2011年11月27日日曜日

養護相談

前回は,児童相談所に寄せられた相談件数を分析しました。今回は,養護相談という事由に限定して,相談件数の統計をみてみようと思います。出所は,厚労省『社会福祉行政業務報告』です。

 同調査の解説によると,養護相談とは,「父又は母等保護者の家出・失踪,死亡,離婚,入院,稼働及び服役等による養育困難児,棄児,迷子、被虐待児,被放任児,親権を喪失した親の子,後見人を持たぬ児童等環境的問題を有する児童,養子縁組に関する相談」と定義されています。

 今問題になっている児童虐待(child abuse)に関する相談は,広くはこの養護相談のカテゴリーに含まれることになります。まずは,この養護相談の件数の時代推移をみてみましょう。前回と同様,1965年以降の2~3年刻みのデータをとっています。


 bの相談件数をみると,1997年度までは2~3万件台でしたが,2000年になると5万件を超え,2007年には8万件を超えています。この間,20歳未満の子どもの数は減ってきていますので,相談件数をベースで除した比率は,ぐんぐん上昇しています。

 比率の上昇は,2000年度以降で大きいようですが,これには理由があります。2000年5月に児童虐待防止法が制定され,児童虐待が社会問題として正式に認知されるに至りました。このことをきっかけに,虐待に関連する相談の件数がうなぎ昇りに増えたものと思われます。

 2009年度の養護相談の件数は88,009件ですが,このうちの51.6%(45,395件)は,児童虐待に関連する相談です。養護相談の半分以上が,虐待に関連する相談となっています。

 さて,この養護相談ですが,何歳の子どもに関連するものが多いのでしょうか。2009年度の統計では,0歳の子どもに関連する相談が6,583件と最も多くなっています。この年の0歳人口は約108万人ですから,ベース人口1万人あたりの件数に直すと,61.1件となります。上表に記載されている,子ども人口全体の比率(38.1)よりも,かなり高い値です。低年齢の児童において,養護上の問題が発生する確率が高いことがうかがれます。

 私は,上表の各年度について,養護相談件数の比率を年齢別に出し,結果を例の社会地図で表現してみました。


 黒色は,該当年齢人口1万人あたりの相談件数が50件を超えることを意味します。最近の0歳と2~4歳が,黒く染まっています。時代軸で相対化しても,最近の低年齢の児童の危機状況が際立っています。

 しかし,1990年代後半以降,どの年齢でも相談件数の率がじわじわと上がってきています。2009年度でいうと,青色(1万人あたり40件台)のゾーンが10歳まで,紫色(30件台)のゾーンは14歳まで垂れてきています。

 以前は,10代になった少年に関する養護相談は少なかったのですが,最近では,そうではなくなっています。このような状況が,90年代半ば以降に表れてきたことも不気味です。子どもの危機というのは,社会全体の危機と表裏であるのだな,と思います。

 次回は,また別の事由の相談件数の統計をお見せいたします。