2013年11月30日土曜日

2013年11月の教員不祥事報道

  月末の教員不祥事報道の整理です。今月,私がネット上でキャッチした報道は25件です。いつも通り,記事名と当該教員の属性を記録しておきます。

 明日から師走。今年も残り1か月となりました。無事に過ごせますよう。

<2013年11月の教員不祥事報道>
・女性盗撮の教諭、懲戒免職に(11/1,神奈川新聞,神奈川,中,男,27)
・都立高教諭ら3人懲戒免…教え子にわいせつ行為
 (11/1,読売,東京,わいせつ:高男33,わいせつ画像送付:中男29,麻薬:高男56)
・小2男児の尻たたけ…女性担任、クラスで指示(11/6,読売,高知,小,女,60)
・児童36人分のテストを紛失、誤って焼却か(11/6,読売,群馬,小,男,30代)
・同僚のパソコン盗んだ高校教師、その動機は(11/6,読売,大分,高,男,44)
・児童に「むかつき」平手打ち 小学校教諭、傷害の疑い(11/8,朝日,神奈川,小,男,28)
・痴漢容疑で小学校教諭の男逮捕(11/11,神戸新聞,兵庫,小,男,49)
・ラインで教え子に「好きです」 男性高校教諭を停職処分(11/14,朝日,愛知,高,男,46)
・校庭のヒョウタン「食べる?」 児童嘔吐、教諭懲戒免職(11/14,朝日,大阪,小,男,63)
・体罰研修受けても…大阪府立高バスケ部、顧問が生徒蹴る
 (11/14,朝日,大阪,高,男,31)
・教諭が女子生徒の顔に頭突きし鼻血、報告なし (11/15,読売,福岡,中,男,20代)
・音楽講師、同僚の運動靴に「バカ」と落書き *睡眠薬入り菓子も食べさせる
 (11/15,読売,大阪,小,女,60)
・出張と偽りパチンコ、音楽教諭を停職6か月(11/15,読売,埼玉,中,男,57)
・中学の校長が教諭2人殴る(11/15,埼玉新聞,埼玉,中,男,55)
・今度は買春…公立校教員が今年度6人捕まった県(11/16,読売,長野,特,男,50)
・わいせつ問題でむつ市教委陳謝(11/16,東奥新聞,青森,小,男)
・スピード違反で検挙3回、女性教諭を戒告処分
 (11/19,読売,岩手,無免許運転:小男47,スピード違反:小女49)
・数学教諭、43人の答案改ざん 「情わいた」と正答に(11/20,朝日,岐阜,中,男,29)
・中学教諭が生徒に「人間のくず」 山形県教委、6人処分
 (11/21,共同通信,山梨,体罰:高男40代,暴言:中男50代)
・<窃盗容疑>愛知県警が新人教諭逮捕 校長…子どもにおわび
 (11/22,毎日,愛知,小,男,22)
・缶酎ハイ2本で車横転、小学校教頭を懲戒免(11/22,読売,和歌山,小,男,52)
・業中にメールで同僚中傷 女性教諭を減給処分(11/22,福島民友,福島,高,女,50代)
・テストの点数入り資料を紛失 女性教諭を戒告処分に
 (11/26,神奈川新聞,神奈川,小,女,50代)
・部活指導中に飲酒、淫らな行為…教諭5人懲戒免
 (11/29,読売,神奈川,飲酒指導:高男24,わいせつ:特男27,わいせつ:小男40,窃盗:小男25,わいせつ:小男59,わいせつ:中男33,体罰:中男38)
・児童の母親と不適切な関係 千葉市教委が小学校長処分
 (11/30,千葉日報,千葉,小,男,59)

2013年11月29日金曜日

紅葉の高尾山 2013

 今日も快晴。午前中,埼玉の大学で授業した後,ちょいと高尾山に行ってきました。本日の私の足取りを記録。

 自宅 →(徒歩)→ 聖蹟桜ヶ丘 →(京王線)→ 分倍河原 →(南武線)→ 府中本町 →(武蔵野線)→ 新秋津 →(徒歩)→ 秋津 →(西武線)→ 稲荷山公園 →(大学バス)→ 武蔵野学院大学で授業 →(大学バス)→ 稲荷山公園 →(西武線)→ 飯能・昼食 →(徒歩)→ 東飯能 →(八高線)→ 八王子 →(中央線)→ 高尾 →(京王線)→ 高尾山口 →(徒歩・リフト)→ 高尾山展望台 →(リフト・徒歩)→ 高尾山口 →(京王線)→ 聖蹟桜ヶ丘 →(京王バス)→ 自宅
 
 高尾山ですが,今は紅葉が見ごろ。平日なのですいていました。リフトで上がり,展望台に到着。そこから写した眺望を2枚。

 

 1枚目は展望台の北側です。圏央道が写っていますね。2枚目は,都心方面です。この写真では分かりませんが,スカイツリーもうっすらと見えました。絶景を眺めながらのお茶とみたらし団子は格別。

 山上で1時間ほどブラついた後,リフトで下山。このリフト,シートベルトがついてないので,下りは結構コワい。乗り始めは,いかなり眼下の景色に投げ出されるかのような感を持ちます。そういうのはちょっと・・・という人は,併行して走るケーブルカーを使ったほうがいいかもしれません。

 ささやかな秋の遠(近)足記録でした。

2013年11月28日木曜日

日本社会Jさんの病理診断カルテ

 私が専攻する社会病理学の課題は,社会の病気を診断することです。コント流に,社会を生物有機体になぞらえるわけです。ここでは,日本社会をヒトに見立てて「Jさん」と呼びましょう。

 ある日,身体の不調を訴えるJさんが診察にやってきました。はて,外見上は何ともないようですが,どこが悪いのか。当人に尋ねても答えは曖昧。そこで,どの部位が悪いのかが分かる診断カルテを作成しました。

 自殺率の水準に依拠して,性別の年齢人口ピラミッドに色をつけた図です。自殺率とは,2012年中の自殺者数を同年10月時点の人口で除した値です。分子は厚労省『人口動態統計』,分母は総務省『人口推計年報』から得ています。


 どうやら,右半身(男性)の胸の辺り(中高年)が悪いようです。この部位には,身体を動かすにあたって重要な役割を果たす中枢器官が集中しています。過重な役割を負わされていることからくる,疲労・息切れと思われます。この部位に密集している中枢器官を,左半身の側に移行させる手術が必要のようです。

 測定器具を変えて,もう一枚,別のカルテをつくってみました。今度は,完全失業率による塗り分けです。働く意欲のある労働力人口のうち,職にありつけないでいる完全失業者がどれほどいるかです。2010年の『国勢調査』の統計を使いました。*人口ピラミッドは,上図と同様,2012年の推計人口をもとに作図しています。


 こちらでみると,足の部分が悪いようです。身体を支える大事な部位ですが,動脈硬化により,栄養(職)がここに行き渡っていないことが主因とみられます。栄養の巡りをよくする手術も必要のようです。

 以上,日本社会Jさんの病理診断カルテの試作品でした。国会の廊下の壁には,こういう図を拡大して貼るべし。

2013年11月24日日曜日

留学志向の国際比較

 11月20日の読売新聞Web版に「韓国留学熱,父親に重圧・・・孤独,仕送り,自殺も」と題する記事が載っています。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131120-00000225-yom-int

 学歴社会である韓国では,母子連れだって早期留学する傾向が強く,一人残された父親が孤独や仕送りの重圧に苛まれて自殺にまで至る。こうした悲劇が頻発しているとのことです。やたらと推奨される(早期)留学ですが,こういう影の面もあるのだな,と感じました。

 私はこの記事を読んで,留学志向の国際比較をしてみたくなりました。国別の留学生数がないかと,OECDの “ Education at a Glance 2013 ” にあたったところ,留学生の出身国の構成比が載っていました。各国の高等教育機関で学んでいる留学生の,出身国の内訳です(2011年のデータ)。主要国の数値は,以下のごとし。

 日本 ・・・ 1.0%
 韓国 ・・・ 3.6%
 米国 ・・・ 1.4%
 英国 ・・・ 0.7%
 独国 ・・・ 3.1%
 仏国 ・・・ 1.6%

 調査に回答した,世界各国の留学生全体での比率ですから,こんなものでしょう。最も高いのは韓国の3.6%ですが,この国の高等教育該当年齢人口が他国よりも少ないことを考えると,これだけからも,隣国の留学志向の強さをうかがい知ることができます。

 ここにて,高等教育対象の年齢人口の量を考慮して,各国の留学志向を測る尺度を計算してみましょう。下の表をご覧ください。


 左欄は,上記資料に掲載されている,留学生の出身国内訳です。数値が分かるのは42か国であり,残りの45.7%は「その他」として括られています。ひとまず,この42か国を比較対象としましょう。留学生欄の万分比は,42か国から送り出されている留学生の合計を1万人とした場合の国別内訳です。

 私は,この留学生の万分比を,高等教育該当年齢人口(15~29歳人口)のそれと照合してみました。後者の出所は,国連の人口推計サイトです。
http://esa.un.org/unpd/wpp/unpp/panel_indicators.htm

 どうでしょう。お隣の韓国は,高等教育該当年齢人口では,42か国全体の0.922%しか占めていませんが,留学生の中では6.554%を占めています。よってこの国からは,通常期待されるよりも,7.1倍多く留学生が輩出されている計算になります(6.554/0.922 ≒ 7.10)。この値でもって,各国の留学志向の強さを測ることとしましょう。留学生輩出率と呼んでおきます。

 右端の欄にて42か国の留学生輩出率をみると,トップはルクセンブルク,2位はアイスランド,3位はスロバキア,4位はアイルランド,5位はエストニア,となっています。いずれもヨーロッパの小国ですが,距離的に近い先進国(英独仏)への留学生が多いものと思われます。

 色をつけた主要国の中でみると,韓国が最も高いようです。冒頭の記事でいわれている「韓国留学熱」,さもありなんです。日本は1.01であり,人口統計からみた期待値と同程度ですか。世界の知が集積する米国では,学問への需要が国内で十分満たされるのか,国外への留学志向は低いようです。

 全体の傾向の俯瞰するため,留学生輩出率を高い順に並べたランク図も掲げておきます。値がかっとんで高いルクセンブルクは非掲載です。


 地理的に隣接し,社会文化的な条件も近似している韓国と日本ですが,両国の位置は大きく離れています。しかるに今後,日本の位置は徐々に上がっていくのではないかと思われます。4学期制を導入し,学生の留学を後押ししようという大学も出てきていますしね。早期留学も次第に普及してくることでしょう。

 しかしそうなったとき,冒頭の記事でいわれているような病理現象が起こらないかどうか。文化を同じくする韓国の現在の有様は,わが国の先行きを映し出している鏡ともいえます。子どもの教育という点において,いちはやくグローバル化の波に乗っている(晒されている)隣国において何が起きているか。われわれは,つぶさに観察する必要がありそうです。

2013年11月21日木曜日

自殺のジェネレーショングラム

 社会は,育った時代状況を異にする「異世代」の人々からなりますが,それぞれの世代の軌跡は,年齢と時代(年)のマトリクス上に引いた斜線でもって表されます。

 8月6日の記事では,ジェネレーショングラムという図法を紹介しました。私の恩師の松本良夫先生が,電車のダイヤグラムをヒントに考案されたものです。

 この図にいろいろな情報を書き込むことで,各世代の軌跡を詳細かつ視覚的に眺めることができます。先日,この図を研究で使いたいという方からメールをいただきました。元教員の方で,学習指導要領改訂の歴史を書き入れた図にしたいとのことです。

 なるほど。妙案だと思います。私は,1977年版の学習指導要領で教えられましたが,今教えている学生さん(≒20歳)は,98年版の指導要領で育ってきた,いわゆる「ゆとり世代」です。

 逆に,60年代後半生まれの世代は,教育内容の「現代化」を掲げ,内容をびっちり詰め込んだ68年版の指導要領で締め付けられた世代。そのせいか分かりませんが,この世代は,10代の間に非行者を多数輩出した「業績」を持っています。非行の第3のピークは80年代の前半ですが,いみじくも当該世代が10代の頃ですよね。

 学習指導要領改訂史を盛り込んだジェネレーショングラムは,各世代の人間形成の理解を深めるためのツールとなることでしょう。教育学の講義の教材にも使えそう。完成したら,どうか見せてくださいまし。

 さて私のほうは,自殺率の色をつけたジェネグラをつくってみました。自殺率とは,自殺者数を人口で除した値です。分子の自殺者数は,戦前期は内閣府の『大日本帝国人口動態統計』,戦後は厚労省『人口動態統計』から得ました。分母の人口は,総務省統計局ホームページの長期統計系列から得ています。

 5歳刻みの年齢層ごとの自殺率を5年間隔で出し,それを使って,ジェネグラの座標上に色をつけたというわけです。そしてこの上に,4つの世代の軌跡線を引いてみました。

 この図から,各世代の「生きづらさ」の軌跡をたどることができます。「われわれの世代は大変だった・・・」。ちょっとカッコつけて,誰もがこういうことを口にしたくなるものですが,客観的にみるとどうなのか。とりあえず,ブツをみていただきましょう。自殺のジェネレーショングラムをとくとご覧ください。


 図には,4世代の軌跡線が描かれています。①1921~25年生まれ,②31~35年生まれ,③46~50年生まれ,④71~75年生まれ,です。①は私の小学校時代の恩師・橋本美智子先生,②は学問の師・松本良夫先生,③は団塊の世代,④は私の世代です。*私は76年生まれなので正確には違いますが,まあよしということで。

 図中の白色の数値は,自殺率(10万人あたり)の区切りを意味します。たとえば紫色のゾーンは,自殺率15以上20未満であることを示唆します。黒色は,自殺率が40を越えるヤバい箇所です。

 俯瞰的にみてどうでしょう。「パッと見」の印象は,松本先生の世代(青色)は大変だったのだなあ,ということです。20代前半の青年期に,黒色の山を通過しています。時は1955(昭和30)年。戦後10年,社会の激変期だった頃です。新旧の価値観に引き裂かれ,生きる方針を見失った青年も多かったことでしょう。当時の自殺原因の多くが「厭世」であったことはよく知られています。

 次に,量的に多い団塊世代(黄色)ですが,この世代は,50代になって危機にぶつかっていますね。平成不況の盛り。多くが,リストラ等を苦にした中高年男性の自殺であると思われます。

 私の世代(緑色)はというと,2010年時点の30代後半までしか分かりませんが,加齢ともに自殺率が段階的に上がっていくタイプです。これは他の3世代とは異なる傾向なり。今後,40代,50代になるにつれて,自殺率はもっとアップしていくのでしょうか。

 参考までに,4世代の各年齢時点での自殺率をつないだ折れ線を提示しておきましょう。各世代の自殺の軌跡が分かるかと思います。


 松本先生世代の青年期の山はスゴイ。当該世代の20代前半期の自殺率は,実に65.4にもなります。典型的な青年期突出型。団塊の世代は,50代で痛い目に遭っている中高年期危機型。

 私の世代は,加齢とともに自殺率が一貫して上昇している一貫上昇型です。他の3世代のように,青年期の山がいったんおさまるというような傾向にあらず。このあたりに,何やら不吉なものを感じます。今後,どうなるやら,ロスジェネといわれる私の世代ですが,非正規雇用,単身未婚ニートなど,不安因子を多く抱えているといわれます。図の点線のような推移にならないことを願いたいです。

 あまり楽しい作業ではありませんが,みなさんも,上記の図に自分の世代の軌跡線を引いてみてはどうでしょう。あるいは,「この人は何でこうなんだろう」という人の軌跡を書き込んでみるのもいいかも。個々人の体験をオミットした「世代群」としてのマクロな生活史になりますが,人間理解(異世代理解)のツールになるかもしれません。

 酒場の壁に,この図を拡大して貼ったら,酒の話題として大いに盛り上がるんじゃないかなあ。「みてみろ,俺の頃は・・・」みたいな。売り込んでみようかな。

 次回は,非行のジェネレーショングラムをお見せしようと思います。各世代の10代の非行の軌跡図です。お楽しみに。*私は気まぐれなので,予定変更の場合あり。

2013年11月17日日曜日

病(辞)める教員たち

 昨日の晩,公立学校教員の病気離職率の推移図をツイッターに載せたところ,みてくださる方が多いようです。教職受難の時代といわれるなか,この問題に関心をお持ちの方も多いことでしょう。当該の図をここにて再掲するとともに,もう少し深めたデータも併せて提示しようと思います。
https://twitter.com/tmaita77/status/401715784633708544/photo/1


 上図でいう病気離職率とは,当該年度間に病気離職した教員の数を,同年10月1日時点の本務教員数で除した値です。公立小学校教員でいうと,2009年度間の病気離職者数は609人(文科省『学校教員統計』2010年度)。同年10月時点の本務教員数は413,321人(同『学校基本調査』2009年度)。したがって,この年の病気離職率は,1万人あたりでみて14.7となる次第です。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kyouin/1268573.htm

 全教員1万人につき14.7人(680人に1人)という程度ですから,量的に多い現象ではありません。しかし病気離職というのは,過労やバーンアウトのような,広く蔓延している病理現象の相似形をなしていると思われます。教員の危機兆候を可視化するねらいにおいて,この指標を観察することは無駄ではありますまい。

 さて,この指標の推移をみてみましょう。赤色の中学校の折れ線をみると,1980年代の半ばで高かったようです。「金八先生」にも描かれていますが,この頃,全国的に校内暴力の嵐が吹き荒れていたことはよく知られています。こういうことの影響もあるでしょう。

 その後,生徒の問題行動が沈静化するとともに教員の病気離職率も低下しますが,今世紀の初頭をボトムにして,以後急上昇しています。小学校では伸びがもっとすごく,この10年ほどで3倍ほどになっています(5.3→14.7)。

 今世紀以降,同時多発テロ(2001年)やリーマンショック(2008年)など,いろいろなことがありましたが,わが国の教育界においても然り。2006年の教育基本法改正,翌年の教育三法改正。それに伴い,副校長や主幹教諭などの細かい職階が導入され,教員組織の官僚制化が進んだといわれます。また,2007年度からの全国学力テストの開始,翌々年度の教員免許更新制施行により,教員の多忙化に拍車がかかったという声もあり。

 加えて,学校をとりまく外部環境も変わりました。それを象徴するのが,学校に無理難題をふかっけるモンスター・ペアレントの増殖です。東京都がこの問題に関する調査報告書を出したのは2008年ですが,上図に示されている,病気離職率の上昇期と重なっています。
http://www.kyoiku.metro.tokyo.jp/press/pr080918j.htm

 考察を深めるため,教員のどの層で離職率が大幅にアップしているのかを検出してみましょう。今世紀以降の上昇幅が最も大きい,小学校教員に的を絞ります。2000年度と2009年度について,公立小学校教員の病気離職率を年齢層別に出し,グラフを描いてみました。

 なお,年齢層別の離職率の計算にあたっては,分母を翌年の10月1日時点の本務教員数にしています。2009年度の離職率は,2009年度間の離職者数を,翌年(2010年)10月1日時点の本務教員数で除して算出しています。年齢層別の教員数(ベース)は,『学校教員統計』の実施年のものしか得られませんので,このような措置をとりました。1年程度のラグなら問題はないものと,お許しください。


 今世紀以降,公立小学校教員の病気離職率は急増しているのですが,年齢層別にみると,若年層と高齢層の伸びが顕著であるようです。言葉がよくないですが,病巣はこの部分にあるようです。

 職業生活の始めと終わりに位置する「2つの危機」。これらをどうみたものでしょうか。高齢層については,加齢による体力の衰えなどもあるでしょうが,若年層については如何。

 採用試験の競争率低下により質が下がったとか,右も左も分からず職務遂行が上手くいかないとか,いろいろなことが想起されます。しかるに,ここではもっと構造的な部分に目を向けてみましょう。私が注目したいのは,教員集団の構造です。

 10月27日の記事では,人口の年齢構成変化により,若年層が上の世代から被る圧力が強くなってきているのではないか,という仮説を提起しました。現在のわが国の人口ピラミッドをみると,逆ピラミッド型とまではいきませんが,上が厚く下がやせ細った型になっています(つぼ型)。そこで見出されるのは,量的に少ない若年層が多数の上世代を支えている様,いや後者に押しつぶされている様です。

 実をいうと,教員の世界では,こうした事態がもっと顕著です。団塊世代の大量退職によって最近は増えているものの,財政難から教員の新規採用は抑制されていますしね。

 私は,2010年度の『学校教員統計』のデータを使って,同年10月時点の公立小学校教員の年齢ピラミッド図をつくってみました。本務教員のものです。


 いかがでしょう。教員の量(マグニチュード)からして,赤色の20代の若年教員はやせ細っています。比率でいうと,全国は13.3%であり,この値が最小の沖縄ではたったの3.2%です。

 この上に,多数の年輩教員が乗っかっているわけですが,彼らが自分たちよりも下の若年教員をサポートする存在になるのか,あるいは逆に重荷になるのか。これについては見方が分かれるでしょうが,後者の側面もあるのではないでしょうか。

 前にも書きましたが,「上は支えられる存在,下は支える存在」,「上は指導する存在,下は指導される存在」というように,日本は年齢による役割規範が強い社会です。官僚制化の度合いが強い教員組織にあっては,それがひときわ顕著である,という見方もできます。

 仮にこちらの面をとるとすると,若年教員が上の年輩教員から被る圧力の強さは,頭数を比べることで数値化することができます。図中の黄色の数値がそれです(圧力係数)。30歳以上の教員数が20代の何倍かですが,全国では6.5倍,沖縄では何と29.8倍にもなります。当県の若年教員の状況はどういうものなのでしょう。

 ここにて客観的に明らかにしたのは,①教員の病気離職率が最近高まっていること,②それはとりわけ若年教員で顕著であること,です。その背景として,近年の教育改革や外部社会の変化に加えて,教員集団の構造変化があるのではないか,という仮説を提起したいと思います。

 2004年に,静岡県の磐田市の小学校に勤務していた新任女性教員(24歳)が自殺する事件がありました。原因は,担当する学級で続発する諸問題に孤軍奮闘しなければならなかったことによる,心理的な負担(鬱)であったそうです。

 報道によると,当該教員が先輩教員に助けを求めた際,「バイトじゃねえぞ。しっかりやれ」といびり倒されたそうな,その一方で,各種の雑務だけは押しつけてくる。上の世代がサポート資源ではなく重荷になるというのは,こういうことです。これを逆転させることが,ぜひとも必要です。

 上図の黄色の数値を「圧力係数」と名づけていますが,「サポート係数」というように,逆の見方ができるようになることが望まれます。それがどれほど具現されたかは,この数値と病気離職率や精神疾患率との相関をとることで実証されるでしょう。今後,継続的にデータをとっていきたいテーマです。

2013年11月14日木曜日

資料:公立小学校6年生の生活行動時間(県別)

 文科省の『全国学力・学習状況調査』では,6つの生活行動を取り上げ,平日(月~金)にどれくらいの時間行うかを尋ねています。質問紙調査のワーディングは,以下のようです。いずれも,「1日あたり」という文言がついています。
http://www.nier.go.jp/kaihatsu/zenkokugakuryoku.html

①:どれくらいの時間,睡眠をとることが最も多いですか。
②:どれくらいの時間,テレビやビデオ・DVDを見たり,聞いたりしますか(テレビゲーム除く)。
③:どれくらいの時間,テレビゲーム(コンピュータゲーム,携帯式のゲーム含む)をしますか。
④:インターネット(携帯電話やスマートフォンを使う場合含む)をしますか。
⑤:どれくらいの時間,勉強をしますか(学習塾や家庭教師含む)。
⑥:どれくらいの時間,読書をしますか(教科書や参考書,漫画や雑誌除く)。

 ①は睡眠,②はテレビ,③はゲーム,④はネット,⑤は勉強,そして⑥は読書というように略記しましょう。用意されている選択肢は,次のごとし。hは時間,mは分を意味します。


 私は,調査対象の公立小学校6年生の回答分布を使って,各々の平均時間を都道府県別に出してみました。度数分布表から平均値を出す場合,階級値の考え方に依拠することになります。

 各階級の時間を,中間の値で代表させます。たとえば,「1時間以上2時間未満」と答えた児童は,中間をとって一律に「1時間30分(90分)」であるとみなします。

 2013年度調査の結果をみると,東京の小6児童の場合,⑤の勉強時間の回答分布は次のようです。3h以上が22.7%,2h以上3h未満が15.1%,1h以上2h未満が27.6%,30m以上1h未満が21.6%,30m未満が9.5%,「しない」が3.5%,です。よって,この大都市でいうと,小6児童の平日の平均勉強時間(1日あたり)は,以下のようにして求められます。

 [(210分×22.7人)+(150分×15.1人)+・・・(0分×3.5人)]/100.0人 ≒ 106.3分

 平日の1日あたり1時間46分。まあ,こんなものでしょう。では,6つの生活行動時間の1日あたり平均時間を都道府県別にみていただきましょう。最新の2013年度調査の結果から,軒並み計算したものです。最高値には黄色,最低値には青色のマークをしました。赤色は上位5位です。


 北海道の子どもは,テレビ,ゲーム,ネットの時間が相対的に長いようですが,雪に閉ざされた冬場は外遊びがままならないためでしょうか。他にも特記事項がありますが,細かいコメントは控えます。資料として,ご覧いただければと存じます。

 11月も中旬。今週になって,急に冷え込んできました。みなさま,体調管理には十分ご注意ください。

2013年11月10日日曜日

子育てに選ばれる地域

 育児雑誌などで,「子育てしやすい街」とかいう特集をよく見かけます。公園面積,保育所数,児童館数などの指標を集め,それらを総合してランキング化するというものです。先日,コンビニで立ち読みした週刊誌でも,そんな記事があったなあ。
 
 しかるに,人の動きに注目するのも一つの手です。高きから低きに水が流れるのと同様,より住みよい地域に人間が移るのも道理です。私は,東京都内の49市区について,最近5年間の人口変化を観察しました。注目したのは,乳幼児期(0~4歳)から児童期(5~9歳)にかけての人口増減です。

 どういう指標を計算したのか,私が住んでいる多摩市を例に説明しましょう。東京都の『住民基本台帳による東京都の世帯と人口』という資料の2008年版によると,同年元旦の多摩市の0~4歳人口は5,981人です。この世代は,5年後の2013年には5~9歳になりますが,この年の元旦の5~9歳人口は5,960人。
http://www.toukei.metro.tokyo.jp/juukiy/jy-index.htm

 5年間で21人の減です。幼児には病気や事故がつきものですが,不幸にして亡くなったのでしょうか。それとも,子が小学校に上がるのを機に別の所に移ろう,という家庭があったのか。おそらくは,大半が後者のような人口移動でしょう。

 私は,この値を都内の49市区別に計算しました。2008年の0~4歳人口と2013年の5~9歳人口の差分をもって,「子育てに選ばれる」度合いのバロメーターにしようというわけです。プラスの増分が大きい市区ほど,子育てに選ばれる地域である,という見方をとります。

 下表は,その一覧です。増加率が5.0%を越える場合,黄色のマークをしています。


 トップはぶっちぎりで千代田区です。この区では,乳幼児期では1,509人でしたが,児童期になると1,940人にまで膨れ上がっています。実に28.6%の増加です。
 
 子が小学校に上がったら,母親のフルタイム就業が困難になる「小1の壁」はよく知られていますが,「学童保育がしっかりした所に越したい」という考えを持っている家庭も多いことでしょう。

 千代田区の学童保育についてちょいと調べたところ,学童保育の設置率は高いほうであり,「夜7時まで小学生1~6年生を預けられる23区で最も恵まれた区」というお墨付きもあります。当区の児童期における人口増は,こういう部分によるのかもしれません。
http://www.gakudonavi.com/index.php?FrontPage

 しかるに,49市区全体でみた場合,児童人口あたりの学童保育定員数と上表の増加率は無相関でした。子育て期の家庭を引き付ける地域の要因としては,他にもいろいろある,ということでしょう。上表のデータをみて,「こういうことではないか」という意見がありましたら,お寄せいただけると幸いです。

 ちなみに,乳幼児期から児童期の人口増加率を地図化すると,下図のようになります。白色は,増加率がマイナス,つまり人口が減っている市区です。


 今回は,0~4歳と5~9歳というラフな区分の比較をしましたが,①乳児(0~2歳),②幼児(3~5歳),③児童(6~8歳)というように区切って,3年スパンの変化を追ってみたらどうでしょう。

 ①~②の増減は保育所,②~③のそれは学童保育の問題状況と関連しているかもしれません。千代田区について,ちょっと吟味してみましょう。

 2010年の乳児人口(0~2歳) ・・・ 1,080人
 2010年の幼児人口(3~5歳) ・・・ 953人
 2013年の幼児人口(3~5歳) ・・・ 1,217人
 2013年の児童人口(6~8歳) ・・・ 1,121人

 乳児期から幼児期の増加率=(1,217-1,080)/1,080 = 12.7%
 幼児期から児童期の増加率=(1,211-953)/953 = 17.6%

 2010年~2013年の間でみると, 幼児期から児童期にかけての増加率のほうが高いですね。やっぱり決め手は学童保育の充実でしょうか。この時期に限定した人口増加率は,各市区の学童保育供給量と相関しているかもしれません。

 話が細かくなりましたが,人の動きというのは正直です。人口統計から明らかにできることは無尽蔵。今回の分析は,各市区の子育て環境診断を念頭にやってみたものです。

2013年11月7日木曜日

大学卒業生・大学院修了生の進路図

 昨日の晩,大学学部卒業生と大学院博士課程修了生の進路図をツイッターに載せたところ,みてくださる方が多いようです。ブログのほうにも転載いたします。

 ご覧に入れるのは,今年春の専攻系列別の進路内訳図です。非正規就職,一時的な仕事(バイト),その他(無業),および不詳・死亡の4カテゴリーは,「不安定進路」として括っています。用いた資料は,2013年度の文科省『学校基本調査』の速報値です。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm


 何も言いますまい。博士課程の場合,不安定進路の比重が高いですね。黒色の「不詳・死亡」というのは穏やかでないですが,さすがに死亡はほぼ皆無でしょう。おそらくは,連絡が取れないなどの理由による進路不詳者であると思われます。でも,行方不明者も結構いそうだなあ。

 図には数値を記していませんが,参考までに,グラフの元データを掲げておきます。中間の修士課程修了生の進路内訳も示しておきます。右端のNは,卒業生・修了生の実数です。


 学部卒業者の場合,大学院進学者が多いので,進学者を除いた進路内訳図にすべきではないのか,という意見がありました。卒業者数から進学者数を除いた数を分母にして正規就職率を出し,段階ごとに比較すると,下図のようになります。


 理学と工学で,修士課程修了者の正規就職率が最も高くなっています。理系では,民間でも修士学位が評価されているためでしょう。しかし,博士修了となると,率はガクンと下がりますね。人文系と社会系は,学部→修士→博士になるにつれて,正規就職率が段階的に落ちていきます。不安定進路は,この裏返しです。

 寒くなってきたのに,ますます寒気を覚えるような図を出して恐縮ですが,これが現実。目をそらさずに直視すべし。最初の図を拡大して,高校の進路指導室の壁にでも貼ったらどうでしょう。「無目的に勉強ばっかするとこうなる」。若き高校生に知らしめてみては。

2013年11月4日月曜日

偏差値と正規就職率の関連

 10月17日の記事では,大学の学部単位のデータを使って,偏差値と退学率の関連を明らかにしました。偏差値に依拠して全国の1,192学部を4群に分かち,各群の退学率分布をとったのですが,偏差値が低い群ほど,退学率が高いほうに多く分布していることを知りました。

 最近,大学教育の効果に関する議論が盛んですが,その際は,入学難易度(ランク)を考慮しなければいけません。インプット要因の制御です。

 さて今回は,関係者の多くが関心を持っている正規就職率が,偏差値とどういう関連にあるのかをみてみようと思います。こういう問題を追及するのはタブーかもしれませんが,実態がどうなっているかをデータで明らかにしてみましょう。

 これまでと同様,読売新聞教育部『大学の実力2014』(中央公論新社)のデータを使わせていただきます。本資料には,2013年春の卒業生の進路内訳が,各大学の学部別に掲載されています。私はこれを加工して,私立大学の学部別の正規就職率を計算しました。計算式は,以下です。

 正規就職率=(正規就職数+研修医数)/(卒業生数-進学者数)

 医学部等の場合,キャリアが研修医から始まるケースが多いので,このカテゴリーも分子に含めることとしました。就職の意志がないとみられる進学者は,分母から除いています。

 この手続きで正規就職率を出した学部のうち,学研教育出版社の『大学受験案内2014』にて,入試偏差値が判明した1,281学部を分析対象とします。
http://hon.gakken.jp/book/1130386100

 私は,この1,281学部を偏差値の水準に依拠して4群に分かちました,①40未満,②40台,③50台,④60以上,です。BF(ボーダーフリー)の学部は①に入れています。この4群について,今年春の卒業生の正規就職率分布をとると,下図のようになります。


 巷でいわれていることですが,入試偏差値と正規就職率が強く関連していますね。偏差値が低い群ほど,正規就職率が低いほうに多く分布しています。偏差値40未満の群をみると,全体(446学部)の半分が正規就職率6割未満です。対して,偏差値60以上の学部群では,110学部中75学部(68.2%)が正規就職率8割超となっています。

 むむう。正直,ここまであからさまな関連があるとは思いませんでした。集団による「外的拘束性」の威力,侮りがたし。

 しからば,所詮はランクが全てであって現場の実践は無力なのかというと,そういうことではありません。偏差値40未満の群の折れ線(青色)をみると,この群の正規就職率分布は,すそ野が広い「富士山」型になっています。正規就職率が低い学部が多いのは確かですが,その逆の学部もあります。

 ピンクの丸に注目していただきたいのですが,この群の中で,正規就職率が9割を越えるのは6.7%,実数でいうと30学部です。偏差値40未満だけど正規就職率90%超,「がんばっている」学部です。

 この30学部において,どういう実践がなされているのか,興味が持たれます。読売新聞社の『大学の実力2014』では,各学部の教育実践も調査しています。私は16の項目をピックアップし,30学部の実施状況一覧表をつくってみました。「1」は,実施されていることを意味します。


 ほう。実施を表す「1」が結構多いではないですか。30学部中20学部以上で実施されているのは,イ)入学前補習,ロ)1年時の必修ゼミ,ハ)3・4年時の必修ゼミ,ニ)卒論が卒業要件,ホ)CAP制,となっています。*ホのCAP制とは,1年間でとれる単位数を制限し,単位のまとめ取りを防ぐ制度です。

 そんなこと,普通の学部でもやっているよ,と言われるかもしれませんが,入学前補習と1年時必修ゼミなんかは,この「がんばっている」学部の特徴といえるような気がします。スタートが肝心,入学時のケアを手厚くする,ということでしょうか。

 なお,多くが理系や医療系の学部ですが,人文・社会系の学部もあります(赤色)。このうち,黄色のマークをした,某ビジネス学部と某経営法学部はスゴイですね。16項目のうちのほとんどを実施しています。文系学部で「偏差値40未満だけど正規就職率90%超」。この偉業は,こういう実践に由来する面が強いと思います。

 なすべきことは,こうした「がんばっている」事例の発掘でしょう。現在,教育社会学の分野で「効果のある学校」の研究が注目されています。社会階層が低い子どもたちの学力を底上げすることに成功している学校のことです。このような学校の実践を詳細に明らかにした研究も公表されています(鍋島祥郎『効果のある学校-学力不平等を乗り越える教育-』解放出版社,2003年)。

 大学進学率が50%を越える今にあっては,高等教育(大学)段階でもこの手の調査研究が求められるのかもしれません。上表でマークをした2学部に取材をしてみようかしらん。こんなことを考えています。

2013年11月2日土曜日

正社員の離職理由

 先日,新規学卒者の離職状況に関する資料が厚労省より公表されました。それによると,2010年4月の入職者のうち,3年目となる2013年3月までに辞めた者の率は,高卒で39.2%,大卒でも31.0%になるそうです。3年以内の離職率,大卒で3割ですか。
http://www.mhlw.go.jp/topics/2010/01/tp0127-2/24.html

 これは全業種をひっくるめた値ですが,宿泊・飲食業に限定すると,3年以内の離職率は大卒で51.0%,高卒だと66.6%にもなります。この業界では,大卒の2人に1人,高卒の3人に2人が,3年以内に離職している計算になります。
 
 このように離職率は高いのですが,離職の理由はどういうものなのでしょう。まあ若者は,労働条件が悪い(キツイ)というものが大半を占めると思われますが,それだけではありますまい。女性の場合は,育児離職も少なくないと思われます。

 総務省の『就業構造基本調査』には,前年の1年間に離職した者の数が,離職の理由別に掲載されています。私は,最新の2012年調査の結果を参照して,2011年10月~2012年9月までの期間に正規雇用職(正社員)を辞した者の離職理由を調べました。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm

 この期間中の正社員離職者のうち,離職理由が分かる者はおよそ223万人。その内訳を年齢層ごとに示すと,下図のようです。ここでいう年齢は調査時点(2012年10月)のものであり,離職時点のものとは違いますが,双方のラグは小さいので,ほぼ同じとみてもよいでしょう。


 離職理由の内訳をみると,年齢層ごとの特徴が出ていますね。60代では定年,それより上の高齢層では「病気・高齢のため」という理由がほとんどです。50代において,リストラが幅を利かせているのが痛々しい。

 次に若年層の部分に目をやると,予想通り,「労働条件が悪い」という理由が最も多くなっています。若者を食い物にするブラック企業が蔓延っている現状を思うと,さもありなんです。25~34歳では,結婚や育児の比重も高し。多くが女性でしょう。

 いま,女性という言葉が出ましたが,理由構成の性差も気になるところです。結婚,育児,および50代の箇所にある介護といった,家庭関連の理由比重のジェンダー差はどうなのかしらん。

 私は,20~50代の生産年齢に限定して,上記と同じ図を男女別につくってみました。以下に,2つの内訳図を並べてみます。


 結婚,育児,および介護のゾーンはピンク色で囲いましたが,やっぱり男女では全然違いますね。女性の30代前半では,結婚・育児が離職理由の4割を占め,50代後半では介護の比重が1割強になっています。

 女性の正規就業(フルタイム就業)を阻むものとして,結婚・育児・介護があるといわれますが,統計にもまざまざと表れています。

 そんなこと当たり前だろう,といわれるかもしれませんが,これらのイベントが女性の正規就業に影響を及ぼすのは,わが国の特徴であるともいえます。3月25日の記事でみたように,北欧のフィンランドでは,子の有無によって女性のフルタイム就業率が変わることはほとんどありません。対して日本では,子どもができることで率はガクンと下がります。

 ゆえに,上図の模様は,わが国に固有のものであるともいえましょう。若年層で幅を利かせている悪条件離職,女性だけに広くみられる結婚・育児・介護離職。ここにて可視化したのは,こういう問題です。