2012年7月24日火曜日

新規採用教諭の年齢構成の長期変化

4月3日の記事では,この10年ほどの間で,公立学校の新規採用教諭の高齢化が進んでいることを知りました。しかるに,もっと長期的なスパンでの変動も気になるところです。

 先日,総務省統計局の統計図書館(私にとっての聖地)に行った折に,文科省『学校教員統計調査』のバックナンバーに当たって,必要な数字を採取しました。今回は,1976年度から2009年度までの30年超の観察期間を設けてみようと思います。

 上記の文科省資料では,調査年の前年度間における新規採用教諭の数が,年齢層別に集計されています。新規採用「教諭」は,教員採用試験の合格者とほぼ近似する集団であるとみてよいでしょう。

 まずは,公立小中高の新規採用教諭の数がどう推移してきたかをみてみましょう。文科省の上記調査は3年おきのものなので,3年刻みの推移線になっています。


 新規採用教諭の量は,結構ドラスティックに変わっています。公立小学校のピークは,1979年度です。この年では,2万人近くもの新採教諭がいました。70年代前半生まれの団塊ジュニア世代に対応するためであったと思われます。中学校と高校のピークが3年ずつ後にずれていることも,それを傍証しています。

 しかし,その後は少子化により採用数が減少を続け,小学校と中学校は2000年度にボトムになります。小学校は約5,000人。ピーク時の4分の1ほどです。この頃採用試験を受験した「ツイてない」世代は,いみじくも私の世代です。ああロスジェネ・・・。近年は,団塊世代の大量退職もあって,採用数が増えていることは周知の通りです。

 新規採用教諭の量の変化は上図のようですが,ここでの関心は,その中身(年齢構成)がどう変わったかです。傾向を,下図に集約しました。


 青色は,20代前半(新卒該当年齢)です。ほう。私が生まれた1976年度では,小・中学校の新採教諭の8割が20代前半だったのですね。辞令交付式の会場は,ピチピチの新卒者で溢れ返っていたことでしょう。

 しかし,時代が経過するにつれ,そうではない人種も会場にぽつぽつと姿を表すようになります。右下の折れ線グラフから分かるように,2009年度では,30歳を超える者が小学校では23%,中学校では28%,高校では実に38%(≒4割)をも占めているのです。

 ちなみに,新規採用教諭の平均年齢(average)を,始点の1976年度と終点の2009年度で比べると,以下のごとし。高校では,30歳を超えています。

 小  23.6歳 → 27.8歳 
 中  24.3歳 → 28.6歳
 高  25.2歳 → 30.5歳

 新規採用教員の高齢化は,別に悪いことではありません。大学卒業後,長期の間臨時講師などをやってきた人たちが主ですから,最初から即戦力のある人材が集うことを意味します。私も,そう思っていました。

 しかるに,問題もあります。詳細は,6月14日の記事をご覧いただければと存じます。

 さて,明日(25日)は武蔵野大学の前期授業の最終日です。学生さんと写真をとる約束をしたので,デジカメの充電をしておかねば。「調査統計法2」という授業でしたが,卓抜なレポートを出してくれた学生さんもいます。許諾が得られたら,本ブログで紹介させていただく予定です。