2011年7月28日木曜日

都道府県別の教員の離職率

 5月10日の記事において,20~30代の小学校教員の離職率を県別に明らかにしました。これは,小学校のものですが,中学校や高等学校の離職率も県別に出してみましたので,それをご覧に入れようと思います。今回は,若年教員のものではなく,教員全体のものです。

 離職率とは,ある期間における離職者数を教員数で除した値です。分子の離職者数には,定年でも転職でも病気でもない,統計上「その他」というカテゴリーの理由による離職者数を充てます。2006年度間の数字です。分母には,2006年5月1日時点の本務教員数を充てます。離職者数は文科省『学校教員統計』,本務教員数は同『学校基本調査』から得ました。いずれも,文科省のサイトから閲覧可能です。
http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/main_b8.htm

 要するに,理由が定かでない離職者が,全体のどれほどいるかを表す指標です。教員の脱学校兆候の程度を測る指標であるとみなせます。私が在住している東京都について,この意味での離職率を算出してみましょう。


 小学校でいうと,2006年5月1日時点の本務教員数は30,323人です。2006年度間に,理由不詳の離職をした者は215人です。よって,離職率は215/30,323≒7.1‰と算出されます。千人あたり7人という比率です。離職率は,中学校では8.7‰,高等学校では13.0‰であり,上の段階にいくほど高くなります。

 計算の過程のイメージを持っていただいたところで,では,47都道府県の離職率の一覧表を掲げます。最大値には黄色,最小値には青色のマークをしてあります。


 教員の離職率は,県によってかなり違っています。都市県で高く,農村県で低いという単純な傾向でもなさそうです。小学校と中学校では山梨が一番高いのですが,何か理由があるのでしょうか。当局による教員管理の度合いが高いとか…。中学校や高等学校では,福岡の離職率が高いのですが,当県は,非行少年の出現率が高い県です。生徒の問題行動の頻度とも関連しているかもしれません。

 なお,高等学校では,経営難に瀕した私立学校のリストラという理由も考えられますが,私立学校の比重が低いと思われる県の離職率が高いケースもあるので(岩手,鳥取など),その理由ばかりを強調することはできないようです。

 ひとまず,資料的意味合いを込めて,上記の統計を掲載しておきます。

付記:小,中,高等学校の離職率の全国値が,5月12日の記事のものと異なりますが,今回の計算では,2006年5月1日時点の本務教員数をベースに充てていることによります。先の記事の離職率は,2007年10月時点の教員数を母数にしたものです。正確さの点でいうと,今回のやり方のほうがベターかと存じます。