2012年5月31日木曜日

学年別の教育費の内訳

最近,生後間もない乳児のいるお母さん方に人気なのが,「授乳フォト」なのだそうです。字のごとく,赤ちゃんに授乳している姿を写真に収めてもらことです。またとない姿を画像で記録しておこう,子どもが反抗期を迎えたらこれを突き付けてやろう・・・。いろいろな思いがあってのことでしょう。
http://www.asahi.com/edu/kosodate/news/OSK201205170032.html

 子宝に恵まれた親御さんは,さぞ喜びに満ち溢れていることでしょう。その一方で,この子がいつ荒れ始めるか,ワルになったりしないか,というような心配事も尽きないと思われます。「反抗期になったらこの写真を・・・」というのは,こうした懸念の表れとも読めます。

 子どもができたら必ずついて回る悩みは,もう一つあります。それは教育費です。日本の教育費の高さは,世界的にも有名です。子ども一人育てるのに数千万円。こういうことが度々報道されます。こんな大金負担できないということで,出産をためらう夫婦も数多し。わが国の少子化の元凶は,教育費の高さといっても過言ではないでしょう。

 文科省の『子どもの学習費調査』から,保護者が費やした教育費の平均額を,子どもの学年別に知ることができます。最新の2010度調査の結果を使って,幼稚園から高校までの学年別の教育費がどれほどかを調べてみました。出所は,下記サイトの表2です。原資料では「学習費」という言葉が用いられていますが,ここでは「教育費」ということにします。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001086412

 ここでいう教育費には,学校教育費のほか,塾やおけいこ費用などの学校外教育費も含まれます。保護者が2010年度間に負担した額の平均値です。下表は,公立と私立で分けて,学年ごとの額を示したものです。


 幼稚園から高校までの総額は,ずっと公立の場合は504万円,オール私立の場合は1,702万円なり。いやー,私立はすごいですね。大学も私立の場合,プラス600万円として,22歳までの教育費総額は約2,300万円。私立コースでは,小6の時点で,累積負担額が1,000万円を超えます。

 まあ,オール私立というコースを行く子どもはごくわずかでしょう。公私の額の差が大きいのは小・中学校ですが,義務教育学校の大半は公立校です。小・中は公立に通ったとした場合,22歳までの教育費総額の見積もり値はおよそ1,350万円なり。これが標準額でしょうか。うーん,これでも高い印象を持ちます。1人ならまだしも,2人,3人育てるとなったら,どういうことになるでしょう。

 子どもが荒れ始めたら,授乳フォトに加えて,教育費の帳簿も見せつけてやるとよいでしょう。水戸黄門の印籠のような効果を発揮するかもしれません。「てめえに費やした金はいくらと心得る・・・」。角さんの定番のセリフをアレンジして。

 さて,このようにべらぼうに高い教育費ですが,その組成は多様です。文科省の上記調査では,学校教育費として,授業料のほか,修学旅行・遠足費,児童・生徒会費,PTA会費,教科書費,学用品費,教科外活動費,給食費,などの費目が設けられています。学校外教育費の主な費目は,学習塾費,家庭教師費,体験活動・地域活動費,芸術文化活動月謝など。

 これらの額の内訳がどういうものか,気になるところです。高校段階までは,公立校に通う子どもが大半ですので,公立校のデータをみてみましょう。幼稚園は多くが私立ですが,この部分だけ私立にするのは変ですので,幼稚園も公立の園児の統計をみることにします。

 下図は,各学年の教育費の内訳をグラフ化したものです。小6なら,上表でいう39万円の内訳が示されているものと読んでください。


 幼稚園段階では,授業料が多くを占めます。幼稚園は義務教育学校ではないので,公立校でも,授業料は徴収されます。しかし,義務教育段階の小・中学校は授業料はタダ。高校も,高校無償化政策により,公立校の授業料は不徴収となっています。

 その分,小・中学校段階では,学校外教育費のシェアが大きいようです。学習塾のほか,芸術やスポーツ関連の習い事の月謝も多し。小6になると,学習塾費の比重が増し,中学校になるとそれがさらに顕著になります。中3では,学習塾費が全教育費額の半分を占めています。平均額は,年間26万4千円なり。月あたり2~3万というところでしょうか。

 なお,給食費の比率も結構大きいようですね。額でいうと,小学校では年間だいたい4万2千円ほど。給食費の不払いが問題になっていますが,貧困層の家庭にとってはバカにならない額です。モラルハザードによる不払いが大半でしょうが,切羽詰まって・・・というケースも少なくないと思われます。

 受験が済んで高校に上がると,通学費や教科書代が幅をきかせてきます。高校になると,教科書は有償です。高2では,修学旅行・遠足費がマックス。高校では旅行先も遠方になり,費用がかさみますしね。高3になると,大学受験を見据えて,再び通塾費用のウェイトがぐんと高くなります。

 3~18歳までの教育費の組成図を眺めてみてどうでしょう。私としては,学校外教育費の比重が高いな,という印象です。わが国の教育費高騰の原因は,上級学校段階における私学依存(大学は約8割が私立)に加えて,こうした学校外教育依存にも見出されます。

 スポーツや芸術文化のように,学校と重複しない教育活動への投資ならまだよいのですが,学習塾や家庭教師のように,学校とオーバーラップする類の教育に多大な支出がなされる構造というのは,どうかという気もするのです。

 最近,生活保護世帯の子どもの通塾費用を公的に援助しようという動きがあります。貧困の世代間連鎖を防ごうという意図からでしょう。しかるに,2つの学校(Two Schools)に子どもを通わせるのがノーマルで,それをしないのはアブ・ノーマルという社会って一体・・・。

 通塾と学力は必ずしも正の相関関係にないこと,過度の通塾は,子どもの生活構造の均衡を崩し,社会性などの面の発達を阻害する恐れがあることは,昨年の6月12日の記事でも指摘しました。今回の統計図をみて,改めてこのことを申し上げる必要を感じた次第です。

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