2014年8月15日金曜日

母の就業と子のジェンダー意識の関連

 「何をいまさら」というテーマですが,誰もが利用可能な公的調査の結果を使って,この問題に関するデータをつくっておこうと思います。

 用いるのは,内閣府の『我が国と諸外国の若者の意識に関する調査』(2013年度)です。先日,ローデータを入手しましたので,自分の関心に沿う独自の集計も可能です。
http://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/thinking/h25/pdf_index.html

 私は,13~19歳(以下,10代)の伝統的性役割観への意見が,母親の就業状態によってどう変わるかを明らかにしました。伝統的性役割観とは,「男は外で働き,女は家庭を守るべし」というものです。調査では,「賛成」「反対」「わからない」の3択で答えてもらっています(問15)。

 この設問への回答が,母親の就業状態によってどう違うか。日本の10代サンプル508人を,母がフルタイム就業の者,パート・バイト就業の者,その他(専業主婦等)の者に仕分け,回答の分布を比べてみました。

 下図は,結果を図示したものです。A群は母がフルタイム就業の群,B群はパート・バイト就業の群,C群はその他(主婦等)の群です。カッコ内はサンプル数を表します。


 予想通りといいますか,10代少年のジェンダー意識は,母親のすがたにかなり影響されています。反対の比率をみると,A群:54.5%,B群:35.8%,C群:28.2%というように,母がフルタイムで働いている群ほど高くなっています。

 子は親の背中を見て育つといいますが,やっぱりモデルの効果って大きいのかなあ。「働く母のすがたを見て育つ → 伝統的性役割観の否定」。こういう経路があるかと。仮にそうだとしたら,上図のような差は男子よりも女子で大きいことが予想されますが,実態はどうなのでしょう。

 私は男子と女子に分けて,上記と同じグラフをつくってみました。男子のサンプル数は,A群が45人,B群が121人,C群が108人です。女子は順に,A群が54人,B群が111人,C群が69人です。A群が少なくなりますが,分析に耐えない数ではないでしょう。


 男子と女子の別でみても,反対(赤色)の比重は,A群>B群>C群という傾向です。でもその程度は,女子のほうが格段に大きくなっています。女子の反対率は,母親が主婦等の群では30.4%であるのに対し,母がフルタイムで働いている群では68.5%にもなります。倍以上の差です。

 10代のジェンダー意識に影響するのは,母親のすがただけではありませんが,それが一つの大きな規定要因になっているとはいえそうです。殊に,女子にあってはそうです。役割取得の模索期にある思春期・青年期の女子にとって,同性(母親)のモデルの効果は大きいことが知られます。

 現在における女性の社会進出の有様は,未来にも投影されそうです。今回つくったようなグラフも,政府の『男女共同参画社会白書』に載せていただきたいと思います。