2015年9月26日土曜日

年収に占める家賃割合

 衣食住に関わる支出は不可避のものですが,とりわけ「住」の費用は家計支出の中でも大きな比重を占めています。

 最近は,持ち家が負の遺産になる可能性がある,という認識が高まってか,借家住まいをする人が増えていると聞きます。となると家賃の額,ないしはそれが収入に占めるウェイトがどれほどかに興味が持たれます。

 ある不動産業者のサイトによると,家賃総額が年収の25%を超えると家計を圧迫するのだそうです。私は,このラインよりも下に収まっていますが,これをオーバーしている世帯も多いことでしょう。年収に占める家賃割合の平均水準がどれほどかも気になります。
http://www.homes.co.jp/cont/rent/rent_00002/

 私は,2013年の総務省『住宅土地統計』のデータを加工して,ラフな試算値を出してみました。今回は,その結果を紹介しようと思います。

 上記の資料には,世帯年収と家賃月額のクロス集計表が掲載されています。下記サイトの表56です。世帯年収のカテゴリー区分は,①300万未満,②300万~,③500万~,④700万~,⑤1000万以上,となっています。家賃月額のそれは,A:1万未満,B:1万~,C:2万~,D:4万~,E:6万~,F:8万~,G:10万~,H:15万~,J:20万以上,です(0円というカテゴリーは除外)。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001051892&cycode=0

 階級値の考え方に依拠して,各カテゴリーに属する世帯の年収ないしは家賃月額を,軒並み中間の値で代表させます。①の年収の世帯は年収150万円,②は年収400万円,・・・というように。上限のない⑤の世帯の年収は,ひとまず1500万円としましょう。家賃月額も,Aは0.5万円,Bは1.5万円,・・・というふうに仮定します。

 このような仮定を置くと,クロス表の各セルに属する世帯について,年収に占める家賃割合を出すことができます。たとえば,×のセルの世帯の場合,年収に占める家賃割合は,(5.0万×12か月)/400万=15.0%です。

 このようにして出した,各セルの数値の仮定値を整理すると,下表のようになります。


 この仮定表を使って,年収に占める家賃割合の世帯分布を明らかにしてみました。下の表は,世帯主の年齢層別の分布です。


 いかがでしょう。赤色は最頻値(Mode)ですが,25歳未満の世帯の場合,全体(141万世帯)の4割が40%台となっています。重いですねえ。収入が少ないので,こうなっちゃうのでしょう。学生の単身世帯も多いでしょうし。

 働き盛りの年代では,収入が多くなるため,家賃比重10%台の世帯が最多となります。しかし高齢になると値は再び上がり,モードは20%台に移ります。

 冒頭で紹介した不動産サイトによると,年収に占める家賃割合が25%を超えると家計が圧迫されるとのことですが,それが30%以上の世帯の比重をとってみると,25歳未満では58.3%,25~34歳では27.0%,35~44歳では23.4%,45~54歳では24.3%,55~64歳では33.0%,65歳以上の高齢世帯では40.4%となります。重い家賃負担にあえいでいる世帯って,結構多いのですね。高齢世帯では4割です。

 以上は分布ですが,それを均した平均値(average)を出してみましょう。各セルの家賃比重(最初の表)に世帯数を乗じ合算し,総世帯数で割れば出てきます。下の図は,年代ごとの平均値を線でつないだ折れ線グラフです。地域によっても違うと考え,東京と郷里の鹿児島のカーブも描いています。


 若年層と高齢層で高く,働き盛りの層で低い「U字」型です。全国の折れ線でいうと,若年層と高齢層で3割ちょい,生産年齢層で4分の1というところです。

 しかし,東京は高いですねえ。収入も多いのですが家賃もバカ高なので,こうなってしまいます。どっかのWeb誌で,「都心で老いると地獄だ」みたいな記事が載ってましたが,東京の高齢層の家賃ウェイトの平均は4割にも達しています。これは苦しい。

 それに比して,わが郷里の鹿児島は状況が幾分かマシです。25歳未満を除いて,キツイ目安のライン(25%)を下回っています。収入は東京よりは少ないですが,家賃もうんと安い。向こうなら,4万円出せば部屋2つのマンションを借りれますしね。働き盛りの層の家賃割合が2割を切るというのも,さもありなんです。

 地域別の統計は,東京と鹿児島しか出してませんが,47都道府県全部の値を出したら面白いですね。家賃割合地図なんてのもできそうです。

 あまり知られていない,年収に占める家賃割合の分布・標準値を試算してみました。ご自身の現況を相対視するのにお使いください。