2012年8月26日日曜日

教員の多忙の原因

 教員は多忙であるといわれます。多忙かどうかを判定する基準は,主観的な基準(当人の意識・・・)と客観的な基準(勤務時間の長さ,抱えている仕事の量・・・)があります。ここでは,公的な意識調査に依拠して,教員の多忙度を可視化してみようと思います。つまり,前者の基準をとることになります。

 教員の多忙意識を調べた公的な調査がないかと探していたのですが,栃木県教育委員会の『教員の多忙感に関するアンケート調査』(2012年2月)というものを知りました。調査時期は,2011年9~10月であり,県内の小・中・高・特の教員372人の回答を得たとあります。
http://www.pref.tochigi.lg.jp/m01/education/kyouikuzenpan/kyouikuiinkai/tabouhousaku.html

 本調査の問10に,「自分の職務について,忙しいと感じるか」という設問があります。この設問への回答分布を図示すると,下図のようです。(  )内の数値は,回答者の数です。合計すると,372となります。


 4段階の自己評定であり,青色と赤色が肯定のシェアを表しています。ほう。どの学校種でも,肯定率が9割を超えています。栃木県では,校種を問わず,9割以上の教員が自分の職務を「忙しい」と感じているようです。

 何のためらいもない肯定の回答(青色)に注目すると,こちらは校種間の差があり,低い段階の学校ほど率が高くなっています。小学校では,6割の教員が,自分の職務は忙しいと明確に断言しています。中高は約半分,特別支援学校では,このような強い肯定は比較的少ないようです。

 さて,このように多忙感を抱いている教員が多いのですが,その原因について,どのような認識が持たれているのでしょう。上記調査の問11にて,「多忙であった主な原因」を複数回答で答えてもらっています。21の選択肢を用意し,当てはまるもの全てを選んでもらう形式です。

 選択された原因の総数は,小学校教員が793,中学校教員が391,高校教員が257,特別支援学校教員が61,となっています。これを回答者数で除して,一人あたりの選択数を出すと,順に,4.3,4.1,3.5,3.4,となります。多忙の程度が高い小学校において,多くの原因が挙げられていることが知られます。

 では,その中身をのぞいてみましょう。各学校種について,選択された多忙原因の内訳がどういうものかを面グラフで表現してみました。下図をご覧ください。


 どうでしょう。まず,校種を問わず,校務分掌業務の比重が大きいようです。校務分掌とは,組織としての学校を円滑に動かしていくため,各種の業務を教員間で分担することです。どの業務を担当するかによるアタリハズレもありますが,多忙原因の中では最も大きなウェイトを占めています。選択率は後でみますが,小学校では,回答者の8割近くがこの原因を挙げています。

 校種間の差をみると,中学校では部活指導,高校では学年・学級経営の比重が増してきます。学校規模が大きくなる高校では,確かに,この手の業務の負担は大きいでしょう。私の高校は,1学年10学級でした。これを束ねる学年主任にでもなると,業務負担は相当のものでしょう。

 特別支援学校では,教材準備や会議・打ち合わせという原因の比重が高いようです。障害のある子どもを教育する学校であるだけに,分かるような気がします。個々の児童・生徒のニーズに合った教材準備,チームによる教育実践が求められる度合いは,通常の学校より高いと思われます。

 主観の上での多忙度が最も高い小学校において,ウェイトが比較的高い原因は何かというと,提出物の処理というような,児童の管理業務であるようです。年少の児童の場合,この種の管理を細かく行う必要が出てくるのではないでしょうか。

 次に,選択率という観点を据えてみましょう。提示された各選択肢を選んだ教員が,全体の何%を占めるか,ということです。先に記したように,小学校では8割の教員が「校務分掌」をチョイスしています。他の原因の選択率はどうでしょう。

 初等教育機関の小学校と,後期中等教育機関の高等学校を比べてみます。下図は,横軸に小学校教員,縦軸に高校教員の選択率をとった座標上に,21の原因をプロットしたものです。45度の斜線は均等線です。この線より下方(赤色ゾーン)にある場合,小学校教員の選択率が高校教員を上回ることを意味します。上方(青色ゾーン)にある場合は,その逆です。


 21のうち16の原因(赤字)において,小学校教員の選択率が高いようです。ゴチは,差が10ポイント以上あることを示唆します。この基準によると,校務分掌や提出物の処理など,6の原因が,小学校教員に固有の多忙原因であると判断されます。

 一方,高校教員に固有の多忙原因(青色ゴチ)は,個に応じた指導,生徒指導,部活指導,学年・学級経営というものです。生徒の進路希望も分化してくる高校段階では,個に応じた指導の負担も大きくなる,ということでしょう。また,問題行動への対応など,生徒指導の大変さも増してきます。

 予想されることではありますが,教員の多忙の原因は,学校段階によって一様ではないことが分かりました。各校種の性格に応じた,対応策が求められるところです。

 文科省のサイトにて,教員の勤務負担軽減を目指した,各地の取組が紹介されています。実は,今回使用した栃木県の調査データも,本サイトで知ったものです。教員の多忙化問題に関心をお持ちの方は,必見のサイトといえます。URLは下記です。ご覧ください。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/uneishien/detail/1324313.htm

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