2013年6月11日火曜日

官製ワーキングプア

 新潟の中学校の臨時司書が,学校図書館の蔵書3000冊を転売していたそうです。動機は生活苦。「生活が苦しくほとんど食費に充てた」と供述しているそうです。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130530-OYT1T01130.htm?from=tw

 この司書の月収は8万円だったとのことですが,これでは確かに食べるのもしんどいでしょう。年収にすると96万円。完全なワーキングプアです。

 「官製ワーキングプア」という言葉がありますが,非正規の公務員の給与って,こういうものなのでしょうか。興味を持ったので,官庁統計にあたって調べてみました。

 総務省『就業構造基本調査』から,15歳以上の就業者の年収分布を,産業別・雇用形態別に知ることができます。2007年調査の結果によると,「公務」というカテゴリーの就業者は218万人。そのうち,パート,アルバイト,派遣社員,契約社員という非正規雇用就業者は約12万人。公務員の非正規率は5.4%ということになります。民間に比して,かなり低いですね。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm

 量的に少ない非正規公務員ですが,年収分布はどういうものなのでしょう。正規公務員と非正規公務員の年収分布曲線を描いてみました。公務員の特徴を見出すため,全産業の就業者の曲線もお見せします。


 赤色が非正規の年収曲線ですが,低いほうに偏っています。公務員の場合,非正規の9割近くが年収200万未満のワープアです。全産業の非正規のワープア率(8割)よりも高くなっています。平均年収を出すと,非正規公務員は118万円。全産業の非正規は135万円。こちらの面でも見劣りしています。

 一方,正規公務員は結構もらっているようですね。分布のピークは700万円台であり,平均年収は628万円。民間の正規就業者の458万円よりもかなり高くなっています。

 参考までに,他の産業のデータも提示しておきます。ワープア率と平均年収を,正規と非正規に分けて掲げます。非正規率とは,全就業者に占める非正規雇用者の割合です。先ほど計算したように,公務員の非正規率は5.4%です。


 細かいコメントはしませんが,公務員の特徴は,正規と非正規の格差が大きい,ということです。平均年収は5倍以上も違い,ワープア率に至ってはもう比較にもなりません。

 最後に,この点を可視化しておきましょう。横軸にワープア率,縦軸に平均年収をとった座標上に,正規と非正規のデータをプロットし,線でつないだ図をつくりました。矢印のしっぽは正規,先端は非正規の位置を表します。矢印の長さによって,雇用形態の差が表現されています。


 何も言いますまい。公務員の場合,正規から非正規になると,ワープア率がうんと上がり,平均年収が激減することに注目してください。正規と非正規の格差が,全産業を上回っていることにも。

 巷でいわれる「官製ワーキングプア」,さもありなんです。働き方の幅を広げようということから,雇用形態による待遇格差の是正がいわれていますが,官公庁がこれでは示しがつきますまい。非正規公務員は量的にはごくわずかだからこれでいいのだ,ということで片付けられる問題ではないでしょう。

 間もなく公表される2012年データでは,どういう事態になっているか。上図の矢印が短くなっていることを願うものであり,その逆であってほしくないと思います。

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