2014年9月25日木曜日

都道府県別の高校ドロップアウト率

 毎日新聞社の分析によると,大阪の府立高校入学者の1割は,卒業を待たずして学校を去るのだそうです。言葉が適切か分かりませんが,ドロップアウト率は1割。学校別にみると,2割を超える高校も少なくないそうな。

 あるコーホートについて,1年時の生徒数と卒業生数を照合して出したみたいですが,文科省『学校基本調査』のデータを使うことで,これを全県分行うことができます。その結果をみていただこうと思います。

 『学校基本調査』には,県別・学年別の高校生徒数が掲載されています。私は,2011年5月時点の第1学年生徒数と,2013年5月時点の第3学年生徒数を照合しました。在学期間が3年間である,全日制高校のデータです。

 本当は卒業時点まで追跡したいのですが,県別の卒業生数は,公私別・学科別のような細かい数値を得ることができませんので,3年時の5月時点までの追跡とします。中退をはじめとしたドロップアウトは1年時に多いといいますので,大きな問題はないでしょう。

 それぞれの県について,公私別・学科別のドロップアウト率を出してみました。東京都を例に,計算のプロセスを説明します。


 2011年春の入学者の追跡結果です。1年時の生徒数は40,765人だったのが,2年後の3年時では38,512人にまで減っています。前者から後者を引いて,推定脱落者数は2,253人と見積もられます。よってドロップアウト率は,初期値に対する比をとって5.5%と算出されます。およそ18人に1人。

 学科別にみると,大きな差があります。予想通りといいますか,専門学科で高いですね。公私比較をすると,東京の場合,「公立>私立」です。後述しますが,47都道府県全体でみると,これはレアなケースです。

 同じやり方にて,上記の5つのカテゴリーごとに,県別のドロップアウト率を明らかにしました。下表は,そのい一覧表です。最高値には黄色,最低値には青色のマークをしています。赤字は上位5位を意味します。


 公立高校のマックスは,毎日新聞でも取り上げられている大阪ですね。同紙の計算結果(10%)よりもやや低いですが,3年時の5月時点までの追跡であるためでしょう。卒業時点までたどれば,値はもう少し高くなると思われます。

 最低は富山の2.1%で,大阪の4分の1です。地域によって違うものですね。私の郷里の鹿児島は7.0%で3位。高い部類なんだなあ。

 公私の差をみると,先ほど例とした東京は「公>私」なのですが,全県を見渡すと,その逆の県がほとんどです。香川では,10ポイント近くもの差があります(公2.2%,私12.1%)。地方は公立人気であり,そこに行けなかった生徒が止む無く私立に行くケースが多いといいます。その中には,経済的に困窮している家庭の生徒も少なからず含まれるでしょう。

 高校就学支援金制度が施行されている現在にあっても,経済的理由による中途退学が,地方の私立では少なくないのかもしれません。本制度の援助対象は,授業料に限られますしね。

 学科別にみると,「普<総<専」というタイプが最も多いですが,「普<専<総」という県も若干あり。奈良の総合学科では,ドロップアウト率が25.4%,4人に1人にもなります。これは生徒数が少ないことによるかもしれません(1年:71人,3年:53人)。

 専門学科のドロップアウト率は,東京の11.9%がマックスです。大学進学率がべらぼうに高い大都市では,普通科志向が強く,そこからあぶれた者の地位不満が強くなるのでしょうか。

 上表のデータは,各県の関係者の方々に資料として使っていただければと思います。最後に,人数的に多い公立高校のドロップアウト率を地図化しておきましょう。一番左端のデータです。4つの階級を設けて,各県を塗り分けてみました。


 近畿圏が濃い色になっているという,若干の地域性が観察されます。都市部で高いという,単純な構造ではなさそうです。

 毎度申しますが,既存統計を駆使することで,明らかにできることは数多し。11月の下旬,某政令指定都市にて,職員さん向けの統計研修の講師をさせていただくのですが,このことを強く伝えたいと思っております。その気になれば,簡単にローデータにアクセスできる人たちなのですから。