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2015年2月12日木曜日

小学校6年生の地理認識

 2008年ころ,大学生の3割が宮崎県の位置を間違えたという調査報告が日本地理学会より発表され,話題になりました。私は『47都道府県の子どもたち』『47都道府県の青年たち』という本を書いているくらいですので,全県の地図上の位置を即座に言い当てることができます(自慢にはなりませぬが)。

 日本は47の都道府県から構成されているのですが,各県の名称と位置はマニア知ではなく,全ての子どもが身につけるべき「教育知」として,学習指導要領にて定められています。小学校3・4年生の社会科の内容です。

 小学校社会科の『学習指導要領解説』では,47都道府県の名称と位置の学習を通して,「自分たちの住んでいる県の位置を広い視野からとらえ,その特色を考える手掛かりとなるようにする」といわれています。また,「小学校修了までには確実に身につけ,活用できるようにする必要がある」とも書かれています。

 はて,当の子どもたちは,この内容をどれほど修得しているのでしょう。国立教育政策研究所が小学校6年生を対象に調査した結果がありますので,ここにて紹介しようと思います。2008年6月に公表された調査報告であり,Web上で見ることができます。

 名称から位置を答えさせる問題(A)と,位置から名称を答えさせる問題(B)を課しているようです。下の表は,それぞれの県について双方の正答率をまとめたものです。正答できた児童が全体の何%いるかです。


 両端の北海道と沖縄の正答率はさすがに高いようですが,全体的にみて,出来はあまりよくないようです。正答率50%以下,つまり半分以上の児童が間違えた県の数値は赤色にしていますが,結構多いではありませんか。福井や徳島の位置,島根の名称に至っては6割の子どもが間違えています。

 最終学年の6年生のテスト結果ですが,47都道府県の位置と名称は「小学校修了までには確実に身につけ,活用できるようにする必要がある」という学習指導要領の規定は,具現されていないようです。大学生の3割が宮崎の位置を知らないという調査結果も,さもありなんです。

 ただ,全問正解の猛者も少しはいるようで,Aを全問正答した者は全体の12.7%,Bの全問正答率は14.6%と報告されています。

 上表のA(位置)の正答率を地図にしておきましょう。70%以上,60%台,50%台,50%未満の4階級で各県を塗り分けてみました。


 おおよそ東高西低ですが,九州の色が白いのだなあ。南端の沖縄と鹿児島以外は,正答率50%未満なり。

 先ほど申したように,47都道府県の位置と名称はオタク知ではなく,全ての子どもが身につけるべき教育知です。何事にかけても,自らの置かれた位置を知るのは重要。学術論文でも,論を展開する前に,まずは先行研究の検討,関連テーマ全体の中での位置を明確にすることが求められます。そうすることで,これから報告する研究は単なる個人趣味ではなく,社会性のあるものなのですよという説得力が備わります。

 自分の県の位置を知ることは,それぞれの県で暮らしている子どもたちに,県を超えた全国的視野を持たせ,国民として日本を協働して支えようという認識を植え付けることにもつながります。拡張すると,世界の中での日本の位置を教えることは,地球市民としての自覚を持たせることと同義です。

 さて,上記の調査では位置と名称という視点を据えていますが,それぞれの県の形(shape)というのはどうでしょう。私は,冒頭の日本地理学会調査報告が出たころ,授業の受講生を対象に次のようなテストをしてみました。


 お分かりでしょうか。正答は②です。確か120人ほどの受講生のうち,正答できたのは10人ほどだったと記憶しています。正答率1割以下でした。⑤の山形県と間違えた学生さんが多かったなあ。

 まあ,これなどはどうでもいいオタク知かもしれませんが,教員採用試験の問題にいいんじゃないかしらん。私だったら,こういう問題を出すかな。県への愛着レベルを測る問題として・・・。来年度の授業で,同じテストをまた受講生諸氏にやっていただこうと思っています。