2012年3月11日日曜日

教員のパフォーマンス指数(総合)

これまで,①授業,②連携・協力,および③研修という3つの側面から,各県の教員のパフォーマンスを計測してきました。今回は,互いに異なるこれらの3側面を合成した,一つの総合的なパフォーマンス指数を構成してみようと思います。ここでいう教員とは,公立の小・中学校の教員のことです。

 やり方はごく単純で,3つの指数の平均(average)をとるだけです。下表に,都道府県別の一覧を示します。


 3つの面の指数を平均した総合的なパフォーマンス指数は,表の右端の欄に示されています。指数が全県で最も高いのは広島の9.11,最も低いのは滋賀の2.00です。

 指数が7.0を超えるのは10県です(赤色)。茨城,栃木,新潟,福井,山梨,長野,岐阜,静岡,広島,および山口が該当します。これらの県は,総合的な観点からみて,教員のパフォーマンスが比較的良好であると考えられます。

 上表をみると,赤色の数字は分散しているのではなく,固まっているような印象を受けます。福井から静岡までの,北陸・中部ゾーンは,軒並み数字が赤です。何やら地域性のようなものがあるように感じます。この点をクリアーにするため,地図をつくってみましょう。

 下図は,右端の総合的なパフォーマンス指数に依拠して,各県を塗り分けたものです。4未満は黒色,4台は赤色,5台は黄色,6台は水色,7以上は白色にしました。


 指数が高い地域(白色)と低い地域(黒色,赤色)は,ある程度固まっているようです。前者は中部地方,後者は近畿地方に多いことが知られます。しかるに,今回作成した指数の元資料は,文科省の学力調査に対する,各県の学校の回答結果です。近畿の府県の学校は,自校の状況をシビアに評価した,ということもあり得ます。

 はて,いろいろと手間をかけて計算した教員のパフォーマンス指数ですが,どれほど妥当性を持っているのでしょうか。私は,この点を確認するため,各県の子どもの学力水準との相関関係をとってみました。常識的に考えて,授業工夫などの要素からなる,教員のパフォーマンスの良し悪しは,子どもの学力と関連があるものと思われます。

 教員のパフォーマンス指数は,文科省『全国学力・学習状況調査』(2009年度)の学校質問紙調査の結果をもとに作成したものです。しかるに本調査のメインは,児童・生徒を対象とした,教科に関する調査です。そこから,公立小学校6年生の4科目(国語A,国語B,算数A,算数B),公立中学校3年生の4科目(国語A,国語B,数学A,数学B)の平均正答率を県別に知ることができます。Aは知識,Bは知識の活用について問うものです。
http://www.nier.go.jp/09chousakekkahoukoku/index.htm

 私は,教員の総合的なパフォーマンス指数が,各科目の平均正答率とどういう相関関係にあるのかを調べました。後者の県別数値は,2009年度調査のものです。下表は,相関係数と検定の結果を整理したものです。


 教員のパフォーマンス指数は,小・中学生の国語の学力と正の相関関係にあります。また,中学生の活用的な数学力(数学B)との間にも,有意な正の相関が観察されます。相関係数は,小学生よりも中学生で高くなっています。教科の内容が高度化する分,教員の授業工夫や実践的な研修の有様が影響する面が強くなる,ということではないでしょうか。

 各県の学校の自己評価に依拠したものですが,ここで出した教員のパフォーマンス指数は,まったく無意味なものではなさそうです。

 なお,教員のパフォーマンス指数は,子どもの学力という一部分だけでなく,各県の子どもの総体的なすがたとも関連しています。2月18日の記事で明らかにした,各県の子どもの総合的な幸福度指数との相関をとってみると,下図のようになりました。


 教員のパフォーマンスが良好な県ほど,子どもの幸福度が高い傾向が見受けられます。両者の相関係数は0.442であり,1%水準で有意な相関と判定されます。因果関係であると断定はできませんが,教員のがんばり度は,子どものすがたにも影響する可能性があることが示唆されます。

 ただ,注意しておくべきことがあります。今回出した教員のパフォーマンス指数(がんばり度尺度)は,教員の過労,さらには教員に対する管理の度合いを表現したものと読むこともできます。授業工夫をしているか,同僚や外部との連携をしているか,研修を頻繁にしているか,という設問への肯定率は,高ければ高いほどよいという,単純なものではありますまい。この指標が殊更に高いことの裏には,教員の過労やバーンアウトといった問題が潜んでいる可能性が多分にあります。

 もしかすると,教員のパフォーマンス指数は,教員の離職率や精神疾患率と正の相関関係にあるという,アイロニーな結果が出てくるかもしれません。事実,上図の右上に位置する山梨は,小・中学校の教員の離職率が最高の県です(昨年の7月28日の記事参照)。これらの問題指標との相関分析は,後ほど手がけてみるつもりです。

 このような正負の側面があることをお知りおきの上で,各県の教員のパフォーマンス指数をご覧いただければと存じます。

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