2012年12月4日火曜日

少子高齢化の速度の国際比較

 日本社会は,昔と比べて大きく変わっています。いわゆる社会変動というやつですが,少子高齢化などは,その最たるものでしょう。字のごとく,子どもが少なくなり,高齢者が増えるという,人口の年齢構成の変化です。

 人口は,15歳未満の年少人口,15~64歳の生産人口,および65歳以上の老年人口に大きく区分されます。この3者の構成が,昔と比べてどう変わったか,今後どうなるかを大雑把に示すと,下図のようになります。ソースは,国際連合の人口推計データベースです。2050年の内訳は,中位推計に基づく将来予測に依拠したものです。
http://esa.un.org/unpd/wpp/unpp/panel_indicators.htm


 年少人口の比重は,20世紀の後半期にかけて半分以下になりました。文字通り,少子化です。未婚化の進行や,「少なく産んで大事に育てる」という考え方の広まりによるものでしょう。また,教育費の高騰という事情も見逃せません。

 一方,65歳以上の老年人口は増加の一途です。1950年は4.9%でしたが,世紀の変わり目の2000年には17.2%となり,2050年には35.6%にまでなると見込まれています。遠くない将来において,わが国は,老年人口が約4割という社会になることが予想されます。医療の進歩により,寿命が延びたことが大きいと思われます。

 2050年の国民の集団に石を投げたら,5分の2の確率で高齢者にヒットするわけです。キレやすい暴走老人でなければいいですが・・・。

 上図には,少子高齢化の過程がくっきりと描かれています。日本は,世界的にみても少子高齢化の速度が速い国です。この点を一目で概観できる統計図をつくってみました。今回は,それをご紹介します。

 私は,年少人口率と老年人口率の軸からなる2次元のマトリクス上において,主要先進国がどういう動きをしているかに注目しました。下図は,3時点の各国の数値をプロットして線でつないだものです。矢印の始点(しっぽ)は1950年,折り目は2000年,終点は2050年の位置を表します。

 お分かりかと思いますが,図の左上にあるほど,年少人口率が低く,高齢人口率が高い,少子高齢化が進んだ社会ということになります。


 日本は,1950年の時点では少子高齢化の程度が最も小さい社会でした。ところが,その後の半世紀の間に一気に他国をゴボウ抜きし,トップに躍り出ています。20世紀後半における,わが国の社会変化がいかに激烈であったかが知られます。今後予想される変動幅も,わが国が最大であることに注意しましょう。

 図中の点線の斜線は均等線です。この線よりも上にある場合,年少人口よりも高齢人口が多いことを意味します。日本とドイツは,今世紀の初頭にして,このような社会になっていることが分かります。米英仏は,まだこの段階に達してはいません。

 どうでしょう。明治期の近代化といい,戦後の民主化といい,わが国の社会変動は急激であることが特徴なのですが,少子高齢化という人口変化も,この例に漏れないようです。

 こうした急変化に,制度改革や人々の意識変化が追いついていないのが現状です。そのことが,老後の生活保障の不備や,生涯学習条件の未成熟といった問題をもたらしています。

 私は教育学徒の端くれですが,少子高齢化は,教育に対しどのようなインパクトを持つでしょうか。少子化の影響については,少年犯罪の国際比較を扱った,3月12日の記事をみていただければと存じます。

 高齢化のほうはどうかというと,まず,教育内容の革新を迫ることでしょう。量的にますます増加する高齢者の生理や生活に関する知識,および高齢者との接し方等を,子どもたちに教授する必要が出てくることと思います。

 その一方で,高齢化傾向は,教育に対し資源をも提供してくれます。退職した高齢者は,生活の大半を自宅近辺の地域社会で過ごすわけです。つまり,長年培われた知や技が,身近な地域社会の中に溢れ返ることになります。これはまさに,教育において活用すべき資源です。

 少子高齢化は,不可避の社会変化です。マイナス面ばかりが強調されるきらいがありますが,プラスの条件に転化させる術はいろいろあります。それができるかどうかが,今後重要になってくるといえましょう。