2011年12月13日火曜日

年齢別の死因構成

悪性新生物(がん),心疾患,および脳血管疾患を総称して,3大生活習慣病といいます。以前は成人病といっていたらしいですが,生活習慣の乱れに起因する面が大きいことにかんがみ,生活習慣病という呼称になっているようです。

 これら3つの病は,かなり猛威を振っているようです。2010年の厚労省『人口動態統計』によると,同年の死亡者はおよそ120万人ですが,このうち,悪性新生物によるものが29.5%,心疾患によるものが15.8%,脳血管疾患によるものが10.3%,を占めています。つまり,これらの3大生活習慣病だけで,全死因の6割弱が占有されていることになります。恐るべし。

 これらは上位3位ですが,10位までの死因の構成比を出すと,下表のようになります。2010年の統計です。


 自然死(老衰)は5位ですが,構成比でいうと,全体の4%しか占めません。病や外因によることなく,自然に逝きたいと願う人が多いと思いますが,残念ながら,その確率はかなり低いようです。

 なお,今問題になっている自殺(suicide)は7位であり,全体の2.5%です。死亡者40人に1人。私は,これまで社会病理学の立場から,自殺の動向に注目してきましたが,全死因に占めるウェイトはさほど大きくはないようです。

 ところで,死因の構成は,年齢別にみるとかなり違います。上表に掲げた,上位10位の死因の構成比を年齢ごとに出し,面グラフで表現してみました。厚労省『人口動態統計』2010年版のデータです。総務省の政府統計の総合窓口(e-Stat)から,当局が保管している詳細な原統計(冊子媒体では非公表)にアクセス可能です。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL02010101.do


 いかがでしょうか。3大生活習慣病(青,赤,緑)の比重が大きいのは,おおよそ60代です。ピークの63歳では,全死因の69.3%がこれらの病によって占められています。多くの人が定年を迎える頃ですが,職をリタイヤし,生活環境がガラリと変わることで,生活習慣が大幅に乱れてしまう,ということでしょうか。

 次に注目すべきは,オレンジ色の「不慮の事故」です。子どもでは,この死因の比重が高くなっています。6歳の児童では,この死因の比率が33.6%にも達します。交通事故による死亡も多いことでしょう。注意をしたいものです。

 あと一点,特記すべきなのは自殺です。ご覧ください。黒色の膿(うみ)が,20代から30代前半の辺りに広がっています。22~24歳では,全死因の半分以上が自殺となっています。

 22~24歳といえば,ちょうど,学校から仕事への移行(transition from school to work)を期待される年齢です。ですが,このご時世です。それが一筋縄ではいかないことは,誰もが知っています。3月8日の記事では,就職失敗を苦に,自らを殺める大学生が増えていることを明らかにしました。上記の膿は,時代の病理を表現したものといえましょう。

 上記のような図柄が,近年に固有のものであるかどうかが気になります。過去との比較をしようとすると,5歳刻みのラフ・データを使わざるを得ないのですが,やってみる価値はあると思います。社会数学の授業の,冬休み中の課題としていいかも。いや,年明け早々から,物騒な死因統計をいじらせるなんて,やっぱり酷か。