2015年3月27日金曜日

都道府県別の年齢層別の転入超過率

 地方人の地元志向,都会人の田舎暮らし志向の高まりとかいわれますが,それを示すデータってどこにあるのでしょう。

 人の動き(移動)を知ることができる資料として,総務省の「住民基本台帳人口移動報告」があります。1年間に人がどれほど入ってきたか(転入者数),どれほど出て行ったか(転出者数)が県別に掲載されています。前者から後者を差し引いた分が,転入超過数です。これをその年の始めの人口で除すと,転入超過率が出てきます。人口の社会増を表す指標です。

 私は,東京都の転入超過率を計算してみました。年齢層によって様相は大きく違うでしょうから,年齢層別の率を出しています。下の表は,最新の2014年の計算表です。aとbは2014年中の転入・転出者数,cは同年1月1日時点の人口です。


 10代後半と20代前半で転入超過率は大きくなっています。進学・就職に伴う流入層でしょう。20代前半では,この1年間にかけて6.4%も人口が増えていることになります。さすがですね。かくいう私も,10代の後半で東京に入ってきた人間の一人です。

 50代後半以降では,値はマイナスに転じます。転出が流入を上回る,ということです。都会に出てきた人が定年を機にUターンする,あるいは定年後は田舎暮らしをとIターンする人たちでしょう。

 これは2014年の統計ですが,過去に比してどう変わっているのか。若者の地元志向が強まっているなら,10代後半から20代前半の山は低くなっているでしょう。都会人の田舎暮らし志向が強まっているなら,定年近辺のマイナスの絶対値(流出超過率)が高まっているはず。

 上記の資料にて,県別・年齢層別の数が集計されているのは,2010年からのようですので,2010年と2014年の比較をしてみましょう。下の図は,算出された年齢層別の転入超過率を折れ線グラフにしたものです。


 まず若年期の流入超過率をみると,10代後半ではちょっと下がっていますが,20代前半では山が高くなっています。20代前半の流入超過率は,2010年では5.0%でしたが,2014年では先ほどみたように6.4%です。

 定年期の流出超過率はというと,こちらは微減しています。つまり相対量でみて,東京から出ていく人間が減った,ということです。

 むーん,東京都のデータですが,この大都市に入ってくる人間は増え,そこから出ていく人間は増えていない,むしろ減っていると。よくいわれる地元志向,田舎暮らし志向のどちらも観察されませんね。

 他の県のデータもみてみましょう,移動が激しい20代前半と60代前半の転入超過率を,都道府県別に計算してみました。観察ポイントは,20代前半の流入超過率が都市で減ったか(地方で増えたか),60代前半の流出超過率が都市で増えたか(地方で減ったか)です。


 左の20代前半をみてみましょう。首都圏(1都3県)と九州県は赤色にしていますが,前者では転入超過率が軒並みアップし,後者では下がっています。首都圏には若者が入り,九州からは出ていく傾向が強まっていると。他の地方県をみても,若者の転出超過率が上がっているようです。

 リタイヤ期の人口移動はというと,首都圏では転出超過率は下がっています。九州では,どの県でも転入超過率は微減していると。おそらく,東京からのUターン,Iターンは減っているとみてよいでしょう。

 「地方人の地元志向,都会人の田舎暮らし志向の高まり」という希望的観測のデータって,どこにあるのか? 今はそれがなくとも,今後の地方創生政策により,それが出てくることを願うばかりです。今日の朝日新聞に,破格の待遇で一人親世帯を歓迎する自治体の紹介記事が載っていましたが,ユニークな施策だと思いました。
http://www.asahi.com/articles/ASH3T570MH3TPTFC00N.html

 桜の季節になりましたね。週末はお花見に行かれる方も多いことでしょう。私も,近場の都立桜ケ丘公園にて,ささやかな花見を楽しみたいと思っています。