2015年3月1日日曜日

首都圏の年収地図(2013年)

 2013年の「住宅土地統計調査」の最終結果が公表されました。これまで,47都道府県の結果は少しずつ公表されてきたのですが,26日に人口の多い首都圏の分も公表され,最終的な確定結果とされています。

 この調査では,都道府県よりも下った区市町村のレベルにおいて,世帯単位の年収分布が明らかにされています。したがって,このデータを加工すれば,区市町村別の平均年収も計算できる次第です。

 県別の平均年収のデータはよく見かけますが,それよりも下りた区市町村レベルのそれはあまり知られていないのではないでしょうか。まあ,ネットアンケートによる「お金持ちの地域はどこ?」みたいな記事はありますが,信頼度の高い官庁統計を使って地図を描いてみるとどうでしょう。今回は,それをしてみようと思います。

 本調査では,世帯の年間収入が調査されていますが,用語解説によると「世帯全員の1年間の収入(税込)」だそうです。給与のほか,ボーナスや年金なども含むトータルな収入額です。私が住んでいる多摩市(東京)の総世帯の年収分布は,以下のようになっています。年収が判明した63,870世帯の分布表です。


 最も多いのは,年収300万円台の世帯です。単身世帯や高齢者世帯も含む全世帯の分布ですので,こんなところでしょう。年収1000万超の世帯は7.8%,およそ13分の1なり。余談ですが,都心の港区では,このレベルの世帯が全体の4分の1を占めています。さすがですね。

 それはさておき,上表の度数分布表から世帯年収の平均値(average)を計算しましょう。各階級の世帯の年収を中間の階級値で代表させます。年収100万円台の世帯は150万,200万台の世帯は250万というように仮定します。上限のない1500万超の世帯は,ひとまず年収2000万とみなします。この場合,多摩市の総世帯の平均年収は,次のようになります。全体を100とした相対度数を使ったほうが,計算は楽です。

 {(50万×6.1)+(150万×10.6)+・・・(2000×1.5)} / 100.0 ≒ 489.8万円

 多摩市の平均世帯年収は490万円と出ました。取り立てて違和感のない数値です。私の年収がこれと比してどうかは,ご想像にお任せいたします。

 私はこのやり方で,首都圏(1都3県)の214区市町村の平均世帯年収を明らかにしました。下の図は,それを地図にしたものです。世帯年収が調査されていない地域は,欠損値としています。


 色は濃い地域は年収が相対的に高い地域ですが,東京の都心,千葉の北部近郊,横浜の北部に多くなっています。「お金持ちの地域」の分布図ですが,これも肌感覚に照らして頷けます。

 ついでに,その具体的な顔ぶれも示しておきましょう。世帯平均年収が高い順に並べたランキング表をつくったのですが,全部は載せられないので,上位40位までの部分を切り取って掲げます。


 トップは東京の千代田区で793万円です。わが多摩市と300万円以上の差!その次は六本木ヒルズのある港区,その次は横浜市の青葉区となっています。全世帯でみた平均年収が700万超ってのはスゴイですねえ。平均値にまとめる前の分布でみたら,特異性がもっと際立っていることでしょう。先ほど述べたように,港区では年収1000万超の世帯が25%超を占めます。

 最後に,この点も可視化しておきましょう。上表で2位にあがっている港区と足立区の世帯年収分布を,百分比の折れ線で描いてみました。双方とも,都内の特別区です。


 ほぼ左右対称の型になっています。足立区では低収入層が多いですが,港区は逆に右側の富裕ゾーンにが多いと。単一の平均だけでなく分布の様相も観察すると,収入の地域格差が大きいことがより一層伝わってきます。エンリコ・モレッティの名著のタイトルを借りると,まさに「年収は住むところで決まる」です。

 問題は,こうした収入の地域格差が子どもの育ちとどう関連しているかです。学力との相関はどうか,中学受験をする子どもの率との相関はどうか・・・。さらには,肥満や虫歯など,発育面の指標との関連はどうか。こういう関心が出てきます。

 基底的な経済格差と教育格差の関連分析ですが,この点は,3月12日の記事で行っています。子どもの学力,体力,健康の指標とどう相関しているか。こちらもぜひ,ご覧ください。