2014年11月26日水曜日

都道府県別の大学進学率のジェンダー差

 今日の朝日新聞に「生まれながらの境遇,乗り越えろ,性別で地域で学びに差」と題する記事が出ています。生まれながらの境遇で教育機会に格差が出ているという趣旨ですが,私が計算した,性別・都道府県別の大学進学率のデータが掲載されています。
http://www.asahi.com/articles/ASGCT55SJGCTUTIL02L.html

 記事には,大学進学率のジェンダー差が大きい5県と小さい5県の表が掲げられています。前者は,北海道,山梨,和歌山,埼玉,鹿児島です。後者は,熊本,岡山,東京,高知,徳島です。しかるに,他の県はどうかという関心もあるでしょう。記事には,全県の分を載せるスペースがなかったようですので,ここにてそれをご覧に入れようと思います。上記の記事の補足です。

 まず大学進学率の概念ですが,私が計算したのは,18歳人口ベースの4年制大学進学率です。2014年春の大学入学者数を,推定18歳人口で除した値です。分母は,3年前(2011年春)の中卒者・中等教育学校前期課程卒業者で代替しています。

 分子には,過年度卒業生(浪人)も含まれますが,今年春の18歳人口からも浪人を経由して大学に入る者が同程度出るものと仮定し,両者が相殺するものとみなします。よって,ここでいう大学進学率とは浪人込みの数値ということになります。もっと平たくいうと,同世代のうち大学に行くのは何人かです。

 今年春の大学入学者数は60万8232人,分母の推定18歳人口は118万838人ですから,大学進学率は51.5%ということになります。よくいわれる,同世代の半分が大学に行くとは,こういうことです。

 私は,この値を都道府県別に計算しました。男女の値も出しました。分子には,各県の高校出身の大学入学者数を充てています。言い忘れましたが,分子・分母とも,ソースは文科省『学校基本調査』です。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm

 下表は結果の一覧表です。最高値には黄色,最低値には青色のマークを付しています。上位5位の数値は赤色にしました。右欄には,男子の率が女子の何倍かを表すジェンダー倍率と,その順位を掲げています。


 大学進学率のマックスは東京ですが,最も低いのは,今年は郷里の鹿児島となっています(昨年は岩手)。うへえ,東京と鹿児島では,大学進学率に倍以上の開きがあります。女子では,40ポイント以上の格差です。

 進学率のジェンダー差が最大なのは北海道で,およそ1.4倍です。男子が48.0%なのに対し,女子が34.6%と,大きな差が出ています。対して,四国の徳島では性差がほとんどありません。この県は,自県内の大学に入る女子が多いようですが,県内に女子をひきつける大学があるのでしょうか。自宅から通えるのは,大きい。

 最後に,上表のジェンダー倍率を地図にしておきましょう。私は視覚人間ですので,こういうオマケをつけたくなります。


 濃い色は,ジェンダー差が1.3倍を超える県です。北海道,埼玉,山梨,和歌山,そして郷里の鹿児島が該当します。上記の記事タイトルに引きつけていうと,「性別で学びに差」がある度合いが大きい県です。

 以上,朝日新聞記事のデータの補足をしました。いやー,ブログって便利ですよね。何か補足で言いたいことがあれば,手軽に何でも発信できる。私見ですが,学者や評論家はこのツールを持つべきだと思います。潮木先生の言葉を借りるなら,自分の研究成果を思うままに発信できる「私設出版社」です。紙媒体と違って,文字量や図表の量にも制限はなし。間違いがあれば,すぐに修正もできます。*それゆえに信頼度が低いという問題もありますけど。

 学生さんにも,この偉大な文明の恩恵を活用すべしと勧めているところです。自分を世に発信する。これも広義の「シューカツ」ですよ。

 今日は雨でしたが,明日は快晴だそうです。私は,日帰り遠足に行く予定です。行き先は箱根。紅葉も見ごろだと思います。さて,今日はもう寝るとしましょう。