2013年8月6日火曜日

ジェネレーション・グラム

 「ど根性ガエル」のDVD(一部)を中古で購入し,昨日はすっかり見入っていました。1972(昭和47)年に放映されたアニメですが,80年代初頭にも再放送されましたので,私の世代なら観たという人が多いでしょう。


 これがまた面白い。昔のアニメ全般にいえることですが,時代を風刺する「毒」というものがあります。文科省の道徳教育教材みたいになっている,今の「ドラえもん」や「ちびまる子ちゃん」とはえらい違いです。

 主人公は,カエルのぴょん吉が貼りついたシャツを着た,ひろしという中学生です。学年は定かでありませんが,2年生(14歳)とすると,1972-14=1958年生まれ世代ということになります。現在は,55歳くらいでしょうか。

 寿司屋の梅三郎さんは,「30を過ぎたばかり」となっていましたが,72年に30歳とすると,1942年生まれ世代です。戦中世代。梅さんは児童養護施設の出身ですが,もしかすると,戦争で身寄りを亡くした孤児なのかもしれません。

 あと一人,ひろしが通う中学の美人教師,ヨシ子先生ですが,こちらは全くの推定で当時24歳とすると,1948年生まれということになります。ほう。団塊の世代ですね。

 登場人物の世代推定をしてしまいましたが,世代(generation)とは,同じ時期に生まれ,生きてきた時代状況を共有する群のことです。不遜な言い方かもしれませんが,人間を理解するにあたって,世代とは重要なキーであると思います。

 人生のこれこれこういう時期を,どういう時代状況の中で過ごしてきたか。個々人の細かな生活史はオミットされますが,こうしたマクロな軌跡を把握することは,人間研究にとって大きな位置を占めると考えます。

 今回は,各世代の軌跡を一目で俯瞰できる図法をご紹介したいと思います。私の恩師の松本良夫先生が考案された,ジェネレーション・グラムというものです。横軸に人間の年齢,縦軸に時代(年)をとった座標上に,各世代の軌跡線を描き込むものです。ブツをみていただきましょう。


  電車の時刻表に載ってるアレに似ているな,と思われた方が多いと思いますが,その通り。電車のダイヤグラムでは,何時何分頃,この電車はどこ辺りを走っているか,ということがすぐに分かりますよね。この図法の応用であることにちなんで,ジェネレーション・グラムと命名されたそうです。

 上図には,5つの世代(5人)の軌跡が描かれています。私の小1~2の担任であった橋本美智子先生(1924年生),学問の師・松本良夫先生(35年生),「ど根性ガエル」の主人公・ひろし(58年生まれ),私(76年生),そして,この春大学に現役入学した学生さん(95年生まれ)です。

 一番上の橋本先生ですが,私が小3になった1985年4月に離任式があったのを覚えています。前年の84年に60歳を迎えられたということすから,1924(大正13)年のお生まれということ。上図をみると,多感な思春期・青年期を,戦火の中で生きてこられたことが分かります。

 推測ですが,教職に就かれたのは,戦争が終わってすぐの頃でしょう。校舎をはじめとした物資の不足,教える内容の大転換・・・。教職生活の初期が,大変な時代にぶつかっていたことが知られます。

 その後,30~40代の半ばの中堅期は,高度経済成長の時代で過ごされたようです。しかし,「デモシカ教師」と蔑まれたり,当局と組合が激しくやり合ったりと,いろいろあったのでしょうが。

 それからさらに時代を経て,83~84年度の最後の2年間,私のクラス(小1~2)を担当されて,85年3月に定年退職されたわけです。

  おこがましくも,このように軌跡を辿らせていただくと,かつての恩師をみる眼差しも変わってきます。高齢者に罵声を浴びせる若者は,彼らが生きてきた時代を想像することができない,ということが何かの本に書かれていましたが,さもありなんです。

 松本先生の世代の軌跡を拝見すると,青年期が「成長の時代」と重なっており,大学卒業期(入職時期)が,高度経済成長の始まりの時期と一致しています。うらやましい,ツイている世代といいたいところですが,そう単純な話でもありません。1950年代の後半頃は,青年層の自殺率が異常に高い水準にありました。旧い時代と新しい時代の価値観が混在していた頃です。そうした混沌とした状況に厭世を感じ,自らを殺めた(純真な)青年も多かったようです。
 http://tmaita77.blogspot.jp/2013/01/blog-post_8.html

  私の世代(76年生)はといいますと,バブル崩壊と同時に青年期がスタートです。大学に入った95年には阪神大震災・オウム事件に遭遇し,大学3年時の97年には山一證券倒産,4年時の98年に経済状況が一気に悪化,自殺者激増(98年問題!)。内定率は史上最低,教員採用試験の競争率は史上最高。新卒時に多くの者が非正規・無職に流れ,30代後半になった現在でも,芳しくない状態に留置かれている者が数多し。まさにロスジェネです。

 この春大学に入った学生さんは,現役だと95年生まれということになりますが,完全な平成世代,IT世代です。また,1998年改訂(2002年完全実施)の学習指導要領で育ってきた「ゆとり世代」なり。

 社会が維持・存続していくための条件の一つは,異世代間の相互理解です。上図の5人が集った際,「まったく話が通じない」「何を考えているのか分からない」というようなことでは,社会は成り立ちません。そうしたジェネレーション・ギャップの解消にあたって,上図のような軌跡図は有用なのではないでしょうか。お互いを深く知る,ということですから。

 ここにてご覧に入れたのは,乳幼児期から老年期までの幅広い段階のものですが,0~20歳までの子ども期に限定して,1歳刻みのもっと仔細な図をつくっても面白いでしょう。また,「**事件」「~法施行」といような出来事を描き込んでいくと,各世代の成長の軌跡と時代状況の関連がよりクリアーになると思われます。

 上記の図は,何の具も入れていないラーメンのようなものです。いろいろな情報を書き込むことで,より内容が豊かになっていきます。

 大学の学園祭とかでは,特大の模造紙を使って,こういう作品を作らせてみると面白いのではないかしらん。人間の成長の軌跡を,時代状況との関連で分からせる。ジェネレーション・グラムは,そのための格好のツールであると思います。

 それはさておき,さしあたり,あなたご自身と親しい方数名の軌跡線を描き込んでみてください。もしかしたら,関係の有様が変わるかも。

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