2014年3月10日月曜日

仕事・家事時間の国際比較

 3月8日の「国際女性デー」にかんがみ,前日の7日,OECDは成人男性の家事労働時間の国際統計を公表しました。それによると,日本の1日あたりの平均時間は62分で,国際的にみて下位であるとのこと。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140307/erp14030712160006-n1.htm

 私はこういう報道に接すると,原資料にあたって,詳細なデータを確認したくなります。探すのに手間取りましたが,ツイッター上で教えていただいたところによると,OECDの“ Balancing paid work, unpaid work and leisure ”というもののようです。
http://www.oecd.org/gender/data/balancingpaidworkunpaidworkandleisure.htm

 この資料には,15~64歳の成人男女の生活行動時間が掲げられています。平日,休日をひっくるめた1日あたりの平均時間です。私は,各国の仕事(paid work)と家事労働(unpaid work)の平均時間を拾って,表にまとめてみました。前後しますが,統計の年次はおおむね2009年近辺のものです。わが国は,2011年のデータとなっています。


 なるほど。日本の男性の家事時間は62分であり,韓国に次いで低くなっています。その一方,仕事時間は375分でトップです。後者は前者の6倍以上。偏っていますねえ。北欧のノルウェー(家事184,仕事251)とはえらい違いです。

 さて,私は視覚人間ですので,上表の数値の羅列をグラフ化しようと思います。まずは男性の仕事と家事時間の布置図をつくり,男性の“ Balancing paid work, unpaid work ”の具現度を「見える化」してみましょう。

 横軸に仕事,縦軸に家事の平均時間をとった座標上に,26の社会を位置づけてみました。点線は,26か国の平均値を意味します。


 仕事時間が長く,家事時間が短い日本は,右下に位置しています。対極の左上には,西洋の諸国が多し。これらの社会では,男性の仕事時間は家事時間の1.5倍未満です。6倍を超える東洋の2国とは大違いですね。日本は,男性の“ Balancing paid work, unpaid work ”の具現度が最も低い社会であるとみられます。

 次に気になるのが女性ですが,上と同じ図の女性版をつくるというのは芸がありません。男女の位置の違い(ジェンダー差)が国によってどう異なるのかをみてとれる図をつくってみましょう。

 26か国すべてを盛り込むと煩雑になりますので,主要8か国に対象を絞ります。上図と同じマトリクス上に,各国の男女のドットをプロットし,線でつなぎました。矢印の先端は男性,末尾は女性の位置を表します。


 ほう。日本は線が最も長くなっていますね。仕事・家事時間のジェンダー差が最も大きい,ということです。それもそのはず。男性は仕事375分,家事62分に対し,女性は178分,299分ですから。

 対して北欧のフィンランドやスウェーデンなどは,線が短くなっています。男女の位置変化が小さい,すなわち仕事・家事時間の性差が小さい,ということです。女性の社会進出,男性の家庭進出が進んだ国といわれますが,さもありなんです。

 しかし,わが国の偏りには驚かされます。男性は仕事人,女性は家庭人としての顔しか持っていません。男性の側は家庭人としての顔も持たないと,自らがなす仕事に「社会性」というものが生まれません。営利追求の側面ばかりが強くなります。

 女性にしても,家庭の中にこもりっきりではなく,外の「仕事人」としての顔がないと,生活が息の詰まるものになるでしょう。共働き世帯(主婦世帯)比率と虐待発生率の負(正)の相関関係は,本ブログでもみたところです。
http://tmaita77.blogspot.jp/2012/08/blog-post_28.html

 “ Balancing paid work, unpaid work ”の具現を図ることは,男女個々人の負担緩和という次元にとどまらず,社会の維持・存続に関わる基本的な条件でもあるのです。