2014年8月2日土曜日

青年の自殺率推移の国際比較

 わが国の自殺率は最近は微減の傾向にあるのですが,青年層の自殺率だけは増加しています。この点は,昨年の10月24日の記事でみたのですが,他の社会ではどうなのでしょう。ここ20年ほどの推移の国際比較をしてみようと思います。

 自殺率とは,自殺者数をベース人口で除した値ですが,分子・分母の国際統計は,WHOのサイトから得ることができます。「WHO Mortality Database」というものです。先月にバージョンアップされたばかりで,各国の最新データが掲載されています。
http://apps.who.int/healthinfo/statistics/mortality/whodpms/

 私は,15~24歳の青年層の自殺率が,1990年代以降どう推移してきたのかを明らかにしました。観察したのは,日・韓・米・英・独・仏・瑞の7か国です。各国について分子と分母を揃え,割り算をして自殺率を出しました。90年の日本でいうと,分子の自殺者は1,309人,分母の人口は1,869万人ですから,10万人あたりの自殺者数は7.0人となります。以下では,この値を自殺率ということにします。

 下の表は,算出された自殺率の推移を整理したものです。観察期間中の最高値には黄色,最低値には青色のマークをつけています。


 黄色のマークをみると,欧米4国では90年代前半に位置していますが,日本と韓国は最近です。青年の自殺率は,欧米では減ってきているのに対し,日韓では増えていることが知られます。

 表ではトレンドが分かりにくいのでグラフにしようと思いますが,青年層の場合,分子の自殺者数が多くないので,傾向が安定しません。上表のデータをそのまま折れ線にすると,かなりジグザグする国も出てきます。

 そこで,移動平均法を用いて傾向を均すことにしましょう。移動平均法とは,凹凸の激しいデータを滑らかにする手法です。ある年のデータを均す場合,当該年と前後の年の3年次の平均をとります。たとえば2010年の数値を均す場合は,2009年,2010年,2011年の平均を出すわけです。

 下図は,この方法によって滑らかにした,7か国の青年層の自殺率曲線です。


 大まかにみると,日韓は上昇,米英独仏は低下,瑞はその中間でしょうか。しかし日本は,90年代の初頭では最下位だったのに,この20年間にかけて一気にトップに躍り出ています。「失われた20年」の状況を思うと,さもありなんですね。

 日本の人口全体の自殺率は,97年から98年にかけて激増した後は,ほぼ横ばいです。しかし青年層の自殺率だけは,上図にみるように増加を続けています。社会全体の景気は上向いているといいますが,青年層をとりまく状況はといえば,シューカツ失敗自殺,ブラック企業(バイト)など,暗い話題に事欠かないですしね。

 社会とは,期待される役割を異にするいくつかの層からなっていますが,全体のみならず,こうした層ごとの観察が欠かせないのだなと感じます。上記のデータベースに当たって,壮年層や老年層の自殺率推移の国際比較をするのも,意義ある作業でしょう。

1 件のコメント:

  1. 不思議。アジア地域と欧米の自殺率推移が反比例状態になるのね。
    自殺はやはり土地柄、文化的要素が強いのかなと思ったが、
    英語圏かそうでないかを区分けして考えると、グローバル経済上の優位性が反映されてるのかもしれない。IT技術の発達はグローバル化の流れを加速させる分、英語圏が優位に立つのは否めない。
    日本が自殺率が高いときは経済競争の敗者で、一方の欧米は経済競争の勝者だから自殺率が低くなる。
    食い食われる関係性がデータ上に現れてる可能性。

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