2015年5月31日日曜日

2015年5月の教員不祥事報道

 今日で5月もおしまいです。暑くなりましたが,暦の上でも明日から夏です。

 今月,私がネット上でキャッチした教員不祥事報道は27件です。毎月の通り,わいせつが多数を占めますが,授業中,パソコンのわいせつ画像を誤って映してしまったという不祥事が2件あります。

 私も,2006年ころ,自分のパソコンのパワポスライドを映そうとしたとき,間違って学生時代の写真が入ったスライドを映してしまったことがあります。大ウケで「先生,ネタでしょ?」などと言われましたが,本当のミスです。結構やっちゃうんですよね。

 背景も6月バージョンに変えます。毎月,背景を変えると気分転換になってよいのです。

<2015年5月の教員不祥事報道>
遅刻の生徒を土下座させ撮影 大阪府立高校の教諭を戒告
 (5/1,朝日,大阪,高,女,30代)
盛岡駅前でスカートを履き下半身を露出 小学校教諭の男を逮捕
 (5/6,ライブドアニュース,岩手,小,男,44)
胸元盗撮の疑い 県立高教諭逮捕(5/7,静岡新聞,静岡,高,男,53)
授業中にわいせつ画像映す 誤操作教諭に減給処分
 (5/9,神奈川新聞,神奈川,中,男,48)
元カノに土下座強要!小学校講師逮捕(5/9,スポーツ報知,和歌山,小,男,24)
松阪市教委 前任校でも24万円着服 小学校長を告発へ
 (5/9,伊瀬新聞,三重,小,男,55)
女性教員にキス 県立高教諭を懲戒処分(5/12,神戸新聞,兵庫,高,男,54)
教諭2人懲戒処分 静岡県教委(5/12,静岡新聞,静岡,痴漢:中男39,傷害:男38)
パチスロ機の取り忘れコイン盗む、高校教諭逮捕(5/13,産経,京都,高,男,49)
大阪府立支援学校教諭が電車内で下半身を露出(5/13,産経,大阪,特,男,25)
岐阜・高山西高の剣道部顧問が体罰 教諭宅に住む部員に
 (5/13,朝日,岐阜,高,男,40)
生徒の着替え盗撮し懲戒処分 埼玉、引率中の体育館で
 (5/14,共同通信,埼玉,高,男,57)
男児を押し倒して蹴り、背中の骨折る体罰(514,朝日,愛知,小,男,42)
教諭泥酔、送った教頭が部屋誤る 北海道(5/14,朝日,北海道,中,男,22)
「いじめを抑止」クラス全員から指紋 東京の市立小教諭(5/16,朝日,東京,小,男,30代)
女子生徒抱きしめて「君のことが大好き」(5/19,産経,埼玉,高,男,53)
教育大付属校教諭を懲戒解雇=預かり金131万円使い込む
 (5/19,時事通信,兵庫,兵庫教育大学付属学校,男,30代)
「情報管理ずさん」教諭を懲戒処分 京都府教委(5/20,京都,京都新聞,小,男,39)
教諭、生徒のテスト・写真など不法投棄 段ボール44箱(5/20,朝日,千葉,中,男,30)
子猫生き埋めの教諭を停職3月(5/21,産経,千葉,高,男,36)
都城の公立中教諭、生徒にわいせつ行為 複数被害か
 (5/22,宮崎日日,宮崎,中,男,40代)
男性教諭、盗撮か 生徒のスカートの中 新潟大長岡中 
 (5/23,朝日,新潟,中,男,30代)
わいせつ行為で教頭懲戒免 宮崎県教委発表(5/23,宮崎日日新聞,属性は非公表)
中学教諭 木くず食べさせる(5/23,神戸新聞,兵庫,中,男,30代)
体罰再犯教諭ら3人を懲戒処分 茨城県教委
 (5/27,産経,茨城,体罰:小男40,小男29 万引き:高男46)
県教委が教諭2人を懲戒免職処分
 (5/28,FBS,長野,大麻所持:特男39,飲酒運転:小男55)
授業中、大画面にわいせつ動画映す(5/30,朝日,山形,中,男,40代)

2015年5月30日土曜日

大学生の組成図(その2)

 2014年5月時点でみて,大学学部学生は約255万人となっています。性別は男子が56.2%,女子が43.8%です。

 設置主体別・専攻別のクロス表にすると,以下のようになります。


 私立の社会科学系が73万人と最も多くなっています。このカテゴリーだけで全体の3割弱が占められています。

 上表のデータを視覚化してみましょう。各セルの量を面積で表したモザイク図にします。


 最近の大学生の組成図です。ツイッターで発信したところ,みてくださる方が多いようなので,ブログにも載せておきます。

2015年5月28日木曜日

正社員共働き夫婦の家事・育児分担率

 1月15日の日経デュアル記事では,共働き夫婦の家事・育児分担率を出したのですが,この記事はよく読まれているようです。何人かの読者からメールをいただきましたが,「正社員の夫婦に限るとどうか?」という質問が数件ありました。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=4493

 上記の記事で分析対象としたのは,夫も妻も有業である共働き夫婦全体です。その多くは,夫が正社員で,妻がパートという夫婦でしょう。だから,家事・育児分担率がべらぼうに低く出たのではないか,という疑問です。なるほど,夫婦とも正社員のデュアルに限ったら,違う結果になるかもしれませんね。

 下図にみるように,子育てをしている夫婦全体において,正社員の共働き夫婦は結構な比重を占めています(14.5%)。女性の社会進出が促進されるなか,今後,この層はますます多くなっていくことでしょう。


 私は,夫も妻も正社員の共働き夫婦について,夫の家事・育児分担率を計算しました。夫の1日あたりの平均時間が,夫婦の合算値の何%かです。下記サイトの表21から原数値を採取し,割り算をしました。曜日と末子の発達段階別に分けています。比較対象として,共働き夫婦全体のデータも載せています。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001040666&cycode=0


 正社員デュアルの夫の分担率は,デュアル全体よりも高くなっています。就学前の乳幼児がいる夫婦えでみると,平日が14.9%,土曜が27.2%,日曜が28.5%です。土日で3割弱・・・。絶対水準でみたら,正社員デュアルでも「こんなものかな」という印象です。

 冒頭のWeb誌記事の補足資料として,ここに掲載しておきます。

2015年5月26日火曜日

共働き世帯の稼ぎ分担率

 1月15日の日経デュアルの記事にて,共働き夫婦の家事分担率を計算したのですが,稼ぎ分担率なんてのはどうでしょう。デュアル世帯の強みは二馬力ですが,夫婦の稼ぎの合算に占める,妻の比重の相場はどれほどか。こういうデータはあまり見かけません。
http://dual.nikkei.co.jp/article.aspx?id=4493

 2012年の「就業構造基本調査」の世帯統計から,この指標を割り出せることを知りました。ここにて,私の試算結果をご覧いただこうと思います。

 私が使ったのは,下記サイトの表222の統計です。共働き世帯の数が「夫の年収×妻の年収」のクロス表で集計されています。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001048179&cycleCode=0&requestSender=search

 年収は,以下の16カテゴリーで区切られています。

 ①:50万未満 (25)
 ②:50~99万 (75
 ③:100~149万 (125)
 ④:150~199万 (175)
 ⑤:200~249万 (225)
 ⑥:250~299万 (275)
 ⑦:300~399万 (350
 ⑧:400~499万 (450)
 ⑨:500~599万 (550)
 ⑩:600~699万 (650)
 ⑪:700~799万 (750)
 ⑫:800~899万 (850)
 ⑬:900~999万 (950)
 ⑭:1000~1249万 (1125)
 ⑮:1250~1499万 (1375)
 ⑯:1500万以上 (2000)

 妻が30代の共働き世帯(夫婦と子からなる世帯)でみると,最も多いのは,夫の年収が⑦,妻の年収が②の世帯です。その数,12万6000世帯。この群の場合,妻の稼ぎ分担率は,(   )内の階級値を使って以下のようにして求められます。

 妻の稼ぎ分担率=75/(350+75)=17.6%

 このやり方で,各セルに該当する共働き世帯について,妻の家事分担率を算出しました。下の表は,10%区切りの分布を百分比で示したものです。妻の年齢階層別に分けています。世帯構造の影響を除くため,夫婦と子からなる共働き世帯(核家族世帯)に対象を限定していることも申し添えます。


 まず上段の全体からみると,妻が30歳未満の世帯では,妻の稼ぎ分担率が30%台の世帯が最も多くなっています。それより上の年代になると,妻が非正規になったり主婦になったりするためか,ピークは10%台の階級に下がります。

 下段は,妻がパートの世帯の除いた場合の分布ですが,こちらは当然,分布が上方にシフトしています。妻が50代の世帯では,妻が半分ちょっと稼いでいる世帯(50%台)が最多です。夫が定年退職した世帯が多いためでしょう。

 上表の分布の特性を,簡易な代表指標でまとめてみましょう。平均値と,夫より妻が稼いでいる世帯(妻分担率50%超)の世帯の割合を出し,表に整理しました。平均値は,各セルの分担率を当該セルの世帯数に乗じ合算し,それを世帯全数で除して出したものです。


 大雑把にいうと,共働き世帯の妻の稼ぎ分担率の相場は3割ってとこでしょうか。右欄をみると,夫より妻のほうが稼いでいる世帯も少なからず存在します。

 共働きの読者のみなさん,最初の表の分布において,あなたの世帯はどこに位置しますか。全体における,ご自身の位置を確かめてみるのもよいかと思います。

2015年5月23日土曜日

専業主夫

 専業主婦ではありません。専業主です。家事や育児を専業で担う男性のことですが,以前に比せば,こういう人も増えてきていると思われます。以下の記事によると,米国では,育児をする主夫が190万人いるそうです。
http://www.huffingtonpost.jp/2015/05/17/states-with-the-most-stay-at-home-fathers_n_7302952.html

 海を隔てたわが国では,どうなのでしょう。統計で専業主夫の量を把握する場合,有配偶男性のうち,労働力状態が「家事」の者の数を拾うとよいと思います。当該の数値は,基幹統計の「国勢調査」にて知ることができます。年齢は,子育て期の30~40代に限定しましょう。

 2010年の本調査によると,同年10月時点の30~40代の有配偶男性は1068万人であり,このうち,労働力状態が「家事」の者は21828人となっています。これが,2010年の専業主夫の数です。今世紀初頭の2000年では7089人でした。この10年間で,子育て期の専業主夫は3倍に増えたことになります。

 同年齢の有配偶男性数で除した比率にすると,2000年では1万人あたり6.0人でしたが,2010年では20.4人となります。出現率でみても,「1666人に1人」から「490人に1人」にまで増えています。

 これで終わりでは芸がないので,同じ値を都道府県別に出した結果をご紹介しましょう。30~40代の有配偶男性1万人あたりでみて,専業主夫が何人かを県別に計算しました。黄色は最高値,青色は最低値です。上位5位の数値は赤色にしています。


 トップは,南端の沖縄です。2010年の出現率は,1万人あたり41.2人。子育て期の有配偶男性の0.412%(243人に1人)が主夫であることになります。本県は,非正規から正規への移動率が1位,若者の起業率も高い水準にあるのですが,主夫率もそうだとは。新たなライフスタイルの浸透度が相対的に高いようですね。

 赤字の分布から主夫率は「西高東低」のような気がしますが,地域差構造を可視化しておきましょう。右側の2010年の主夫率をマップにしてみました。


 沖縄のほか,近畿や四国で主夫率は高いのですね。「男尊女卑」とかよくいわれる,わが郷里・鹿児島も,濃い色になっているではありませんか。伝聞と統計的事実は,しばしば異なるもの。

 値が低いのは,日本海沿岸や中部です。3世代世帯率が高いゾーンですが,価値観や意識が異なる上の世代が同居しているとなると,主夫は居づらいのでしょうか。いや,そもそも必要ないのか。
https://twitter.com/tmaita77/status/602056035281408000

 統計による,専業主夫量の可視化の試みでした。今年は「国勢調査」の年ですが,5年を経た2015年では,地図の模様は全体的にもっと濃くなっているでしょう。それは,悪いことではありますまい。

 なお,ツイッターにて国際比較のデータも出しましたので,リンクをはっておきます。東欧のルーマニアのように,30~40代男性の8人に1人が主夫の社会も存在します。「世界価値観調査」のサンプルが偏っていたのかもしれませんが,わが国の価値観・意識を相対化させてくれる事実です。
https://twitter.com/tmaita77/status/601035114198380544

 一昨日買ってきた,筒井淳也教授の「仕事と家族」(中公新書)では,主夫について触れられているのかしら。豊富なデータをもとに,わが国の位置を明らかにし,今後の道筋を教えてくれる労作です。これからじっくり読ませていただこうと思います。
http://www.chuko.co.jp/shinsho/2015/05/102322.html

2015年5月21日木曜日

飯島ただやす君への手紙

大学院生
飯島ただやす君へ
(小島泰幸君?)

 はじめまして。舞田敏彦と申します。2015年5月19日の午前8時30分ころ,貴殿は,私の著作物に無断でを入れ,ツイッターにて発信しました。以下は他人の非公式RTですが,元はあなたのものです。元ツイは現在削除中ですが,記録はとってあります。*削除したということは,自分の非を認めたということでしょうね。


 私が作成した散布図の回帰直線の引き方がおかしいということで,貴殿がを入れたものです。ご指摘はありがたく受け止めますが,貴殿の行為は法的に問題があると考えております。具体的にいうと,著作物の無断加工使用であり,著作権法第27条の規定に抵触するのではないかと思われます。

 本条文は,「著作権者は,その著作物を翻訳し,編曲し,もしくは変形し,又は脱色し,映画化し,その他翻案する権利を有する」と定めています。これは著作権者にのみ認められた,著作物の加工権であり,第三者が無断でこれを行った場合,違法行為であると思われます。

 私がこの点を指摘したところ,あなたは「知財法も知らんのか。真正バカだな」みたいなことを言ってきました。「じゃあ,知財法のどの条文があなたの行為(画像無断加工使用)を正当化するのか」と私は尋ねました。あなたはすぐに返事をしませんでしたが,私が督促して出てきた答えは以下です(いずれも現在削除済み)。


 まず下ですが,画像の無断加工使用が「公正な慣行に合致するものであり,かつ,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内」の引用といえるでしょうか。

 それと上ですが,4番目の見解は到底納得できません。私がエクセルで作って発信しているグラフは,みーんな著作物ではないのでしょうか?? 元データの収集・計算に労力がかかっているのはもちろん,グラフの表現法にも考えを巡らせているのですよ。3番目にしたって,削除してもあなたの行為そのものは消えません。


**********
 それとね,飯島(小島?)くん。間違いの指摘や意見表明は結構ですが,以下のように,人を小馬鹿にするようなことは言わないほうがいいと思いますよ(現在は削除済み)。あなた,学会発表の場で,本当にこういう態度をとるのですか??下手をしたら,公衆の面前での侮辱罪で訴えられちゃいますよ。ましてや,他人の著作物を無断で加工し,ツイッターで発信するなど,言語道断です。 


 飯島(小島?)くん。あなたは,私が些細なことばかり咎め,指摘をスルーしていることを問題視しているようですが,議論の言語を知らない無礼者の相手をする義理など,これっぽっちもありません。匿名で人を小馬鹿にする,著作権法違反ではないかと指摘したら「真正のバカ」などと侮辱する・・・。こんなことを繰り返していたら,誰からも相手にされなくなっちゃいますよ。

 貴殿は私に対し,「学生時代,どういう教育を受けてきたのか」とおっしゃいました(当該ツイートは削除済み)。その言葉,そっくりお返しします。

 まあ私も,院生の頃は生意気盛りで,今から思うととんでもないことをしていました。指導教員にすれば,徐々に変わっていく(成長していく)姿が楽しいのでしょうね。しかし,やっていいことといけないことがあります。貴殿に,この点をしっかりと認識していただきたいと考えております。

 あなたはツイ消しがやたら多いですが,削除してもあなたの言動は消えないのですよ。よく言うでしょう。「ツイッターは恐ろしい」と。これからは,十分に気をつけることです。

 以上

                                              2015年5月21日
                                                 舞田敏彦

追記:
 具合が悪いと悟ったのか,当人は現在アカウントを変えているようです(2回も)。アカウント名は「パンダヒーロー☆ただやす!」。
1回目:https://twitter.com/_td_yasu
2回目:https://twitter.com/_td_yasu2

 それと本名は「小島泰幸」ではないか,という指摘を受けました。東京大学大学院博士課程休学中,オクスフォード大学大学院博士課程在学中となっています。ツイ消しはするわ,アカウント名やプロフィールをコロコロ変えるわ,落ち着きのない人のようです。

2015年5月19日火曜日

設置主体別の大学進学率と県民所得の相関

 2013年の9月12日の記事では,都道府県別の大学進学率を計算したのですが,大学進学率の地域間格差は甚だ大きく,かつ,その格差は各県の所得水準と強く相関しています。高等教育機会の地域的不平等の問題を提起する,統計的な事実です。

 ところで大学といっても多様であり,設置主体に注目するならば,国立,公立,私立というように区分されます。どれも同じ大学ですが,それぞれに期待される機能,また地域的な分散度も大きく違っています。

 ゆえに,こうした設置主体別の大学進学率でみるならば,地域間格差の様相もまた違っていることが予想されます。こういうデータはあまりないようですので,ここにて,それを明らかにしてみましょう。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm

 まずは大学進学率の計算方法からです。詳細は上記の記事にも書きましたが,もう一度おさらいしましょう。ここでいう大学進学率とは,18歳人口ベースの浪人込みの進学率をいいます。これを都道府県別に出す場合,各県の高校出身の大学入学者数を,各々の推定18歳人口で除します。後者は,3年前の中学校・中等教育学校前期課程卒業者数で代替します。

 分子には過年度卒業生(いわゆる浪人経由者)も含まれますが,当該年の世代からも浪人経由の入学者が同程度出るものと仮定し,両者が相殺するものとみなします。

 私の郷里の鹿児島について,2014年春の国立大学進学率を出してみましょう。まず分子ですが,当該年春における,本県の高校出身の国立大学入学者数は2027人です。全国のどこかの国立大学に入った者の数です。分母の3年前の中学校・中等教育学校前期課程卒業者(推定18歳人口)は17130人。よって,本県の18歳人口ベースの浪人込み大学進学率は,前者を後者で除して11.8%と算出されます。

 この計算方法は私が独自に考えたものではなく,当局の資料(「学校基本調査」)でも採用されている公的なものです。同じやり方にて,2014年春の鹿児島の公立大学進学率と私立大学進学率を出すと,順に2.4%,20.8%となります。国立11.8%,公立2.4%,私立20.8%ですか。ちなみに首都の東京の大学進学率は,国立6.0%,公立1.0%,私立66.1%です。鹿児島は半分以上が国公立ですが,東京はほとんどが私立です。構造が全然違いますね。

 私はこのやり方に依拠して,2014年春の都道府県別の国立・公立・私立大学進学率を計算しました。以下に,その一覧表を掲げます。黄色は最大値,青色は最低値です。


 右端の私立大学の進学率は,東京が最も高く,岩手が最も低くなっています。誰もが知っているように,都市部で高く地方で低いという,非常に分かりやすい構造です。

 ですが,国公立大学の進学率は順に構造が全然違っています。こちらは,傾向としては地方県で高いようです。

 こういう性格の違いは,各県の所得水準との関連をグラフにすることでクリアーになります。冒頭の記事でみたように,国公私立をひっくるめたトータルの大学進学率は所得と強い正の相関にあるのですが,設置主体ごとの進学率にバラすとどうでしょう。

 私は,横軸に県民所得,縦軸に大学進学率をとった座標上に,47都道府県をプロットしてみました。青色は「所得×国立大学進学率」,赤色は「所得×公立大学進学率」,緑色は「所得×私立大学進学率」のドット分布です。


 私立大学進学率は,県民所得と強い正の相関関係です。明らかに,所得が高い県ほど進学率が高い。相関係数は+0.744であり,1%水準で有意です。

 しかし国公立の進学率は,所得との相関関係にあります。所得が低い地方県ほど率が高い傾向です。青色と赤色の相関係数は,47というデータ数を考慮すると,5%水準で有意と判定されます。

 ちなみに県民所得がかっ飛んで高い東京を「外れ値」として除外すると,各県の所得は,私立大学進学率とは+0.639,国立大学進学率とは-0.277,公立大学進学率とは-0.236という関係になります。後二者は統計的に有意でなくなりますが,相関の向きは同じです。図中の点の斜線は,東京を除外した場合の回帰直線です。

 以上のデータから,設置主体によって,大学進学チャンスの性格が異なっていることが知られます。故・清水義弘教授編『地域社会と国立大学』東大出版(1975年)でもいわれていましたが,国立大学は,地方の低所得層への高等教育機会供給に際して非常に重要な役割を果たしています。自地域の学生の授業料を割安にする公立大学などは,もっとそうでしょう。

 国立大学の学生は富裕層が多いということで,国立大学の授業料を私大並みに引き上げようという議論がされていますが,それが実現された暁には,上記のような(見えざる)機能が台無しになりそうです。

 国立大学といっても,東大のようなネイションワイドの旧帝大は確かに富裕層が多いことでしょう。この点は,私も明らかにしたことがあります。しかし,全国に散在するローカルレベルの国立大学(地方国立大学)は,様相が大きく異なっていると推察されます。そうでないなら,上図のような傾向が出てくることはないでしょう。
https://news.careerconnection.jp/?p=6969

 教育政策はえてして,(都心の永田町にて)ネイションワイドな次元で議論されがちですが,ローカルな視点を絶えず据えておくべきです。地方創生の旗が振られている今にあっては,なおさらのこと。今回はそうした視点から,今渦中にある国立大学の(見えざる)一面にスポットを当ててみた次第です。

2015年5月16日土曜日

首都圏のジニ係数地図(2013年)

 5月8日の日経デュアル記事では,首都圏の区市町村別の平均世帯年収を計算してみました。お金持ちの地域はどこかを教えてくれるデータですが,各地域内部の分散,すなわち収入格差の程度も知りたいところです。

 持てる者と持たざる者の格差が広がっているといいますが,収入格差が大きい地域はどこでしょう。今回は,この点を明らかにしてみようと思います。用いるのは,上記と同様,区市町村別の世帯年収分布のデータです。

 全国一の大都市,東京都新宿区の世帯年収分布は,以下のようになっています。2013年の「住宅土地統計」に掲載されている,総世帯の年収分布です。
http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/index.htm


 9つの収入階層の世帯量と,各々が手にする富量の分布が整理されています。富量は,年収幅の中間値(階級値)に世帯数を乗じた値です。年収300万円台の世帯の年収を一律中間の350万円と仮定すると,この層に配分される富量は,350万円×22160世帯=776億円となります。このようにして9つの階層の富量を出し,合算すると9358億円です。

 この巨額の富が各層にどう配分されているかを相対度数でみると,年収1000万以上の層が全体の33.7%,3分の1をせしめています。この層は世帯数では12.4%しか占めないことを考えると,大きな偏りといえるでしょう。逆に下をみると,世帯数では17.9%を占める年収200万未満の層には,全富のわずか3.8%しか届いていません。

 大都市・新宿区では,富の配分構造に少なからぬ偏りがあるようですが,その様相は,右端の累積相対度数をグラフにすることで可視化できます。横軸に世帯数,縦軸に富量の累積相対度数をとった座標上に,9つの階層のドットをプロットし,線でつなぐと下図のようになります。


 弓なりの曲線ができていますが,これをローレンツ曲線といいます。お分かりかと思いますが,世帯数と富量の分布がどれほどズレているかは,この曲線の底の深さで知られます。曲線の底が深いほど,両者のズレが大きいこと,すなわち富の格差が大きいことを意味します。

 その程度は,上図の赤色の面積で数値化され,これを2倍した値が,よく知られているジニ係数に相当します。富の配分に全く偏りがない完全平等の場合,ローレンツ曲線は対角線と重なり,色つきの面積はゼロになりますから,ジニ係数は0.0となります。反対に極限の不平等状態では,赤色の面積は四角形の半分,つまり0.5となりますから,ジニ係数は0.5×2=1.0となります。ジニ係数の範囲が0.0~1.0であることの所以です。

 さて上図から,新宿区のジニ係数を出すと0.4065となります。一般にジニ係数が0.4を超えると社会が不安定化する恐れがあり,特段の事情がない限り,是正を要するという危険信号と読めるそうです。ほう,大都市・新宿区は,この水準を超えていることになります。外国人人口が多いことも寄与しているでしょう。

 私は同じやり方で,首都圏(1都3県)の214区市町村のジニ係数を計算しました。下の図は,それを地図にしたものです。危険水準の0.4を超える地域を濃い色で塗り,それ未満は0.02の区切りのグラデーションにしました。


 首都圏の格差地図ですが,いかがでしょう。濃い色は富の配分の偏りが大きい地域ですが,東京都心と千葉の周辺部に多くなっています。後者は,高齢世帯が多いという事情もあるでしょう。

 ジニ係数が高い順に214区市町村を並べたランキング表もつくりましたので,こちらも資料として掲げておきます。赤色は,0.4を超えている地域です。


 トップは千葉県の勝浦市の0.4682で,2位以下を大きく引き離していますが,国際武道大学がある本市は,学生の単身世帯が多いためと思われます。

 それより下の赤字ゾーンは,都内の特別区,千葉の周辺の市町が名を連ねています。大都市における単身世帯の貧困化,地方周辺部における高齢化といった事情が大きいとみられます。

 よく注目される東京・足立区のジニ係数は0.3740です。0.4には達していませんが,全体の中では高いほうです。戸梶圭太さんの小説「東京ライオット」では,この区内に突如建設された超高級マンションに入ってきた超セレブ層と,地元の貧困層の対立・葛藤が描かれており,クライマックスでは後者の暴動(テロ)が起きるのですが,ジニ係数が0.5や0.6にもなれば,それが現実化する恐れは甚だ高くなります。中南米やアフリカの社会は,現にそうです。
http://bookmeter.com/b/4198620296

 ここで計算したのは首都圏内の区市町村のジニ係数ですが,全国規模でみたら,もっとスゴイ値が出てくるかもしれません。0.5を超える地域とか,あるかしら。地域がどれほどヤバいかをみるには,警察のガンバリ度によって値が大きくブレる犯罪率などよりも,こちらのほうがいいかもしれません。

 ジニ係数。社会病理学を専攻する人間として,常に注視していきたい指標の一つです。本ブログでは,国際比較,都道府県比較,職業比較などもやっています。興味ある方は,ご覧ください。左上の検索ツールに,「ジニ係数」と打ってみてください。

2015年5月14日木曜日

パソコン利用度とコンピュータスキルの関連

 2月25日の記事では,日本の若者のパソコン所有率(利用率)が国際的にみて低いことを明らかにしました。これと関連して出てくる問題は,彼らのコンピュータスキルがどうなのかです。高度情報社会を生き抜く上で,パソコンスキルは不可欠ですが,そのレベルはどうなのでしょう。

 OECDの国際学力調査PISA2009では,対象の15歳生徒に対し,自身のパソコンスキルの自己評定を求めています。以下の5つの項目を提示し,該当するものを選ばせる形式です。
https://pisa2009.acer.edu.au/downloads.php


 これらへの回答を合成して,対象生徒のコンピュータスキルのレベルを測る尺度をつくってみましょう。「1」という回答には4点,「2」には3点,「3」には2点,「4」には1点のスコアを与えます。この場合,各人のコンピュータスキルは,5点~20点のスコアで計測されることになります。全部4の無能者は5点,全部1と答えた猛者は20点となります(4点×5=20点)。

 日本でいうと,上記の5項目すべてに有効回答を寄せた生徒は5646人ですが,これらの生徒のスコア分布をみると,15点の者が760人と最も多くなっています。その次が10点で563人です。平均を出すと,13.8点となります。

 これが日本の15歳生徒のコンピュータスキル・スコアですが,他の社会はどうなのでしょう。他国についても同じスコア平均を出し,値が高い順に並べてみました。


 日本は最下位です。画像編集,グラフ作成,プレゼン資料作成という限られた面から構成したスキル尺度ですが,わが国のこのような位置に衝撃を受ける方も少なくないでしょう。

 しかるにこれは,あくまで自己評定の結果であり,謙遜を美とする日本では,謙虚な回答をした生徒が多いからではないか,という疑問もあります。ですが,上記のスコア平均は,各国の生徒のパソコン所有・利用状況と相関しています。

 上記のPISA調査では,パソコンの所有・利用状況も尋ねています。自宅にデスクトップパソコンがあり,それを使っていると答えた生徒の比率を出し,先ほどのスコア平均との相関図を描くと,下図のようになります。


 パソコンの利用度が高い国ほど,生徒のコンピュータスキルが高い傾向にあります。相関係数は+0.5739であり,1%水準で有意です。

 こうみると,先ほどのスコアランキングの結果は,回答のバイアスだけから解釈することはできますまい。パソコンへの親和度や修業の差によるとも考えられます。

 なお個人単位でみても,パソコン利用度とスキルレベルは相関しています。日本の生徒を取り出して,上図の2変数の関連図をつくってみました。デスクトップパソコンの所有・利用状況と,コンピュータスキル・スコア(3群)のクロス結果をモザイク図にしたものです。


 デスクトップパソコンが自宅にあり,それを使っている群ほど,コンピュータスキルが高い傾向にあります。一番左側の群では,半分以上がスキルスコア15点以上です。

 何事も経験といいますが,コンピュータスキルもその例に漏れず,修業の量と関連しているようです。わが国の生徒のパソコン所有率(利用率)は低いことから,意図的に彼らをそれに仕向ける余地はあるように思えます。

 といっても,単にパソコンをばら撒けばよいという話ではなく,青少年が高度情報社会という現実から隔絶され,コンピュータを使った情報処理技術の必要性を感じにくい状況が是正されねばなりません。ITを使った仕事の最前線を見せる,学校教育の情報化・IT化を推し進め,否が応にもパソコンに触れざるを得ない状況に置くなど。この点は,これから先,徐々に進行していくことでしょう。

 あと一つ注意すべきは,学力と同様,コンピュータスキルも社会的な規定を被っているのではないか,ということです。パソコンといっても結構高価で,すべての家庭が自宅にやすやすと所有できる財ではありません。前回出した品目ジニ係数でみても,パソコンは,所有の階層差が高い部類に入っています。家庭の経済力とパソコン所有率・利用度は関連しており,そのことが,家庭環境とコンピュータスキルの関連を結果していないか。だとしたら,学力格差ならぬ,ITスキル格差という現象が存在することになります。

 この点に関連して気になるのは,今回出したコンピュータスキル・スコアの分布です。日本と45か国全体のスコア分布曲線を描くと,下図のようになります。


 45か国全体は右上がりですが,日本は2コブ型になっています。スキルが高い生徒と低い生徒に割れている型です。スコアの格差の程度を表すジニ係数を出すと,45か国の中でわが国がトップになっています。これが,生徒の家庭環境とリンクしたものであるならば,ITスキル格差という減少が厳としてあることになります。

 考えてみれば,コンピュータを使いこなすスキルは,学力と同等,ないしはそれ以上の社会的規定を被るといえるかもしれません。わが国のコンピュータスキルが最下位という現実は,内部の分散の大きさ,すなわち格差という視点も据えて考えねばならないでしょう。

2015年5月12日火曜日

品目別の所有ジニ係数

 中3の社会科の授業で,「生活保護世帯にクーラーの所有は認められるか」という議論をしたのを覚えています。憲法25条の生存権に関連してです。時は1991年。

 今なら,熱中症が問題化していることでもありますし,「最低限度の生活」を営むための必需品としてクーラーの所有は認められるでしょうが,自動車とかはどうなんですかね。車がないと生活が困難な田舎はいざ知らず,都市部ではNGと聞いています。

 パソコンなんかはどうでしょう。これも90年代では立派な奢侈品だったのでしょうが,現在では被保護者が職探しや就労をする上で,なくてはならないものだと思います。私などは,これを取り上げられたら直ちに生活が成り立たなくなります。

 このように,無数に存在する財の中で,どれが奢侈品でどれが必需品についてはコンセンサスが成り立っていないのですが,統計でその目安をつけることができないというのではありません。その方法は,貧しい人と裕福な人の所有状況を比較することです。全ての階層にくまなく行き渡っている品目は,それがないと基本的な生活が営めない必需品であり,一部の層だけが持っている財は,取り立てて必要のない奢侈品であるとみなすことができます。

 今回はこうした見方のもと,品目別の所有ジニ係数を計算してみようと思います。全国の世帯を年収階層別に分かち,それぞれの層の量と,各々が所有している品目の分布を照合し,両者がどれほどズレているかに注目します。

 資料は,2009年の総務省「全国消費実態調査」です。この資料には,1000世帯(2人以上の世帯)あたりの所有品目の量が,年収階層別に集計されています。下記サイトの表1です。私はこれを使って,各品目の所有の偏りを可視化することとしました。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001027311&cycode=0

 楽器の王様のピアノを例にして,ジニ係数の計算方法を説明します。


 小学生の頃,音楽の授業で「ピアノが家にある人」と先生が尋ねたとき,手を上げたのは女子4~5人であったと記憶していますが,1000世帯あたりの所有数は,階層によってかなり違いますね。量的に多い年収300万円台後半では1000世帯あたり184ですが,年収2000万超の富裕層では551にもなります。その差は3倍です。

 中央の相対度数をみると,世帯数では21.1%でしかない年収1000万超の世帯が,所有のピアノ数では全体の35.3%をもせしめています(黄色マーク)。逆に,低収入層のピアノの所有比重は,期待値よりも低くなっています。

 上表の世帯数と所有数の分布のズレを可視化してみましょう。それには,累積相対度数をグラフ化するのですよね。横軸に世帯数,縦軸に所有数の累積相対度数をとった座標上に19の年収階層をプロットし,線でつなぎます。下図のように弓なりの曲線になりますが,これをローレンツ曲線といいます。


 世帯数と所有数の分布がどれほどズレているかは,この曲線の底の深さで知られます。曲線の底が深いほどズレが大きい,すなわちピアノの所有の階層的偏りが著しいことを意味します。ジニ係数はそれを数値にするものであり,上図の色つきの面積を2倍して求められます。とる値は,0.0~1.0の間です。

 算出されたピアノ所有のジニ係数は,0.2439です。すぐ後で56品目のランキング表を掲げますが,これは高い部類に入ります。大型の外車(輸入自動車)などは係数がもっと高く,0.5を超えます。

 では,そのランキング表をお見せしましょう。私は同じやり方で,56品目の所有ジニ係数を計算し,値が高い順に並べてみました。数値のキリのいいところで,区切り線も入れてます。


 外車はジニ係数が高いですね。一部の層しか持っていない奢侈品です。先ほど注目したピアノも,全体の中では高い部類です。

 パソコンも,全体の中での相対水準では高いほうなんだな。これは高齢世帯の所有率が低いためであり,若年世帯だけでみたら係数はうんと低くなると思われます。このデータを突き付けて,「生活保護世帯はパソコンはダメです」とか言われたら,ちょっと困る・・・。

 エアコンも高いほうなのですねえ。薄型テレビや電気マッサージチェアよりも係数が高くなっています。私は,後者の2つは持っていませんけど。

 下のほうには,所有の階層差が小さい品目が並んでいます。ジニ係数0.1未満のものは,所有の階層的偏りがほとんどない,生活必需品の部類とみてよいでしょう。小型バイクや軽自動車なんかもそうです。*富裕層が好んで持とうとしないという,嗜好の問題も考えないといけませんが,ここでは不問とします。

 以上,官庁統計のデータを使って,各品目の「奢侈-必需」の目安をつけてみました。こういう面での数値化はあまり好まれることではないでしょうが,それが全く不要ということにはなりますまい。生々しい生活の中にも「科学」の眼を入れることは必要であると考えます。

 ちなみに財の中にはいろいろあって,子どもを大学に行かせるような教育財も,ジニ係数はさぞ高くなるだろうと推察されます。これをもって,「大学教育などぜいたく品だ」などというのは,明らかな誤りです。教育は権利として保障された公共財で,希望するならば,家庭の経済状況に関係なく,全ての者が享受すべき性質のものです。ベンツやフェラーリといった外車とはワケが違います。

 こういう部分も考慮しながら,上記の表を眺めていただければと思います。

2015年5月9日土曜日

職業別の年収と未婚率の相関

 2014年2月9日の記事では,職業別の生涯未婚率を明らかにしたのですが,この記事は本ブログの中で一番読まれています。このようなデータはあまりないため,多くの人の関心を引いたのだと思います。

 はて,なぜ職業によって未婚率が異なるのか。個々人の自由意思の総和が偶然そうなっているだけだ,という説明は到底成り立ちません。言わずもがな,各職業が得る富量や威信(prestige)が大きく影響しているとみられます。とりわけ男性にあってはそうでしょう。

 それぞれの職業の威信は数値化が難しいのですが,各々が手にする富量は年収という指標で可視化できます。今回は,「就業構造基本調査」の職業中分類の統計を使って,年収と生涯未婚率の相関図を描いてみようと思います。わが国の結婚市場の現実を明らかにする作業の一つです。

 私はまず,2012年の「就業構造基本調査」のデータを用いて,有業男女の職業別の平均年収を計算しました。本資料に載っている年収階層の度数分布(下記サイトの表35)から,独自に割り出しました。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020103.do?_toGL08020103_&tclassID=000001048178&cycleCode=0&requestSender=search

 次に,有業男女の生涯未婚率を,同じく職業別に明らかにしました。生涯未婚率とは,字のごとく生涯未婚のままに留まる者の出現率ですが,統計上は50歳時点の未婚率で代替されます。この年齢以降は,結婚する者はほとんど皆無であろう,という仮定を置くわけです。5歳刻みの官庁統計から出す場合は,40代後半と50代前半の未婚率を平均するという便法がとられます。上記サイトの表25のデータを使って,職業別の数値を算出した次第です。

 下の表は,このやり方で明らかにした,職業別の平均年収と生涯未婚率の一覧表です。職業従事者の総数が1万人に満たない職業は,分析から除外しています。「**」がそれです。これを除いた,男性の66職業,女性の62職業が分析対象です。


 生涯未婚率は,職業によって大きく異なります。男性でいうと,最も低いのは鉄道運転従事者の2.2%で,医師の3.6%,管理的公務員の4.2%がこれに次いでいます。安定していて高年収・・・。分かるような気がしますねえ。

 しかし女性は様相が違っていて,たとえば医師の生涯未婚率は19.3%と高い部類に入ります。ほか,黄色マークを施した情報処理技術者,法務従事者,記者・編集者なども,ジェンダーの差が大きくなっています。

 さて,ここでの関心は職業別の年収と生涯未婚率の関連を明らかにすることです。上表のデータをグラフで可視化してみましょう。まずは男性から。横軸に年収,縦軸に未婚率をとった座標上に66の職業をプロットすると,下図のようになります。


 ほう。年収が高い職業ほど未婚率が低いという,右下がりの傾向が観察されます。相関係数は-0.632であり,1%水準で有意です。男性にあっては,未婚率の職業差は,年収を介したものであることが知られます。

 女性のほうはどうでしょうか。62の職業を同じ座標上に散りばめてみました。


 女性にあっては右上がりです。傾向としては,年収が高い職業ほど,未婚率が高い。相関係数は+0.424であり,62というデータ数の上では,1%水準で有意と判定されます。

 誰もが肌感覚で感じている,以下の傾向がデータで実証されました。

 ・男性は,年収が高い職業ほど未婚率が低い。
 ・女性は,年収が高い職業ほど未婚率が高い。

 家庭を持つなら,「男が養うべし」「女は主たる家計支持者になるべからず」というような,明にも暗にも蔓延っているジェンダー観念の可視的な表現といえるでしょう。

 しかし,それが時代にそぐわなくなっていることは,よく指摘されること。一馬力ではなく,二馬力でないと到底やっていけない時代です。国際的にみるなら,主たる家計支持者の半分が女性という社会もあり。わが国の現況は,いろいろな軸において,絶えず相対視されねばなりません。
https://twitter.com/tmaita77/status/465008131622191104

 女性のクリエイター系(美術家,編集者等)の生涯未婚率が高いことも気になります。女性にあっては,結婚生活と創造的仕事の両立は難しい,結婚によって貴重なタレント(才能)が潰される現実にある,ということの証左ともいえましょう。

 他にも,今回のデータから読み取れることは多々あろうかと思います。グラフの元データも添えて,資料として提示しておくこととします。

2015年5月6日水曜日

2015年の人口構成の国際比較

 昨日(5/5)は子どもの日でしたが,この日は毎年,子ども人口の統計について報じられます。昨日の新聞をみると,子ども数は過去最少で,東京都を除くすべての県で減少しているそうです。

 国連の人口推計統計にて,今年(2015年)の日本の年齢構成を出すと,15歳未満の年少人口は12.9%,65歳以上の高齢人口は26.4%となります。子どもよりも老人が多い社会です。この値を,国際的な布置図の中に位置づけるとどうなるか。主要国だけでなく,発展途上国を含めた200の社会の比較図をつくってみました。
http://esa.un.org/unpd/wpp/unpp/panel_indicators.htm


 左上にあるのは,子どもが少なく老人が多い,つまり少子高齢化が進んだ社会ですが,日本はその極地に位置しています。双六の比喩でいうと,もう「アガリ」の社会って感じです。対極の右下には,アフリカ諸国などの発展途上国が多くあります。二ジュールでは,人口の半分が15歳未満の子どもです。

 点の斜線は均等線であり,この線よりも上にあるのは,子どもよりも老人が多い社会です。その数は29であり,200か国全体の14.5%に相当します。日本をはじめ,ドイツ,スウェーデン,フランス,イギリスはこのラインを超えています。

 Ⅰ~Ⅲはグループごとの位置変化ですが,社会が発展するにつれて右下から左上,すなわち少子高齢化の方向にシフトします。社会の産業構造の変化(1次→2次→3次)と同様,人口の年齢構成変化も一定の方向(法則)を持っているようですが,日本の場合,その速度が速いことが特徴。赤矢印は,わが国の65年間の位置変化ですが,矢印がかなり長くなっています。この期間で,他の先進国をごぼう抜きです。こうした急激な社会変動に,制度の整備が追い付いていないことが,諸々の問題が生じることの条件となっています。

 あと一つ,高齢従属係数の国際比較もしてみましょう。現役世代の負担度を表す指標としてよく使われるものであり,生産人口(15~64歳)1人につき,高齢人口が何人かです。ここでは話を分かりやすくするため,高齢者1人を何人の生産人口が支えるか,という視点でみてみます。

 たとえば2015年の日本でいうと,生産人口が60.7%,高齢人口が26.4%ですから,高齢者1人を2.3人の生産人口が支えていることになります。では,他国はどうでしょう。先ほどと同じく,200の社会の大量観察をしてみます。


 数的にいうと,生産人口10~20人で高齢者1人を支えている社会が最多ですが,主要国は上のほうにあり,日本はその中でも最上です。ちなみに3人のラインを切っている社会があと一つありますが,南欧のイタリアです。よく知られているように,この国も少子高齢化が加速度的に進んでいる社会なり。

 割り算ではじき出される統計指標は,分子と分母の2要素によって値の水準が決まります。高齢従属係数が高いという事態は,分子が大きいケースと,分母が小さいケースの2通りを含みます。上記の図法は,これらの要素がどうであるかも観察するのに適しています。

 計算に使った,元の原数値の情報もできるだけ伝えるべき。師匠の松本良夫先生が,よくおっしゃっていました。上記の図も,松本先生がよく使われていたものです。

 子どもの日(昨日)ということで,人口構成の国際比較をしてみました。主要国だけではない,世界のあらゆる社会を含んだ大量観察であるのがミソです。2葉の図を資料として展示しておきたいと思います。

2015年5月4日月曜日

大学生の組成図

 2013年5月時点でみて,日本の大学学部学生は256万人ほどですが,その組成はどうなっているのでしょう。設置主体でバラしてみると,国立が17.5%,公立が5.0%,私立が77.6%という構成です(「学校基本調査」)。

 高等教育が私学依存型のわが国では,このように大学生の8割近くを私大が占めるのですが,その中身は決して一様ではありません。伝統ある一流大学と,いわゆるFラン大学では,学生の意識や行動に大きな違いがあることは誰もが知っています。

 今回は,量的に多数を占める私大生の「中身」も分かる,大学生の組成図をつくってみようと思います。国公私という大雑把な区分では,「私」の領分が甚だ大きくなりますが,このゾーンを偏差値で塗り分けた図です。

 私は,学研教育出版の「大学受験案内2015年度用」という資料を使って,全国の私立大学の学部の偏差値を調べました。下図は,本資料から明らかにした,566私立大学の1616学部の偏差値分布です。
http://hon.gakken.jp/book/1130421200


 おおよそ,下が厚く上が細い「ピラミッド」型になっています。一番下のBFとは,「ボーダーフリー」の略です。ボーダー(敷居)がなく,誰でも入れる超カンタン学部です。このBFと偏差値30台の学部が,いわゆるFラン学部とみてよいでしょう。

 右上の構成の円グラフによると,この手のFラン学部が全体の36.4%を占めています。私立大学の学部の3分の1は,リメディアル教育で中学レベルの内容をやっている学部であると推察されます。

 これは学部単位の偏差値(ランク)分布ですが,ここで知りたいのは,学生数のそれです。各学部の学生数が分かれば,簡単に明らかになりますが,あいにく上記の学研資料では,大学ごとの学生数(2013年5月時点)しか載っていません。そこで,擁する学部の偏差値の平均値を当該大学の偏差値とし,学生数の偏差値分布を出すことにします。

 たとえば,私が勤務する武蔵野大学の各学部の偏差値は,法学部が50.0,経済学部が52.5,文学部が50.0,グローバル・コミュニケーション学部が52.5,人間科学部が52.5,教育学部が57.5,薬学部が55.0,看護学部が55.0,です。これらを均して,当大学の偏差値を53.1とみなします。

 このやり方で,566私立大学の偏差値を出し,学生数の分布をとってみました。BF(35.0未満),35.0以上40.0未満,40台,50台,60以上という5つの階級を設けると,学生数の分布は以下のようになります。

 BF(35.0未満) ・・・ 90017人(4.6%)
 35.0以上40.0未満 ・・・ 320331人(16.3%)
 40台 ・・・ 719078人(36.6%)
 50台 ・・・ 649150人(33.0%)
 60以上 ・・・ 188687人(9.6%)

 学生数でみると,センターの40台が最も多いですね。30台やBFの大学は,小規模校が多いためです。

 では,作図をしてみましょう。①まず,10cm四方の正方形を用意します。②「学校基本調査」(2013年度)の学部学生数のデータをもとに,ヨコを国公私で3区分します。③「私」のゾーンを,上記の偏差値比率で区分けします。④ついでに,国立大学の旧帝大(東大,京大,東北大,九大,北大,阪大,名大)のシェアも明らかにします。

 この手続きでできた,2013年5月時点の学部学生の組成図は,以下です。


 私大の偏差値30台とBFは,大学レベルの教育を受けているのか怪しい学生ですが,このゾーンの学生は全体の16.0%です。Fラン学生の出現率は,およそ6人に1人なり。

 これが,大学進学率50%超の現代日本の大学生の組成図です。一口に大学生といっても,その生態は実に多様。よく大学生を対象とした調査がされますが,サンプルの組成が,上記の図柄に接近することはほとんどないでしょう。そうしようとしたら,莫大な費用がかかることになり,科研費を取らないといけなくなります。

 だから,調査って難しい。しかし望むべくは,層化抽出の原理に依拠して,上図の層ごとにサンプルを割り振ることでしょう。そのための目安として,母集団の組成を精密に明らかにすることが必要になります。今回したのは,そうした作業の一部です。

2015年5月2日土曜日

大学生のバイト目的の変化

 大型連休が始まりましたが,いかがお過ごしの予定でしょうか。私は今のところ,どこも行く予定はありません。てか,年中休みのような私にとっては,生活に何の変化もありません。いつも通り,パソコンとにらめっこの日々になりそうです。つまんない人です。

 はて,学生さんはどうなのでしょう。毎年,連休前の授業で尋ねてみるのですが,「ずっとバイトです」という答えが多く返ってきます。

 まあ,私の頃もそうでした。バイトしている学生はたくさんいました。統計で学生のバイト実施率をみても,最近になってとみに増えているのではありません。しかし以前は,遊びのカネ目当てのバイトが多かったような気がします。たとえばGWのバイトにしても,夏休みに友達と海外旅行に行く金を稼ぐというように。

 ところが最近は事情が違ってきているようで,「バイトして,どっか遊びに行くの?」と問うと,「いいえ」と返されます。では,何のために? それは,統計データに語ってもらいましょう。全国一のマンモス私大の日本大学は,3年間隔で学生生活実態調査を行っています(学部学生対象)。その中で,バイトをしている学生に対し,バイトの主な動機・目的を尋ねています。6つの項目を提示し,2つまでを選んでもらう形式です。
http://www.nihon-u.ac.jp/about_nu/disclosure/research/

 各項目の選択率の推移をグラフにすると,下図のようになります。


 90年代半ばからの変化ですが,旅行やレジャーの費用を稼ぐ目的は減り,代わって,生活費・食費を得るためのバイトが増えてきています。2012年度では,バイト学生の半分近くが後者の項目を選択しています。

 私が学部学生だったのは95~99年ですが,当時は遊び目当てのバイトが一番多く,今は生活費稼ぎのバイトが最多であると。私が感じていることが,データで裏付けられました。学費・授業料稼ぎの率が増えていることにも注目。

 日本大学の調査報告書は,このデータについて,「景気の長期低迷による学生の家庭の経済事情が悪化していることを如実に反映している」(49ページ)と述べていますが,全くその通りだと思います。日本大学という一校のデータですが,全国の大学の状況がこれに近いとみてよいのではないでしょうか。

 「家庭の経済事情が悪化」といわれていますが,下宿学生への仕送り額もかなり減ってきています。全国大学生活協同組合の調査から,それを可視化できます。下図は,月額分布の変化を面グラフで表現したものです。
http://www.univcoop.or.jp/press/life/report.html


 私の頃は,月10万以上の「ウハウハ」君が6割を占めていましたが,近年はその比重が減じ,5万円未満が3割に達しています。なるほど,バイトの目的が遊び代稼ぎから生活費・学費稼ぎにシフトしているというのも,分かろうというものです。

 一昔前は,自分のゼミの学生がバイトしているとなると,教授は顔をしかめて「バイトなんかしないで,勉強に集中せい」みたいなことを言っていました。しかし今,こんなことを学生に言ったら,完全なアカハラです。その基底には,上記のような状況変化があることは言うまでもありません。

 図をよくみると,最近では0円(仕送りゼロ)の者も1割ほどいますが,このような学生に遭遇したことがあります。授業中いつも居眠りをしている学生で,呼び出して話を聞いたところ,週5日コンビニ夜勤とのこと。当人は家賃4万円のアパート暮らしで,実家からの仕送りは一切なし(親は学費負担で手一杯)。オール自活です。

 「お前は大学に何しに来てるんだ,何のために学生やってるんだ」と当人を詰問することはできますまい。私が言えたのは,「奨学金を借りて,ちょっとバイトの時間を減らしたらどうか」ということくらいです。

 最近は,「学生に勉強させるため,ガンガン課題を出してくれ」と大学に言われるのですが,こういう学生が少なくないとなると,その気も失せます。こんなことを言ったら,大学崩壊になってしまうかもしれませんが・・・。

 いずれにせよ,わが国の私費依存型の高等教育がそろそろ限界に達しつつあることは間違いないでしょう。高等教育は社会による違いが顕著で,費用負担の主体に着目すると,公費型と私費型の社会にくっきりと分かれます。言わずもがな,日本は後者です。
https://twitter.com/tmaita77/status/584172278889324544

 一般の買物と同様,高等教育の便益は個人に帰されるのだから,その費用は個人が負担すべきという考えもあるでしょう。ですが,多くの人がそれを高等教育を受けることで,高度な知識が広く普及する,知に裏付けられた道徳心が増す,犯罪が減るというような,社会全体にとっての利益も生まれます。知識基盤社会を標榜するわが国にあっては,こちらの面が強いことにも注意し,費用負担の構造を考えなおす時期に来ているようにも思えます。

 さて,連休の初日は晴れました。これが続くとよいですね。よいGWをお過ごしください。