2015年8月10日月曜日

結婚しなくても子どもが持てる社会

 8/4のニューズウィーク記事では「生涯学習」について書いたのですが,本記事を見てくださる方が多いようです。そこでは,日本の成人の通学率が著しく低いことに触れ,①日本は教育大国と呼ばれているが,それは人生の初期に限った話だること,②日本では,「児童期→教育期→仕事期→引退期」という直線的ライフコースが支配的であること,を指摘しました。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/08/post-3823.php

 ところで,直線的なのはライフコースだけではありません。進学,就職,結婚,出産というイベントも,直線的に順序だてられています。とくに「結婚→出産」という順序を経るべしという考えが根強く,これを逸した場合,好奇(偏見)の眼差しに晒されることになります。わが国では,未婚や事実婚の親が少ないことは,よく知られていること。

 しかし,世界に目を転じれば,そうでない社会が結構あります。タイトルに書いたような,結婚せずとも子どもが持てる社会です。今回は,この点に関するデータをご覧に入れましょう。

 まずは,子育て年代の配偶関係構成を観察することから始めましょう。日本は未婚もしくは既婚が大半ですが,海外では,同棲(事実婚)も結構います。

 私は,2010~14年の「世界価値観調査」のローデータを分析し,30~40代の配偶関係構成を国別に明らかにしました。原資料の6カテゴリーを4カテゴリーにまとめています。3番目の同棲は,英語表記で「Living together as married」となってますので,婚姻の意志があって同居し,周囲からも夫婦と認知されている「事実婚」であるとみられます。
http://www.worldvaluessurvey.org/WVSOnline.jsp

 下の図は,日韓,欧米,そして南米のコロンビアの帯グラフです。英仏は,本調査の対象になっていないことを申し添えます。


 東洋の日韓は既婚が多くを占めますが,地球の裏側のコロンビアでは,同棲が38%と最も多くなっています。他の欧米3国は,この中間です。

 わが国では,同棲という形態は非常に少なく,不道徳だという偏見を向けられることも少なくないのですが,そういう社会は国際的にみればマイノリティーであることが知られます。調査対象国全体を見渡すと,とくに北欧や南米の国々では,同棲(事実婚)の比重が相対的に高くなっています。

 さてここでの関心は,結婚というイベントを経ないで子どもを持てる社会の存在を確かめることです。私は,30~40代の未婚者ないしは同棲(事実婚)者のうち,子どもがいる者の割合を計算してみました。

 日本の場合,該当者174人のうち,子がいる者はわずか8人(4.6%)です。予想通りといいますか,少ないですねえ。しかし,値が高い社会もあります。下図は,高い順に配列したランキングです。%の母数が50人に満たない国は,分析から外しています。


 トップは,コロンビアの78%です。上位には,南米やアフリカの諸国が並んでいます。

 ある方がツイッターで指摘してくださったことによると,南米では家族以外にも愛人をつくることが多く,その関係上,未婚の出産も多いとのこと。アフリカではレイプ被害などによる,婚外出産も多いと思われます。

 スウェーデンとドイツは約半分,アメリカは4割ほどです。スウェーデンでも,同棲(事実婚)はれっきとした家族制度とみなされ,法的な保護や権利が与えられているそうです(サムボ)。いってみれば婚姻に至るまでの「お試し期間」ですが,この段階においても安心して出産できる。そういう社会です。

 対して日本は4.6%,韓国は0.9%で,イスラーム国はほぼ皆無です。これは宗教上の理由からでしょう。

 社会状況を同じくする先進国の中でみると,日本は外れた位置にあることが分かります。少子化をめぐる議論で,「日本は結婚という形態にとらわれ過ぎではないか」「他国はそうではない」という声がよく聞かれますが,データでもそれは裏づけられています。

 昨年の10月19日の記事でみたように,わが国の少子化進行の要因としては,結婚した夫婦が子を産まなくなったことよりも,結婚しない人が増えたこと(未婚化)が大きいようです。逆にとれば,結婚のようなタイトな形態をとらずとも,子どもを安心して産めるようになれば,事態は変わるのではないか,という展望も持たれます。上述のサムボは,その例です。

 国際比較は,自分たちが馴染んでいる(囚われている)呪縛から,われわれを解放してくれます。私はこういう思いで,日々,各種の国際統計をいじっています。

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