2015年8月12日水曜日

再生産

 昨日,ニューズウィーク日本版のサイトに,「ひそかに進む日本社会の階層化」という記事を載せていただきました。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2015/08/post-3838.php

 ブルデューの名著『ディスタンクシオン』を引き合いにして,①わが国でも階層と趣味・嗜好のつながりはみられること,そうした文化資本の差を介して,②親から子への地位の再生産(文化的再生産)があるのではないか,ということを指摘しました。

 ①についてはデータを添えましたが,②については憶測を述べるにとどまりました。この点に関するデータを見たいという要望があるようですので,ここにてそれを掲げようと思います。

 お見せするのは,私が作成した3つの統計グラフです。まずは,都内23区の高学歴人口率と小学生の算数学力の相関図です。学力は地位達成の重要なファクターになりますが,各区の正答率の水準は,住民(学校卒業人口)の大学卒比率と非常に強く相関しています。


 大学・大学院卒人口比率が高い区ほど,正答率が高い傾向が明瞭です。相関係数は+0.9を超えます。これは,所得や教育扶助率など,他の関連要因を介した疑似相関かもしれませんが,これら3つを投入した重回帰分析結果では,上記の高学歴人口率のβ値が最も高くなっています。
http://tmaita77.blogspot.jp/2014/07/23.html

 やはり,経済資本よりも文化資本の影響が強い,ということでしょうか。冒頭のニューズウィーク記事でも書きましたが,子どもの学力格差の問題を議論するにあたっては,後者の面にも注意する必要がありそうです。通塾費の援助のような経済的支援だけで解決する話ではなさそうです。

 次に,小・中学生の最終学歴展望が,親の学歴とどう関連しているかです。内閣府の「小・中学生の意識に関する調査」(2014年)では,小4~中2の児童・生徒に対し,「将来どの学校まで行きたいか」と尋ねています(Q7)。これに対する回答が,父親の学歴によってどう違うかとグラフ化してみました。(   )内はサンプル数です。*ローデータを独自に分析して作成した図であることを申し添えます。最後の図も同じです。


 父親が高学歴の子どもほど,大学進学アスピレーションが高くなっています。学歴の再生産ですが,学歴が地位達成と強く結び付いていることを考えると,親から子への地位再生産が存在することを示唆します。それに際して,昨日のNW記事でみたような「文化資本」の差異が影響していることは,想像に難くありません。

 上記は,子どもの教育展望ですが,実際に到達した学歴がどうなのか,というデータも作れます。下の図は,20代の学校卒業者の最終学歴分布を,同じく父親の学歴別にみたものです。


 こちらも,父親の学歴と強く相関しています。とくに,父親が大卒であるか否かで差が出ています。自分が大学を出ている親は,わが子にも大卒学歴を,ということでしょうか。そうした教育期待と同時に,経済資本(学費負担能力)や文化資本も影響しているとみられます。

 以上の3つのグラフは,昨日のNW記事の補足ですが,私が専攻する教育社会学の基本テーゼに関わるものですので,ここにて提示する価値があると思いました。随所で申してますが,ブログ,自前のメディアを持てるって素晴らしいことですね。

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