2015年9月15日火曜日

10代のスマホ・パソコン所持の日米比較

 昨日,10代のパソコン所持率の面積グラフをツイッターで発信したところ,みてくださる方が多いようです。内閣府『我が国と諸外国の若者の意識に関する調査』(2013年)のローデータを加工して,日米両国の10代の所持率(自分専用)を出し,視覚化したものです。
http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/thinking/h25/pdf_index.html

 ノートパソコン所持率       43.3%(日本)  72.5%(アメリカ)
 デスクトップパソコン所持率   18.5%(日本)  51.6%(アメリカ)
 両方とも所持率           7.1%(日本)  35.5%(アメリカ)
                   *%の母数は,日本が508人,アメリカが403人

 それぞれの比重を正方形の面積比重で表すと,下図のようになります。ノートとデスクトップの重複部分が両方所持です。ノートのみとデスクトップのみは,それぞれの所持率から両方所持率を差し引いた値です。日本のノートのみ所持率は,43.3-7.1=36.2%となります。


 一見して,アメリカのほうがパソコン所持率が高いことがわかります。アメリカでは,10代少年の35.5%(3人に1人)がノートとデスクトップの両方を持っています。自分専用です。

 上図の3色の合算が,ノートないしはデスクトップを持っている者,つまり広義のパソコン所持率ですが,日本は54.7%,アメリカは88.6%です。残りの白色は,自分のパソコンを持っていない者ですが,日本では45.3%と半分近くになります。

 まあこの中には,ケータイやスマホを持っている者が多いことでしょう。仲間との交信や受動的な情報収集なら,パソコンでなくとも掌サイズのスマホで事足ります。そこで,これらの小型機器の所持率も絡めてみましょう。

 私は,上記内閣府調査のローデータを分析して,日米両国の10代のケータイ・スマホ所持率,パソコン所持率を出しました。後者は,ノートないしはデスクトップを有している者の割合です。上述のように,日本は54.7%,アメリカは88.6%です。

 ケータイ・スマホ所持率は日本が74.6%,アメリカが87.1%となっています。へえ,こちらもアメリカのほうが高いのですね。ケータイ・スマホとパソコン(ノート or デスク)の両方を持っている者は,日本が48.0%,アメリカが79.4%なり。

 これらの情報をデータを面積図で表すと,以下のようになります。


 大きめの図にしましたが,わが国では,パソコンは持たずともスマホだけを持つ者が結構います。その比率は26.6%,4人に1人です。

 この「スマホだけ族」というのは日本だけに多い人種で,諸外国ではほとんどいません。アメリカでは7.7%,欧米先進国でも同じようなものです。先述のように仲間との交信やちょっとした情報収集(発信)ならスマホで十分ですが,それでは,情報の加工・創造のスキルが身に付かない懸念も持たれます。

 あと日本では,スマホもパソコンも持たない者が18.7%,およそ5人に1人います。これは「リア充族」と解していいのでしょうか。いや,そんなことはないですよね。家庭の経済的事情で,持とうにも持てないのかもしれません。最近のわが国の子どもの貧困率は6人に1人といいますが,この比率と似通っていることも象徴的です。

 日本の10代の特徴は,パソコン所持率が低いこと,スマホだけ族が多いことです。まあこれは,パソコンを使う必要に迫られないためでしょう。日本は教育の情報化(ICT化)が最も遅れている国で,授業でもコンピュータが使われることは滅多にないですし。アメリカからの帰国子女が驚くのは,日本では作文を手書きで書かされることだそうです。

 生徒がパソコンを持っていない,では補助金を交付して彼らに強制的に持たせればよい,という話ではありますまい。その前になすべきは,教育の情報化を推し進め,コンピュータを使う必要にさらすこと。提出物のやり取りをネットで行うことにするだけでも,事態は大きく変わるのではないでしょうか。

 この点については,9/8にニューズウィークWeb版で公開した拙稿「日本の学生のパソコンスキルは,先進国で最低レベル」でも書きました。結構読まれているようです。興味ある方は,ご覧ください。

 今日から,後期の授業が始まります。本日は,杏林大学の教育社会学(5限)。教職課程の授業ですが,今年はどんな学生さんに会えるか。楽しみです。