2013年5月16日木曜日

都道府県別の東大・京大合格者出現率

 先日,県別の東大・京大合格者出現率の一覧表をツイッターで発信したところ,みてくださる方が多いようなので,ブログにも載せておこうと思います。

 ただ転載するだけというのは芸がないので,過去との比較ができる統計表を掲げましょう。ご覧いただくのは,1980年春と2010年春の県別数値です。この30年間で,有力大学合格者輩出確率の地域構造に,どういう変化が起きたのでしょう。

 ここでいう東大・京大合格者出現率とは,各県の高校から出た合格者数を高卒者数で除した値です。分子の合格者数は,『サンデー毎日』(1980年4月20日号,2010年6月12日号)に掲載されている高校別の数を,県別にまとめることで明らかにしました。分母の高卒者数は,文科省『学校基本調査』より得ています。

 合格者数は過年度卒業生も含む数であり,これを現役の卒業生数で除すことは問題ありですが,合格者が出る相対確率を表す尺度としては使えるでしょう。

 下表は,算出された合格者出現率の県別一覧です。最高値には黄色,最低値には青色のマークをしています。赤色は,上位5位を意味します。


 合格者出現率の全国値は,この30年間で3.5‰から5.5‰へと上がっています。少子化による分母が減少する一方で,分子が増えているためです。

 しかるに,合格者出現率の県間格差も開いています。極差はいわずもがなですが,標準偏差も1980年の2.19から2010年の4.52へとアップしているのです。最有力大学の合格チャンスの地域格差が拡大していることが知られます。

 これは,この30年間の変化が県によって多様であることによります。奈良のように合格者出現率が20ポイント近く伸びた県もあれば,私の郷里の鹿児島のように,それが減じた県もあります。

 1980年から2010年にかけての各県の変化を視覚化してみましょう。私は,横軸に1980年春,縦軸に2010年春の合格者出現率をとった座標上に,47の都道府県をプロットした図をつくりました。


 ピンクのゾーンにあるのは,この期間中に合格者出現率が2倍以上になった県です。黄色のゾーンは増加倍率が1倍以上2倍未満,青色のゾーンはそれが1倍未満,すなわち合格者出現率が減少したことを示唆します。

 有力大学の合格者出現率を伸ばしたのは,多くが都市的な県であることが知られます。社会の指導者予備軍の出身地域の偏り・・・。わが国の地域間の不均衡発展の遠因は,こういうところにあるのかもしれません。郷土愛を持った国会議員が少なくなるというように。

 それはさておき,47都道府県で躍進が最も著しいのは奈良であり,この30年間にかけて,東大・京大合格者数の実数も110人から332人へと増えています。

 しかるに蓋を開けてみると,この増分の多くは国・私立校によって担われています。下図にて,当県から出た合格者の出身高校の構成変化をみると,国・私立の領分拡大,公立の領分縮小が明らかです。おそらく,私立のT大寺学園高校の影響でしょう。


 こういう傾向がみられる県は少なくありません。各県の合格者の国公私構成は,5月7日の記事で明らかにしています。ご参照ください。

 このことがどういう問題を含むかは,これまで繰り返し書いてきたので,ここで言及するのは避けます。よろしければ,前回の記事もみていただけると幸いです。

 冒頭の県別合格者出現率の地図は,ツイッターのほうに載せています。2010年春のものです。興味ある方はご覧ください。
https://twitter.com/tmaita77/status/333856705538584577