2015年9月28日月曜日

首都圏私立大学の非常勤教員率の分布

 読売新聞教育ネットワーク『大学の実力2016』(中央公論新社)を入手しました。大学関係者にはすっかりおなじみ。同社が毎年実施している,全国大学調査の結果が収録されています。
http://www.chuko.co.jp/tanko/2015/09/004767.html


 今年は,678大学から回答を得られたのだそうです。回収率は91%。残りの9%の大学は,退学率や卒業後進路などのデータを出したくない,ということで回答しなかったのでしょうが,「ウチはヤバい大学だ,来ないほうがいい」と公言しているようなものですね

 この本の「おわりに」で,次のように書かれています。「高校生には,都合の悪いデータも公開してくれる大学を選択してほしい。情報公開は,大学が誠実かどうかを測る大きな指標です」(176ページ)。まったく,その通りだと思います。

 本書には,大学(学部)別の退学率や卒業後進路などのデータが掲載されています。最近では,課題添削をしているか,独自の奨学金を設けているかといった,学生支援に関する事項も調査されています。同じ内容の調査を毎年踏襲するのではなく,時流の変化も見越して,内容が年々練り上げられています。

 さて今年春の調査では,各大学の教員について細かく聞いているようです。各大学の学部ごとに,専任と専任以外(非常勤)の教員数が計上されています。このデータを使えば,それぞれの大学の非常勤教員率を出すことができます。

 私が出入りしている某私立大学の場合,今年5月1日時点の専任教員数は233人,非常勤の教員数は1124人です(全学部の合算)。よって,この大学の非常勤教員率は,1124/(233+1124)=82.8%となります。

 高いですねえ。まあ,講師室のレターボックスの多さをみると「さもありなん」という感じです。さぞ非常勤依存率は高いだろうなと思ってましたが,数値でそれが示されてしまいました。

 しかし,高いかどうかを判定するには,他の大学と比べないといけません。そこらの2~3の私大と比較するだけでは不十分で,全体の分布構造の中に位置づけることが望ましい。

 私は同じやり方で,首都圏(1都3県)の175私立大学の非常勤教員率を計算し,その分布をとってみました。下図は,5%刻みのヒストグラムです。


 175私立大学の非常勤教員率は,0.0%から92.1%と幅広く分布しています。マックスは,某音楽大学です。総じて,美大や音大は非常勤依存率が高くなっています。

 これは両端ですが,平均値は60.5%で,数としては60%台後半の階級が最多(Mode)となっています。全教員の3人に2人が非常勤というのが,首都圏の私大の平均的な姿です。地方ではもっと低いのでしょうが,非常勤講師のなり手(無職博士など)がウジャウジャいる都市部では,こうなるのでしょうか。

 さて,私が教えている某大学の非常勤教員率は82.8%なのですが,上図のヒストグラムでは3番目に高い階級に属します。175大学の中では6位です。高い部類なんだなあ。

 学生さんから,「この大学の先生って,すぐに帰っちゃいますよね。週に一回しか来ないし・・・」とかよく言われますが,こういう構造があるんですよ。申し訳ないとは思いますけど。

 最近,大学の教育力アップを掲げた通知や答申をよく目にしますが,教員の非正規化の問題にまったく触れられていないのが,不思議でなりません。教員の非正規化は,大学教育の効果が上がるのを妨げる一番の条件になっていると思うのですが。この点については,雑誌『教育』(2014年12月号)にも書きました。
http://ci.nii.ac.jp/naid/40020481256

 日ごろのモヤモヤ(イライラ)の原因が,目に見える形で明らかになりましたので,ちょっと気持ちよくなりました。「やっぱり」って感じです。

 読売新聞社の『大学の実力2016』には,大学(学部)ごとの退学率,TP比,正規就職率が載っていて,受験生は自分が希望する大学(学部)のデータを見るのでしょう。しかし,その値が全体の中のどこに位置するのか,という情報も得たいところでしょう。

 そのためには,各項目の分布図をつくっておく必要があります。原資料にはそれがないようなので,ここにて私が作成することにいたしましょう。今回は非常勤教員率でしたが,回を改めて,退学率のヒストグラムを作ってみようと思います。できれば,偏差値による塗り分けもしたい。

 毎年のことですが,10月は大学関連の話題(データ)が多くなりそうです。

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