていけない状況になりますので。

 今回は,35~44歳の有業女性という括りで見ましたが,未婚/既婚,子の有無といった条件により,稼ぎの水準は大きく異なると思われます。日本の場合はおそらく,「未婚」→「既婚」→「既婚・子持ち」という地位の変化につれ,稼ぎはガクンガクンと減っていくのではないでしょうか。

 リモート集計では,ここまで細かい変数統制はできませんが,ローデータを使えばそれは可能だと思います。今後の課題といたしましょう。

2016年11月21日月曜日

小学生のプアとリッチの比較

 11月5日の記事では,中年男性のプアとリッチで,属性,読書嗜好,自己イメージなどがどう違うかを比較しました。どの項目も大きな差があり,たとえば「今の生活に満足している」の割合は,プアが21.4%に対し,リッチは62.1%です。

 しからば,子どもではどうか。自我が未熟で稼得能力のない子どもの場合,生活行動や意識は家庭環境に強く規定されるとみられます。

 たとえば,勉強の得意度(自己評定)の一つをとっても,家庭の年収と非常に強く相関しています。国立青少年教育振興機構の『青少年の体験活動等に関する実態調査』(2014年度)では,小4~小6の対象児童に限り,家庭(世帯)の年収も把握しています。保護者調査票の問14です。
http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/107/

 これを,勉強の得意度(本人回答)とクロスさせると,結果は下図のようになります。年収群ごとの回答分布です。どの群も,サンプル数は十分です。ローデータをもとに作成したグラフであることを申し添えます。


 年収200万未満のプアでは,「とても思う」の割合は10.0%ですが,1200万以上のリッチでは32.8%います。前者は10人に1人ですが,後者は3人に1人。逆に,「まったく思わない」と答えた勉強ギライの児童は,年収が低い層ほど比率が高くなっています。

 ツイッターでも発信したグラフですが,ここまで明瞭な傾向が出ることに驚かされます。

 基本的な生活習慣や自己イメージについても,明瞭な階層差がみられます。小学生調査票の問5~問9の項目について,年収200万未満のプアと1200万以上のリッチの肯定率を比べてみましょう。

 最も強い肯定の回答割合を拾っています。問5は「必ずしている」,問6は「よくある」,問7は「とてもよく当てはまる」,問8は「とても思う」の回答比率です。問9は,得意な教科として選択した児童の割合をさします。無回答を除いた,有効回答ベースの比率です。

 繰り返しますが,ローデータから独自に計算した数値です。


 赤字は,リッチの回答比率がプアよりも1.5倍以上高い項目です。2倍を超える項目は,黄色マークも付しています。

 差が最も大きいのは,先ほどみた勉強の得意度です。リッチはプアの3.28倍! その次は,政治や選挙への関心となっています(プア9.0%,リッチ22.4%)。家庭で政治の話をするか,新聞を購読しているかなどによるでしょう。

 自発性や自尊心の階層格差も大きいですね。後者は,家で褒められる頻度の差にもよると思われます。

 教科の得意度は,実技教科は差がありませんが,主要教科には階層差があります。最も大きいのは算数で,プアは27.4%ですが,リッチは55.8%です。算数は高学年になると内容が難しくなりますが,家庭でサポートが得られるか,通塾の費用が賄えるかなどの条件が効いていると思われます。

 学力の階層格差がよくいわれますが,それが最も顕著なのは算数。この教科では念入りなテコ入れが求められるところです。補充的な指導など,個に応じた指導が必要でしょう。

 「人の話を聞く」という項目の肯定率の差も大きいなあ。社会階層による言語コードの違いを論じた,バーンスティンの言語社会化論が想起されます。労働者階級の子弟は,(即物的でない)抽象的な話を長く聞かされることに慣れていない。まあ私も,人の話を途中で遮る悪癖がありますけど。

 友だちの多さも,プアとリッチで違っています。これなどは,スクールカースト論に通じますね。ちなみに,この傾向は女子で顕著です。交際におカネがかかるためでしょうか。
https://twitter.com/tmaita77/status/800579467995271168

 あと一点,道徳意識(行為)にも階層差があることに注意。

 教育格差の問題がいわれますが,学力だけでなく,自我や道徳志向にも,家庭の経済力とリンクした階層差が出ている。対策に際しては,どの部分の格差が深刻なのかを突き止め,資源をそこに傾斜配分をすることも求められるでしょう。

 今回みたのは小学校4~6年生のデータですが,中高生になるとどうなるか。赤字や黄色マークが減るか,逆に増えるか。こういう点も,教育の効果を測る重要な視点です。

2016年11月20日日曜日

人生100年の時代

 リンダ・グラットン著『ライフ・シフト-100年時代の人生戦略-』東洋経済新報(2016年)を,キンドルで読み始めています。就業形態の未来予測をした『ワーク・シフト』に次ぐ,話題作です。
http://store.toyokeizai.net/books/9784492533871/

 寿命の延びにより,人生100年の時代になる。それに伴い,人々の生活は大きく変わる。人生100年という時間を,苦役ではなく恩恵に変えるにはどうしたらいいか。こういうテーマを扱った本です。

 まだ最初のちょっとを読んだだけですので,内容については話せませんが,人生100年の時代というのを統計で表現してみたくなりました。同一世代の何%くらいが,100年を生きる時代になるのか。国連の人口推計サイトのデータを使って,この問題に接近してみましょう。
https://esa.un.org/unpd/wpp/

 上記の資料には,5年間隔で,5歳刻みの人口統計が載っています。1950年から2100年までの長期統計です。

 1950年の日本の0~4歳人口は1099.8万人(①)です。1946~50年生まれ世代ということになります。この世代が全員100歳を超えるのは,100年後の2050年。この年の100歳以上人口は44.1万人(②)。よって当該世代が100歳まで生きる割合は,②/①=4.0%と算出されます。およそ25人に1人。

 これは,戦後初期に生まれた団塊世代のデータですが,世代を下るにつれ,値はどんどん高くなっていきます。その様相を整理すると,下表のようになります。


 100歳以上生きる人間の割合は,1946~50年生まれ世代では4.0%でしたが,前世紀の末(96~00年)に生まれた世代では,15.5%にもなります。およそ7人に1人です。

 データを出せませんが,今世紀以降に生まれた世代は,この値はもっと高いことでしょう。

 表の上段には世界全体の数値も掲げましたが,わが国がいち早く「人生100年の時代」に突入することが見て取れます。冒頭の書物でもいわれていますが,日本が先例を提供することになるわけです。

 私は長生きしたいなどと思ってませんので,厄介だなという印象ですが,人生100年という時間を厄災ではなく恩恵に変える術もある。それは,生活のステージの再編です。

 現在では,人の一生は,教育期,仕事期,引退期の3つに分けられ,左から右のステージへと直線的に進む型ですが,これを変えないといけない。現状維持のままだと,空疎な引退期がべらぼうに長くなり,人生100年は苦役にしかならなくなります。

 リンダ・グラットン教授がいう処方箋は,それぞれのステージの間を,いつでも自由に往来できるようにすることです。引退した後でも,学び直したり,(軽度)の仕事に戻れるようにする。仕事期の途中でも,プチ引退をし,時代の変化に即した職業訓練を受けるなど・・・。

 老化防止薬の開発により,高齢者の就業も今よりは容易になるでしょう。また社会の変化が速まる中,同じ仕事だけで生涯メシを食える時代は終わります。人は,絶えず「変身」することを迫られる。そのための戦略は,仕事期から教育期へと再び舞い戻る,リカレント教育です。

 なるほど。リンダ・グラットン教授がいう処方箋が実現する条件は出てきているように思えます。ただ,硬直した直線型のライフコースが支配的な日本では,他国に比して,いろいろ障害が多い。この点をどう克服して,人生100年の時代を恩恵に変えるのか。『ライフ・シフト-100年時代の人生戦略-』を,これからじっくり読み進めようと思います。

2016年11月17日木曜日

核家族世帯率と結婚の幸福度の相関

 婚活支援を手掛けている,パートナーエージェントという会社が,「結婚の幸福度指数」という興味深いデータを公表しています。アルファベットの略称は,QOM(Quality of Marriage)です。
http://www.qom.jp/

 80の質問に答えてもらって,回答者の結婚の幸福度を測定するもの(1000点満点)ですが,レポートでは都道府県別の平均値が明らかにされています。20~60代の既婚者の平均値です。

 トップは,私の郷里の鹿児島(632.0点)。2位は宮崎,3位は東京,4位は沖縄と,南九州の県が上位に挙がっています。逆に下位には,島根,石川,福井,秋田など,日本海沿岸の県が多し。

 日本海沿岸の県で,QOMが低いことについて,報道記事では「より家族の絆や家のつながりを大切にするエリアであり,結婚で新しい家族の一員になることで,馴染めないといった不安や不満が幸福度の低さにつながったのかもしれません」といわれています。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161116-00010000-suitsw-life&p=1

 なるほど,分かるような気がします。三世代世帯率が高い地域ですが,同居している親と反りが合わない,という夫婦も多いでしょう。

 家族のしがらみが多い県では,QOMは低い傾向にあるのではないか。こんな仮説が浮かびますが,データでみるとどうでしょう。都道府県別の核家族世帯率と,上記のQOMの相関図を描くと,下図のようになります。前者は,2015年の『国勢調査』から計算したものです。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020101.do?_toGL08020101_&tstatCode=000001080615&requestSender=search


 核家族世帯率とQOMは,有意なプラスの相関関係にあります。換言すると,核家族世帯以外の世帯,三世代世帯などが多い県ほど,結婚の幸福度は低い傾向がみられます。左下にある,日本海沿岸の県です。

 私にすれば「やはり」という感じですが,どういう感想を持たれるでしょうか。上記の相関が因果関係とは限りませんが,当局の「三世代同居推奨」の施策が,よからぬ結果をもたらす恐れがあることを警告するデータのように見えますね。

 女性のQOMに絞ったら,上記の相関はもっと強くなるのではないかしら。

 個票データを使って,性別・年齢を統制したうえで,家族類型とQOMの関連をとったらどうなるでしょう。データをお持ちの,パートナーエージェントさん。ぜひ,そういう分析もやってみてください。