2013年6月25日火曜日

マスメディアへの信頼度の国際比較

 日本は面積は狭小ですが,人口的には1億2千万人もの成員を抱えた超巨大国家です。こういう社会では,無数の匿名大衆に情報を伝達するマスコミュニケーションが重要な位置を占めており,そのための手段として,マスメディアが用いられています。

 マス(大衆)に情報を伝達するメディアの総称ですが,新聞やテレビ等に加えて,最近ではインターネットも重要な役割を果たすようになっています。私はあまり外に出ませんが,これらのメディアの恩恵により,社会の出来事やニュースをほぼリアルタイムでキャッチできています。ありがたや。

 しかし,メディアを操作する側も人間です。誤報に象徴されるように,重大な過ちがなされることもあります。マスメディアは,個々の成員にとっても,彼らを統率する社会にとっても有効なツールですが,あまりに盲目的な信頼を寄せるのは考えものです。

 さて,「盲目的」かどうかは別として,日本の国民は,この手のメディアにどれほど信頼を寄せているのでしょう。国際比較によって,わが国の性格づけをしてみようと思います。

 用いるのは,『世界価値観調査』(5wave,2005-2008)のデータです。本調査には,制度・組織への信頼を尋ねる設問が盛られており,そこにて,新聞・雑誌やテレビジョンにどれほど信頼を寄せているかが問われています。

 手始めに,新聞・雑誌への信頼度を日米で比べてみましょう。15歳以上の国民の回答内訳を面積図にしてみました。無効回答(DN,NA)を除いた構成比率です。下記サイトのオンライン集計機能を使って,私が独自に計算したものであることを申し添えます。
http://www.wvsevsdb.com/wvs/WVSAnalize.jsp


 新聞・雑誌への信頼度は,日本のほうがだいぶ高くなっています。「非常に」と「やや」を足し合わせた広義の信頼率は,日本では74.6%にもなりますが,アメリカでは23.9%にとどまっています。逆にいえば,この大国では国民の4人に3人が,新聞・雑誌に不信感を持っていることになります。

 まあ,日本のほうが信頼率は高いだろうなと踏んでいましたが,ここまで異なるとは,私にとっては驚きです。

 では,より広い国際的な布置構造の中に,わが国を位置づけてみましょう。私は,「非常に信頼」と「やや信頼」の回答比率を信頼率とし,横軸に新聞・雑誌,縦軸にテレビへの信頼率をとった座標上に,56の社会を散りばめてみました。点線は,56か国の合算値です。


 日本の信頼率は,56の社会の中でみても「上」の分類に属しているようです。先ほどサシで比較したアメリカは「下」の部類です。大まかにいって,マスメディアへの信頼率が高い社会はアジアや発展途上国に多く,西洋ではその逆であることが知られます。*台湾のように例外もありますが。

 このデータをどうみたものでしょう。報道関係の方は「名誉なことだ」と喜ばれるかもしれませんが,私としては少しばかり怖い思いを禁じ得ません。

 マスメディアは無数の人々に情報を瞬時に伝えてくれますが,発信者がチョイスした(画一)情報が一方通行で流されるわけですから,思想統制の手段として使われる危険性も併せ持っています。

 情報を受け取る側はというと,今の日本社会では,あらゆる絆や縁から隔絶された,いうなれば個々バラバラに分断された「大衆」がマジョリティーです。彼らは何らかの「よすが」を求めてやまないのですが,わが国のマスメディアへの信頼率の高さは,そのことの数値的な表現といえるかもしれません。

 こうした人々は,マスメディアが一方的に大量伝達する情報によって,思想や心理を簡単に操作される弱さを持っていることに注意を払う必要があるでしょう。世論調査のデータをみると,若者の愛国心や公共心の強さは過去最高になっているとのことですが,そのことは,インターネットという新種のメディアが台頭している現代的な状況と関連していないかどうか・・・。

 このような状況下で重要となるのは,一方的に伝達される情報を鵜呑みにしないで「自分で考え力」をつけることであると思います。

 学生さんと議論する時,「テレビではこう言ってましたよ」「Wikiにはこう書いてましたよ」という言をよく聞くのですが,マスメディアへの信頼度が低い欧米では,そういうことはあまりないのかもしれません。この伝でいうと,上図の左下のゾーンにある社会のほうが健全度が高いのかも。

 文科省の情報教育の方針をみると,情報教育においては,①情報活用の実践力,②情報の科学的な理解,および③情報社会に参画する態度,という資質・能力を身につけさせることを目指すのだそうです(『教育の情報化に関する手引き』2010年)。先ほど述べた「自分で考える力」は,この中の③に含まれると思いますが,当局はそれを認識しているのかしらん。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/1259413.htm

 悲しいかな,わが国は機械的な「決めつけ」志向が幅を利かせている社会でもあります。「上司が言うことは間違いない」「上からの命令には従って当然」「苦しいのは自分が悪いから」というように。この上に,法を守ることをしない,やりたい放題の「ブラック企業」のような病理集団が蔓延っているともいえるでしょう。

 自分で考えるのは億劫だ,何かすがることができる情報がほしい・・・。今の日本社会に,このような心性が蔓延していることを,今回のデータは示唆しているのかもしれません。話がずんずん逸れてきました。この辺りで止めにします。

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