2013年7月9日火曜日

学童保育の効果

 国際比較ばかり続きますので,ちと話題を変えましょう。今日は,学童保育のお話です。

 子どもが小学校に上がったら仕事を続けられるだろうか,という不安を持っているママさんも多いことでしょう。学校は保育所と違って,子どもを長時間預かってくれません。小1児童の場合,給食を食べたらすぐに帰される日がほとんど。

 10歳くらいになれば一人にしていても大丈夫でしょうが,低学年の児童の場合,そうはいきません。居場所が必要です。そこで児童福祉法では,「市町村は,児童の健全な育成に資するため,地域の実情に応じた放課後児童健全育成事業を行うとともに,・・・児童の放課後児童健全育成事業の利用の促進に努めなければならない」と規定されています(第21条の10)。

 ここでいう放課後児童健全育成事業とは,「小学校に就学しているおおむね十歳未満の児童であつて,その保護者が労働等により昼間家庭にいないものに,・・・授業の終了後に児童厚生施設等の施設を利用して適切な遊び及び生活の場を与えて,その健全な育成を図る事業」のことです(第6条の3)。これがいわゆる学童保育です。

 場所は「児童厚生施設等」とありますが,実際のところ,小学校内に学童保育クラブが設置されるケースがほとんどであると聞きます。

 しかるに,上記の第21条の10にあるように,この事業の実施はあくまで努力義務です。低学年の児童数と同じくらいの定員を準備している自治体もあれば,それとは程遠い自治体もあることでしょう。

 今回は,こうした条件の違いによって,6~9歳の子を持つ母親の就業率がどう変異するかをみてみようと思います。用いるのは都道府県単位の統計です。

 まずは各県について,6~9歳の子がいる母親の就業率を出してみましょう。2010年の総務省『国勢調査』によると,末子の年齢が6~9歳である核家族世帯の数は164万1,310世帯です。このうち,母親が就業(パート等も含む)している世帯は95万1,237世帯。よって,就業率は58.0%となります。約6割。
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2010/index.htm

 次に,学童保育の供給量の指標です。全国学童保育連絡協議会の調査によると,2010年5月1日時点における,全国の学童保育入所児童数は80万4,309人と報告されています。このイスを求めている需要量として,6~9歳の子がいる核家族世帯の数を充てましょう。先ほどみたように,その数164万1,310世帯なり。よって学童保育供給率は,80,4309/1,641,310=49.0%となります。需要の充足率は半分ほどですか。
http://www2s.biglobe.ne.jp/Gakudou/

 以上は全国統計ですが,両指標とも,県別にみれば値はかなり違っています。下表は,都道府県別数値の一覧です。最高値には黄色,最低値には青色のマークをしました,赤色は,上位5位を意味します。


 まず母親の就業率をみると,最高の富山と最低の神奈川では,値が30ポイント近くも違っています。同じ6~9歳の子を持つ母親であっても,就業率は違うものですね。上位5位は,北陸と山陰というように,地域性がはっきりと出ています。

 次に説明変数である学童保育供給率ですが,こちらはもっと地域差がスゴイ。東北の山形は99.7%であり,需要のほとんどが充足されていますが,神奈川では需要の2割ほどしかイスが供されていません。

 むーん。保育所ほどではありませんが,学童保育の供給量には大きな地域差があります。いや,地域格差という語をあてがったほうがいいかもしれません。

 では,この2つの指標の相関分析をしてみましょう。横軸に学童保育供給率,縦軸に母親の就業率をとった座標上に47都道府県をプロットしました。


 学童保育の供給量が多い県ほど,低~中学年の子がいる母親の就業率が高い傾向です。相関係数は+0.713であり,1%水準で有意です。かなり強い相関とみてよいでしょう。

 上位の東北・北陸・山陰県では,三世代家族が多いためではないか,といわれるかもしれませんが,ここで出した母親の就業率は,核家族世帯のものです。よって,そういうことではないと思います。むろん,近くに親が住んでいる,というような条件があるかもしれませんが。

 3月27日の記事にて,保育所供給率と幼子がいる母親の就業率との相関係数を出したところ+0.877でした。今回の値はそれよりも低いですが,子どもが学校に上がった後においても,公的な育児支援の多寡が,母親の就業可能性を左右する重要な条件になっていることが知られます。

 ところで上表の母親の就業率は,末子の年齢を6~9歳ととったものです。しかるに,学童保育量が母親の就業可能性に与える影響は,子の年齢によって一様ではないでしょう。最後に,末子の年齢ごとに母親の県別就業率を出し,上記の学童保育供給率との相関係数を計算してみました。


 学童保育供給率と母親の就業率の相関は,子の発達段階によって違っています。幼い子を持つ母親の就業率のほうが,学童保育供給量に強く規定されているようです。このことに説明は要りますまい。

 働くママさんたちの間で「小1の壁」ということがいわれているそうです。小学校に上がったらもう保育所は使えない,かといって6歳のわが子をほったらかしにできない。よって仕事を辞めないといけない。こういう意味合いとのこと。

 子を持つ母親の就業の問題は,就学前の乳幼児段階に焦点が当てられがちですが,学齢以降の段階にも目を向けねばならないことを知りました。3月27日の記事でも書いたように,その視点は「預ける」だけでなく,「仕事を休む」「父親も共に育てる」などのバラエティを持っています。

 こうした多角視点を据えて,47都道府県の「育児環境指数」なるものを出せないかと思案しているところです。

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