2011年11月8日火曜日

いじめの摘発度

 文科省の『児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査』には,各年度間のいじめの件数が記載されています。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001016708

 しかるに,この資料に載っているのは,公的に認知されたいじめの件数であって,子どもたちの間で実際に起きたいじめの件数とイコールでないことは,いうまでもありません。いじめとは外部から見えにくいものである関係上,公的統計にはカウントされずに,闇へと葬られたいじめの数も,かなりの数にのぼることでしょう。いわゆる,暗数というやつです。

 いじめの真数に,もっと接近できる測度はないものでしょうか。当事者たる子どもたちの意識をフィルターにして考えてみましょう。

 文科省『全国学力・学習状況調査』では,対象の児童・生徒(小6,中3)に対し,「いじめは,どんな理由があってもいけないことだと思うか」と尋ねています。「そう思う」,「どちらかといえば,そう思う」,「どちらかといえば,そう思わない」,「そう思わない」,という選択肢から一つを選んでもらう形式です。

 2009年度調査の結果によると,最後の「そう思わない」を選んだ者の比率は,小6で1.3%,中3で2.4%となっています。
http://www.nier.go.jp/09chousakekkahoukoku/index.htm

 下表をご覧ください。aは,2009年度調査の上記設問に対し,「そう思わない」と答えた者の比率です。bは,文科省『学校基本調査』から分かる,同年5月1日時点の児童・生徒数です。aの比率をbに乗じれば,いじめを平然と容認する者の実数を割り出すことができます。


 表の右欄によると,いじめを容認する者の数は,小6で15,525人,中3で29,481人です。合算すると,45,006人となります。公的な認知件数よりも,この数のほうが,いじめの真数に近いものと思われます。少なくとも,子どもの世界で実際に起きるいじめの件数を近似的に表現する測度とみなす分には,問題はないでしょう。

 さて,今しがた明らかにした,いじめを容認する児童・生徒の数と,いじめの認知件数を照らし合わせることで,「いじめの摘発度」を計算することができます。学校当局のいじめ摘発(認知)活動を評価するための尺度です。

 冒頭の文科省資料の2009年度版によると,同年度中に全国の学校で認知されたいじめの件数は,小6では6,530件です。いじめを容認する小6の児童数は15,525人です(上表)。前者を後者で除すと,0.42となります。当該学年の場合,当局が認知したいじめの数は,いじめの仮真数の4割ほどに相当することになります。中3になると,この値は0.18に下がります。当局の統計は,仮真数の2割弱しか拾っていないことになります。


 いじめの摘発度は,学校の設置主体によっても違います。その数値は,国立や私立学校で低い傾向があります。中3でいうと,私立学校の認知件数142件は,仮真数(3,133件)の5%ほどしか掬っていないことになります。経営上,恥部を多くさらすのはマズイ,ということでしょうか。

 次回は,いじめの摘発度を都道府県別に明らかにしようと思います。結果を先取りしてコメントすると,いじめの摘発(認知)活動のがんばり具合には,とても大きな地域差があります。何と,上表のaの数がbを上回る県もあります。それはどこでしょう。お楽しみに。