2014年1月11日土曜日

47都道府県の子どもたち2012(逸脱)

 「47都道府県の子どもたち2012」プロジェクトの第2回目です。前回は,子どもの発育問題に焦点を当てましたが,今回は,彼らの逸脱行動に注目しようと思います。

 私は,非行,いじめ,および不登校というよく知られた逸脱行動の頻度を,都道府県別に計算してみました。具体的にいうと,小・中学生の非行者出現率,いじめ容認率,不登校者出現率の3指標です。

 順に説明しましょう。非行者出現率は,2012年中に刑法犯で検挙・補導された小・中学生数を,同年5月時点の小・中学生数で除した値です。ベース1万人あたり何人か,という単位で出しました。分子は警察庁『犯罪統計書』,分母は文科省『学校基本調査』から得ています。
http://www.npa.go.jp/toukei/index.htm

 いじめ容認率は,公立の小・中学生のうち,「いじめはどんな理由があってもいけないことだと思う」という項目に対し,「どちらかといえば当てはまらない」もしくは「当てはまらない」と答えた者の比率(%)です。資料は,2012年度の文科省『全国学力・学習状況調査』の結果を用います。
http://www.nier.go.jp/12chousakekkahoukoku/index.htm

 不登校者出現率は,2012年度中に「不登校」という理由で年間30日以上欠席した小・中学生数を,同年5月時点の全児童・生徒数で除して出しました。単位は‰です。分子・分母とも,出所は文科省『学校基本調査』です。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm

 それでは,この3指標の都道府県別一覧表をみていただきましょう。前回と同様,実値のほか,47都道府県中の順位に基づく相対スコアも添えています。1~5位を10点,6~10位を9点,11~15位を8点,16~20位を7点,21~25位を6点,26~30位を5点,31~35位を4点,36~40位を3点,41~45位を2点,46~47位を1点,としたものです。


 実値をみると,非行率は12.2(岩手)~70.2(岡山),いじめ容認率は3.3%(宮崎)~8.3%(神奈川),不登校率は7.7‰(秋田)~13.3‰(宮城),というレインヂがみられます。県によってずいぶん違うものですね。

 次に相対スコアの欄をみてみましょう。赤色の10点(1~5位)に注目すると,表の下側,つまり西日本に多く分布しています。大雑把にみて,子どもの悪さは「東低西高」って感じでしょうか。

 細かくみると,非行は中国・四国地方で多いようです。いじめを容認する児童・生徒は,首都圏や近畿圏といった都市部で多し。不登校率はトップが宮城ですが,これは震災の影響も被っていることと思われます。長期の避難生活に伴う,子どものストレス・精神疾患の増加が指摘されていますし。

 表の右端の数値は,3指標のスコアを均したものです。子どもの逸脱の総合スコアとして使えるものですが,トップは大阪と奈良の9.3点です。ほか,和歌山,岡山,高知といった県のスコア平均も高くなっています。いずれも「西」の県ですね。

 では,全県の傾向を視覚的にみてとるために,この値を地図化してみましょう。前回と同様,5点未満,5点以上6点未満,6点以上7点未満,および7点以上という4つの階級を設け,各県を塗り分けてみました。


  逸脱の「太平洋ベルト」といいますか,東海から中国まで濃い色がつながっています。近畿圏は,三重を除いて軒並み濃い色で染まっているのも気がかりです。前回みた,発育問題のマップの模様とは違っていますねえ。

 ちなみに,この逸脱スコアと人口集中地区居住率(2010年)の相関係数は+0.491であり,1%水準で有意です。都市的環境と逸脱の相関という,よく知られた事実が観察されます。

 次回は,能力という側面に焦点を当てます。「知・徳・体」という枠組みに依拠して,各県の小・中学生の学力・体力・道徳意識の指標を出してみようと思います。そして次々回において,3視点・9指標を総動員した,総合診断を行うことにいたします。