2015年9月4日金曜日

奨学金の有利子化

 大学等の高等教育機関で学ぶ学生で,奨学金を借りる者が増えているといいます。2012年の受給率は,大学学部で52.5%,大学院修士課程で60.5%,博士課程で66.2%だそうです。
http://www.jasso.go.jp/statistics/gakusei_chosa/12.html#shougakukinn

 最近では大学生半分が奨学金(実質ローン)を借りているわけですが,種別の内訳も変わってきています。周知のように奨学金には有利子の一種と無利子の二種があるのですが,それぞれの貸与人員の推移をとると,下図のようになります。下記サイトのデータをもとに作図しました。
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shougakukin/main.htm


 私が学生だった90年代末では,有利子より無利子が多数でした。私も無利子を借りていましたが,奨学金といえば無利子が普通で,有利子はそう多くなかったと記憶しています。

 しかしその後,無利子は横ばいであるのに対し,有利子は増加の一途をたどります。2003年には有利子のほうが多くなり,2014年度では有利子と無利子の比が「2:1」くらいになっています。奨学金の有利子化です。

 わが国は,高等教育がユニバーサル化の段階に達した社会ですが,それは国民に借金を強いることで成り立っているといえるでしょう。ご存じのとおり,わが国の大学の学費はバカ高,高等教育の費用負担が「私」依存型の社会です。

 現在では,大学生の半分が卒業時に奨学金という名の借金(多くが有利子)を抱えることになるのですが,それが未婚化と関連してはいないか。私は前から,こういう疑いを持っています。数百万の借金がもとで,結婚をためらう(相手にためらわれる)若者も少なくないのではないか。

 事実,「彼氏が奨学金を返済中で,とても結婚できない」という女性の声を報告した,本田教授のツイートが話題になっています。「あるある」ってことなのでしょう。
http://blogos.com/outline/131218/

 奨学金という聞こえの良い借金を若者に負わせるシステムは,いろんなことで悪用される恐れがあります。軍に入れば返済免除,こういう仕事を就けば返済免除・・・。同時に,未婚化・少子化という,社会の維持・存続に関わる問題でもあることを,われわれはもっと認識すべきかと思います。