2012年2月29日水曜日

学歴別の刑務所入所率

2月26日の記事では,配偶関係別の刑務所入所率を明らかにしました。今回は,学歴別のそれを計算してみようと思います。学歴は,所得や職業と並んで,社会階層を構成する重要な要素です。今回の作業は,社会階層と犯罪率という,犯罪社会学の重要問題にも通じるかと思います。

 2010年の法務省『矯正統計年報』によると,同年中に刑務所に新たに入所した者の数は27,079人です。この27,079人の学歴構成を整理してみましょう。男女別の統計を掲げます。下記サイトの表34より数字をハントしました。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001076421


 男女とも,中学校卒業というカテゴリーが最も多くなっています。男性入所者では42.1%,女性入所者では37.6%を占めます。均すと約4割。刑務所入所者の5人の2人が,中卒の学歴ということになります。

 当然ですが,高校進学率95%超,大学進学率50%超という今の社会において,中卒者はこれほど多くはありません。2010年の『国勢調査』の抽出速報結果によると,15歳以上人口のうち,最終学歴が小・中学校卒業の者が占める比率は,男性は14.3%,女性は16.7%です。社会全体の学歴構成を勘案すると,刑務所入所者は,低学歴層に明らかに偏しています。

 上表の数字と,『国勢調査』から得られる母数の統計を使って,学歴別の刑務所入所率を計算してみましょう。義務教育学校中退者(上表の①,③),在学者(⑤,⑧),不就学者(⑪),および学歴不詳者(⑫)は数が少ないので,入所率の計算は見送ります。

 私は,小・中学校卒業者,高卒者,そして大卒者という3カテゴリーについて,刑務所入所率を計算しました。各学歴グループの入所者数を,『国勢調査』から分かる当該学歴人口で除した値です。分子ですが,高校中退の入所者は小・中卒,大学中退の入所者は高卒の入所者に含めたことを申し添えます。分母の学歴別人口の出所は,下記サイトの表12です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001032402&cycode=0

 はて,学歴によって,ムショ入りする確率はどれほど異なるのでしょうか。下表は,男性と女性に分けて,学歴別の刑務所入所率を掲げたものです。


 表の右端の欄には,ベースの人口10万人あたりの入所率が示されています。男女とも,小・中卒>高卒>大卒,という構造です。低学歴の層ほど,刑務所入所率が高くなっています。

 しかし,学歴間の差がここまで大きいとは驚きです。刑務所入所率の学歴差は,2月26日の記事でみた配偶関係間の差よりもはるかに大きくなっています。男性でいうと,小・中卒の入所率(219.0)は,大卒(6.9)の31.8倍です。むーん。

 わが国は,学歴社会であるといわれます。義務教育学校を終えて直ちに社会に出た者は,諸々の不利を背負わされ,犯罪に傾斜する確率が高くなることがうかがわれます。進学率の上昇により,この層が完全なマイノリティーと化している若者にあっては,学歴間の差はもっと顕著であることでしょう。

 年齢層別・学歴別の刑務所入所者数のデータがあればいいのになあ。『国勢調査』では,自分が希望する統計表をつくってもらえる「オーダーメード集計」というサービスがあるそうです。法務省の統計も,このサービスの範疇に入っているのかしらん。
http://www.stat.go.jp/index/seido/2jiriyou.htm

 刑務所入所率の学歴差が過去に比して拡大しているのか,という問題が残っていますが,分子,分母とも,過去の統計が手元にないので,後の課題といたします。今度,総務省の統計図書館に行った時に,数字をハントして参ります。

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